西田宗千佳の
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「簡単高画質」を実現したソニー「HDR-XR520V」の狙い

~新CMOSや強力手ぶれ補正で可能性を追求~


左からソニー・デジタルイメージング事業本部 PV事業ビジネス1部 天野氏、同部 設計2部 1グループの神澤氏、同事業本部システム&ソフトウエア技術部門 カメラ部4課 担当課長 CAM係統括の妙見氏

 今春発売のビデオカメラの中でも、技術的な新しさという点では、ソニーの「HDR-XR520V」(以下XR520V)および、その下位機種「XR500V」に尽きる。小寺氏のレビューを始め、いくつかの記事がすでに公開されているが、特に画質に関する評価は高い。

 筆者もその意見に賛成だ。ビデオカメラの中ではハイエンド機種に位置づけられるが、プロ・ハイアマ向けの「高級機」ではない。だが、XR520Vで撮影した映像の画質は、HDV以来のハイビジョンビデオカメラの常識を越えた、ワンランク上のクオリティになっている。

 現在、ビデオカメラのビジネスは、様々な理由から転換点を迎えている。そんな中で、ソニーはなにを狙ってこの機種を投入したのだろうか? 開発陣に開発コンセプトを聞いた。


HDR-XR520V

■ 裏面照射型CMOSで暗部ノイズ激減。狙いは「撮影時に見たまま」の映像

裏面照射型CMOSの「Exmor R」

 すでに述べたように、HDR-XR520Vの最大の魅力は「画質」だ。といっても、明るい日中のように、撮影条件が良い場面では、さほど差が出るわけではない。真価は、「条件が悪い時」に現れる。

 例えば、光量が少ない場面。レンズ径が小さく、撮像素子の面積も小さくなりがちな民生用ビデオカメラの場合、どうしてもノイズが多く、見づらい映像になってしまう。だが、HDR-XR520Vの映像は大きく異なる。夜景や、ろうそく明かりだけで撮影した映像であっても、ノイズは非常に少なくクリアなものになる。

 下に掲載しているのが、ソニー提供の、XR520Vと旧機種(HDR-SR12)の夜景撮影時の画質比較映像だ。縮小、圧縮された映像なのでノイズ感が強調され、さらに差が大きく見えるかもしれないが、実際、XR520Vの映像のノイズの少なさはすばらしいものだ。

 このような映像が実現した理由は、撮像素子として採用した「Exmor R」こと「裏面照射型CMOSセンサー」の能力にある。


HDR-XR520Vの夜景撮影(映像提供ソニー)HDR-SR12の夜景撮影(映像提供ソニー)

 
 通常のCMOSセンサーは、製造上の問題から、光を受け取って電気信号に変えるフォトダイオードの「上」に回路がある構造になっている。光は回路内の開口部を通ってフォトダイオードに届くため、どうしても光の一部が遮られてしまう。あるCMOSセンサー技術者曰く、「画素の多いセンサーの場合、1画素単位でミクロに見れば、『井戸の底で光を受ける』ようなもの」というほどだ。

Exmor Rの構造の模式図。簡単に言えば、光を邪魔するものがない分だけ、多くの光を受けられるので、暗部再現性が高まる。

 裏面照射型CMOSセンサーは、従来のセンサーの表と裏を、ひっくり返したような構造をもっている。フォトダイオードの裏面のシリコンウエハーを研磨して光を透過するようにし、受光部を回路部が遮らないようにしたわけだ。XR520Vと、下位機種の500Vに採用されたExmor Rの場合、同社の前年の機種に比べ、感度は約2倍になっているという。

 XR520Vの撮像素子関連部分の開発を担当した、ソニー・デジタルイメージング事業本部 システム&ソフトウエア技術部門 カメラ部4課 担当課長 CAM係統括の妙見浩資氏は、「裏面照射型センサーの特徴を生かすため、設定にも工夫をしている」と話す。

妙見氏:感度を上げるだけならば、シャッター速度を落とし、オートスローを入れることでも実現できます。しかしその場合、手ぶれや被写体ぶれが防げません。また、照度を稼ぐなら全体を明るく持ち上げてもいい。しかしそうすると、黒が締まらなくなって不自然になります。XR520Vの場合には、そういったことをしていません。従来機種同様、オートスローやLow Lux(低照度)モードも用意されていますが、標準ではオフになっています。ですから、標準設定のままで雰囲気のある映像が、簡単に撮れるようになっているんです。今回は、主に半導体プロセスの進化により、このような技術が使えるようになったので、私どももそれに合わせ、画質を調整しています。

