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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第582回:あれ、ちょっと時代来てる? スティック型Androidを試す

〜同じようで結構違う。サンコー/GEANEE/オンキヨー〜


■ネット化しないテレビの現実

 テレビのネット接続率というのは、2011年頃にようやく15%程度というレベルで、2008、9年頃はさらに低かった。当時はなんとかテレビをネットに繋げさせようと、各メーカーが躍起になってアクトビラやなんかを推進していた記憶があるが、笛吹けど踊らずの状況が長く続いた。そもそもデジタル放送対応テレビが出た時点からネット接続機能が付いているわけだから、およそ10年ぐらいはほとんど使われない機能だったわけである。

 テレビをネットに繋ぐメリットとして、一つはネットの動画サービスを大画面で楽しめるというものがある。YouTube、niconicoといった無料サービスは言うまでもなく、TSUTAYA OnlineやHuluといったプロバイダ縛りのないVODサービスが充実してきたあたりから、ユーザーの感覚も変わってきた。

 もう一つのメリットは、Webコンテンツもテレビで見たらいいじゃないか、という流れである。ブラウザ画面をピクセル等倍でそのままテレビに出してしまうと見辛いが、あえてモバイル用解像度で大きく表示して、遠くから何となく眺める、という用途がどうも生まれつつあるような気がする。Twitterのようなリアルタイム性の強いSNSが登場したことも、要因の一つだろう。

 また、ハードウェア的には、ホームネットワーク内にある写真や動画を見たいんだけど、テレビ側にネットワーククライアント機能がない、という事も往々にしてある。特にデジタル放送になってすぐに買ったテレビは、そのあたりの機能が弱く、ホームネットワーク内でテレビだけ孤立するような状況になりがちである。

 物理的な意味でも、テレビに有線LANポートしかないため、ネットに繋げないという制約もあるだろう。うちも2階にあるテレビは、どれもネットに繋がっていない。

 家庭内で孤立したテレビを機能拡張したい、というニーズは少なからずあるはずで、どうもそのあたりを解決しそうなのが、今回取り上げるスティック型Android端末である。


テレビでAndroid OSが使える

 HDMIの出力が付いており、テレビに直刺しすることで、テレビがAndroid端末になる優れものである。価格も1万円を切る程度であることから、試しに買ってみようか、と考えている人も多いようだ。

 そこで、今回は3つのモデルを集めてみた。サンコーレアモノショップで販売されている「Androidスティック with DUALCORE」(直販9,980円)、GEANEEの「HDMIスマートスティック ADH-40」(オープン/想定売価9,980円前後)、オンキヨー「インターネット・スティック NT-A1」である。なお、NT-A1のみ9月下旬発売でまだ試作機であるため、最終的な仕様が変更される可能性がある。

 超小型Android端末は、テレビをどのように拡張するのだろうか。早速テストしてみよう。




■オーソドックスなサンコー「Androidスティック」

「Androidスティック with DUALCORE」のパッケージ

 まずは製品としてはおそらくもっともベーシックであろうと思われるサンコーの「Androidスティック」を題材に、そもそもどういう製品なのかを見ていこう。

 サンコーでは「Androidスティック with DUALCORE」というネーミングだが、製造はCynmateという中国メーカーのようだ。パッケージにはMP-U2とある。

 サイズは98×42×10mm(幅×奥行き×高さ)で、USB直結型のメモリーカードリーダー的なものをイメージしていただければいいだろう。ただAndroidスティックの場合、端子がUSBではなく、HDMIになっている。これをテレビのHDMI端子に直刺しして、Androidのディスプレイとするわけだ。


スティックとはいえサイズはやや大きめ 端子はUSBではなくHDMI

 HDMIからは電源が取れないので、別途miniUSB端子からなんらかの方法で給電してやる必要がある。USBケーブルとACアダプタが付属しており、コンセントから給電するのもアリだが、PCのUSBポートやUSBハブのバスパワーでも動作する。おそらくモバイル機器充電用のUSB出力があるバッテリでも動くだろう。

電源端子として機能するminiUSB端子 ACアダプタや延長ケーブルなどが同梱

 本体はWi-Fi対応で、ワイヤレスでネットに接続する。コントロールは、本体にもう一つ付いているUSB端子にマウスを接続する。ここをUSBハブで分岐してやれば、キーボードも併用できる。

