◇ 過去の連載 ◇
【Watch記事検索】

第136回:3D時代の第2世代。新CELL REGZA登場

究極のテレビはどう進化した? 東芝「55X2」



55X2

 第2世代となったCELL REGZA。今世代ではモデルラインナップに、バリエーションを生まれている。「X2」は、CELL REGZAの中でもハイエンド機に相当し、今回も55型の「55X2」だけの1ラインナップ構成だ。

 新ラインナップとなる「XE2」シリーズは、CELLプロセッサを搭載したタイムマシン録画付きチューナボックス部こそ「X2」と共通だが、ディスプレイ部をやや廉価仕様とし、46型と55型の2ラインナップ構成になっている。

 今回取り上げるのはハイエンド機の「55X2」。価格も実売100万円に迫る“ハイエンド”だ。「究極のデジタルテレビ」と賞賛されつつも、多くの課題も残したCELL REGZAはどう進化したのか、見ていくとしよう。


 


■ 設置性チェック 〜チューナ別体型を踏襲

 ディスプレイ部の大きさは1,292×50×76.6mm(幅×奥行き×高さ/スタンド除く)。ディスプレイ部単体の重量は27.4kgと前モデルとの比較でやや軽くなったが、スピーカー部とスタンドの総重量は36kgとそれなりに重い。階上への搬入、部屋内の移動、テレビ台の設置も成人男性2人で行なった。

55X2 チューナボックス別体型の商品構成は前モデル55X1と同じ
ディスプレイ部の厚みは5cm

 前モデルの55X1はスタンド別売であったが、55X2では標準スタンドが同梱される。標準スタンドは左右±15度のスイーベル機構を搭載、上下の首振り機構はない。なお、専用オプションとして、壁寄せのスリムスタンド「FPT-KY5A」や壁掛け金具「FPT-TA14」もラインナップされているので、設置環境やスタイルに合わせて、別売スタンドも選択可能だ。

 スピーカーユニットは55X2も別体仕様。設置時にはディスプレイ部に合体させて組み立てる必要がある。スピーカーユニットはディスプレイ部の下部にネジ10本で留められる構造だ。なお、説明書では、ディスプレイ部を設置した後にスピーカーユニットを取り付けることを推奨している。これは、スピーカーを設置した後に、スピーカーユニットに手を添えてディスプレイを持ち上げると、スピーカーとディスプレイの接合部に荷重がかかり、破損することを防ぐためだ。

 スピーカー部の高さがあるため、一般的なテレビよりも画面の表示位置も高めになる。スタンドの設置位置から画面の表示下辺までは、実測で197mm。ちなみに46型の46ZX9000ではこの高さは約144mmで、55X2は5cmも画面表示位置が高い。テレビ台の高さにも注意しておきたい。


チューナボックス。ビデオプロセッサおよびビデオレコーダ的な役割を果たす

 55X2は、ディスプレイとチューナ部が別体型の構成になっている。チューナボックスはCELLを搭載したビデオプロセッサと、ビデオレコーダの役割を担っており、各種高画質化処理を担当する。また、各種接続端子を備えたインターフェースボックスとして利用する。外形寸法は436×387×109mm(幅×奥行き×高さ)で、BDレコーダの高級機以上の大きさだ。重量は9.5kg。

 なお、このチューナボックスとディスプレイ部との接続には、同梱されるHDMIケーブル(約3m)を用いる。従って、チューナボックスは、必然的にこのケーブルの範囲内に設置する。

 個人的には、たとえ本体が厚く重くなっても、チューナボックスをディスプレイ部に統合すべきだと思う。55X2のディスプレイ部は特別に薄型でもないし、設置製の意味では別体の必然性があまり感じられない。せめて、次期モデルでは、ディスプレイ部の背面に設置できるような工夫があるとよいと思う。

 設置して気がつくのは、額縁が先代よりも狭くなっているという点。計測してみると、左右が32mm、上が38mm、下が46mmで、狭額縁化が図られている。天井照明が当たっても、それほどテカらないのはフチがアルマイト加工を施したブラックアルミ素材で出来ているため。「CELL REGZA」のロゴは、白色プリントによるものだが、このブラックアルミの暗さにより、際立って見えてカッコがいい。逆にTOSHIBAのロゴはクロムメッキされているが下側にあるためほとんど目立たない。

画面は光沢タイプの液晶パネル。額縁はブラックアルミ素材でテカらない

 液晶パネルは、先代と同じく光沢パネルを採用しているため、相対する位置に窓や照明があると映り込みやすい。設置の際には画面に光が入ってこないように配慮したい。

 消費電力はチューナボックスが146W、ディスプレイ部が252W、システム全体では398W。年間消費電力量は465kWh/年(システム全体)。2D REGZAの上級機「55Z1」が消費電力228W、年間消費電力量202kWh/年なので、同画面サイズのLEDバックライト採用の液晶テレビの2倍の消費電力量ということになる。

 チューナボックスはCELLや4台ものHDDを搭載。ディスプレイ部は直下型LEDを多数搭載していることなどが、消費電力増に響いているのだろう。ちなみに、パナソニックの3D VIERA「TH-P54VT2」は消費電力488W、年間消費電力量227kWh/年だ。

 ディスプレイからの動作音はほとんど気にならない。一方でチューナボックスは、耳を澄ますとパソコンのようなブーンという低音ノイズが聞こえる。1m離れれば気にならないはずだが、気になる場合は扉付きのテレビ台のラック部などを活用したい。

 リモコンはRF(電波)式なので、チューナボックスは目立たないよう隠して設置できるのだが、底面に吸気口、正面向かって左側面、背面側に排気口があるので、ここを塞いではならない。

 