 ノイズリダクション(NR)をかける際、時間軸方向に映像を重ね、積分的に処理することになります。XR520Vにも使っているわけですが、あまり強くかけると、スローシャッターと同じく、映像が止まったようになってしまう。XR520Vではあまり(NRを)かけなくても良くなったため、そういった部分で改善が見られるはずです。逆に明るい部分ではさほど問題がないので、特別に色を変えるようなことはしていません。

 今回のセンサーがあるから、というわけではないですが、「できるだけ撮影した時に見たまま」になるよう心掛けています。今回は特に、そう感じられるのではないでしょうか。

 筆者がXR520Vの画質を評価する点もここにある。例えば夜景を撮影した場合、ノイズがないのはもちろんだが、「暗いところが暗く写るが、見えなくなるわけではない」映像になる。ちょっと極端な言い方をすれば、「ビデオカメラ臭さのない映像」になるのだ。夜景を撮る時間は短くとも、照明の少ない室内で撮影する、ということは少なくないはず。そういった時に、自然で見やすい映像になりやすいというのは、ビデオカメラにとって大きな魅力といえる。


■ 「Gレンズ」「BIONZ」「Exmor R」のセットで高画質化。従来比10倍? の手ぶれ防止機能

 妙見氏とともに、XR520Vの開発を担当した、ソニー・デジタルイメージング事業本部 パーソナルビデオ事業部 設計2部 1グループの神澤貴雄氏は、「XR520Vの画質は、Xmor Rだけで実現できているものではない」と話す。

神澤XR520Vでは、独自開発の「Gレンズ」と、画像処理チップ「BIONZ」、そして「Exmor R」がセットで使われています。これらの組み合わせにより、大幅な画質向上を実現したのです。どれかだけで改善した、とうわけではないですね。

XR520Vの「アクティブモード」の動作概念図。緑色の線は、歩いた際の「ぶれ」の位置をプロットしたもの。アクティブモードでは完全に範囲内に収まっているXR520Vは、アクティブモードを実現するために専用LSIを搭載。ぶれをより高速に処理することで、瞬間的で大きなぶれも補正できるようになった。

 その成果の一つが、「手ぶれ防止機能」の向上だ。今や当たり前のように搭載されている光学式手ぶれ防止機能だが、制限も少なくない。移動しながらの撮影では、ぶれをきちんと補正しきれない場合がほとんどだ。スチルと違いムービーでは、一瞬補正できればOK、というわけにはいかないため、どうしても映像は見づらいものになる。だから、「手ぶれ補正機能はあんまり信頼していない」という人も少なくない。

 だが、XR520Vは違う。新しく用意された「アクティブモード」を利用すると、従来に比べ、かなりはっきりと手ぶれ補正の効果が見込めるようになった。ワイド気味の映像を、ゆっくりと歩きで撮影するなら、おおむね手ぶれがなくなる、といっていいほどだ。

 アクティブモードとは、光学式手ぶれ補正における「補正角」を、従来に比べ大きく取れるようにしたものである。図を見ていただければおわかりのように、補正のためにレンズが動く範囲を大きくすることで、従来は補正しきれなかったぶれまで補正できるようにしているわけだ。

 

XR520のアクティブモードで手ぶれを軽減(映像提供:ソニー)【参考】旧モデルHDR-SR11の撮影時(映像提供:ソニー)
 

神澤アクティブモードは、Gレンズの補正機能に修正を加えた上に、ぶれを認識して補正するための専用LSIを、別途新搭載することで実現しています。補正範囲が広がった分、より高速かつ高精度に補正処理を行う必要があるためです。このLSIを搭載できたことが、アクティブモード実現には大きな役割を果たしています。

 ただし、アクティブモードにも弱点はある。他の光学式手ぶれ防止機能と同様、テレ端では効果が薄くなる。今回採用された機構の場合には、ワイド端では従来機に比べ10倍の補正角度を持てるものの、テレ端では従来機と変わらない効果しか得られない。また、「特定の動作」をした場合には、強い補正の副作用として、映像が糸を引いたような感じになる。

