第431回:ローランドが2010年秋の新製品を発表
~大きく進化した「OCTA-CAPTURE」、など ~
ローランド 秋の新製品発表会 |
目玉となるのはUA-101の後継機として大きく進化した、USBオーディオインターフェイス「OCTA-CAPTURE」。USBオーディオインターフェイス分野では、これまで常に先手を打ってきたローランドがどのような技術を取り入れたのかなどを中心に紹介していこう。
■ 大きく進化した、USBオーディオインターフェイス「OCTA-CAPTURE」
今回のローランドの発表会では、RolandおよびBOSSブランドにおいてさまざまな製品発表が行なわれた。冒頭で代表取締役である田中英一氏が、昨今のローランドの状況をプレゼンテーションしたが、この中でそのブランド戦略の変更についても触れた。「EDIROL」ブランドを廃止して「Roland」ブランドに統合するとともに、コンピュータミュージック関連でソフトとハードの両方で使っていた「Cakewalk」ブランドをソフトだけにするという。ある意味、当然の決定だと思うが、この十数年でDTMのブランドをRoland、RolandED、EDIROL、Cakeawlkところころ変化させたのは何だったのだろう……とも思う。これで本来の姿として整ったという感じだろうか。
ブランドの統合と整理が行なわれた |
このOCTA-CAPTUREの特徴を表すキーワードとなっているのが、「VS PREAMP」、「VS STREAMING」、「AUTO SENS」の3つ。VS PREAMPというのは以前にも紹介した、ProToolsシステム対抗ともいえるDAWシステム「V-STUDIO 700」で搭載された機能に相当する、ハイ・クオリティーなマイク・プリアンプを意味している。つまり内部のアナログ回路的にもかなり高品位に設計されているわけだが、このプリアンプが、8つあるアナログ入力すべてに搭載されていることから8を意味する「OCTA」というネーミングになっている。
VS STREAMINGは、新開発のオーディオ・ストリーミング・テクノロジー、つまりドライバ部分に関する技術だ。これまで2003年に開発されたUA-1000における技術をベースにRolandのオーディオインターフェイスは構築されてきたが、今回それを大きく変えている。今回のVS STREAMINGによって、レイテンシーを超低レベルに抑えているというのだ。ワークステーション開発部長の渡瀬孝雄氏によると、96kHzでの動作時でラウンド、つまり入力した信号をPCを通して出力するまでのレイテンシーが7msecとほぼ理論値的な最低レベルを実現しているという。
これはハードウェアに内蔵された高精度のオーディオ専用クロックを元に、ハードウェア、ドライバ、DAWがそれぞれ同期させることで実現しているのだそうだ。この辺については、ぜひ改めて製品を借りてチェックしてみたいところだ。
そしてもうひとつの特徴がAUTO SENS。これは春に登場した同社のリニアPCMレコーダ「R-05」に搭載されたリハーサル機能をOCTO-CAPTUREに適用したもの。つまり入力レベルを自動的に調整・設定してくれる機能だ。リハーサルとして音を入力させると、それに最適なレベルに設定してくれるので、使い勝手が大きく向上しそうだ。
8つのアナログ入力すべてにプリアンプが搭載されていることから「OCTA」というネーミングになっている | リハーサル機能「AUTO SENS」 |
■ 「R-09HR」がファームアップデートでR-05の新機能を追加
まだEDIROLブランドだったR-09HRのファームウェアをVer3.0にアップデートした |
新製品ではないが、ぜひ紹介したいのがR-09HRのファームウェアアップデート。RolandのリニアPCMレコーダーとしては24bit/96kHz対応のR-09HRとR-05が現行機種となっており、R-09HRが機能・性能面で上位機種と位置づけられている。とはいえ、リハーサル機能が搭載されているのはR-05で、日本語対応もR-05だけという状況だったが、9月1日よりR-09HR用のVer3.0というファームウェアが無償公開され、これらの機能がR-09HRでも利用可能となった。
日本語メニュー表示やリハーサル機能のほかにも、やはりR-05で実現していたWAVファイルをMP3に変換する機能も追加されている。さらに、トリム編集機能、エコ・モードも追加された。エコ・モードは録音フォーマット的に44.1kHzまたは48kHzで16bitのWAVに限定されるが、通常モードでの連続録音時間を4.5時間から7.5時間へと延長させることが可能になっている。またVer2.0へのアップグレードで追加されたメトロノーム機能やチューナー機能ももちろん利用可能だ。
