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[BD]「天空の城ラピュタ」

落っこちるムスカもクッキリ見える
音質も含めて生まれ変わった冒険活劇


 このコーナーでは注目のDVDや、Blu-rayタイトルを紹介します。コーナータイトルは、取り上げるフォーマットにより、「買っとけ! DVD」、「買っとけ! Blu-ray」と変化します。
 「Blu-ray発売日一覧」と「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。

■ ついにこの日が……



天空の城ラピュタ

(c)1986 二馬力・G
価格:7,140円
発売日:2010年12月22日
品番:VWBS-1189
収録時間:約124分(本編)+特典
映像フォーマット:MPEG-4 AVC
ディスク:片面2層×1枚
画面サイズ:16:9
音声:(1)日本語
     (DTS-HD Master Audio 2.0ch)
    (2)フランス語
     (ドルビーデジタル2.0ch)
    (3)ドイツ語
     (ドルビーデジタル2.0ch)
    (4)韓国語
     (ドルビーデジタル2.0ch)
    (5)広東語
     (ドルビーデジタル2.0ch)
    (6)北京語
     (ドルビーデジタル2.0ch)
発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンj

 12月22日にいよいよ発売された、スタジオジブリの「天空の城ラピュタ」と「ホーホケキョ となりの山田くん」のBlu-ray。特に「ラピュタ」は個人的にジブリアニメの中で一番好きなタイトルなので、“ついにこの日が来たか……”という心境だ。

 BD版製作の舞台裏については、以前インタビュー記事でお伝えしたが、今回ようやくBD版を入手したので、じっくりと鑑賞した。

 なお、だいぶ前になるが、DVD版発売時に思い入れやあらすじなどを「買っとけ」で書いているのでグッと我慢。今回は映像や音声に的を絞ってお届けする


■ マニア好みの高画質

 比較対象としてDVD版と見比べた。アップコンバート再生にはPlayStation 3を使用。流れでBD再生もPS3で行なっている。

 冒頭、ドーラ一家がシータ&ムスカが乗った飛行船を襲うシーンからスタートするが、この暗い場面からBDとDVDの情報量の差は歴然だ。わかりやすいのが巨大飛行船のボディ下部。DVD版では月明かりが当たる部分はしっかり描写されているが、当たらない下側は紺色で塗りつぶされたように階調が無く、ボディの凹凸や突起など、ディテールも闇に埋もれてよくわからない。BD版でも暗い部分は暗いままだが、その中に船体の階調が残っており、細かな模様などもよくわかる。

 オープニングの産業革命的な映像でも、飛行船のボディを描写する細かい線が、BDでは1本1本クッキリ描写され、視力が良くなったような感覚を覚える。地中を掘り進む謎の機械が登場するシーンで、機械の上に男が立っているが、その男が手に紙(コントローラー?)のようなものを持っているのに、BD版で初めて気がついた。

 解像感以外にも違いがある。一目でわかるのは色味の違いで、冒頭の飛行船内部やオープニングでは赤みが抑えられ、落ち着いた渋い発色になっている。ジブリのソフトと言うと赤みが強いようなイメージがあるが、むしろ逆だ。

 また、総じて色が“濃い”。加えて暗部に締まりがあるため、コントラストが上がったと感じる。そのため、全体的に観やすい、クリアな映像になり、奥行き感も出ている。人物の立体感や、飛行船が飛んでいる空の高さ、坑道の深さなどが、より強く感じられるようになった。ゴリアテも、その巨大さや重厚さがアップ。後半に上陸するラピュタの廃墟っぷりも、暗部が締まることで、神秘的な雰囲気がアップしたように感じる。

 色が濃く、コントラストがアップしたことで、キャラクターの肌色の見え方もDVD版とは違っている。極端に赤いなど、不自然な感じは無く、DVD版の方がむしろ赤みが強く感じる。

 マスターフィルムをスキャンした段階ではかなりグレインがキツく、意識的にそれを抑える処理をしたという話がインタビューにあったが、その言葉通り、完成映像のグレインは「ナウシカ」よりも少なく感じ、鑑賞中もあまり気にならない。もちろん暗部に注目すればジラジラを動いているのがわかるが、プロジェクタ投写で全体を観ている際にはほとんど気にならない。黒浮きのある液晶テレビでは少し目につきやすくなるだろう。前述のコントラスト向上や暗部の締まりも、グレインを意識させない方向に寄与しているかもしれない。

 一方で、ロボット兵がシータを救い出すために、ティディス要塞を壊滅させるシーンでは、色が深くなったためか、画面全体を覆う赤みが抑えられて“熱そう”な印象が薄くなっている。ここはDVD版の方が雰囲気が出ている。