神澤三脚に固定し、ゆっくりとパンをするような感じで撮影した場合には、映像が乱れる可能性もあります。そういった時には、従来と同じ補正を行う「スタンダードモード」に変えて使っていただくのがいいでしょう。元々、三脚利用時には、手ぶれ補正を切って使われる方も多いようですが。

 Gレンズのもう一つの特徴は、絞りが「菱形」から「虹彩絞り」に変わったことである。これによって、ぼけ味が自然できれいな映像になる。撮影する映像がHDになったことで、背景のぼけ味を楽しむ余地も増えているから、これは非常にうれしいことだ。余談だが、テレビ番組で紹介される「ビデオカメラで撮影されたUFO映像」の正体の多くは、星などの光点が菱形絞りでぼけて写ったもの、と言われている。虹彩絞りが一般的になれば、そういう現象も減るかも知れない。

 通常の菱形絞りから、これを円形に近い形状の虹彩絞りにするためには、羽の枚数を増やすことになる。しかし、それによってレンズ自体が大きくなってしまう。XR520V/500Vでは、羽の枚数を増やしつつも、レンズ自体の大きさを抑えるために、羽の形状と動かし方を工夫し、比較的小型のレンズユニットでも虹彩絞りを実現できたという。どのように「工夫」したかは、「独自のノウハウであり、コメントできない」(ソニー・広報)
としている。

  神澤氏は「(手ぶれと絞りの改善の)どちらも、ある程度大きなレンズユニットを搭載できるスペースがある、XR520Vのボディだから可能になった、という部分があります」と話す。コストの問題もあるだろうが、小型化を優先した下位機種には搭載されていない。例えば、XR520Vと同時に発表された「HDR-CX120」の場合、手ぶれ補正は電子式であり、絞りも菱形のままだ。今後の小型機への導入については「市場の動向を見て検討する」という。

逆光補正は、顔認識とDレンジオプティマイザーが併用され、より高精度に働くようになった

 画像処理チップBIONZは、「チップそのものは前機種と同じもの」(神澤氏)である。だが、ソフト的な改善を行うことで、画質向上を図っている。

 最も大きな特徴は、「逆光補正モード」がなくなり、完全自動になったことだ。特別な設定をしなくても、自動でいつでも最適な明るさで撮影ができる。色が飛んでしまうこともほとんどない。逆光補正は、BIONZに搭載されている「Dレンジオプティマイザー」の機能であり、同じ機能がハンディカムから一眼レフのαまで流用されている。今回は、「パラメータや検出精度を向上させ、クオリティをアップしている」(妙見氏)のだという。

 面白いのは、この機能を、ソニーお得意の「顔認識」と組み合わせている点である。逆光が特に問題となるのは、表情が暗くなって見えなくなる時。だから、まず顔を認識し、その周囲だけを自然に補正することで、全体がより良い映像になるよう、自動補正してくれるわけだ。


HDR-XR520Vでは、BIONZのアルゴリズム改善や顔認識術の向上により逆光補正性能を大幅に改善している【参考】従来モデル

■ 出荷時状態で「誰でも高画質」を狙う。数字競争でなく「絵を見てください」

 XR520Vにおける高画質化機能のほとんどには、一つの共通項がある。それは「出荷時設定でオンになっていて、ほぼ自動ですべてが有効に働く」という点だ。妙見氏は、その設計思想を次のように話す。

妙見カメラのクラスによっても異なるでしょうが、ほとんどのお客様は設定を変更することなく利用しています。むしろ、「たまたまどこかに触ったら設定が変わってしまったので、元に戻したい」という話が多いくらいです。とすれば、お買い求めいただいた状態そのままでいかにきれいに撮れるか、が重要だと考えています。

神澤どれだけ簡単に撮影できるか、にこだわりました。そこが、他社製品に対しても、動画対応デジタルカメラに対しても、差別化ポイントだと思います。

 暗いところでのノイズを減らしたのも、この発想に近い方針に基づくものであるようだ。

妙見HDになり、カメラも小型化する中で、(撮像素子の)セルに入る光はどんどん少なくなっていきます。そこでいかにきれいな絵を作るかということは、我々だけでなく、他社さんも同様に苦労してきた部分です。今回は、そこがうまくいったと思います。同様に、なんとかしたいと考えていたのが「数字の競争」です。一時、最低撮影照度は何ルクスか、といった競争も行なわれていましたが、そこに対し、「数字じゃないんですよ、絵を見てください」と言えるものが出来たと思っています。

