“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”
第560回:TV番組を“スマート化”するソニー「RECOPLA」
~レコーダで録画しタブレットで視聴。機能山盛り~
■スマートレコーダー構想?
今回のテスト機、BDZ-AX2700TとSony Tablet Sシリーズのセット |
現在あらゆるところでスマート化が進行している。「スマートフォン」を皮切りに「スマートテレビ」、そういえば「スマートタブレット」なる言葉もなかったか。すでに炊飯器にもFeliCaリーダーが付いたりする時代である。「スマート冷蔵庫」に「スマートエアコン」、「スマートこたつ」、「スマート歯ブラシ」などいろんなものがスマート化していくかもしれない。
家電メーカーとしては設備投資の大きいテレビをなんとか売りたいという思惑から「スマートテレビ」の立ち上げに懸命だが、ブラウン管からフラットにといった物理変化ではないため、なかなか伝わらないコンセプトだ。
そんな中、「スマートレコーダー」というのは案外盲点のようである。スマートレコーダーでググると、iPhone用のボイスレコーダーアプリやクラウド勤怠管理システムなどは見つかるが、テレビのレコーダーでスマートを名乗るものはないようだ。
ただ、昨今のレコーダーはもはやスマートレコーダーを呼びたいような機能を搭載してきている。先日パナソニックDIGA「DMR-BZT920」をレビューしたばかりだが、ソニーはファームウェアのアップデートで機能強化していく。3月28日から始まったアップデートで、Sony Tabletとの連携機能が追加された(後述するが連携には4月下旬のタブレット側アップデートも必要)。
テレビ+タブレットというソリューションは、すでに東芝が先行しているところだが、ソニーは一体どういう方向性で進むのだろうか。早速試してみよう。
■レコーダー連携アプリ「RECOPLA」
さてソニーのタブレット連携アップデート対象モデルは、以下のようになっている。ただし、タブレットに対して映像の配信までできるのは、※印の付いた行のモデルだけだ。今回はレコーダの中から「BDZ-AX2700T」をお借りしている。
- ブルーレイディスクレコーダー
- ※BDZ-AX2700T/AT970T/AT950W/SKP75/AT770T
- BDZ-AX2000/AX1000/AT900/AT700/AT500
- ブルーレイ/HDD搭載の液晶テレビBRAVIA
- ※(6月頃アップデート提供予定)KDL-46HX65R/40HX65R/32HX65R
- KDL-55HX80R/46HX80R/40HX80R/32EX30R/26EX30R
一方タブレットのほうは、ソニー提供の新アプリ「RECOPLA」をインストールすることで、各種連携が可能になる。ただSony Tabletは、Android 4.0.3(アイスクリームサンドイッチ)へのメジャーアップデートを控えており、RECOPLAもこのメジャーアップデートに含まれる。提供は4月下旬からということなので、まだ皆さんが連携機能を試すことはできない。今回はAndroid 4.0.3上で動いているRECOPLAのα版を、Sony Tablet Sシリーズごとお借りしてテストしている。
アップデート済みのBDZ-AX2700T | Android 4.0.3にアップデートされたSony Tablet S |
なお、RECOPLAはSony Tablet専用のアプリではなく、Google Playストア(旧Androidマーケット)などで提供される予定なので、公開が始まれば「他のタブレットで動いた」などの情報が集まるかもしれない。
なお、ソニーによれば、OSがAndroid 3.1以降で、解像度1,280×800ドットの他社製タブレット端末でも、録画番組の管理とリモコン操作機能は使用可能だそうだ。ただし、番組のストリーミング再生には対応しないという。
さてRECOPLAでできること、特徴をまとめてみると以下のようになる。
1. レコーダ4台、拡張HDD 4台までの録画番組を管理2. 録画番組の分類表示
3. 録画番組の視聴
4. 放送中番組の視聴
5. 録画予約
このうち(4)の「放送中番組の視聴」は、同じアプリ内で録画番組と放送中の番組が見られるというのがウリではあるのだが、この機能は5月下旬のアップデートから利用できるということなので、今回は試すことができない。
また(5)の録画予約に関しては、実質的にWEBアプリの「Gガイド.テレビ王国 CHAN-TORU」サービスへ飛ばされるだけなので、RECOPLAそのものの機能というわけではない。
