小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第796回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

4K過渡期にジャストミート!? シャープのUHD対応BDレコーダ「BD-UT2100」

4K夜明け前

 久々のレコーダ、そして久々のシャープ製品である。前回シャープ製品をレビューしたのが、4K試験放送が録れるレコーダ「TU-UD1000」だったので、およそ2年半ぶりという事になる。

シャープ「BD-UT2100」

 さてその4K放送は、現在124/128度CSを用いた「スカパー! プレミアム」で本放送が開始されているが、今後は2018年12月1日からBSでの本放送が開始される。そこがある意味4K放送の本命とされているわけだが、すでに4Kテレビは普及が始まっており、4KのUltra HD Blu-rayソフトも登場しはじめている。レコーダにも、4Kとマッチする製品が求められている。

 今回取り上げるシャープ「BD-UT2100」は、まさに「プレ4K時代」にふさわしい機能を持った製品だ。Ultra HD Blu-rayプレーヤーとしての機能もあり、そこに関してはパナソニックオンリーだった市場に対して、インパクトを与えるはずだ。

 これまであまりシャープのレコーダを取り上げてこなかったので、今回は以前からの機能も含め、その特徴をじっくり見ていこう。

薄型・シンプル・低価格を実現

 この3月に発売が開始されるのは、トリプルチューナー搭載機の「BD-UT3100」、「BD-UT2100」、「BD-UT1100」の3モデルだ。それぞれHDD容量が3TB、2TB、1TBと異なるほかは、機能的には同じだ。店頭予想価格は各12万円前後、10万円前後、9万円前後となっている。今回は真ん中の「BD-UT2100」をお借りしている。

この春の「真ん中」モデル、BD-UT2100

 過去シャープのレコーダは、中央部にディスクを連想させる円形のHDDとDVDの切り換えボタンがある特徴的なデザインだったが、昨今は表示部のメディア表示にその名残を残すのみで、本体としてはシンプルな薄型ボディとなっている。これはシャープに限ったことではなく、他社でもあまり凝ったデザインのものは少なくなって、シンプルな薄型路線でまとまりつつある。

メディアを示す丸は、表示部の中で健在

 フロントパネルは上が黒、下がシルバーの2トーンだが、それぞれが別れるわけではなく、フタとしては全体が下に開くスタイルだ。

フロントパネルは上下2段に色分けされている

 左側にB-CASカード、中央部にディスプレイ、右側にUHD BDドライブとなっており、多くのレコーダとは左右逆の配置になっている。天面前方のやや中央寄りに電源とイジェクトボタンがある。ボタンを端っこに付けるメーカーが多い中、独特のデザインセンスだ。

左側にB-CASカードスロット
右側がBlu-rayドライブ
電源とイジェクトボタンはやや中央寄り

 UHD BDドライブは、パイオニアとの共同開発。高速回転するUHD BDディスクに対応すべく、防振・防塵性能や静粛性を高めている。新開発の映像エンジン「4KマスターエンジンBD-PRO」を搭載し、UHD BDのHDR再生能力としては「HDR10」対応だが、ドルビービジョンには非対応。色域はBT.2020対応となっている。UHD BD再生に対応している割に、価格的には一般的なトリプルチューナ機と変わらないのもポイントだ。

 背面を見てみよう。本機は前面にメーカーロゴとBlu-rayロゴしかないが、背面に対応フォーマットのロゴが並んでおり、BDXLやBlu-ray 3Dにも対応していることがわかる。

多くのロゴが付けられた背面

 RF入力は地上波とBS/CS混合波の2系統、デジタル音声は光のみ、HDMI出力は1系統だ。LANはWi-FiとEthrtnet対応で、HDD増設用のUSB端子がある。

アナログのインターフェースを廃止した端子部

 リモコンも見ておこう。中央部に十字キーを配置したオーソドックスなスタイルだ。ホームボタンは中央部にあるが、あまり目立たない。その代わり、シャープレコーダのウリである「ドラ丸」と、番組内容の「まるわかり」ボタンが大きめにフィーチャーされている。

付属のリモコン
「ドラ丸」と「まるわかり」を大きめにフィーチャー

ユニークな番組表と自動録画

 では中身の方を見ていこう。本機のポイントは、番組表にかなりの重点を置いているところだ。

 4Kテレビに接続した際には、最初から4K解像度に対応した「4Kビジュアル番組表」が表示される。HD解像度の番組表をアップコンバートして4K出力するのではないため、細かい文字も高精細に表示できる。ただ、テレビはそれほど近くでは見ないため、あまり情報量が多くても読み切れない。実際にその威力が発揮されるケースは限られるだろう。

4K対応の番組表(画面はキャプチャの都合でHD解像度)

 また本機の番組表は、放送波ごとに切り換えるのではなく、横にズラッと繋がっている。地上波、BS、CSとシームレスに見られるのは面白い。ただ放送を見る場合はちゃんと地上波、BS、CSで別れており、選曲ボタンをアップしていっても地上波からBSに切り替わるわけではない。