 この妙見氏の意見にはまったく賛成だ。無理矢理ゲインを上げて撮影したものよりも、本当に暗いところは暗いまま、でも顔などの重要部分は見えるようにして、しかもノイズのない映像になる、という形が、やはり理想的である。すべてのシーンできれいな絵になるかは検証できなかったが、「オートできれいに」という設計思想通り、設定をほとんどいじらずに撮影しても、違和感を感じる映像にはならなかった。

 他方気になったのは、最高ビットレートがいまだ16Mbpsであることだ。キヤノンが24Mbpsモードを採用しており、水面や森などの、圧縮ノイズが起きやすいシーンで強みを発揮していることを考えると、そろそろビットレートを上げてもいいように思える。だが神澤氏は、「互換性を考えて今回は見送った」と説明する。

神澤現在多くのお客様が、DVDへの直接ダビングを行っています。ビットレートを上げるとそれができなくなるため、お客様が混乱する可能性があります。ですので、今回のセットとしては見送りました。保存する環境が日常的に揃ってくれば、ビットレート変更も検討したいと考えていますが、それまでは、パラメータ変更などの調整で画質向上を図りたいと思います。

 確かに、AVCHDの映像データ保存は大きな課題である。パソコンに全部を蓄積している人はまだ少ないし、かといって、カメラ内にそのまま記録し続けるのも不安である。はっきりした数は不明だが、AVCHDビデオカメラ購入者の多くが、ダイレクト記録用のDVDドライブを購入している現状を見ると、ソニーの判断も頷けないわけではない。

 しかし、やはりビットレートの差は大きく、不満を感じる。1月のCESでは、アメリカ市場向けにBDへダイレクト記録する製品も発表している。日本市場への投入予定はまだ明らかになっていないが、仮にソニーがビットレートを上げる日が来るとすれば、BDドライブが普及しはじめてから、という事になるのかも知れない。個人的には、「今回の製品にあわせてBDドライブを製品化し、ビットレートを上げる」くらいの決断を見せて欲しかったところである。


■ 撮りっぱなし防止に「GPS」と「ハイライト再生」。「ビデオカメラ」の価値を追求

 XR520Vには、画質以外にもトピックがある。それは、「GPS」と「ハイライト再生」の搭載だ。

GPSはディスプレイ部の裏に入っている。地図機能を使い、「撮影済みの映像がどこで撮られたか」を手がかりに、映像を探すことができる

 GPSの搭載により、写真と動画両方に位置情報を記録できるようになった。地図表示機能も搭載されており、ビデオカメラ自体で、「いまどこにいるのか」「どこで映像を撮影したのか」が確認できるようになっている。また、GPSから時間情報が取得できるため、「移動地点にあわせ、現地時間に時計を合わせ直す」ことが自動で行なわれる。海外に行っても、ビデオカメラやカメラの時間合わせをこまめにする人は少なく、非常に有効といえるだろう。

 とはいえこの機能、ナビゲーションには使えない。撮影開始時の位置を記録する、という形の機能だからだ。自動車などで、撮影中に大きく移動した場合でも、その間の位置は記録されていない。

 ちなみに、GPS機能はかなり省電力化が進んでいるらしく、「オンにしたままでも、バッテリー持続時間にはほとんど変化はない」(神澤氏)のだそうだ。

 地図データは北米のカーナビなどでも利用されているNAVITEQ製。世界中の地図が入っているが、日本国内でも都市詳細図がないのが残念だ。なお、GPS情報は、AVCHDの場合、規格内で位置情報をサポートしているので、その情報を記録/利用しているという。一方、XR520V/500VではMPEG-2記録もできるが、この場合はフォーマットとしてしてサポートされてないので、そのための領域を用意して格納しているという。

