藤本健のDigital Audio Laboratory

第580回

ヤマハ/ローランドのNAMM新製品が国内発表

USB搭載ミキシングコンソールなどPC連携の制作機器が多数登場

 1月24日〜27日、アメリカのアナハイムで世界最大規模の楽器の祭典「Winter NAMM SHOW 2013」が開催された。ここで、各楽器メーカーがこぞって新製品の発表を行なったわけだが、国内の大手2大メーカーである、ヤマハ、ローランドの各社が先週、NAMM発表製品の国内お披露目を行なった。NAMM前にすでに発売していた製品もいくつかあったが、両社による国内発表会での内容について紹介していこう。

ヤマハの発表会
ローランドの発表会

ヤマハは24bit/192kHz対応USB搭載ミキシングコンソールなど展示

 まずは2月3日に発表会を開催したヤマハから。既報のとおり、この日、ヤマハが披露したのは、プロオーディオ機器の新製品群で、ミキシングコンソールMGシリーズ、スタジオモニターHSシリーズ、モニターヘッドフォン、それにSteinberg製品のそれぞれ。

 その中心となったのは、第3世代となるミキシングコンソールMGシリーズで、6chモデルから10chモデルまで、計10モデル。具体的には以下のラインナップだ。

MGシリーズは6ch〜10chまで計10モデル登場した
型番 チャンネル数 USBオーディオ 発売時期 店頭予想価格
MG20XU 20 2014年5月 90,300円前後
MG20 - 82,950円前後
MG16XU 16 63,000円前後
MG16 - 55,650円前後
MG12XU 12 2014年4月 42,000円前後
MG12 - 35,700円前後
MG10XU 10 28,350円前後
MG10 - 2014年2月 23,100円前後
MG06X 6 - 17,850円前後
MG06 - 13,650円前後

 この型番を見るとMG10やMG12のように数字で終わっているもの、MG06XのようにXが付くもの、さらにMG16XUのようにXだけでなくUが付くものがある。数字で終わっているものはシンプルなアナログミキサー、XはSPXから来るものでデジタルエフェクトという際であることを示す。さらにUはUSBを意味しており、USB接続が可能となっている。

 このアナログ部には、上位グレードのミキシングコンソールMGPシリーズやSteinbergのオーディオインターフェイス、URシリーズに搭載されているのと同様のディスクリートClass-Aマイクプリアンプ、「D-PRE」を搭載。このD-PREマイクプリアンプにはインバーテッドダーリントン回路を採用し、その回路は増幅素子を多段構成にすることで、大電流と低インピーダンスを実現している。また、ここには音質に重点を置いて開発したというカスタムメイドオペアンプのMG01を採用。新MGシリーズでは、こうしたD-PREマイクプリアンプをすべてのモノラルインプットに装備している。

D-PREマイクプリアンプにはインバーテッドダーリントン回路を採用
カスタムメイドオペアンプのMG01を使用

 さらにMG06およびMG06Xを除く製品の主な入力チャンネルには、すべて1ノブコンプなるコンプレッサが搭載されている。通常、コンプレッサというとスレッショルド、レシオ、さらにはアタックやリリースといったパラメータを調整する必要があり、慣れていない人にとってはなかなか操作が難しい機能だが、この第3世代MGシリーズに搭載されている1ノブコンプはその名の通り、ノブ1つで調整できるというユニークなもの。これ1つでボーカルから楽器まで最適なコンプレッサ効果が得られるようになっている。

 一方、XのSPXはマルチエフェクトを指しており、リバーブ、エコー、ディレイ、コーラス……と計24タイプのエフェクトをセンド・リターンの形で利用できるようになっている。各チャンネルごとに別々のエフェクトを設定する……というわけにはいかないのだが、1つあるだけでもかなり応用範囲は広がりそうだ。

 さらにUのUSBは、24bit/192kHzの2IN/2OUTのオーディオインターフェイスとして機能するもの。MGシリーズは基本的にはアナログミキサーなので、2chにミックスした結果をPCに送ったり、PCからの2chをほかのアナログ入力とともにミックスできる、という仕様。ドライバはSteinbergのオーディオインターフェイス、URシリーズなどと同様にYamaha Steinberg USB Driverを用いる形だ。

24タイプのエフェクトをセンド・リターンの形で利用できる
24bit/192kHzの2IN/2OUTのオーディオインターフェイスとして動作

モニターヘッドフォン「HPH-MT220」や、最新の「Cubase 7.5」も

左が「HPH-MT220」、右が「HPH-MT120」

 モニター用ヘッドフォン2機種、「HPH-MT220」(実売25,000円前後)、「HPH-MT120」(実売15,000円前後)も発表された。こちらは、すでに昨年11月に発表され、12月には発売されていたので、すでに持っているという人も少なくないと思うが、どちらも密閉型のヘッドフォン。そのうちHPH-MT220は、CCAWボイスコイルを使った45mm径のドライバを採用しており、「精確でスケール感豊かなサウンドを実現する」という。