■ 接続性チェック〜チューナボックスとディスプレイ部に個別の接続端子パネルを搭載

 接続端子はディスプレイ部の側面と背面、そしてチューナボックスの前面側と背面側にある。

 まずはチューナボックス側から。アナログビデオ入力端子は背面に2系統、前面側に1系統を配備。ビデオ入力1として、コンポジットビデオと排他仕様のD5入力端子、アナログ音声(RCA)を備える。一方、ビデオ入力2はコンポジットと排他仕様のS2ビデオ入力、アナログ音声(RCA)になる。前面側のビデオ入力3はコンポジットとアナログ音声のみという構成だ。

チューナボックスの前面の接続端子。B-CASカードスロットもここに 背面

 HDMI入力端子は背面にHDMI1〜4を、前面にHDMI5を備えている。HDMI1のみオーディオリターンチャンネル(ARC)とコンテントタイプ連動に対応する。なお、55X2のHDMIはすべてDeepColorに対応するがx.v.Colorには対応しない。

RGBレンジ設定

 PC入力端子はないが、HDMI端子を利用してPCとはデジタルRGB接続が可能だ。もちろん、REGZAなので、HDMI階調レベルは、0〜255のフルレンジ、16〜235のリミテッドの明示指定が出来る。

 背面にはHDMI4に連動したステレオミニジャックの「HDMI4アナログ音声入力」端子も装備。PCをHDMI4に接続し、PCの音声出力をここに接続すれば、PCからのHDMI4の表示時に音声も出力できる。

 この他、出力系端子として背面に光デジタル音声出力、アナログ音声出力を備える。いわゆるモニター出力端子は音声のみで、映像系はディスプレイ部との接続に使う専用HDMI端子のみだ。通信端子はLAN端子(Ethernet)のみで、前モデルにあったモジュラージャックは省略された。

 USB端子は背面に2系統、前面に1系統が実装されるが、両者は利用目的が異なり、接続できる機器に違いがある点に注意したい。

 背面のUSBは、録画用USB HDDを接続するためのもので、前面側は、キーボード、マウス、USBメモリ、デジカメを接続するのに利用する。

 マウスとキーボードに限ってはHub経由での接続が可能で、実際にロジクールのG15キーボードを接続し、G15側のUSB端子に、同じくロジクールのG700無線マウスを接続したところ、ちゃんと両方とも利用できた。高機能型キーボードやマウスが使えるのだから、かなり互換性は高そうだ。さらにキーボードのUSB端子に接続したUSBメモリ内の写真の閲覧まで行なえ、この対応能力はさすがCELL REGZAと言ったところ。

 アンテナ入力端子も当然チューナボックスの背面側にある。55X2は地デジチューナが11基、BS/CSチューナが2基内蔵されているが、アンテナケーブルは地上デジタル、BS/CSデジタルの2系統だけでOKだ。ただし、B-CASカードについては地デジ(青)カード5枚、地デジ/BS/CS共用(赤)カード1枚を全てチューナボックスのカードスロットに挿す必要がある。アナログチューナは搭載していない。また、55X2ではSDカードスロットが省略されている。

ディスプレイ部、正面向かって右側面の接続端子部 背面の接続端子部。下部にチューナ接続用の専用HDMI

 ディスプレイ部の接続端子は、正面向かって右側の側面と背面下部にある。側面にはD5入力と排他仕様のコンボジットビデオ、アナログ音声入力を各1系統と、HDMI入力端子を1系統、ヘッドフォン出力を備えている。詳しくは後述するが、ディスプレイ側の入力端子は表示遅延が少なく、ゲーム向きと東芝からも告知されている。

 背面下部には、チューナボックスとの接続専用のHDMI端子がある。この他、「センター音声入力」端子というものがある。これは、5.1/7.1ch等のサラウンドシステムを55X2を中核にして組む際に、55X2のスピーカーをセンタースピーカーに利用することを可能にする機能だ。AVアンプからのセンターチャンネルのアナログ音声出力をここに接続して利用する。


「センタースピーカーモード」の設定

 余談だが、これは55X1で初搭載された機能で、55X2にも継承された。55X1では別用途の端子との兼用仕様になっていたが、55X2では、専用端子として新設された。

 ちなみに、「センタースピーカーモード」設定が「オート」でAVアンプ連動動作となり、「オン」では、表示映像にかかわらずこの端子からの音声をモノラル再生する。さらに55X2では、外部サブウーファー出力端子までもが搭載された。


 


■ 操作性チェック〜タイムシフトマシンはカスタマイズ性が向上

リモコン

 先代55X1では、リモコンが専用設計で、上段スライドやらミニタッチパッドを搭載した大変凝ったものだったが、それほど評判が良くもなかったそうで、55X2では今期の標準REGZAと同型になってしまった。高価な製品だけにプレミアムな進化を期待していたのだが、少々残念ではある。

 おそらく東芝は、そうしたユーザビリティの向上は、リモコンではなく、スレート端末やスマートフォンなどのアプリで対応していく方針を取るのだろう。

 ただし、多くのユーザーはこのリモコンで操作することになるわけで、標準REGZAとCELL REGZAとの機能差を考えると、その操作をこのリモコンだけで行なうには少々無理が出てきているのも事実。

 とにかく、「ボタンが足りていない」というのが55X2を実際に使っての印象だ。おそらく、過去にREGZAを使い込んだことのあるユーザーであるほどそれを感じると思う。

 例えば「今すぐニュース」機能。ニュース番組を日々上書き録画することでその時点での最新ニュースの録画を視聴できる機能だ。これまでのREGZAでは長きにわたってこの機能を一発で呼び出せる[今すぐニュース]ボタンがあったのだが、55X2では無くなってしまった。55X2でも機能としては残っているが、[クイック]ボタンを押してメニューから「今すぐニュース」を選ぶ必要があり、使い勝手は後退している。ちなみに[今すぐニュース]ボタンがあったところは、[3D]ボタンに変更されている。

