小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第797回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

デジカメやプロジェクタをスマホに合体! 全ニーズ対応Motorola「Moto Z」

スマートフォンで復活するモトローラ

 3月16日、モトローラ・モビリティ・ジャパンは国内市場向けのSIMフリー新スマホとして、「Moto G5」と「Moto G5 Plus」の2モデルを発表した。3月31日発売で、価格はそれぞれ22,800円、35,800円と、「モトローラでこの値段なら」と考えさせられる設定だ。一方、AV的に注目度が高いのが、昨年9月から発売されている薄型ハイエンド機「Moto Z」と「Moto Z Play」、そしてそれらに取り付けられるユニット型のアクセサリ「Moto Mods」だ。

スマートフォンをハードウェア的に拡張するMods

 Moto Zシリーズには背面に集合端子があり、背面全体にマグネットでくっつける形での様々なアクセサリが展開されている。それが「Mods」だ。モトローラからも各種Modsが販売されており、3月16日の発表会では、新たにビークルドック、チャージングアダプタ、ワイヤレスチャージング、ターボチャージャーの4種類も日本市場投入が発表された。サードパーティ製のModsも出てきている。

3月16日に日本投入が発表された新Mods

 Moto Z用Modsで一番知られているのは、ハッセルブラッドブランドで発売されているカメラユニット「Hasselblad True Zoom」だ。日本のMoto Zファミリーユーザーのうち、なんと43.5%が購入しているという。世界的に見て、最も高い装着率だ。

 モトローラ・モビリティ・ジャパン社長のダニー・アダモポウロス氏は、スマートフォンのニーズは地域によって大きく異なるという。そうした異なるニーズを埋めるのがModsであり、日本ではカメラの重要性が非常に高いという事であろう。今後は本連載でも、スマートフォンのカメラ機能に注目していきたい。

 今回はそのHasselblad True Zoomを中心に、スマートフォンの機能を拡大する3つのModsを試してみることにした。

スマホ+光学10倍ズーム、「Hasselblad True Zoom」

 Moto ZはプロセッサにSnapdragon 820を搭載する5.5インチのAndroidスマートフォンで、世界最薄を標榜する。発売当初は6.0.1 Marshmallow搭載だったが、すでにアップデータが配付されて現在は7.0 Nougatとなっている。価格はストレージ64GBで直販92,664円(税込)だ。

昨年9月に発売開始されたMoto Z
世界最薄を名乗るだけあって、背面カバー付きでもかなりの薄さ

 メインカメラは1,300万画素/F1.8で、レンズ画角情報は公開されていない。レーザーAF、光学手ぶれ補正を搭載する。動画でも手ぶれ補正が使え、最大4K/30pで撮影できる。

4K動画も撮影できるメインカメラ
背面カバーを外して、Modsに付け替える
カバーを外すとマルチコネクタが見える

 同じModsが使える廉価版Moto Z Playは、厚さはMoto Zには及ばないものの、Snapdragon 625搭載の、5.5型ディスプレイモデル。メインカメラは1,600万画素/F2.0で、こちらは静止画での光学手ぶれ補正は無く、動画でのみ手ぶれ補正が効く。4K/30p撮影はできる。価格はストレージ32GBで直販58,104円(税込)だ。今回はMoto Zをメインに使用している。

Moto Zよりも価格を押さえたMoto Z Play

 さて注目のHasselbladだが、このブランドをきちんとこれを語れる人は、実はそう多くないのではないかと思う。中判フィルムながら一眼レフ採用の小型(もちろん従来機に比べてだが)カメラの名門だが、プロカメラマンでも日々中判を使っているという人は少数だ。筆者も実際に使ったわけではないので、詳しいことは知らない。またデジタルカメラ時代となっても中判にこだわっており、一般のユーザーが気軽に買うようなものでもない。

 このHasselbladがデザインしたカメラユニットが「Hasselblad True Zoom」というわけである。Hasselblad自身には小型沈胴式レンズや小型センサーの、いわゆる「コンデジ」製品はないため、光学設計はどこか別のメーカーが行なっているということだろう。直販価格は31,104円(税込)だ。

見た目は大型コンデジ、Hasselblad True Zoom

 True Zoom本体部は、背面カバーを付けたMoto Zとほぼ同じ厚みで、グリップ部とレンズ部が突出している作りだ。本体部にバッテリーはなく、Moto Z側から電源供給を受ける。モニターも記録部もないため、重量は145gしかなく、かなり軽量だ。