 ハウジングはアルミニウムとABSを使用。再生周波数帯域は15Hz〜28kHz。担当者からは以前「ソニーのMDR-CD900STなどにも近い高解像度なモニターヘッドフォン」と聞いていたが、ちょうど、筆者もHPH-MT220を入手したところだったので、MDR-CD900STと比較してみた。まず、こちらは密閉型ということもあり、多少耳が圧迫される感じはある。「MDR-CD900STは軽すぎてスカスカする」という人にとっては良さそう。また密閉されただけあって、低域はMDR-CD900STよりもずっとハッキリと出る。が、高域は若干弱めのように感じた。そうした点から見ても、音のバランスはまったく違うものであり、リスニング用途としても使いやすいヘッドフォンだと感じた。

パワードスタジオモニターのHSシリーズにはホワイトモデルが登場

 もう一つ、パワードスタジオモニターのHSシリーズ、3製品もこの発表会で登場した。最上位機種の8インチモデル「HS8W」(実売40,000円前後/本)、6.5インチモデルの「HS7W」(実売25,000円前後/本)、コンパクトな5インチモデルの「HS5W」(実売15,000円前後/本)のそれぞれ。とはいえ、これらは昨年6月下旬にリリースされたHSシリーズのカラーバリエーションであるホワイトモデルが追加されたもの。機能、性能、価格などは既存のブラックと変わらない。

 なお、Steinberg製品としてはUR44およびCubase 7.5も紹介された。UR44については、すでに先週の記事で詳しく取り上げているので割愛するとして、Cubase 7.5を簡単に紹介しておこう。これはCubase 7のマイナーアップデート版であり、プラグインが強化されたり、ユーザーインターフェイスが一部変更になり、使いやすくなっている。

UR44(左下)などSteinbergのUSBオーディオ製品
Cubase 7.5

 わかりやすいところでは、テープサチュレーションプラグインのMagneto2が搭載されたり、主要音源であるHALion Sonic SEがHALion Sonic SE 2へと変更になっている。さらにソフトウェアインストゥルメント関連では、Groove Agent Oneの後継となるGroove Agent SE 4が、エフェクト系ではLoopMash FX、REVelationなどが追加されている。

テープサチュレーションプラグインのMagneto2
HALion Sonic SE 2を使用
Groove Agent SE 4を追加
LoopMash FX
REVelation
トラックバージョン管理を搭載。複数のテイクの比較や、録音済みの複数トラックを別バージョンとして複製して編集ができる

 使いやすさという面では、トラックバージョン管理という機能が搭載された。これまでもループレコーディングする際にレーンを分けて記録していくことができたが、この新機能においては、複数のテイクの比較や、録音済みの複数トラックを別バージョンとして複製し、さまざまな編集ができるようになっているのだ。ProToolsで使いやすい、といわれていた機能がCubaseにも搭載されたという感じだろうか。

 なお、この新バージョンCubase 7.5はCubase 7ユーザーなら5,480円でアップデートできる。また店頭で発売されている製品はパッケージはCubase 7と同じながら中身はすでに7.5になっている。

ローランドはVドラムと太鼓の達人を連携。INTEGRA-7直系サウンドエンジンの「FA-08」も

 続いて翌日2月4日に行なわれたローランドの発表内容も見ていこう。こちらはRolandブランド、BOSSブランドを含めピアノ、ギターエフェクトからシンセサイザーキーボードまで数多くの製品が発表されたが、ここでは主にPCとの接点を持つ製品を中心にチェックしていく。

 まずは、NAMMとは関係なく、この日に発表された話題から。ローランドとバンダイナムコゲームスが共同発表したのが、リズムゲームの「太鼓の達人プラス」Vドラム対応バージョンだ。

ローランドとバンダイナムコゲームスが共同発表した「太鼓の達人プラス」の最新版。今春リリース予定
V-DrumsをiPadと接続すると、太鼓の達人のコントローラになる

 これはバンダイナムコゲームスがiPhone/iPad用に出しているアプリ、「太鼓の達人プラス」を電子ドラムであるV-Drumsに対応させ、電子ドラムを叩くことでゲームが楽しめるようにする、というもの。楽曲にあわせてスネア・ドラムやシンバルなどを叩く形になり、液晶画面を叩くのと比較しても圧倒的にリアルな演奏感が味わえるというわけだ。といっても、仕組みは単純。V-DrumsにはMIDI出力があるので、このMIDI出力信号をiPhoneやiPadへ入力する形だ。iPhone/iPadにはUSB-Lightningカメラアダプタなどを経由してUSB-MIDIインターフェイスの「UM-ONE mk2」を接続。このMIDI INとV-DrumsのMIDI OUTをMIDIケーブルで接続するわけだ。V-Drumsには、さまざまなラインナップがあるが、基本的にどの機種でも利用できるという。

 なおV-Drumsへの対応は今春の予定で、現在リリースされている「太鼓の達人プラス」のアップデートという形で利用可能になる。アプリケーション自体は無償で、楽曲を追加する際に課金される形となっている。

