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[BD]「ダークナイト ライジング」

3部作遂に完結。ベインはジョーカーを超えるか?
IMAX撮影シーン増加。3作のBD-BOXも

 このコーナーでは注目のDVDや、Blu-rayタイトルを紹介します。コーナータイトルは、取り上げるフォーマットにより、「買っとけ! DVD」、「買っとけ! Blu-ray」と変化します。

 「Blu-ray発売日一覧」と「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。

チェックディスクとしても見逃せない作品

ダークナイト ライジング
ブルーレイ&DVDセット(3枚組)
価格:
3,980円
発売日:
2012年12月5日
品番:
1000353609
収録時間:
約本編165分+特典約177分
映像フォーマット:
MPEG-4 AVC
画面サイズ:
シネスコ/ビスタ混合
音声:
(1)英語(DTS-HD MasterAudio 5.1ch)
(2)英語(ドルビーデジタル 2.0ch)
(3)英語(ドルビーデジタル 5.1ch)
発売元:
ワーナー・ホーム・ビデオ

 「バットマン・ビギンズ」、「ダークナイト」と来て、今回の「ダークナイト ライジング」。クリストファー・ノーラン監督による新しいバットマンシリーズ3部作も、ついに「ライジング」で完結を迎える。アメコミヒーローの代表格であるバットマンの活躍を実写で描きつつ、善悪の根源に迫る骨太なストーリーと映像美も両立。大ヒットシリーズになっている事は、もはや説明不要だろう。

 同時にこのシリーズでは、「ダークナイト」でIMAXカメラによる高画質撮影が行なわれたり、闇に紛れて活躍するバットマンの習性上、暗いシーンが多いなど、プロジェクタやテレビなど、AV機器の再生クオリティが問われる作品でもある。IMAXの解像感のある映像がキッチリ表示できるか? 暗部の表現力が不足して、真っ暗で何もわからない映像になっていないか? などなど。チェックディスク的な意味でも、AVファンにとっても見逃せないシリーズとなっている。

 また、「ダークナイト ライジング」に限って言えば、宿敵・ジョーカーの強烈なキャラクターや、完成度の高いストーリーで非常に高い評価を得た第2作「ダークナイト」の後となるため、「前作を超えられるのか?」という点が、最大の注目ポイントとなるだろう。

ベインはジョーカーを超えられるか?

 ジョーカー事件の末、ダークナイト(=バットマン)はヒーローから逃亡者となり、夜の闇へと消えた。それから8年……。地方検事ハービー・デントの死の責任を一身に背負ったダークナイトは、ゴードン市警本部長とともに目指した大義のために、すべてを犠牲にし、口をつぐみ、姿を消した。

 彼が汚名を着せられた事で、ゴッサム・シティにつかの間の平和が訪れる。犯罪防止のために制定された強力なデント法が効果を発揮し、刑務所の囚人の数は膨れ上がったが、ゴッサムの犯罪活動はことごとく潰されたのだ。

 しかし、猫のようにしなやかで狡猾な怪盗美女が出現した事で、静かな平和にほころびが生まれる。そして、ゴッサムとダークナイトにとって最悪の脅威となる、マスク姿のテロリスト・ベインが現れる。彼は強靭な肉体と周到な計画で、ゴッサムを恐怖の街へと変えていく。

 愛する者を失い、自らの未来も見えなくなっていたブルース・ウェイン(=バットマン)は、そんなベインを倒すため、心も体もボロボロのまま、再びケープとマスクを身にまとう。だが、ダークナイトさえも、ベインを倒すことはできないかもしれない……。

 前作でジョーカーを倒すため、倫理に外れた手段も使い、世間から"悪人”のレッテルを貼られ、まさにダークなナイトになってしまったバットマン。彼は、亡き両親が心血を注いだ、形見とも言えるゴッサム・シティを守るために戦ってきたわけだが、その根底にあるのは、両親を理不尽に殺した悪人全体への個人的な“怒り”や”復讐心”だ。

 それを満たすために、中身は普通の人間だが、財力や技術力で武装したバットマンが誕生。法で裁けぬ悪人に鉄槌を下してきた。しかし、世間が平和になり、悪人がいなくなると、世捨て人のようになり、抜け殻のような日々を送っている。怒りや、倒すべき悪人がいないと自らのアイデンティティを確立できない、歪んだヒーローである事を痛烈に描いており、物悲しいトーンで映画はスタートする。

