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第643回

XREAL CEO単独インタビュー。2026年には「Android XRデバイス」を市場投入

XREALのチー・シューCEO。CES会場の同社ブースでインタビュー

今年のCESは、大手がコンベンションセンターへのブース出展を控えたこともあってか、ブースの配置や陣容に変化が見られた。

その中で例年通りの位置に大きめのブースを出していたのが「XREAL」だ。

2025年には積極的なビジネス展開が続いたが、今年はどうなるのだろうか?

本格的なAI・AR対応デバイスとしては、Googleと共同開発中の「Project Aura」もある。そちらの展開はどうなったのだろうか?

今年も、同社のチー・シューCEOに単独インタビューした。彼の口からは、「グラス型デバイスの今後」について、いろいろなビジョンが飛び出した。

ROGと組んで「ゲーミンググラス」を展開

まず、今年のCESに合わせてXREALが発表した内容を確認しておこう。

今回同社は、おもに3つの製品を発表した。うち2つは、日本ではすでに発表済みの「XREAL 1S」と「XREAL Neo」。XREAL Oneをリファインした、エンターテンメント特化のデバイスだ。2D-3D変換機能を備えているのが特徴である。レビューは以下で公開している。

そして完全に初お披露目となったのが「ROG XREAL R1」だ。

ROGとのコラボ商品になる「ROG XREAL R1」

この製品は、ASUSのゲーミング関連製品ブランド「ROG(ASUS Republic of Gamers)」とのコラボレーション製品だ。

ロゴもROGとXREALのダブルブランド

デザインもXREAL Oneなどとは異なり、よりゲーマー向けのROGっぽいものになっている。ツルの部分にライティングがあるのも、いかにも「ゲーミング」デバイスだ。

ゲーミングデバイスだからもちろん光る

特徴は複数あるが、サングラス型ディスプレイとしてははじめて240Hz駆動に対応していることが挙げられる。従来製品では120Hzまでだったが、昨今のゲーミングディスプレイの高フレームレート化を考えれば、「ゲーム向け」でフレームレートを上げるのは理にかなっている。ただし、解像度自体は片目1920×1080ドットとなっている。視野角は57度なので、XREAL One Proの光学設計をベースにしていると考えて良さそうだ。

本体下から光学系を見ると、XREAL One Proの系列であることがわかる

もう1つの特徴は、「ROG Control Dock」が付属することだ。これはPCや家庭用ゲーム機を複数つないで切り替えたり、画質設定をしたりする際に使うもの。ROGのゲーミングディスプレイと同じ設定内容が出てくるようになっている。従来どおり、このドックがなくても機器(例えば「ROG Xbox Ally X」のようなポータブルデバイス)を直接つなぐことはできるが、自宅に据え置いて使う場合、使い勝手が増す。

付属する「ROG Control Dock」。画質設定の他、デバイスを切り替える役割も持つ
PC(左端)やゲーム機(右端、Xbox Series X)をROG Control Dockに同時につなぎ、切り替えて併用する
「ROG XREAL R1」を筆者もかけてみた

グローバルでは今年の前半に出荷を予定しており、日本での発売予定もあるとのことだが、価格や正式な発売時期は未公表だ。

ただし残念ながら、Android XRを採用し、Googleと共同開発中の「Project Aura」については、ここでも正式なお披露目はなかった。

会場のブースでも、まだヴェールをかけられた「それらしきもの」が置いてあるだけだった。

Project Auraはまだベールに包まれたまま

ゲーマー向けに240Hz対応の「ROG」を準備

ではここからは、シューCEOへのインタビューに入っていこう。

――あけましておめでとうございます。2025年は本当にいろんな製品が出ましたね! おそらく26年も同様だろうと思いますが……

シューCEO(以下敬称略):25年は本当に大きな年でした。Googleとの提携もありましたし、X1チップを搭載した「XREAL One」シリーズも発売しています。その中で、ROGとの共同作業を進めていました。現在も、さまざまなタイプのグラスデバイスについて、多くの人々と仕事をしています。多くのものが発表される、刺激的な年になります。