なお、Android 4.0.3にアップデートすると、プリインストールされているアプリ「DLNA」でも、録画番組の視聴が可能になるという。なら、従来のアプリでいいじゃないかという意見もあるだろうが、「DLNA」アプリでは、レコーダをリモートで待機状態から"起こす"ことができない。レコーダがOFFの場合は配信ができないので、その場合、人がレコーダのところまで行って起こしてやる必要がある。
一方「RECOPLA」はレコーダとガッツリ連携しているので、レコーダが待機状態であっても、リモートで自動的に起動させ、配信させるというところがポイントだ。
アプリ名 | RECOPLA | DLNAアプリ |
録画した番組の視聴 | ○ | ○ |
放送中番組の視聴 | ○ ※5月下旬~ | ○ |
Sony Tabletで見る際の レコーダ側電源の状態 | ON/OFF | ON |
録画番組の並べ替え/削除 | ○ | × |
■設定も簡単ですぐ使える
ではさっそくRECOPLAでレコーダとの連携を行なってみよう。すでにレコーダは番組録画済みで、ホームネットワークに接続してある。RECOPLAを起動すると、連携できる機器がリストアップされる。これを選んで登録を行なうと、レコーダとRECOPLAが連携できるようになる。
機器が追加されると、次からは登録されている機器の選択ができるようになっている。ここでレコーダを選ぶと、録画されている番組が一覧で表示される。
連携できる機器を探して登録するだけ | 登録済みのレコーダが表示される |
設定項目の中から録画番組のソートの種類や、カテゴライズのタイプを選ぶことができる。カテゴライズは「ジャンル」、「日付」、「放送局」、「曜日」の4つだが、最大で3つまでしか表示できない。タブの横幅の問題なのかもしれないが、あと1つぐらいなんとかならなかったのだろうか。
レコーダに録画された中味が一覧できる | カテゴリタブは3つまでしか選択できない | ソートボタンは全部ONにできる |
BDレコーダの録画映像をタブレットで表示しているところ |
番組名をタップすると、DLNAプレイヤーを使って番組が再生されるという流れだ。番組は720p解像度で、約3Mbpsの動画としてレコーダ側でリアルタイム変換しながら転送されてくる。レコーダ内のエンコーダを一つ占有してしまうため、予約録画でエンコーダを全部使ってしまっている場合は、タブレット側で視聴することができなくなる。
ソニーでもトリプル録画可能なモデルが出ているが、タブレットへの配信を考えれば、同時録画数が多いモデルの方が有利ということになる。
約3Mbpsということで画質的にはどうだろうと思っていたが、720pに縮小されていることもあって、かなり綺麗だ。ただ番組の早送りといった移動のレスポンスは、筆者の自宅環境では7秒~10秒ほど待たされる。
ただ、これはまだアプリがα版だからということもあるだろう。最終版ではレスポンスが上がっているかもしれないので、あくまでも現時点での参考としていただきたい。
番組名の横には、チェックボックスが付いている。チェックを付けると、削除やリネームプロテクトといった管理ができる。また複数の番組を選択して、まとめて削除することも可能だ。これまで録画容量を空けるための削除も、それだけのためにわざわざレコーダを立ち上げてリモコン操作というのが結構大変だったわけだが、管理面でも使いやすいGUIが手に入ったことになる。
また、RECOPLAにはリモコン機能もついているので、テレビとBDレコーダをHDMIで接続している環境において、タブレットをリモコンとしてBDレコーダの再生制御をする事もできる。さらに、RECOPLAには、見たい番組をテレビなどのDLNAレンダラーに向かって“投げる”機能も備わっている。あいにく筆者宅にはそういう機器が何もないので試すことはできないが、例えばレコーダも何もない、テレビだけがある部屋にタブレットを持っていって、そこで別の部屋にあるレコーダから、録画番組をテレビに映すこともできるわけである。
番組の一括削除が可能 | DLNA対応テレビで再生させることも可能 |
「ARROWS Tab LTE F-01D」でも録画番組は再生できた |
ちなみに、他社のDLNA/DTCP-IP対応タブレットではどうだろうか? RECOPLAはインストールしていないが、富士通製の「ARROWS Tab LTE F-01D」で、「BDZ-AX2700T」の録画番組が視聴できるかもテストしてみた。このタブレットにはDLNA/DTCP-IP対応プレーヤーアプリ「DiXiM Player」がプリインストールされている。