 そんな彼の前に現れるベインは、荒々しい熊のような巨漢。でありながら、地獄の底から響くような声で、まるで老成した思想家のような話し方をする。このミスマッチが魅力で、このシリーズは悪役のキャラが本当に立っている。同時に、「敵が出てきたぞ!」と、どこか嬉しそうにバットマン復活の準備をするブルース・ウェインが哀れで、親代わりの執事・アルフレッドも苦言を呈す。同時に、前作を見ていて薄々感じていた、「もしかして、バットマンがいるからこの街がゴタゴタするんじゃね?」という疑念が膨らんでいく。

 善悪は必ずしも絶対的なものではないというのが、シリーズを通じて描かれる1つの要素だ。アナーキストで資本主義社会を否定しているようなベインは、善良なゴッサムシティの住人達を守ろうとするバットマンに対して、「そもそも、お前が守ろうとしている住人たちは果たして善なのか?」と問いかけるような、恐るべき計画を実行に移す。バットマンの存在意義を問うストーリー展開は、ブルース・ウェインという1人の男が、自らの心の闇と向き合い、乗り越えていく物語へと昇華していく。

 古今東西、ヒーローもののアニメや特撮では、巨大な悪と対峙する事だけでなく、「自らの弱い心に打ち勝つ事」が大きなテーマとして描かれるが、バットマンも例外ではない。そうした視点で見ていると、最後のバットマンの決断や、「こんな時こそヒーローが必要なんだ」と言われ、バットマンが返す言葉にハッとさせられる。彼がどのような結論を出し、しょっちゅう怪人が攻めてくる連鎖を断ち切り、平和な街を次代に繋げていくのか? その答えがしっかりと、かといって押し付けがましくなく描かれるあたりに、センスの良さが光る。

 シリーズを貫くテーマを最後まであやふやにせず、描ききる姿勢が、この作品に無骨さを与えている。シリーズを締めくくる作品として"キッチリしている”と評価したい一方で、前作「ダークナイト」と比べると、ストーリーや悪役のキャラクター性に、若干ほころびが見受けられる。

 前作のジョーカーは、一般的な価値観や倫理が通用しない、己の快楽と美学を追求するタイプの怪人で、肉体的には弱いが、人間の心理に精通した恐るべき頭の良さでバットマンを翻弄した。建前の裏側にある本音を見抜き、自ら手を汚さず、人が自発的に殺し合いをするように仕向けるタイプ。漫画&アニメチックな超人的能力があるわけではない分、妙なリアリティがあり、非常に印象深い悪役になっている。

 今回のベインは、ジョーカーに無い要素として、バットマンをボコボコにできる肉体的な強さを持っている。それだけならば、宇宙空間に放り出すとか、溶鉱炉に突き落とすとか、ハリウッドアクション映画にありがちなバトルでやっつければ良いが、ジョーカーライクな心理の裏側をついたような作戦も実行する。良く言えば「殴り合いも強いジョーカー」であり、強敵には間違いない。

 だが、バットマンは様々な武器や乗り物を駆使して戦うため、肉体的な強さはあまり脅威に感じづらい。また、ベインの頭脳戦はジョーカーと比べて底が浅く、快楽や美学で貫かれていたジョーカーと比べ、どうしてベインが「パトレイバー2」的な劇場型犯罪を起こすのかという行動原理や理念が曖昧で、感情移入できない。そのため、「腕っ節は強いけどジョーカーと比べたらたいしたことないな」という、“小物感”が漂ってしまう。

 新登場キャラクターが多いせいで、あまりベインをジックリ描けなかったのかもしれないが、「なんでそうなるの?」、「それって、ここまでの行動を起こすほどの事かなぁ?」と、納得のいかない部分が残り、文句がつけられないデキとまでは言えない。3部作の順序としてジョーカーを最後に持ってきた方が良かったのではとか、「実は黒幕はジョーカーでした」とか、そういう方が良かったのではと、勝手な事を考えてしまった。

IMAXカメラの超高画質シーンが増加

 今回も映像的な見所は、IMAXカメラを使ったシーンがある事だ。前作は冒頭のビル俯瞰など、遠景をメインに一部使われた程度だったが、今回は半分近くがIMAXカメラで撮影されている。遠景だけでなく、人物のアップや、アクションシーンでも使われている。人肌では毛穴まで見えそうな解像感、飛行機の背景で流れる岩肌の凹凸、機内のシートのシワまで、妙な言い方だが、肉眼で実物を見ているよりも良く見えるようだ。途中で画角がシネスコ/ビスタと変化するので、どのシーンがIMAXかは一目瞭然だ。

 この作品のために、新しくIMAXカメラ用のレンズまで作られたらしく、ボケ味の描写も実に美しい。奥が深い機内のシーンでは、ピントが合った手前の役者の解像感と、背後のとろけるようなボケによって生み出される奥行き感が強烈で、2D映像なのに、3Dを見ているような立体感がある。同じような見所として、後半の“穴”のクライマックスシーンも、高低差や、役者の背後の岩のボケ方などが凄い。岩肌がちょっと綺麗に見え過ぎて、作り物のアトラクションぽく見えてしまうのはご愛嬌だ。