――製品点数が増えていますが、ラインナップ戦略をどう考えているのでしょうか。

シュー:Project Auraは間違いなく、もっとも上位の製品です。次がROG XREAL R1ですね。

ROG XREAL R1はグラスデバイスだけでなく、ドックもあることが特徴です。両者の組み合わせによるトータルパッケージです。フレームレートも高く、ゲーマーに特化した製品です。

それ以外のデバイスがそのあとに続きます。

――ROGとのコラボレーションは予想していませんでした。

シュー:ですよね。240Hzに対応する、というのは誰もやってこなかったでしょうし。私もゲーマーですが、ROGとのコンビネーションはベストです。

そうそう、「ROG Xbox Ally」との関係もあるのでこの話をしておきましょう。

例えば、ROG Xbox Ally Xとグラスを接続したら、タッチパッドが動かなくなったとします。ここで3社が一体になってチェックするので、すぐに対応を確認できます。「ROG XREAL R1」のパッケージを発売する頃には、グラスデバイスと一緒に使う、究極のゲーム設定を準備します。だから、他の製品との組み合わせを選ぶよりは、良いのではないでしょうか。

ASUSとマイクロソフトが組んで開発した「ROG Xbox Ally」とも接続可能
私物の「ROG Xbox Ally X」を見せながら、シューCEOは「3社連携」の強みをアピール

――XREALもかなり製品が増えてきました。ラインナップの多さはリスクになりませんか?

シュー:我々も過去に比べて規模が大きくなりましたからね。その中で複数のラインナップを持ちたいと考えています。

出荷開始は遅延したが「Project Aura」は2026年出荷開始

――Project Auraについて伺います。昨年の段階では、そろそろ正式発表されて出荷される時期という計画だったと理解しています。状況はどうなっていますか?

シュー:確かに、昨年お話した当初の計画では、今年の第1四半期には出荷する予定でした。そこからはずれていきているのですが、Googleは1つのプロジェクトに集中し、確実な提供を目指しています。

このプロジェクト(Android XR)で、私たちは2番目に登場するデバイスです。

そして、おそらくは2026年に発売される、唯一のAndroid XRデバイスになるでしょう。2026年には間違いなくリリースできますし、正直なところ、多くの人が予想していたよりも早く市場に出せると考えています。

先月、「The Android Show」というイベントがありましたよね?

――はい、知っています。もちろん視聴しました。

The Android Show | XR Edition

シュー:そこでの開発者やメディアの盛り上がりは大きなものでした。

Project Auraは、Project Moohan(製品名:Galaxy XR、アメリカおよび韓国のみで発売)に次ぐものです。Galaxy XRはAndroid XR版のVision Pro、というべき、ハイエンドな製品でした。

Project Auraはメガネとコンピュートパックを組み合わせた、2ピース構成の新しいカテゴリーです。Project AuraもGalaxy XRと同じAndroid XRであり、Galaxy XRよりも良い体験……とまでは言いませんが、同じエコシステムです。

それでいて、より安く、手頃な価格になりますから、期待していただければと思います。

発売時期を初期の計画よりも遅らせてはいますが、(2ピース構成という)この形態が正しい戦略の1つだと信じています。

――Project AuraではCompute Puck(小型で独立した処理用のコンピュータデバイス)をセットで使いますよね。こちらは未公表ですが、どんなものになるのですか?