 もう一つの機能「ハイライト再生」は、その名の通り、記録された映像から注目点を抜き出し、短い時間の中で音楽と合わせて再生してくれるものだ。面白いのは、撮影時に得た「顔が写っているか」「写真を一緒に撮影したか」といった情報を生かしてハイライトシーンを抽出することだ。

映像から重要な部分だけを抽出して短時間にまとめて再生する「ハイライト再生」は、録画時の情報を使って行われる。映像解析などを伴わないので、再生開始までの時間が短いのが特徴だ

神澤顔が写っているシーンや、同時に静止画を撮影したシーンは重要である、と判断し、ハイライト再生するようにしています。それらの情報は、映像の撮影時に別途記録され、「ハイライト再生」を行なった時には、その情報が使われます。

 この2つの機能に共通するのは、「ビデオカメラそのもので、ビデオカメラ内の映像を楽しむための機能である」ということだ。ソニーは、自社のビデオカメラやデジタルカメラに「Picture Motion Browser」(PMB)というWindows用のソフトを付属させ、映像を簡単に管理し、楽しめるよう配慮している。XR520Vに搭載されたPMBも機能アップが図られており、この路線は継続しているのだが、さらに「ビデオカメラだけでも楽しむ」という路線を追求したわけだ。

神澤せっかく撮影した映像も、HDD内に貯めっぱなし……という方がたくさんいらっしゃいます。そういった方々に、出来る限り映像を楽しんでいただきたい、という発想で搭載したものです。まだまだ初めての試みで、まだまだな部分が多いとは思いますが、今後改善していきたいと思います。

 撮りっぱなしで見ない……というのは、ビデオカメラが抱える大きな問題の一つだ。特に日本の場合、「子供の成長を撮影する」というニーズが大きいことも影響しているだろう。思い出は大切なものだが、子供が成長するに従い、映像の量は多くなり、見直す時間も短くなっていく。

 他方、成長を続けているのがデジカメの動画撮影機能だ。長時間の撮影には向かないが、その場でさっと撮影できることから、より「日常的な利用」が可能。子供の成長記録とは違う方向性で成長している市場だ。特に北米市場では、低価格なMPEG-4対応ビデオカメラが増え、ビデオカメラ市場を侵食している。

神澤映像を撮るだけなら、携帯電話でもなんでも撮影できます。ですが、我々の作っているのはビデオカメラ。高画質な映像を簡単に撮影できる、という事が価値だと思います。特に最近は、液晶テレビが大型化したので、画質が悪く手ぶれのひどい映像はより見づらくなっていますから、画質は重要です。

 ただ、日本の市場もだんだんと、小型で手軽なものを求める声も大きくなってきているので、同時に小型な「HDR-CX120」のような製品もラインナップさせていただきました。すべてを持ったものから手軽なものまで、幅広いラインナップが重要だと考えています。

 「そこそこの品質ならば低価格に、どのメーカーでも実現できる」のがデジタル技術の良さであり怖さだ。特にビデオカメラの場合、「家庭用はこのくらいの性能」というイメージができあがっており、「画質はもう十分だから別の価値を」と考える人が増えている。画質への要望が高い日本においては、アメリカほどいっきにビデオカメラが低価格なMPEG-4カメラに浸食されることはないかも知れない。だが、「ハイビジョンが撮れるならビデオカメラでなくても同じ」というイメージが定着してしまえば、日本でもビデオカメラの地盤沈下は起こる。

 今回、ソニーがXR520Vでこれだけの新機軸を導入したのは、「ここでビデオカメラの意地を見せたい」という意識があったからなのではないだろうか。

 確かに、画質だけを求める人は多くはないかもしれない。HDR-CX120のような小型製品や、三洋のXactiのようなデジカメ由来の製品の方がいい、と思う人は多いことだろう。しかし、XR520Vが見せたような「大きなジャンプ」を見ることで、ビデオカメラの価値はもう一度見直される可能性もある。そこで、「ハイエンド向けのこだわり製品」でなく、「簡単に高画質」を狙うところが、今の市場を表している。これにより、もういちどビデオカメラ市場が元気になってくれると面白いのだが。

(2009年 3月 13日)


= 西田宗千佳 = 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、月刊宝島、週刊朝日、週刊東洋経済、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、家電情報サイト「教えて!家電」(ALBELT社)などに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。

[Reported by 西田宗千佳]