 IMAXのシーンでは、暗部の階調やディテール情報も豊かだ。チャプター8、夕暮れのゴッサム・シティをバットマンが見下ろしているシーンで一時停止し、ビルの窓がつぶれていないか、足場にしている橋のディテールがキッチリ表示できているか、逆光でシルエットになる一歩手前のバットマンの黒いマントと、黒いズボンの質感の違いが描写できているかなど、プロジェクタの設定をいじり始めてしまった。これだけの高画質だと、自然とより良い画質で鑑賞したいと思わせる魔力がある。

 ネタバレになるので具体的には書けないが、今回は爆発が重要なキーになる。地上でドカンと爆発する音、地下でズズンと響く音、遠くから爆発している様子を俯瞰で見る時の音、爆発と一言で言っても様々だ。傾向としては、中低域の膨らみを抑えつつ、最低音で地鳴りのように「ズズズズ」と地を這う低音成分が多く、絶望が静かに忍び寄ってくるような不吉さが音で表現されている。そこに静かに重なる、ハンス・ジマーの雄大な旋律がも控えめながら耳に残る。

どんだけバットモービル好きなんだ

 特典BDで印象的なのは「進化するバットモービル」というコンテンツ。歴代のバットモービルを、当時の映像も交えて紹介するもので、バットマンの歴史がわかると同時に、最後には歴代のバットモービルが集結する圧巻の光景も用意されている。

 最初は普通の高級車からスタートし、時代に合わせ、よりコウモリっぽく、有機的で、時にはSFチックに、時にはミリタリー色を強めてと、変化していくデザインが面白い。さらに面白いのは、監督や歴代作品のスタッフ達が、皆熱っぽくバットモービルの思い出を語る事だ。やれ子供の頃オモチャを持ってたとか、あれに乗ることを妄想していたとか、まだミニカーを持っていて彼女に「困った趣味ね」と言われただの、男性ならば共感せずにはいられないエピソードばかり。最も笑ったのが、このコンテンツだけで約1時間もあること。どんだけバットモービル好きなんだ。

 メイキングではIMAXの話が見逃せない。撮影のウォーリー・フィスター氏は、特に中間色に意識して収録していったという。また、IMAXで撮影すると、普通のカメラで撮影した時と衣装の色が若干違って見えるとのことで、その対処なども興味深い。「絵画のように、大きなキャンバスに窮屈さを感じさせず、たっぷり全てを描けるのが良いところ」、「3D映像よりも魅力的に感じる」など、興味深い内容ばかりだ。

 また、屋外の遠景シーンが多いのは、システムが大きく、狭い室内で撮影するのが困難だからだろうと思っていたが、IMAXカメラが動作する音が大きいという面もあるそうだ。監督が役者のセリフの撮り直しを嫌うため、役者がアップになるようなシーンの撮影にはあまりマッチしないという、はまらないシーンで無駄にIMAXを使わない。でも、初めてそのセットが登場するシーンでは撮影しておくといったこだわりも説明され、知った上で鑑賞すると、監督の意図がわかって面白い。

まとめ

 ダークヒーローと言えば、昔取り上げた実写版デビルマンを思い出すが、日本が誇るマンガやアニメが実写化されて、なんとも言えない感じになるパターンを幾度も経験していると、バットマンやスパイダーマンのような実写化作品の完成度の高さは、素直に羨ましい限りだ。

 なお、今回の「ダークナイト ライジング」では、3部作の1作目、「バットマン ビギンズ」から繋がる要素も多い。「ダークナイト」もそうだが、1作目も復習してから鑑賞すると、より深く楽しめるだろう。また、バットマンに欠かせないキャラクターにも関わらず、今までの2作品に登場していないキャラも今作にはしっかり出てくる。そこにも注意しておきたい。

ダークナイト ライジング ブルーレイ&DVDセット(3枚組)
ダークナイト ライジング BATMAN COWL ブルーレイ プレミアムBOX
ダークナイト トリロジー ブルーレイBOX

 BD/DVDは、「ライジング」のみのBD+DVDセット(1000353609/3,980円)と、BD版に封入特典のバットマンカウルなどを追加した「ブルーレイ プレミアムBOX」(1000353611/7,980円)さらに、シリーズ3作品をまとめた「ダークナイト トリロジー ブルーレイBOX (5枚組)」(1000352888/7,980円)もラインナップされている。お正月に3部作を一気に振り返るというのも楽しいだろう。

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ブルーレイBOX (5枚組)

山崎健太郎