シュー:どんなものになるかは、まだ秘密とさせてください。

Compute Puck開発で重要なのはQualcommとの関係です。彼らはスマートフォン用のプロセッサーと、XR用のプロセッサーを持っています。その中でXR用のプロセッサーを使いますが、彼らはこの領域でどのような要素が必要になるかをよく知っています。

Qualcommと密接な関係を持って開発を進めており、製品化されるときには、彼らの持つ最新のXR用プロセッサーを使ったものになると信じています。

――コンテンツエコシステムも重要です。

シュー:はい。エンターテインメント向けのグラスデバイスでは、その点が大切です。

――現在のXREAL Oneでは、スマートフォンやPCなどの上にあるエコシステムを活用していますよね。

シュー:Project AuraはAndroid XRですから、そこが重要になります。Androidの上のエコシステムがそのまま使えますからね。

CESに合わせ、Googleとの複数年パートナーシップ締結を発表しました。要は、Android XRのリードハードウェアパートナーの1つになる、ということなのですが。

なぜこんなことをしているかというと、このジャンルに関するSquad(分隊、チーム)を作りたいからです。早期体験を開発者に提供して、より多くのコンテンツの開発を始められるようなチームを作りたいと思っています。

そして、より多くのコンテンツがより多くの顧客を惹きつけることになるわけです。

――Googleとの関係は非常に良好なようですね。

シュー:Win-Winな状況だと思います。

あるインタビューで、Googleのセルゲイ・ブリン(Google共同創業者)が10年前のGoogle Glassの失敗を振り返っていました。

彼らが学んだ最大の教訓は「サプライチェーンからの課題を過小評価してはいけない」ということだそうです。

だから今回、Android XRをやるときは、業界のベストパートナーと一緒に仕事をしたいと思っています。そして、彼らが私たちを見つけてくれたのはラッキーなことでした。

私たちは、自分たちだけでエコシステムを構築できないことも認識しています。

現状、エコシステムの部分でのプレイヤーは2社しかいません。アップルとGoogleです。

そして、アップルはそこまでオープンではありません。

だからこそ、Googleは実は最高のパートナーなんです。

幸いなことに、彼らはエコシステムを持っているだけでなく、Geminiを持っています。現状、最高のマルチモーダルAIモデルの一つです。

XRとAIの世界で最高の組み合わせになります。だからこそ、彼らとのパートナーシップを維持していきたいんです。

進化すればきっと、すごいところまで到達すると思うんですよ。

X1チップは「AIチップ」、既存機種にも2D-3D変換を提供

――昨年発売した「XREAL One」以降、XREAL製品の特徴は、独自の「X1」プロセッサーにあります。特別なソフトや付加機機を用意することなく、3DoFを実現しています。

一方で、他社も独自チップを搭載した3DoFにはキャッチアップしようとしています。この点をどう見ていますか?

シュー:X1を搭載してから、他社はキャッチアップするのに丸1年かかっていますよね。我々はさらに、3DoFだけでなく、2Dから3Dへの変換を搭載しました。

X1は実際には3DoFのチップではなくNPUであり、AIチップモジュールなんです。2Dから3Dへの変換も、その能力を使って実現しています。

――X1チップは、すべての製品に搭載されているものが同じチップなんですか?

シュー:現在、XREAL One/One Pro/1Sに搭載されているものは、プロセスルール含め全く同じチップです。ただ、Project Auraに搭載するものは「X1S」と呼んでいます。一番強力なプロセッサーで、動作クロックが異なります。

――XREAL One ProとXREAL 1Sに搭載しているチップが同じだということは、2D-3D変換はアップデートで既存機種にも提供されるわけですね?

シュー:もちろんです。近い将来、ソフトウエアアップデートだけで実現できます。

――先ほど、X1はNPUだという話をされましたよね? ということは、他のAI機能も……

シュー:はい。私もそこが楽しみなんです。X1搭載のグラスデバイスには、まだまだ可能性があるということです。カメラデバイスの「XREAL Eye」がありますが、それと組み合わせれば、さらに新しいAI機能を搭載できるかもしれません。

タイミングが合えば、X1のAI機能を使うためのSDKが公開できるかもしれない、と考えています。サードパーティーの開発者は、X1プロセッサー上のAI機能を活用できる可能性があります。