アプリを使ってレコーダに接続したところ、サーバー一覧に「BDZ-AX2700T」が表示され、録画番組の再生も可能。ジャンルメニューを使い、ジャンル別に分類された録画番組を表示・選択する事もできる。再生中はシークバーを使った任意のポイントからの再生操作にも対応している。
ARROWS Tab LTE F-01Dからレコーダにアクセスしたところ。アプリ「DiXiM Player」でもレコーダが見つかる | 番組一覧を表示したところ。DR録画の番組は再生できる |
ただし、再生できたのは、「DR」モードでそのまま録画した番組のみで、「XR」や「LSR」など、AVC形式でエンコードして保存した番組についてはエラーが表示され、再生できなかった。もちろん録画番組の削除などの管理もできない。これらの点で、RECOPLAのほうがメリットがある。
■他アプリとの連携
CHAN-TORUと連動して番組予約が可能 |
RECOPLAでは、アプリ内で直接番組表を参照して録画予約はできないが、テレビ王国のウェブアプリであるCHAN-TORUに飛んで録画予約することはできる。CHAN-TORUは2010年にサービスインしたもので、当時はスマートフォンで録画予約できるシステムとして、飛躍的にリモート予約のレベルを上げたものだった。
本来ならば録画予約機能も一つのアプリ内で完結しているといいのだが、すでにWEBアプリとして出来上がっているものなので、そちらへ飛ばした方がいいということだろう。
ブラウザ上での操作なので、スクロールはなめらかだが、ピンチイン・アウトでズームはできない。このあたりがWEBアプリの限界になるのだろうか。
他アプリと連携ということでは、Sony Tablet独自機能として「スモールアプリ」が追加される。これはいわゆるウィジットのような格好で起動されるサブアプリで、メインのアプリの上に小さく表示される。
iOSにしてもAndroidにしても、スマートフォン/タブレット向けOSでは、基本的にアプリは立ち上げると全面に展開し、他に立ち上げていたアプリを終了させる必要はないが、背後に回った時点で動作は止まった状態となる。
PC用OSの挙動になれていると、複数の画面を表示して平行で作業できないので不便に感じることがあるわけだが、スモールアプリはそういう不満を解決するだろう。
これもSony TabletのAndroid 4.0.3アップデートに含まれるが、どんなアプリでもスモールアプリとして動かせるわけではなく、ソニーが用意した一部のアプリだけだ。現時点ではWEBブラウザ、計算機、テレビのリモコンアプリが用意されている。
スモールアプリは、メインアプリが小さく表示されるわけではない。機能を絞った別アプリだ。ただスモールアプリはメインアプリと相互に連動するようになっており、例えばスモールアプリのWebブラウザで表示していたサイトを、メインのWebブラウザアプリで引き続き表示させる事もできるし、その逆も可能だ。
スモールアプリは表示場所も自由に移動させることができるし、サイズの拡大縮小もできるため、PCライクな操作となる。さらに多くのスモールアプリが登場するのを期待したいところだ。
RECOPLAとレコーダのリモコンを同時に表示 | RECOPLAとWebブラウザを同時に表示 |
■総論
レコーダの新製品発表とともに、華々しく“タブレット連携”というニュースが見たかったという人も多いと思うが、昨年発売の機器でソフトウェアの入れ替えだけでここまで対応できるのだから、仕掛けとしては既に昨年から仕込んであったのだろう。ある意味既存ユーザーにはうれしいアップデートである。
開発にはかなり時間がかかっただろうが、RECOPLAを自社製品内に留めず広く開放するという取り組みは高く評価したい。
また4月21日には、折りたたみ型の方の「Pシリーズ」に新モデルが登場する。従来モデルは3G+Wi-Fiモデルしかなかったが、Wi-Fiのみのモデル「SGPT213JP/H」が追加されるのだ。モバイルルーターユーザーにとってタブレットに3Gは不要なわけだが、これで心置きなくPシリーズに行けるという人もいるのではないだろうか。
ただ現状では、先に発売されている3G+Wi-Fiモデルの方が値下がりし、実売で1万円以上安いという、えらく微妙な現象が起こっており、こっちを回線契約なしで使った方が安いのでは説も浮上している。
個人的には、RECOPLAとhuluがあればタブレットだけで全映像コンテンツ視聴が完結するので、ちょっとした時間に色々楽しむことができて、快適だ。あとは外出先でストリーミングによるテレビ視聴までできれば言うことなしだが、それもまあ追々なんとかしてくれるんじゃないかと勝手に期待しているところである。
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