Moto Zにピタリとくっつける

 レンズは3段の沈胴式で、焦点距離は35mm換算で25~250mm、F3.5~6.5の光学10倍ズーム。センサーは1/2.3型の裏面照射CMOS。手ぶれ補正は、写真撮影時は光学だが、動画撮影時には電子補正となる。よって動画の解像度は、1080/30p止まりとなるのが残念だ。

レンズは3段の沈胴式で、光学10倍ズーム

 グリップ部上にシャッターボタンがあり、その周囲にあるレバーがズームだ。電源はスマホ側から取る一方で、カメラユニット側には電源ボタンがある。Modsの性格上、写真を撮らない時もずっとくっつけている可能性もあるため、個別にカメラ機能のON/OFFができるようにしたのだろう。

浅いグリップ部にシャッターとズームレバー、電源ボタンがある

 なおTrue Zoomをくっつけている状態では、Moto Zの背面カメラは完全に塞がれてしまう。従ってカメラアプリを起動すると、True Zoom側の電源が自動的に入り、撮影ができるようになる。

カメラ設定も独自機能となる

気になる画質は……

 では早速撮影してみよう。True Zoomを合体した状態だと、重くはないがかなり大きなカメラとなる。そのためスマートフォンとしての機動性がかなり落ちる事は、覚悟しなければならない。それでも多くのユーザーが買ったということは、やはりそれだけスマホと一体化している事に意義を求めたということであろう。

コンパクトデジカメとしてはやや大ぶり

 ワイド端で画角を比較すると、若干True Zoom側が広い程度なので、Moto Zのメインカメラは35mm換算で28mm程度ではないかと推測する。

Moto Zメインカメラ
True Zoomワイド端
True Zoomテレ端

 まず写真から撮り比べてみると、True Zoomは光学ズームがあるので画角のバリエーションが飛躍的に拡がるのは当然である。

True Zoomで撮影。色味に味がある
同じ位置からMoto Zで撮影。発色に物足りなさを感じる

 それだけでも使う価値があるのだが、絵の写りとしてもかなり違う。メインカメラもかなりシャープだが、周辺にキレの悪さがある。一方True Zoomは周辺まで綺麗に結像しており、満足度は高い。発色も自然で色味が強く、バランス感のよい絵作りを感じさせる。

True Zoomで撮影。発色がよく、隅々までよく解像している
Moto Zで撮影。色味が暖色で、周辺の結像に難がある

 動画に関しては、色味など映像のテイストは静止画と同じだ。ただMoto Zのカメラで撮影すれば4Kで撮れる。HDサイズに縮小すれば必然的に解像感は上がっていくので、シャッキリ感はTrue Zoomよりも良好になり、静止画の印象とは逆転する。

Moto Zによる4K動画画角
True Zoomのワイド端

 手ぶれ補正については、Moto Zは光学、True Zoomは電子補正だ。歩行時の補正効果はあまり違いはないが、手持ち固定で構えた時の補正力は光学のMoto Zのほうが上だ。AFの追従性については、アルゴリズムが同じなのか、遠景から近景に移った時のフォーカスの動きなどはかなり似ている。

歩行時ではあまり補正力に差がない
stab_hd.mov(39.00MB)
手持ち固定で比較すると補正力に差がある
motoz_4k.mov(94.85MB)

 もちろん、True Zoomでは光学ズームが使えるというメリットは健在だ。しかし静止画ほどの優位性はあまりないように思える。

どこでも写真をシェア、「Insta-Share Projector」

 ここ1~2年ぐらいの間で、モバイルを主眼とした小型プロジェクタが急速にものになってきた。明るさ、解像度の面で、実用的になってきたのだ。特にレーザープロジェクタは、小型・低消費電力化と業界全体の安全性に対する努力が実る形で、多種多様な製品が市場に出てくるようになった。さらにはヘッドマウントディスプレイにもレーザーによる網膜走査型が登場し、昨年のCEATECでは経済産業大臣賞を受賞するなど、注目の技術となりつつある。

 小型のプロジェクタを持ち歩く人も、あと1~2年で珍しくなくなりそうだが、入力ソースとしては圧倒的にスマートフォンの時代になっていくだろう。プロジェクタが内蔵のスマートフォンが増えるまで、あと少しといったところかもしれない。

 そんな時代を先取りするのが、Modsの「Insta-Share Projector」と言える。レーザー照射型ではなくDLPだが、くっつける事でスマホ一体のプロジェクタとして利用できる。OS画面はもちろんのこと、写真や動画も投影可能だ。ネットでの価格は、3製品の中ではもっとも高く、35,000円強。

Insta-Share Projector

 解像度は854×480で明るさ50ルーメン。コントラスト比400:1となっている。レンズ横にフォーカス用のダイヤルがあり、最大では70型まで投影できるが、当然そのぶん暗くなる。電気を消せば、白い天井に投影してなんとか見えるといった明るさだ。さすがに投影は電力を食うのか、Mods本体内にバッテリーを内蔵しており、USB-C端子で充電できるようになっている。