 こうしたボタンの省略は他にもあり、ディスプレイ側の接続端子専用の入力切換ボタンが無くなった。そのため55X2では、ディスプレイ側の接続端子の切換を行なうために、[入力切換]ボタンで「モニター入力」という階層メニューを選択し、[入力切換]ボタンのモードチェンジを行なう必要がある。この影響で、チューナボックス側とディスプレイ側をまたぐ入力切換操作には、2度[入力切換]操作が必要で、スピーディな入力切換が出来ない。リモコン上のボタンが少ないことから来る苦肉の策という感じがする。

 なお、入力切換速度は実測でチューナボックス側のHDMI→HDMIで4.0秒、チューナボックス側→ディスプレイ側で8.5秒、ディスプレイ部側のD5→HDMIで4.5秒。地デジのチャンネル切換は2.0秒であった。チューナボックス側とディスプレイ側をまたぐ入力切換は遅いが、それ以外は普通。テレビのチャンネル切換は早い方だ。

 改善された部分もある。55X1では、デジタル放送の字幕表示のためのリモコンボタンがなかったのだが、55X2では追加された。また、前述のように55X2のリモコンはRF(無線)式なのだが、赤外線操作の機能も持っているようで、筆者宅のREGZA 46ZX9000の操作も行なえた。確実性を考えて両対応ということなのだろうか。

 なお、電源オン操作から地デジ放送が表示されるまでの所要時間は65秒と遅い。電源オン後、49秒後に「CELL REGZA」は表示されるが、ここに到達するまでが長い。一度電源を切った直後のホットスタートでも、地デジの画面が出てくるまで18秒かかる。

 さて、CELL REGZAといえば、究極のチャンネルザッピング機能とも言える「マルチ画面」機能がウリの1つだが、55X2でもこの機能は健在だ。親画面+7子画面の合計8画面をフルフレームレートで1画面に表示できる機能は、国内の他のテレビ製品には無いCELL REGZAだけの機能で、オーナーであれば一度は人に自慢したくなるはずだ。首都圏であれば、NHK、NHK教育、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京の7ch全てをプレビューでき、メイン画面をBS/CS放送にすれば8chの番組を一度に視聴できるのだ(音声はカーソル選択した画面のみが再生される)。親画面はなんと40インチ相当で1,440×810ドット、子画面も13インチ相当で480×270ドットなので、普通にテレビ映像として見られるほどクオリティが高い。

 なお、番組表表示時も、このリアルタイムプレビューが利用できる。これらの機能に慣れてしまうと普通のテレビに戻ったときの寂しさといったらない。

親画面+7子画面のマルチ画面機能 番組表表示中もプレビューが見られる
3D放送検索機能「3D検索ナビ」

 番組表と言えば、地味ながらも3D対応の55X2らしい機能が追加されている。それは、3D番組検索ができる「3D検索ナビ」だ。これは、放送予定の番組から、3D対応のものをビックアップし、さらにキーワード検索で絞り込むことができる機能だ。ただ、番組情報に「3D」とあればなんでもピックアップしているようで、3D放送でない番組を表示することがあった。それでも、数少ない3D番組を探すツールとして利用価値は高い。

 番組表関連で、忘れてはならないCELL REGZAの機能が「ローミングナビ」機能。これはカーソルをあてた番組のタイトル名、出演人物名、番組ジャンル、関連キーワードを含んだり、関係性があると判断できる番組を適合具合に応じてピックアップしてくれる機能だ。この機能については、基本的に55X1と同じ。

 評価機にはまだ搭載されていなかったが、55X2で12月に搭載予定の番組表関連機能に「おすすめサービス」というものがある。これは東芝のレコーダ「RDシリーズ」のユーザーや他のCELL REGZAのタイムシフトマシン機能を活用した番組録画の人気状況を集計して、ランキング形式で番組をオススメしてくれる機能だ。ネットと家電のユニークかつ新しい活用の一例として注目だ。

おすすめサービスの地デジランキング タイムシフトマシン注目番組。「おすすめサービス」はテレビの新しいネット活用様式となるか

 さて、CELL REGZAといえば、搭載された専用HDD容量を使い切り、(指定された)全チャンネルを上書き録画し続け、過去に遡って番組視聴が楽しめる「タイムシフトマシン」機能。55X2にも当然搭載されている。

 55X2では「タイムシフトマシン2」と名称変更されているが、基本機能自体は先代と変わらない。HDDの容量も、通常録画用HDDが1TB(500GB×2)、タイムシフトマシン用HDDが2TB(1TB×2)という構成も同じだ。基本的なこの機能の解説については本連載55X1編の方を参照して欲しい。

タイムシフトマシン機能として録画されているコンテンツは「過去番組表」として一覧を参照可能 ローミングナビ機能 スポーツ番組を選択してローミングナビを活用した結果。スポーツ関連番組が「タイトル」「ジャンル」「キーワード」「人物」の各カテゴリでピックアップされた

 では、どこが変わって"2"になったのか? 改良点を一言で言うならば、「ユーザーカスタマイズ性が強化された」ということになる。具体的には、タイムシフトマシン録画対象チャンネル数が1チャネルから8チャンネルまで選択でき、さらに曜日ごとに録画対象時間帯と時間長を設定できるようになった。これにより、見ないチャンネルをタイムシフトマシン録画から除外したり、曜日に応じて、タイムシフトマシン録画の時間帯をずらしたり、短くしたり長くしたり、といった調整ができるようになった。ちなみに、全8チャンネルを録画対象とすると最大25時間、全2チャンネルであれば最大102時間のタイムシフトマシン録画が行なえる。