 また番組情報として出演者一覧を見ると、出演者が顔写真入りで一覧表示されるのは面白い。名前の下にある数は、現在取得している番組情報内で確認されている出演番組数だ。

番組の出演者がサムネイルで一覧できる

 またここで出演者を選ぶと、本人のプロフィールと出演番組が一覧できる。意外な趣味があったり、デビュー作が確認できたりと、見てて飽きない機能に仕上がっている。

出演者のプロフィールは見るだけでも楽しい

 また通常の番組表機能とは別に、「裏番組」という番組表がある。これは現在放送中の番組を横に一覧できる機能で、こちらでも番組がサムネイルで表示されるほか、出演者もわかる。録画にこだわらず、通常の番組視聴でも使いたい機能だ。

放送中にチェックしたい「裏番組」画面

 「おすすめ・特集」は、注目番組をリストアップしてくれる機能だ。一部サムネイルが表示されない番組もあるが、大抵は番組の中身がサムネイルで表示される。

注目番組で見逃しを防止

 自動録画システムとしては、「ドラ丸」という機能がある。新作ドラマを全部手動で予約録画するのは大変だし、予約していなかったドラマが、ネットで噂になって見るようになるというパターンも多いと思うが、レコーダでは遡って第1話からは見る事ができない。そこでドラマを丸ごと、つまり好む好まざるに関わらず1話から録るという機能が、ドラ丸である。

 4月からの番組改編期にはまだ間があるので、自動録画設定をしても何も引っかからないが、ドラマだけではなくアニメ、もしくはバラエティも自動録画できるようになっている。4月と10月の番組改編期には重宝する機能だろう。すでに1話目が過ぎていても、個別に番組表からの予約でドラ丸での自動予約に編入させることもできる。

自動で1話から番組を撮り続ける「ドラ丸」機能
通常予約のステップから「ドラ丸」予約も設定できる

 なおドラ丸で録画した番組は、4週間しか保持されず、古いものから順に自動削除される。まあ1カ月あれば、話題になって見始めても間に合うだろう。消したくなければ、設定で残しておくことはできる。

 ドラ丸とは別に、一般の自動録画機能もある。こっちの自動録画は、ドラ丸と違って自動的には消えない。6段階の優先度で自動録画するというシステムで、放送波、ジャンル、キーワード、人名などで検索し、自動録画してくれる。

通常の自動録画もある

強力な再生機能

 再生機能もなかなかユニークだ。録画リストは全て番組のサムネイルで表示され、並び替えもできる。リモコンの「ポップアップ」ボタンを押すと、「見どころ一覧」として中身のシーンをフィルムロール的に確認する機能もある。5分ごと、1分ごと、チャプターの3切り換えが可能だ。この機能は番組再生中にも使える。

サムネイル表示が中心の録画リスト
番組の中身が確認できる「見どころ一覧」

 「番組内容まるわかり」機能は、番組内の主要シーンを一覧できる機能だ。サムネイルを選ぶと、全画面表示でそこにジャンプするのではなく、この画面のままで上部中央の再生画面がその地点にジャンプする。上記の「見どころ一覧」と切り口を変えた機能に過ぎないのだが、番組をざっと確認したい場合には便利な機能だ。

1つの番組の中身がすべてわかる「番組内容まるわかり」機能

 もう一つ再生機能のポイントとして、BDドライブの高速化が上げられる。現在Blu-rayソフトの再生スタートの遅さで辟易としている方も多いと思うが、新開発UHD BDドライブと画像処理エンジンの組み合わせで、ローディング速度が上がっている。

 実際にUHD BDの「オデッセイ」で計測したところ、ワーニングが表示されるまで13秒、スタジオのロゴが表示されるまで26秒と、UHD BDの読み込みの早さは特筆すべきレベルだ。従来のBDソフトと比べ、遅いと感じる事はないだろう。

 一方でネット機能は、他社に比べれば大幅に少ない。NetflixやHulu、Amazonビデオには対応しておらず、アクトビラのみだ。このあたりは、すでにテレビでの対応が始まっており、それ以外にも外付けのボックスなりスティック型端末で対応できることもあるので、そちら側に投げてしまったという事である。

 確かにどんどんサービスが変わっていくネット対応を、コストをかけてずっとやっていくより、放送波にリソースを集中したほうが合理的ではある。低価格の秘密もこのあたりにありそうだ。

総論

 久々にシャープのレコーダを触ってみたわけだが、他社との差別化を図る中で様々な知恵を出して作られているのがわかる。特に番組表回りは、サムネイルを多用してグラフィカルに作られており、番組情報の使い方や見せ方も上手い。

 実際に後ろで動いているのは番組データベースサービスなので、シャープがすごい、という事にはならないかもしれないが、こうした番組表の見せ方は日本のレコーダではあまりなく、十分にユニークな仕上がりとなっている。

 新開発エンジンは、4Kのアプコンだけでなく、動作のレスポンスにも寄与している。動画の扱いでモタモタ感が少ない操作性は、気持ちがいい。その一方で、番組表の読み込みではワンテンポ待たされる点もあり、4Kフル解像度も良し悪しというところである。

 4K放送も普及前、UHD BDも普及前という最中にあって、“レコーダの最適な解は何か”という一つの答えであるかもしれない。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。