 ローランド音源の集大成というINTEGRA-7直系のサウンド・エンジンを搭載したワークステーション型のキーボード・シンセサイザとして登場したのがFA-06(実売110,000円前後)およびFA-08(実売160,000円前後)。INTEGRA-7のシンセサイザ系音色はすべてそのまま搭載されるとともに、アコースティック系のサウンドは抜粋した形。またPCM音源は同社のXV-5080の音色をすべて搭載するとともに、ドラム音色を強化している。

FA-06
FA-08

 また音色に関して面白いのは、現在ローランドが展開している音色ダウンロードサイトAxialから膨大なサウンドを入手可能になっている点。ここにあるINTEGRA-7の音色もそのまますべて利用できる形になっている。

 FA-06、FA-08がユニークなのは、DAWとの連携を前提に作られたワークステーションであるという点だ。DAW CONTROLというボタンを押すと、DAWと連携するための画面に切り替わり、デフォルトの設定でLogic Pro、またCubase、SONARのコントロールサーフェイスとして利用可能になる。

DAW CONTROLボタン
DAWと連携するための画面に切り替わる

 また、FA-06/FA-08とDAWとの同期も可能で、スレーブにもマスターにもなることができる。秀逸なのは、この液晶ディスプレイを利用してのMIDIシーケンサ。搭載されているアルペジエータ機能も利用しつつ、16トラックでの打ち込みも可能となっているのだが、ここで作られたシーケンスデータを各種DAWへ持っていくことができる。1つはMIDIで渡すという手段だが、一番便利なのはWAVファイルで渡すこと。一発操作で、全トラックをパラでWAVファイル書き出しが可能になっているのだ。従来の機材でも、トラックごとにWAVファイルで書き出しができるものはあったが、1トラックずつ手動で行なわなくてはならなかった。しかしFA-06/FA-08なら自動でできてしまうのだ。

MIDIシーケンサも利用可能

 反対にPCで作ったデータをFA-06/FA-08に渡す場合はサンプラー機能を活用する。トップパネル右側には4×4=16個のパッドがあり、計4つのバンク切り替えができるため、最大64までのサンプリング音をこのパッドに割り振りが可能になっているのだ。ここにはSDカードを利用してPCなどから持ってきたWAVファイルを設定することもできるので、いろいろな使い方ができそうだ。いわゆるポン出し機能というものだが、特に時間制限はなく、SDカードからの直接ストリーミングができるのが特徴。したがって、いちいち読み込んでコピーするといった操作がないのもうれしいところだ。

BOSSのギターエフェクトMEシリーズ最上位機。“楽器もネット接続”が増加

BOSSのME-80

 BOSSブランドでは、ギターエフェクトのMEシリーズのフラグシップモデル、ME-80(実売29,000円前後)が登場した。ME-80はローランドのモデリング技術、COSM(Composite Object Sound Modeling)テクノロジーによるエフェクト。したがって完全なデジタル機器ではあるが、すべてのパラメータをつまみでダイレクトにコントロールできるため、アナログ感覚で直感的に利用できるというのが大きな特徴だ。8個のペダルスイッチがあるため、各エフェクトのオン/オフを1つずつ設定できるマニュアルモードのほか、ワンアクションで音色を切り替えるメモリーモードのいずれかを選択できるようになっている。

PCソフトのBOSS TONE STUDIOで、音色ライブラリ管理や、PC画面上での音色作りも

 リアにはUSB端子が用意されているが、これを用いてPCと接続。専用ソフトであるBOSS TONE STUDIOを起動させることにより、音色ライブラリ管理を行なったり、PC画面上での音色作りも可能になっている。さらに、音色ライブラリサイトであるBOSS TONE CENTRALに直接アクセスすることが可能となり、ここにある数多くの音色データを無償で入手することが可能になっているのも特徴だ。

 前述のFA-06/FA-08といい、このME-80といい、PC経由でネット接続することで、音色を増やしていくことができるというのは、電子楽器の新たな動きであり、今後、他社にも広まっていきそうだ。もちろん、PCを介すのが正しい方法なのか、スマートフォンを利用したり直接ネット接続できるのがいいのかはまだハッキリしないが、どういった方法であれ、楽器はネットを利用するのは当たり前になっていくのだろう。

 そのほか、ローランドの発表会では、ステージピアノのRD-800(実売230,000円前後)、オーバードライブのOD-1X(実売15,000円前後)、ディストーションのDS-1X(実売15,000円前後)、アコースティックドラムに取り付けたトリガーからの信号を元に発音するエレクトリックドラム音源のTM-2(価格未定)、さらに計8モデルのデジタルピアノが発表されるなど、数多くの製品が登場した。

ステージピアノのRD-800
ディストーションのDS-1X
エレクトリックドラム音源のTM-2
TM-2は、アコースティックドラムに取り付けたトリガーからの信号を元に発音
バンドの「ねごと」によるライブも行なわれた

 そして、発表会の最後には、これら新製品を利用した形で、ガールズバンド「ねごと」によるライブ演奏も披露された。

 今後、また機会があれば、ここで発表された製品のレビュー記事なども行なってみようと思う。

藤本健

 リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。  著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。EPUBマガジン「MAGon」で、「藤本健のDigital Audio Laboratory's Journal」を配信中。Twitterは@kenfujimoto