対象チャンネルや対象時間帯の選択をユーザー好みに自在にカスタマイズできるようになったタイムシフトマシン機能

 だいぶ洗練された感じはするが、それでも解決されていない問題点もある。

 それは、搭載HDDを1ドライブとして扱えないという点。ユーザーに500GB×2+2TBという構成を意識させて使わせている点が家電的でない。通常の録画は500GB×2ドライブのどちらを使って録画するかを選択しなければならない。

 ユーザーによっては3TBの全容量をタイムシフトマシン録画に使いたいという場合もあるはずだが、500GB×2は通常録画専用でそうした使い方はできない。ハードウェアの都合が見え隠れして使い勝手に妥協がある感じがちょっともどかしい。

 ブロードバンド機能も、他機種よりも充実している。ビデオオンデマンドサービスとしてはアクトビラ、TSUTAYA TV、T'sTV、ひかりTVの全てに対応。この他、Yahoo! Japanと、YouTubeのメニューも用意されている。

ブロードバンドメニュー YouTube Webブラウザ。ただし、遅い

 WebブラウザはOperaが内蔵されており、チューナボックスにキーボードとマウスを接続すれば、パソコンライクにWebサイト閲覧が楽しめる。ただ、実際に使ってみるとパフォーマンスは低い。メモリの足りていないWindowsを使っているような操作感で、マウスカーソルはカクカクと動き、これならばスレート端末や55X2に接続したPCを使いたいと思うはず。はっきりいってパソコンが使えないときの臨時用というイメージだ。

 実際に使っていて気がついたのは、YouTube動画は、55X2の「YouTube」メニューから閲覧しているときは、コマ落ちもなくフルフレームで見られるのだが、Webブラウザでサイトに埋め込まれたYouTube動画を閲覧すると、かなりコマ落ちすること。Flashプレーヤーにも対応しているため、一般的なFlashサイトもそれなりに見られるし、いじわるをして、ニコニコ動画も見てみたりしたが、コマ落ちをしながらも、なんとか再生はしていてた。ポテンシャルの高さは伝わってくるのだが、パフォーマンスが伴っていないのが問題だ。

 スピーカーの音質についても振れておこう。結論からいうと音質は良好である。低音から高音までがとてもフラットな周波数特性で、もはやテレビのスピーカーの音質という感じではない。特に高音のキレがよく、ハイハットやシンバルの音なども鮮明に聞こえる。低音も、重低音までは出ていないが、ちゃんと出音として出ている。バスドラムやフロアタムの低いアタック音なども、こもらず乾いた低音として耳に届く。

スピーカー部の左側。左からツイーター、ウーファ×2、横長のパッシブラジエータという構成

 スピーカーユニットは左右それぞれにウーハーユニットが2基ずつ、ツイーター1基ずつ、これに中央にもう1つツイーターで、合計7スピーカーとなる。この構成は55X1から変わらないが、55X1の時にバスレフダクトだった部分は、55X2ではパッシブラジエータに変更されている。

 開発担当者によれば、55X1ユーザーから「低音再生時に風切り音が気になる」という報告があったため対策したとのこと。なお、55X1の時はアルミ製エンクロージャーを採用していたが、55X2では樹脂製に変更されている。剛性の面では55X1よりも劣るが、出音を聞いた感じ、音質への影響はほとんど無いように感じる。55X2の方が総出力自体は上がっているからかもしれない。55X1では総出力60Wだったが、55X2では100Wになった。内訳はウーファーが30W×2、ツイータが20W×2。ちなみに、センタースピーカーモードを活用したときには左右の20W×2のツイーターは無効化され、中央のツイーターが40W駆動される。

 音楽番組を見るのにも耐えうるのはもちろん、CDなどの音楽再生に使っても全然不満なしに聞けてしまうクオリティには感動する。


 


■ 画質チェック〜驚異的なコントラスト性能

開口率が向上した55X2のVA型液晶パネル。パネル世代が新しくなっている。

 55X2では、サムスンのVA型液晶パネルを採用しているが、開口率が劇的に向上した新世代のパネルだ。画素形状が55X1とは明らかに違うので、異なるパネルという事は素人目にも分かる。ちなみに、パネルとしては、本連載でも高評価を与えたREGZA F1と同一世代だという。

 表示面が光沢仕様のクリアパネルになっており、出力光が拡散されにくいことから、画素描画の鮮鋭感が素晴らしい。開口率向上により、同一色がまとまった領域を埋め尽くすような面表現でも粒状感がなく、濃密な表現になっていて質感が高い。

 それと、なによりダイナミックレンジが凄い。55X1の時も驚いたが、55X2でも再び驚かされてしまった。

 まず、ピーク輝度が凄い。画調モードにもよるが、蛍光灯照明下の部屋でも光のパワーを感じるし、屋外シーンの日向の表現などは、本当に太陽光の反射を見ているような力がある。

 一方で、暗部が同居していても、その明るさに引っ張られない、正確な暗部の表現を同時に実現できている。言葉で言うならば「ハイコントラストである」で済んでしまうわけだが、その言葉以上の暗さのパワーと明るさのパワーがあり、それぞれが同居できるポテンシャルはまさに筆舌に尽くしがたい。

 例えば、夕暮れの街の景色などで街灯が描かれているシーンにて、一般的な液晶テレビだと、その街灯が「明るい色で描かれている」という印象だが、55X2だと本当に画面の中で街灯が自ら発光して、現実世界のこちらまでを照らしてきそうな感じで輝くのだ。あまりにも明暗のダイナミックレンジが凄いので、「目が疲れる」という意見も出てくるかも知れない。そこで、55X2では「ピーク輝度」設定というパラメータが設けられており、オフ、弱、中、強の4段階設定が選べる。弱以上の設定でハイダイナミックレンジ表現がオンになる。55X2ユーザーならば、この特権的性能のため是非とも弱以上で常用したい。

