■ イノベーションを感じさせるサウスホール
NAB会期初日となる今日は、昨日までの肌寒い天気から一転、春らしい暖かい気候に恵まれた。今年は例年の混雑を避けてかなり早めに会場へ向かったが、モノレールはすでにすし詰め状態である。
さて今日はサウスホールを中心に、ポストプロダクション製品の取材を行なった。要するにセントラルホールの混雑を回避したわけである。とは言うものの、米国企業を中心にベンチャーも多いサウスホールは初日の出足もまずまずで、人気のブースは写真を撮るのも一苦労である。
■ 価格破壊をもたらすBlackmagic Designの魔法
多くの来場者で賑わうBlackmagic Designのブース |
近年米国であれよあれよという間に巨大企業となったのが、Blackmagic Designである。サウスホール入り口にある壁面に大きな看板を掲げ、まさにサウスホールの顔となりつつある。
昨年カラーグレーディングシステムDaVinciを買収し、驚きの低価格でMac版をリリースするなど、映像業界に革命をもたらしたのも記憶に新しいところだが、今回のNABではメジャーアップデートとなるDaVinci Resolve 8を発表した。
DaVinciのメジャーアップデート版、Resolve 8 |
新機能の目玉はマルチレイヤータイムラインの対応と、Apple Final Cut Proに対するXMLのインポート、エクスポートとなっている。Final Cut Proで行なった複雑なレイヤー編集も、そのまままDaVinci Resolve 8に受け渡しできる。またAvid Artist Colorコントロールパネルにも対応した。
さらに3D対応機能として、2台のカメラで撮影したときのアライメントのズレを自動的に補正する機能も追加した。今年6月にリリース予定で、価格は995ドルからとなっている。
またこのDaVinci Resolve8をベースにしたフリーバージョン「DaVinci Resolve Lite」も同時に発表した。プロジェクトがSDとHDのみに限定されるほか、カラーコレクションのノードは2つまで、利用可能なGPUはシングルのみ、ステレオスコピック3D機能なし、ノイズリダクションなしといった制限はあるものの、基本的なエンジン部分は共通。RED ONE、ARRIの2Kや4Kの素材を扱うこともできるという。
今年7月に公式サイトから無償ダウンロード予定。これまでハイエンドポストプロダクション勤務でもしなければ、触ることすらできなかったDaVinciを学べる機会が拡大することは、喜ばしいことである。
1Uサイズのスイッチャー、ATEM Television Studio |
Blackmagic Designがやはり昨年買収した会社に、スイッチャーメーカーEchoLabがある。この主力製品であったATEMシリーズ3タイプが、今回のNABで発表された。
まずATEM Television Studioは、リアルタイムH.264ハードウェアエンコーダを搭載したプロダクションスイッチャー。本体は1Uで、奥行きがほとんどない。さらにファンレス化するために大型ヒートシンクが付けられている。
入力はHDMI×4、HD-SDI×4のうち、6系統を選ぶ。基本的には内蔵フレームシンクロナイザーによる自動引き込みだが、外部同期も受ける。スイッチャーとしては、トランジション、クロマキーが使用可能で、出力はHD-SDI×2、HDMIのほか、H.264のストリームはUSB 2.0端子から出力される。モニター用としてHDMI出力もあり、マルチビュー画面として表示ができる。
ATEM Television Studioのコントロール画面 |
コントロールはEthernetケーブルで接続したMacもしくはWindowsから行なうほか、後述する1MEスイッチャー用コントロールパネルも使用できる。ここまでできて、価格は驚きの995ドル。今の為替レートならば、10万円を切ることになる。
普通にHD-SDIのスイッチャーとしても低価格だが、ネット放送にそのまま使えてこの値段というのはすごい。
ATEM 1 M/E Production Swicherの本体 |
ATEM 1 M/E Production Swicherは本体2Uサイズで、HD-SDI、HDMI、アナログコンポーネントの合計8入力スイッチャー。4キーヤー、2DSKを備え、DVE機能も内蔵する。
出力はHD-SDI、HDMIのほか、SDにダウンコンバートしてのSDI出力も備えており、3系統のAUX出力も装備。さらにUSB 3.0端子から10bitフルHDストリームを出力し、対応PCでダイレクトに映像キャプチャが可能。
モニター出力としては、マルチビュー対応のHDMI端子があり、波形モニタ表示機能も内蔵している。
ATEM 1 M/Eのコントロール画面r | ATEM 1 M/E用のコントロールパネル |