電源ボタンとフォーカスダイヤルがある
充電端子は密着面にある

 上下角に対しては自動台形補正機能を搭載しており、壁に向かって適当に投影しても、正しいパースで表示する。背面は大きなスタンドになっており、角度を自由に設定できる。設置は常に横向きになるが、スマホ画面が縦表示なのか横表示なのかを認識して、縦にも横にも自動的にローテーションして表示してくれる。つまりOS画面は縦投影だが、写真や動画では自動的に横投影となる。

スタンドで投影角を変えられる
明るさは50ルーメン
自動台形補正機能を備える

 従来スマホ内のコンテンツを誰かと楽しもうとするなら、せいぜい2人で同じ画面を覗き込みながらという使い方しかできなかった。それ以上になると、スマホを回して順次回覧するスタイルだ。それでは全員同時に笑ったりしゃべったりできない。

 そういうときにこうしたプロジェクタがあれば、だいぶ解決する。単に見せたいものを見せるというためではなく、プロジェクタは円滑なコミュニケーションのために使うツールに化けつつある。

写真や動画を複数人で共有

「ちゃんとしたサウンド」を実現する「JBL SoundBoost」

 先日テレビを見ていて、若手タレントが自宅に客を招き、「じゃあ音楽でもかけよう」といってスマホでそのまま音楽を流しているのを見て、心底がっかりした。スマートフォンのスピーカーは、主に音声を再生するのに最適化されており、音楽を再生すると音声帯域しか聞こえてこない。つまりおしゃべりのBGMとしては、役に立たないばかりか、むしろ邪魔なのである。

 スマートフォン向けBluetoothスピーカーも人気だが、いちいちそれに繋ぐのも面倒、という人もいるのだろう。スマホでなんでもライトに済ませてしまうというのが、一つの文化になりつつあるようだが、それは決して豊かな生活とは言えないのではないか。

 Moto Z用のスピーカーMods「JBL SoundBoost」を見て、そんなことを考えた。これはもう説明不要だろう。スマホ背面にくっつければご機嫌なサウンドで鳴ってくれるスピーカーである。ネットでの価格は、13,000円弱といったところだ。

JBL SoundBoost

 Bluetoothでもなく、端子直結なので、ペアリング動作も不要だ。こちらも電力を食うのか、スピーカー側にバッテリを内蔵しており、フル充電で連続10時間の音楽再生が楽しめる。

 スピーカーとしては、27mm径のフルレンジが2つ内蔵されており、出力は3W+3Wとなっている。周波数特性は200Hz~20kHzで、そのサイズ感からもあまり低域は期待できないところだ。

 スピーカーを上向きにして聴いたところ、高域が強すぎてあまりよくなかった。実は中央部の朱色のバーがスタンドとなり、全体を斜めに立てて使用できる。こうするとスピーカーは背面を向くことになり、高域が少しオフぎみとなるが、全体のバランスとしてはだいぶ良くなる。ただ元々低域が出ない事には変わりないので、あくまでもボーカル中心ということになる。

ロゴ部分がスタンドになっている

 通話がかかってきた時には、スピーカーフォンとしても使えるようになっている。ハンズフリー通話の時には、スマホ内蔵スピーカーよりも相手の声がリッチに聴き取れるわけだ。

総論

 毎年毎年多くのメーカーからスマートフォンの新モデルが登場し、性能を競っているが、世界的に見てもSIMフリー端末の低価格路線は避けられず、日本にもその波が押し寄せている。

 ハードウェアとしてのスマートフォンは、それ自体で語れる部分が少なくなってきている。プロセッサパワー、メモリ容量、カメラ性能、ディスプレイ性能、サイズ、これだけの要素で差別化を図れというのは難しい話だ。

 どれかの機能を尖らせればユーザーを囲い込めるが、パイは確実に小さくなるので、ビジネスとしてのバランスが悪い。だが尖った機能を切り離してくっつけられるようにすれば、本体とは別の多彩なビジネスが可能になる。

 Moto ZおよびModsはそういうビジネスなわけだが、言うほど上手く成功できるメーカーは少ない。モトローラにとってはかなりの博打ではあっただろうが、自社だけではなく他社のブランドも借りながら、上手く回転し始めているようだ。

 単なるケース商売ではなく、外観が変えられるというスマートフォンが一定の人気を確保しつつある。それに加えて、機能も着せ替えという方向性がどれぐらい道を開けるのか。モトローラの今後の舵取りに注目していきたい。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。