ピーク輝度調整=オフ ピーク輝度調整=強

 REGZAシリーズでは、CELL REGZA以外はエコ志向と低コスト化のため、全て導光型のエッジライトバックライトシステムに移行してしたが、55X2は違う。今回も3,072個もの白色LEDを直下型に配し、輝度1,000cd/m2。これは一般的な液晶テレビの輝度の倍以上の値だ。この膨大な数の白色LEDを、55インチの画面を512個の領域に分けて駆動させている。表示する映像の512箇所での明暗レベルを検出し、その最適な光出力でバックライトを光らせる、エリア駆動と呼ばれる技術だ。

 映像の明るい箇所に対応するバックライトブロックは、より明るく光らせ、暗い箇所に対応するブロックは、その階調を正確に再現するために輝度を絞る。これによってプラズマのような自発光画素に近い表示が行なえる。

LEDエリアコントロール=オフ。左上の夜空が薄明るくなってしまっている LEDエリアコントロール=オン。左上の夜空が真っ暗になる
LEDエリアコントロール=オフ。画面左側の黒い部分が薄明るくなっている LEDエリアコントロール=オン。画面左側の黒い部分が真っ暗となった

 ちなみに、前モデル55X1ではLEDは4,608個による512エリア駆動で、ピーク輝度は1,250cd/m2だった。ブロックの数は変わらないが、白色LED数が減ったこともあり輝度は落ちたことになる。55X2は3D対応したが、3D映像は眼鏡を通して見ると暗くなってしまうので、輝度はできれば落としてほしくなかったところ。

 ネイティブコントラストは5,000:1、エリアコントロール付きのダイナミックコントラストは900万:1。この数値にはリアリティが伴わないかもしれないが、実際に明暗が同居した映像を見ると「なるほど」と思えるはず。

 コントラスト感は完熟に達したと思うが、発色は今回の55X2は他のREGZAとは違った傾向にチューニングされている。全体的に黄味が強い。

 これは新しい白色LEDの光特性から来るものかと思ったのだが、意図的にこのようなチューニングが行なわれたらしい。純白も黄味が乗っているし、人肌も黄味が強い。水銀ランプベースのプロジェクタのダイナミックモードの発色を連想させる。

 そのためか、赤は中明部以下の暗い赤は純度の高い赤だが、明るい赤はやや朱色に振れる傾向にある。緑は全域にわたって色度の高い鮮烈な感じ。青は明るい青はやや紫に振れた印象。また、暗い青の階調に不連続な箇所があって気になった。明らかに、他のREGZAとは違う発色で、歴代REGZAからの移行組は最初、戸惑うかも知れない。

 色深度の方に気になる点は無し。二色混合グラデーションなども極めて自然な色遷移表現が実現できている。

 映像エンジンについても触れておこう。今世代のREGZAから「レグザエンジン」と呼称を採用しているが、CELL REGZAでは「CELL REGZAエンジン」という名称になっている。基本的な世代としては今期REGAZA Z系や、本連載でも取り上げたF1などと同世代のものになる。2D映像に対する超解像の効果については、本連載のREGZA 47Z1編を参照して欲しい。

 55X2では、そうした高画質化ロジックの一部の機能をCELLで実装しており、この部分がCELL REGZAだけの特権的な機能となっている。

レゾリューションプラス=オフ
レゾリューションプラス=オン

 2D画質面では、ノイズリダクションの実効精度が向上しているという。特にMPEG特有のノイズであるブロックノイズやモスキートノイズに対してノイズ低減精度が向上しているという。ブロックノイズについては、濃い輪郭線や細かい模様を含むブロックに強く出やすい歪みを低減し、隣接するブロックになめらかに色を繋ぎ、ブロック境界を目立たなくする処理を行なう。

 モスキートノイズについては、輪郭周辺に出やすいモスキートノイズを選択式にスムージングする処理を行なう。これによりテクスチャの鮮鋭度を維持したまま、モスキートノイズが低減できるというわけだ。

MPEGノイズリダクション オフ MPEGノイズリダクション オン。モスキートノイズが消える

 実際にデジタル放送の旅番組などを見てみたが、空に伸びる葉のない枯れ木の林のシーンなどは、一本一本の枯れ枝がボールペンでしっかりと書いたような美しい線分が見え、その周辺には揺らぐモスキートノイズは確認されず、枝越しに見える空にも黒ずみや滲みも感じられない。

4倍速駆動にまつわる設定は「お好み調整」-「詳細調整」-「4倍速」

 4倍速駆動に対応したという点も、55X2の進化ポイント。そもそも東芝がリアル4倍速駆動を採用するのは2010年秋冬の3D REGZAからなので、その補間フレームの精度がユーザーとしては気になるところ。これは実際に映像を見てみると、精度的にはREGZA F1とさほど変わらないようだ。倍速駆動よりも4倍速駆動のほうが、リアルフレームよりも補間フレームの方を見る割合が増すので、エラーが出たときのリスクが大きくなっている。

 4倍速駆動にまつわる設定は「お好み調整」-「詳細調整」-「4倍速」から行なえるが、このエラーをなるべくユーザーに気がつかせないようにする「おまかせ」設定の使用が推奨される。ここの設定では「おまかせ」「スムーズモード」「オフ」が選べ、さらに映画コンテンツのような24fps映像では、「フィルムモード」が選べる。

 いつもテストに使っている「ダークナイト」冒頭のビル群のフライバイシーンでは、「おまかせ」と「スムーズモード」では背景のビルに振動が起きるエラーが発生していた。まだまだ安心して使い続けるにはリスクが大きい機能だ。