コントロールはEthernetケーブル接続のMac、もしくはWindowsの画面上で行なう。今年5月発売で価格は2,495ドル。ハードウェアとしての専用コントロールパネルは別売で、やはり5月発売、価格は4,995ドルとなっている。本体よりコントロールパネルのほうが高いというのもすごい話だ。
これの上位モデルとして、ATEM 2 M/E Production Swicherも発表された。こちらも基本仕様は1 M/Eモデルと同じで、HD-SDI、HDMI、アナログコンポーネント混在の16入力となっており、本体は3Uサイズ。
各M/Eごとに2キーヤーを備え、DSKは2系統。すなわちキーヤー数としては、1 M/Eと同じとなる。出力はHD-SDI、HDMI、アナログコンポーネント、USB3.0のほか、AUX出力を6系統備える。
8月に発売予定で、MacおよびWindowsのソフトウェアで制御し、価格は4,995ドル。また2 M/E用のコントロールパネルは、14,995ドルとなっている。
ATEM 2 M/E Production Swicherの本体 | マルチビューのモニター出力では、波形モニタ表示も可能 | ATEM 2 M/E用のハードウェアコントロールパネル |
カメラ伝送ユニット、ATEM Camera Converter |
カメラ用機材としては、ATEM Camera Converterもすごい。HDMIもしくはHD-SDIと光ファイバーを相互に変換し、最高40kmまで伝送できる。
映像信号の遠距離伝送だけでなく、トークバック、外部マイク、プログラムのリターン、タリーなどの信号も一緒に流すことができる。本体は内蔵バッテリーでも駆動可能で、ボディ外殻はアルミ製。7月に発売予定で、価格は595ドル。
ATEM製品を作っていたEchoLabなんてメーカーは、正直筆者は全然聞いたこともないが、Blackmagic Designブランドでリリースされるとなんだかすごいような気がする。これも一つのブランドマジックなのだろう。
インターフェイスにThunderboltを採用したキャプチャ製品「UltraStudio 3D」 |
Mac用のキャプチャー・再生ユニットとしては、先日のMacBook Proに採用されたばかりのThunderboltに対応する「UltraStudio 3D」も発表された。
Dual Link 3G SDI、HDMI 1.4a、アナログコンポーネント、Sビデオ、コンポジット、アナログオーディオ、AES/EBUオーディオのキャプチャと再生が可能で、フル解像度のデュアルストリーム3Dをサポートしているほか、1080/60pにも対応。
解像度は最大2Kで、内部処理は12bitとなっている。付属ソフトのMedia Expressも合わせてアップグレードされており、インターリーブとデュアルストリームの3Dキャプチャと再生に対応する。発売は7月で、価格は995ドル。
USB 3.0対応の低価格キャプチャユニット「UltraStudio SDI」 |
またUSB 3.0対応のHD-SDIキャプチャ・再生ユニット「UltraStudio SDI」も発表された。こちらはモニター用としてHDMI 1.4aも付いており、GenLockとデッキコントロール用のRS-422端子もある。
キャプチャおよび再生は、4:2:2/10bitの圧縮と非圧縮が可能。電源はUSBのバスパワーで動作する。この6月に発売予定で、価格は395ドル。
Blackmagic Designでは、他にもSSD記録のポータブルデッキやコンバータなど数多くの新製品を大量に発表しており、とても今回のレポートに全部は入れられないので、また後日報告する予定だ。
■ 編集マン必須のショートカットキーボード
大量の専用キーボードを展示するlogickeyboard |
小ネタ、というわけではないが、各編集ツール用の専用キーボードを販売しているlogickeyboardブースでは、大量のキーボードが展示、即売されていた。
従来はMac用のキーボードがメインだったが、Windows用のキーボードもかなり細かくラインナップ。After Effects、Aurora、EDIUS、Large Print、Media Composer、Photoshop、Premiere Pro、Pro Tools、Quantel、DaVinci Resolve、Smoke、Vegas用の専用キーボードを揃えている。
Mac版Davinci Resolve専用キーボードも早速リリース | こちらはPC向けSONY Vegas用キーボード |
PC版のキートップはパンタグラフ型のストロークの短いタイプだが、ボディはアルミで剛性が高い。USBのワイヤードタイプで、両サイドに1つずつUSB端子が付いている。つまり2ポートUSBハブ兼用というわけだ。
ストリートプライスでは115~130ドルとなっているが、会場ではショープライスとして100~110ドルで販売中。筆者はEDIUS用のものを購入してみた。
本日のレポートはこの辺にして、明日は日本メーカーのブースを中心に取材してみようと思っている。引き続きNABレポートをお楽しみに。