 また、DVDとBDを切替えていると、映像の左右の広さそのものが、BD版の方が若干広い事に気付く。フィルムからのトリミングの範囲がDVDの方が狭かったようで、DVD左右に黒い線が入っているが、BD版には無く、その部分までしっかり映像で埋まっている。タイガーモス号が翼を広げて飛行するシーンや、ゴチャゴチャした屋内に人が集まっているようなシーンでは広さをより感じやすく、また、今まで観れなかった部分を知る事ができ、得した気分だ。

 フォーマットはMPEG-4 AVC。ビットレートの推移を見ていると、35Mbpsあたりが中心で、40Mbpsを超えることもしばしば……と、総じて高い。アクションシーンをコマ送りで確認しても、砕けるドアの破片や、崩れ落ちるレンガなど、細かなオブジェクトのディテールがしっかり描写され、ノイズがまとわりつくような事も無い。ムスカの「見ろ!! 人がゴミのようだ!!」のシーンも、落下する兵士の上着がスカートのように広がったり、逆さまになっていたりと、ゴミのようかは別としてよく見える。ちなみに、ファンの間では有名だが、ラストの大崩壊シーンには、“落っこちるムスカ”もしっかり描かれている。あまりに小さいのでDVDでは“ムスカっぽい茶色の人影”にしか見えないが、BDでは上着とズボンの境目や靴、顔の肌色など、細かな部分までよく見える。

 個人的に感動したのは、前半の高架鉄道で逃げるパズー&シータを、ドーラ一家が追うシーン。線路をオートモービルで無理矢理走るおかげで、枕木が大量に破壊されるシーンだが、砕け散る木が質感を保ったまま、細かい破片になって飛び散ったり、オートモービルの前輪で粉砕される描写がとても細かく見える。「ここまで描き込んでいたのか」と驚かされた。自分の家で、こんな画質でラピュタが観られる日が来たかと思うと、感無量だ。


■ BD化で逆に気になる点も……

 総じて好印象な画質だが、気になる点もある。1つはBD版に限った話ではないのだが、セルアニメ特有の画面の“揺れ”だ。揺れの具合としてはDVD版と同程度なのだが、解像度が上がり、輪郭がクッキリした事で、揺れ自体がDVDよりも気になる。再生してしばらくすれば違和感は薄れるが、冒頭で気になるのは事実だ。オリジナルを尊重する事も重要だが、没入感を阻害する要素は修正してくれても良いのでは……というのが1ファンの思いだ。

 もう1つも解像度が向上した事で目立つポイントなのだが、時折、映像が甘いシーンが登場する。一番わかりやすいのは、パズーとシータがドーラ一家から逃れ、坑道の中でポムじいさんと出会うところ。ポムじいさんが飛行石が含まれた石を割り、中の光をパズーとシータに見せるシーンがあるが、この石のアップになると急にディテールが甘くなり、まるで解像度が落ちたような映像になる。

 実は、DVD版も同じシーンで映像が甘くなっており、もともとのフィルムの段階から甘いのだと思われる。理由はよくわからないが、コマ送りで観察すると、石の断面に波紋のように広がる飛行石の光に合わせて、ポムじいさんの手の輪郭線も、ザワザワと動いている。想像だが、青い光の波紋の“ゆらめき”を、濃淡の異なる何枚かのセル画を重ねて表現したことで、背景を含めた絵全体が甘くなったのではないだろうか?

 DVD時代から存在するもので、オリジナルを尊重するという意味では別に問題ないのだが、BD版では前後のシーンの解像感が大幅に向上したため、石のアップのボンヤリした映像との落差が広がり、より目立つ。なんども観ていると、このシーンにだけ超解像処理をかけたくなってきた。


■ 音声もクオリティアップ

 音声は日本語、フランス語、ドイツ語、広東語、北京語と豊富に収録。日本語はDTS-HD Master Audio 2.0chで、その他の言語はドルビーデジタル2.0chだ。DTS-HD Master Audioで2.0chというのは珍しいが、パイオニアのAVアンプ「SC-LX81」でデコードしようとしたところ、何故か音が出ない。PS3からの出力をビットストリームにしているのだが、これをPS3側でリニアPCM変換するとちゃんと音が出る。LX81側に問題があると考え、サラウンドモードの変更など、色々設定を変えてみたが、結局音は出なかった。リニアPCM変換で出力すれば問題は無いのだが……。