3D眼鏡は1個、55X2に付属する

 55X2は3D(立体視)に対応したことから、CELL REGZAエンジンにも、この立体視専用の高画質化ロジックが実装されている。

 55X2の立体視はF1と同じフレームシーケンシャル方式で、アクティブ液晶シャッターグラス(眼鏡)をかけて見る。眼鏡自体はF1/ZG1などと同一仕様の「FPT-AG01」(実勢9,000円前後)となっている。55X2にはこれが1個付属する。なお、3Dフォーマットはフレームパッキング、サイドバイサイド、トップアンドボトムの全方式に対応する。

 55X2のCELL REGZAエンジンの3D専用高画質化機能として筆頭に挙げられるのは「3D超解像技術」だ。

 これは現在、衛星放送で放送されているサイドバイサイド方式の3D映像に対して効果を発揮するものだ。

 サイドバイサイドフォーマットでは、左右の目用の映像を各960×1,080ドットの縦長にして、それを横に並べて1,920×1,080ドットのフレームに埋め込んだ形式になる。このため水平解像度がフルHD解像度の半分になってしまい、3D映像として表示する際には、アスペクト比変換を行なう。横960ドットの各ドットを2回ずつ描画すれば最も簡単な補正が行なえるが、これでは眠そうな、解像感乏しい映像になってしまう。

サイドバイサイド方式の3D映像に効く3D超解像技術

 そこで、このアスペクト比変換に超解像処理を介入させようというのが、3D超解像技術なのだ。超解像技術のアルゴリズム自体は2Dの超解像技術と同じ「再構成型超解像」と「自己合同性型超解像」の処理を実践している。これらの2つのアルゴリズムの解説も本連載のREGZA 47Z1編を参照のしてほしい。

 実際に、サイドバイサイドで放送されているBS11の「3D紀行IV」や「Panasonic 3D Music Studio」を視聴してみたが、効果は絶大だ。REGZA F1で見たときと、解像感が全然違う。F1では、人物の目鼻の陰影や地面の砂利、石壁の細かい凹凸などがぼやけて見えて、ディテールや質感が伝わってこず、立体感は得られるものの映像としてはかなり眠い感じだったものが、55X2ではかなり鮮鋭に見える。石畳と石畳の間の溝の様子まで立体的に見えるのはなかなか感動的だ。

 3D超解像技術は、メニュー内では「3Dレゾリューションプラス」という名前になっているが、この「レベル調整」で、超解像の効き具合を変えられる。サイドバイサイドの3Dは解像度劣化が激しい(実質、情報量半分)ので、最大設定の「+2」にしてもいいのではないかと思う。

サイドバイサイド方式の3D映像に効く3D超解像技術 実際にサイドバイサイド形式に準拠した写真を55X2で表示し、サイドバイサイドモードで表示させて検証した
3Dレゾリューションプラス=オフ 3Dレゾリューションプラス=オン(オート)
3Dレゾリューションプラス=オフ 3Dレゾリューションプラス=オン(オート)

 続いてBlu-ray 3Dの「アイスエイジ3」を視聴。こちらは3D超解像を効かさなくても十分な解像感が得られていたが、3D超解像を効かせるとさらに、ディテール感が増す。ティラノサウルスの鱗の微細の凹凸感や、ふわふわしたマニー(マンモス)の毛並の毛先の肌触りみたいなものが、伝わってくるほどで、最初はオン/オフを切換ながら見るのも面白いと思う。

3Dクロストーク低減技術

 3Dメガネを通して見たときの画質だが、色味については、2D時の色合いがほぼそのまま再現されている。2D時に黄味が強いと書いたが、その特性は、眼鏡をかけても表れている。

 3D画質と言えば、反対側の目用の映像が見えてきてしまうクロストーク現象についてだが、Blu-ray 3Dのアイスエイジ3の立体視では、REGZA F1よりも数段、クロストークが少ない。背景が暗くて、オブジェクト色が明るいときには、その輪郭に見えなくもないが、一般的なシーンでは、クロストークがほとんど気にならない。これは55X2にだけ搭載されている、16分割バックライトスキャニングによる効果と見て間違いない。

 液晶パネルへの書き込みは、非常に高速に行なわれるが、液晶画素自体が、指定された画素状態に変化するまで若干の時間を要する。これがいわゆる液晶画素の応答速度になるわけだが、55X2では、画面を上から横に16分割し、指示された画素状態になった領域のバックライトを順次点灯させていく「スキャニング」表示を行なっている。なお、これは、LEDバックライトのエリア駆動とはまた別の次元のバックライト駆動だ。このスキャニングにより、液晶パネルの中の反対側の目の映像がまだ残っている箇所はバックライトが消灯状態になるので目に届かず、つまりクロストーク現象が抑えられる、という算段なのだ。

 CELL REGZAのXE2や、REGZA F1、ZG1では上下2分割のスキャニングにしか対応していないが、55X2では16分割という細かさで行なっているので、精度も高い。おそらく今期の3D液晶テレビの中では、トップレベルの低クロストーク性能だろう。

 トップレベルと言えば、通常の2D映像コンテンツを3D化する「2D→3D変換」機能の品質も、55X2は1、2位を争う品質になっていると思う。

 これは、CELLプロセッサのパワーを利用した機能であり、REGZA ZG1やF1には搭載されていない。

 55X2の2D-3D変換機能は、“攻め”の実装になっており、3つの変換アルゴリズムの複合実装系となっている。

 1つ目のアルゴリズム「モーション3D」はピクセル単位の動きベクトルを見てピクセル単位の奥行きを推測するもの。2つ目の「ベースライン3D」は、映像の四隅の色ヒストグラムを見て、四隅の色分布をキーにして知識データベースを当たって、その映像の立体的な広がりを推測するもの。