どれだけのことができるか、常に検討を続けています。

率直に言って、X1のように十分に性能が高く、長く使えるチップをロードマップに載せている競合は見たことがありません。

すべての競合他社との差別化を行うために、深いイノベーションを仕込むのは大好きですね。

我々はまだスタートアップですが、こうしたイノベーションに多くの努力を費やしています。光学からチップ、ソフトウェアからアルゴリズムまで。

常に他社が迫ってきていることは理解していますが、ショートカットするのでなく、市場を切り開くことを意識しています。

――現在、XREALの製品は1920×1080ドットのディスプレイを中心に使っています。この部分への変化をどう考えていますか?

シュー:もちろん、もっともっとドットは欲しいですよ!

幸いなことに、私たちはソニーと密接に協力していますし、他のパネルプロバイダーとも密接に協力しています。2.5K以上の解像度はもうすぐだと思います。

しかし、強調したいのは、解像度が高くなれば、ピクセル数が増えるということです。放熱などの課題も出てきます。解像度を上げるときは、計算能力も上げる必要があることを覚えておいてください。

重要なのはトータルパッケージです。私たちの目標は、価格を上げずに、より高い解像度へ到達することです。挑戦的であることはわかっていますが、それが私たちの目標でもあります。

AIグラスは「時期尚早」

――業界のトレンドはAIグラスの方に注目が移っている印象もあります。どう見ていますか?

シュー:どの業界でも言えることですが、企業の10%しかいない先駆者たちが業界全体を前進させ、90%のフォロワーがそれを追いかけています。

AIグラスが増えるのは、結局、Ray-Ban Metaの成功を見たからであり、彼らはそれを真似したいと思っているのでしょう。

私も、AIグラスは間違いなく大きくなるカテゴリーだと思います。重要なユースケースですが、まだ大きな課題があります。

それは、プロセッサーにAIにウェーブガイド・ディスプレイにバッテリーと、十分な技術がまだないからです。

時期がくれば、我々もAIグラスを作るのは間違いありません。でも、今はその時ではないと感じています。

私たちは慎重に捉えています。なぜなら私たちが望むのは、「人々が一日中身につけていて、その恩恵を受けることができる製品」になることだからです。

私の予想では、ディスプレイを搭載したAIグラスで理想に叶う製品を作れるようになるのは、2027年なのか2028年なのか……まだ先ですね。

――では、企業として向かう方向性の中に、AIグラスも入っているわけですね。

シュー:スマートグラスが次のコンピューティングプラットフォームになると考えています。10年後には、スマートフォンと同じ規模になると考えていますし、我々はそうなりたい、と思っています。ずっとこのジャンルをやってきたので、そうなりたいと思っていますし、今後も続けていきます。

つまり、適切な時期が来たらディスプレイとしてのグラスを作るだけでなく、AIグラスもやっていくということです。

私はXREALを、消費者向けスマートグラスメーカー」の一つ、消費者向けスマートウェアラブル企業の一つとして認識してもらいたいと思っています。

人々はすぐに、スマートグラスがAIにとって最高の端末になることに気づくと信じています。おそらく「AIネイティブなハードウェア」になるでしょう。

本当に幸運なことに、私たちはテクノロジーとAIとXRのちょうどいい交差点に座っています。ですから、私たちはパイオニアであり、それを推進し続けたいと思っています。

――そういえば、腕にEMG(筋電位)コントローラーをつけていますね。その種の技術をどう考えていますか?

シュー:ああ(笑)。新しいガジェットを試しているだけで、弊社の製品とは関係ないんですけど。

でも、可能性は感じますね。体や健康について多くの洞察を与えてくれるからです。

また同時に、一日中着用できるスマートグラスを作るときには、こうした技術が有用です。

まだなにも公表できる段階にはないのですが、この種の技術はスマートグラスにも適用できると考えています。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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