【追記:2010年12月24日19時20分】
 この件に関してパイオニアから連絡があり、「SC-LX81側のソフトウェアの不具合による症状で、対応ファームウェアにて改善できる」とのこと。他にも対象機種があるため、他機種も含めて同様の症状が出た場合は、同社のカスタマーサポートセンターまで問い合せて欲しい。なお、ユーザー自身での対応ファームアップはできないため、修理対応となる。

 BD版は音質も向上している。顕著なのは低域で、DVD版は量感が薄く、全体的に高域寄りの音になっており、爆発シーンやアクションシーンの迫力が弱かった。BDでは芯のある低い音が出るようになっており、好印象だ。サラウンド感は薄いため、AVアンプ側のサラウンド再生機能も活用したい。BD版は元の音質が向上しているので、アンプで変換したサラウンドでも迫力に違いが出る。

 また、BD版の特典として、北米版本編が収められている事にも注目したい。当然英語音声、日本語字幕になるが、その音声がドルビーデジタル5.1chで収録されているのだ。低音の迫力や空間の広がりはオリジナルとは比較にならないクオリティで、より現代的な音が楽しめる。また、BGMがオーケストラベースになっており、リッチな気分が鑑賞できる。オリジナルの電子音BGMに慣れていると、生音ベースでちょっと違和感を感じるだろうが、これはこれで面白い。ちなみに、英語音声は皆演技がオーバー気味だが、声質は日本の配役とそこそこ似ている。フラップターで飛びながら 「ヒィーハー!!」みたいな叫び声を上げるドーラ一家の“ノリの良さ”は、日本語よりパワーアップしていた。


■ 特典

 BDの高解像度を活かした特典として、アフレコ台本がある。台本をそのままBDに収録したもので、テレビ画面やスクリーンがそれなりのサイズであれば、容易に文字が読み取れる。本編映像とリンクして収録される絵コンテ映像は、ジブリのDVD時代からの十八番だが、BDではPinP(子画面表示)で絵コンテが収録されており、より本編とリンクした形で楽しめる。


■ また、ラピュタのような作品を……

 DVDの時の「買っとけ」でも書いたが、何回観たかわからないほど、この作品のファンだ。子供の頃、セリフの暗記度を友人と競ったものだが、BD版鑑賞中に今でも余裕で丸暗記している事に気づいて驚いた。もはや“刷り込み”だ。だが、見飽きるほど観ていても、ドーラ一家との追いかけっこや、フラップターでのシータ救出、廃墟感満点のラピュタなど、映像の力が強く、ついつい評価を忘れて見入ってしまう。宮崎監督のカッコ良いレイアウトと動きに、意識を奪われるための映画だ。

 DVD版から収録されており、今回のBDにも収録されている特典に、映画公開前のプロモーションビデオがある。宮崎監督を筆頭に、プロデューサーの高畑勲氏、美術監督の山本二三氏、原画頭の故・金田伊功氏ら、錚々たるメンバーの若き日の映像が楽しめる。

 その中で、当時の宮崎監督は、この作品に込めたメッセージは何か? と聞かれ、次のような返答をしている。「(我々は)レンガ職人みたいなもので、大言壮語して“巨大な建物を建てるんだ!!”と言っても、まず根元からレンガを作り、積んでいかなければ建物は建たない。そして、出来上がって、お金を出して観てくれた人が“面白い”と思ってくれてはじめて、(メッセージうんぬんは)出てくる問題であって、まず、最初に面白くなければ話にならないですよね、どんなメッセージが入っていようとも」。

コクリコの坂から
(C)2011 高橋千鶴・佐山哲郎・GNDHDDT
 ラピュタは文句無しに面白い作品だ。冒険と浪漫、成長、挫折、試練、恋愛と、映画で好まれる要素が絶妙なバランスで配置され、よくできたスープのように、文明の儚さ、人間の愚かさ、未来への希望が、余韻のように胸に残る。味の深みに気付くのはたいてい大人になってからだが、言葉にできなくとも、子供心には届く。そうでなければ、飽きるほどくりかえし観たりはしなかっただろう。

 ジブリは2011年夏に、「コクリコの坂から」という新作を公開する予定だ。監督は「ゲド戦記」の宮崎吾朗氏。いろいろな意味で話題になるのは間違いなさそうだが、もはや“ジブリだから”と言うだけで観客が喜ぶ時代は過ぎつつある。良い意味で原点回帰し、“これが面白いんだ”、“これがカッコイイんだ”と観客につきつけるような作品を期待したい。私がジブリの監督に求めているのは、そんな“強さ”だ。




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総投票数1,717票
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買いたくなった
367票
21%
買う気はない
161票
9%

(2010年12月24日)

[ AV Watch編集部 山崎健太郎 ]