 例えば「画面の上半分が水色で、下半分が茶色や暗い色」という分布ならば、「上には空があって下には地面がある」、と推測するのだ。55X2には、この色分布とシーンの奥行きパターンのデータベースが約1,400シーン分内蔵されており、適切なシーンから、リアルタイムに立体感を割り付けるようになっている。「フェイス3D」は人の顔や肩の形状を認識すると、「ここには人がいる」と仮定して人型の立体感を当てはめるもの。実際の立体感構築は、3つのアルゴリズムを複合させて実現している。

2D→3D変換機能を支えるアルゴリズム「モーション3D」と「ベースライン3D」 フェイス3D

 地デジ放送を2D-3D変換して視聴してみたが、正確かどうかは別にして、かなり面白い。他機種の2D-3D変換では、画面の奥に漠然と広がりがあるような疑似立体感しか得られないが、55X2の2D-3D変換による立体感は、その立体形状が分かりやすくて楽しいのだ。例えば、アニメであっても、人の顔の部分はちゃんと立体感が得られるし、シーンの床面がちゃんと奥に向かって伸びている感じも得られる。

 ただ、弊害も見られる。この2D-3D変換で得られるのは奥行き値であり、この奥行き値に基づいて、元の2Dフレームを左右の目用にサンプリングして左目用、右目用の二枚のフレームを生成することになる。なので凹凸が急激に変化している箇所においては遮蔽関係のいびつな表現となるのだ。例えば、2D-3D変換した映像を見ていてしばしば目に付く、人の顔の頬のあたりに出る変な色の擬似輪郭などや、微細凹凸上の陰影の消失などはクロストーク現象ではなく、2D-3D変換によるエラーによるものだ。とはいえ、こうしたエラーを差し引いても、55X2オーナーとなった最初のうちは、この機能は相当楽しく使えるはずだ。

 なお、1つ、残念な制約がある。この機能はCELLプロセッサに高い負荷をかけるため、なんと録画動作中には、2D-3D変換機能は使えない。実際に試してみたが、エラーメッセージが表示されてしまった。

 プリセット画調モードのチューニング傾向は第99回「REGZA 46ZH500編」とほとんど変わらないため、本稿では省略する。「映画プロ」は、昨年までは「映画プロ1」と「映画プロ2」が存在したが、今期は「映画プロ2」が「映画プロ」モードに名称変更されて残されている。

あざやか 標準 テレビプロ
映画プロ PC

 さて、REGZAを語る上で、ゲーム対応機能を抜きに語ることは出来ないだろう。ゲーム対応に対してきまじめなREGZAは、今やゲームファン御用達のブランドになりつつある。

 55X2のゲーム機能は、47Z1に搭載されたものと同世代のものになるが、55X2には「SDゲームファイン」というモードが新設されている。

 これはディスプレイ部側のD5入力されたアナログSDビデオ(480p)に対して横解像度方向は2倍オーバーサンプリングを行ない、縦解像度方向は二重化を行い、「SDゲームファイン」-「フル」ならば16:9アスペクトの1,706×960ドット相当、「SDゲームファイン」-「ノーマル」ならば4:3の1,280×960ドット相当に、超解像処理付きで表示される。

 実際に表示映像を見てみると、画面最外周に若干の未表示領域が出来るが、スケーリング回路を通らないため、極めてクリアな映像が得られている。東芝によれば「WiiをD5接続したときに一番綺麗に楽しめるモード」だとのこと。ある意味「スケーリング回路を通さず、それ以外の高画質化処理を入れて最も高画質にSD映像を55X2で表示する手段」といえる。アナログ出力しか持たないハイエンドDVDプレーヤーの映像をこのモードで楽しむのもいいかもしれない。

SDゲームファイン。スケーリング回路を通さない最大画面表示モードになる

 今回の大画面☆マニアから、必要に応じて表示遅延の計測結果をお届けしていくことにした。

 よく勘違いされるのだが、表示遅延と液晶の応答速度とは別の問題だ。

 表示遅延とは、ゲーム機やAV機器から出力されてから、実際に映像パネルに映像が表示されるまでの所要時間を指す。理想的には、テレビ機器側に入力された瞬間に表示されるのが理想だが、高画質化ロジックを搭載した高画質モデルであればあるほど、内部で映像を処理してから表示するためその所要時間は長くなる。“ゼロ”が理想であり、基準となるので「表示“遅延”」という表現で表されるのだ。

 大画面☆マニアで使う計測方法は単純だ。PCで生成したテスト動画をHDMI出力し、これをHDMI分配機で測定対象機と基準機の両方に接続する。測定対象機と基準機、2台の映像機器の表示内容をカシオのデジタルカメラEXILIMで120fpsによる動画撮影を行ない、測定対象機が基準機に対して何フレーム分遅れているかを見る。ちなみに、1フレーム遅れる16.67ms(≒1/60)秒送れていることになる。例えば、30フレーム遅れた場合は表示遅延は0.5秒になり、60フレーム遅れた場合は表示遅延は1.0秒と言うことになる。

 分配機で生じる遅延の可能性は否定できないが、少なくとも分配機からは同時間軸で出力されるので、測定対象機と基準機との相対的な比較はできると想定している。

【遅延の計測時の動画】
後ろが「55X2」、手前が「19RE1」。120fpsで撮影、30fpsで再生(実時間の1/4倍速に相当)

 基準機は、現状のREGZAの中では表示遅延が最速と言われるレグザRE1を選択した。画面サイズは19インチの最小サイズの製品「19RE1」を選択している。19RE1は倍速対応でないため、倍速2度振り処理がないので、「ゲームダイレクト2」利用時の遅延は0.2フレーム(実測値2.6ms。1フレームは16.7ms)とされている。