R-09HRは大ヒット製品であっただけに、持っているユーザーも多いと思うが、ファームウェアアップグレードで機能を大幅強化できるのは、うれしいところだ。
■ JUNOシリーズの新製品「JUNO-Gi」
JUNO-Giの最大の特徴となっているのが、8トラックのMTR機能を搭載していること。シンセサイザ部分とは完全に独立した設計で、BOSSのMicroBRの8トラック版といえる。各トラックには8つのバーチャルトラックも利用可能なので、最大64トラックのレコーディングが可能という構成だ。JUNO-GiのリアにはSD/SDHCカードスロットを備えており、16bit/44.1kHzのレコーディングができる。MTRの操作用に6本のフェーダーが用意されているが、モードを切り替えることにより、USB経由で利用するMIDIコントロールサーフェイスとしての利用も可能だ。SONAR LE 8.5がバンドルされているので、連携して使うことができる。
エフェクトもなかなか強力で、BOSSのGT-10相当の機能が使える。まさにオールマイティーなシンセサイザ・キーボードといえそうだ。発売は9月10日で、オープン価格(実売価格120,000円前後)となる。
音色を選んで使うシンセサイザ | 8トラックのMTR機能を搭載 | 16bit/44.1kHzのレコーディングができる |
これによってシンセサイザのサウンドメイキングを学ぶためのツールとしても便利に使えそうだ。実際音作りの流れを紹介するためのアクション・リスト・データも収録されており、シンセサイザの典型的な音作りはどのように行なうのか理解することもできるようになっている。
さらに面白いのは、シンセサイザの出力波形をリアルタイムで視覚的にとらえることができるウェーブ・ビューワーが搭載されていること。実際の出音を元にオシロスコープのように波形を表示できるため、波形による音の違いやエンベロープによる音の違いなどが見た目にもわかりやすくなっている。発売はしばらく先で11月。オープン価格(11,000円前後)となる模様だ。
GAIA SYNTHESIZER SOUND DESIGNER | パソコン上で各パラメータを細かくエディットできる | リアルタイムで視覚的にとらえることができるウェーブ・ビューワー |
SuperNATURAL Piano音源としてはオールマイティーな「Concert Grand」、スタジオなどでのレコーディングに向く「Studio Grand」、クラシック曲にマッチする「Brilliant Grand」の3タイプが用意されている。発売は10月でオープン価格(250,000円前後)となっている。
そのほかの鍵盤楽器としては液晶画面を搭載し、譜面表示をしたり楽しみながらピアノ練習ができる「デジスコア」シリーズの新製品「HPi-7F」(オープン価格、実売価格340,000円前後)、「HPi-6F」(オープン価格、実売価格240,000円前後)、クラシックオルガン「C-380-DAS」(標準価格1,417,500円)などが発表された。
■ Vアコーディオンに、中型クラスの「FR-3X」を追加
一方、世界的なブームを引き起こしているVアコーディオンの中型クラスの「FR-3X」が追加された。単3ニッケル水素電池×10本で動作し、内蔵スピーカーを鳴らした場合約5時間、スピーカーオフなら約9時間使えるFR-3Xは鍵盤タイプとボタンタイプの2種類があり、それぞれブラックとホワイトの2色が用意されている。
いずれも9月末発売でオープン価格だが、実売価格はモデルによって異なる見込みで390,000円前後(鍵盤モデル)、420,000円前後(ボタンモデル黒)、450,000円前後(ボタンモデル白)などとなっている。
小型のギターアンプ、CUBEシリーズにも4製品が発表された |
またこの2機種と20XLには、COSMテクノロジーによるアンプ・モデリングとエフェクト機能が装備されている。これら3機種は10月の発売ですべてオープン価格。実売価格はCUBE-80XLが40,000円前後、CUBE-40XLが24,000円前後、CUBE-20XLが18,000円前後。また4種類の歪み回路を搭載したCUBE-15XLは9月17日発売でオープン価格(実売価格14,000円前後)である。
パワー・スタック「ST-2」とハーモニスト「PS-6」( |
またPS-6は最大3声のハーモニーを実現できるピッチシフター。3声ハーモニーは原音に3度と5度など2声を加えるものだが、メジャーキー、マイナーキーの選択も可能となっているので、キーに応じた最適な和音での演奏が可能になっている。両エフェクターともに9月17日の発売でオープン価格。実売価格がST-2が11,000円前後、PS-6が16,000円前後になる見込みだ。
以上がこの秋に発売されるローランドの新製品だ。気になる製品がいろいろあるが、OCTA-CAPUTREはぜひ近いうちに入手し、細かくチェックする予定だ。