 55X2では、チューナボックスとディスプレイ部が別体型であり、これによる遅延が大きいと予想される。そこで、まず計測したのは、チューナボックス側に接続した場合の表示遅延だ。55X2では、チューナボックス側に接続した機器に対しては低表示遅延モードである「ゲームダイレクト」機能が使えないので、その次に速いとされる「PC」モードを選択している。

【チューナユニット接続】55X2が102、19RE1が105で、55X2が3フレームの遅れ

 結果は、120fps撮影した動画からのキャプチャ画像として示す。大きい方が測定対象機の55X2、右側の小さい方が基準機の19RE1になる。

 測定用テスト動画生成にはフリーウェアの「LCD DELAY CHECKER」を使用した。最上段の数値が大きいほど表示が先行、すなわち相対的に見て表示遅延が少ないと言うことを表している。

 右の写真でわかるように、19RE1の方が105-102=3フレーム進行していることから、55X2では、チューナボックスに接続した機器の映像は最低でも3フレーム遅れで表示されるということになる。


【ディスプレイ部直結】55X2が174、19RE1が175を示しており、55X2が1フレームの遅延

 一方、55X2のディスプレイ部に直結した場合はどうか。55X2では、ディスプレイ部に直結した場合は低表示遅延モードの「ゲームダイレクト」機能が有効になる。

 ディスプレイ部直結の場合は、19RE1よりも1フレーム遅い結果となった。チューナボックス側へ接続するよりも2フレーム短縮されていることが分かる。


55X2が166、19RE1が199を指し示している。カメラに立体視眼鏡をくくりつけて撮影したために写真が暗い

 最後に2D-3D変換機能使用時の表示遅延を調べてみよう。ゲームファンの中には「既存の2Dゲームを55X2の2D-3D変換機能を用いて立体視ゲーミングが楽しめるかも知れない」と期待を寄せている人もいるかも知れない。

 結果は、やはり残念なものとなった。2D-3D変換機能を活用したときの表示遅延は33フレーム。時間にして約0.55秒。このモード中は、PC操作においても、マウスを手で動かしたあとに、画面上のマウスカーソルが動き出すという操作感になる。リアルタイム性が要求されるゲームは、2D-3D変換を活用したプレイは無理そうだ。


 


■ まとめ〜CELL REGZAはどこに向かうのか

 第2世代となり、3D対応となったCELL REGZA。コントラスト表現や階調表現はさらに洗練され、液晶画質の究極形にまで達していると言える。明暗がここまでダイナミックに共存できる55X2の画質のコントラスト感とエネルギー感を目の当たりにすれば、液晶が自発光でないことをとやかく言う人はいなくなるはずだ。

 1つ気になったのは、黄色が強くなった色調の変更についてだ。

 この色の傾向の変更について、東芝に問い合わせてみたところ、「『映画プロ』の色温度を見直した。こうした調整に伴い、『標準』『おまかせ』でも若干緑が強めに入る傾向にあるかも知れない」とのことであった。今回使用した評価機は「特にその傾向が強く表れた可能性がある」とのことだが、実際の量産機もそうしたばらつきが想定されるため、正直な感想を本稿では述べている。

 3D画質に関しても業界最多の16分割スキャニングの効果は大きく他の3D REGZAや競合他機種の3D対応機と比較しても、55X2のクロストーク現象は少ないと感じられる。

 また、遅延こそ大きいが、2D-3D変換の品質も高く、「2Dコンテンツを3Dで遊ぶ」機能としてみれば価値は非常に高い。

 気になった部分もある。それは55X1の時にも指摘した課題。そう、使い勝手の部分だ。通常のREGZAが世代を経るごとに使いやすく、キビキビ動くようになるのに対し、CELL REGZAはこの部分で足踏みしており、一部の機能は、通常のREGZAより使いにくくなってきている。

 例えば、最も基本的な部分として、55X2では電源を入れてから使えるようになるまで1分待たされるのがつらいし、録画再生中の早送り巻き戻しのレスポンスも悪い。多機能である一方、1つ1つのパフォーマンスが重いのも問題。Webブラウザなどはその最たる例だ。

 また、別体型チューナボックスの採用が、使い勝手にまで影響しているのはなんとかしたい。例えばディスプレイ部側の入力端子を表示しているときには、レグザリンク、録画リストはおろか、番組表の呼び出しもできない。操作対象をチューナボックス側に切り換えてからでないとテレビ機能が使えないのは改善すべきだろう。

 それと、「18カ月で性能が2倍になる」と言われるムーアの法則が息づくプロセッサの世界で、そろそろ現行の「1PPE+8SPE構成」の現行型CELLの性能が、CELL REGZAで要求される機能に対してパワー不足となってきている気がする。例えば、55X2には「2D-3D変換で視聴中にテレビの録画が出来ない」という意外な制約がある。バックグラウンドで地デジ7チャンネル分のタイムシフトマシン録画をやっていることを考えれば、「それも仕方なし」と納得できなくもないのだが、実際に使うユーザーは「なぜできないの?」という率直な疑問を抱くことだろう。

 CELL REGZAの発表時には、「ソフトウェア技術で進化できるテレビ」という触れ込みであった。「閉じ切った仕様の機能を使い続ける」とされてきた既存のテレビ製品に対し「進化する価値」の提供が期待された。この1年、先代の55X1ユーザーに対してどんな進化を提供できたのか。そして、この新55X2にはどんな進化を提供していくのか。その“真価”が今、問われているCELL REGZA。今後の動向にも注目していきたい。

(2010年 11月 18日)

[Reported by トライゼット西川善司]

西川善司
大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちらこちら。近著には映像機器の仕組みや原理を解説した「図解 次世代ディスプレイがわかる」(技術評論社:ISBN:978-4774136769)がある。