 側面にはmicroSDカードスロットがあり、コンテンツの追加ができる。またこの製品には、内蔵マイクもある。側面にあるミニジャックはMic2と書いてあるが、イヤホンも接続でき、マイク付きのヘッドセットも使用できる。おそらくSkypeなどの利用を想定しているのだろう。ただカメラ機能はない。

マウスなどコントローラを接続するUSB端子 microSDスロット、イヤホン端子もある

 ざっと端子類を確認したところで、実際にセットアップしてみると、想像したよりも大変なことになるのがわかる。テレビに直刺しするまではいいのだが、結局電源を別途繋がなければならないため、それほど見た目はシンプルにならない。

テレビのHDMIに直挿しできるが…… 製品をフルセットアップすると、こんなことになる 写真はGEANEEの「ADH-40」。電源をとるためにACアダプタを繋ごうとしているところ

 もっともミニマムでセットアップするならば、電源はテレビにHDD接続用として付いているUSB端子から取るという手がある。マウスはUSBの小型受信機付きワイヤレスマウスを使えば、なんとかテレビ直刺しのみでいけないこともない。

試しにUSB HDD増設用のUSB端子から給電してみたが、3機種とも起動はできた

 USBハブを繋いでキーボードまで繋ごうとすると、おそらくHDMIコネクタの強度が持たないので、付属のHDMI延長ケーブルを使って下に降ろす必要がある。ただ付属のケーブルが長さ20cmしかないので、大型テレビでは空中にぶら下がる可能性が高い。

 そもそもこんなにケーブルがいっぱいぶら下がるのならば、なんでスティック型なんだよという疑問も出てくる。AppleTVみたいに、据え置きの小型ボックスのほうがよっぽど納得できるのではないか。

 これはおそらく、チップメーカーのリファレンス基板が最初からこんな形とサイズになっていて、多くの製品はそれをそのまま使っているか、モディファイしただけだからではないかと予想する。

 Android端末のスペックとしては、OSはAndroid 2.3で、CPUはCortex-A9 Dual core 1.06GHz。これは533MHz×2ではないかという指摘もある。内蔵メモリは512MBで、内部ストレージは4GB。ただしシステム用で1GB使用されているので、実質3GBである。なおサンコーではすでに後継モデルとして、Android 4.0採用の「Android Stick 4 SmartTV」も発売している。

 映像出力はHDMI 1.3準拠で、解像度は720p固定。ただ動画再生時は、ファイルの解像度に応じて自動的に変わるようだ。

 起動すると、3タイプのランチャーを選択する画面になる。ulauncher3dは、立体的な配列のオリジナルUI、launcherはAndroidタブレットによくある平面的なデザイン、ulauncherはMacOSのDockっぽいデザインのタイプだ。

いきなり3つのランチャーを選べと出て面食らう 立体的なオリジナルランチャー
いわゆる普通のAndroid画面も MacOSのDockっぽいランチャー

 プリインストールアプリはごく標準的なものだが、ブラウザはDolphin Browserが入っている。日本語入力環境はデフォルトでは入っておらず、別途「Google日本語入力」などをインストールする必要がある。日本語入力がなければ、Google Playで「Google日本語入力」と入力してアプリを検索できないのではないかと思われるかもしれないが、Googleと入力すれば候補でGoogle日本語入力が出てくる。

 AndroidのようなモバイルOSは、基本的にタッチスクリーンありきのUIなので、マウスによる操作は、最初のうちは違和感がある。しかし慣れてくると、パソコンっぽい印象に変わってくる。

 Google Playにも対応しており、別途YouTube専用アプリなどをインストールすることも可能だ。

 microSDカードに動画コンテンツを入れて、再生してみた。対応フォーマットはMPEG-1/2/4、WMV 7/8/9(VC1)、ASF、H264/H 263、MP4、FLV、3GPP、MOV、MKV、RM/RMVB、TS、M2TS、DivX/XVID、AVIと幅広い。AVCHDカメラで撮影したフルHDのMTSファイル(24Mbps)も、ひっかかりはあるがなんとか再生できる。鑑賞には向かないが、中味の確認はできるといった程度だ。

 音楽ファイルは、ID3タグは読むが、ジャケット写真は読まないようだ。ただ再生アプリのUIはなかなかかっこいい。

Google Playにも対応している 動画再生アプリは、割と地味な感じ 音楽再生アプリはジャケ写真を読み込まないのが残念



■マウス付きがポイント? GEANEE「ADH-40」

 3製品の中ではもっとも小型で、スティックと言っておかしくないサイズなのが、GEANEE「ADH-40」である。ワイヤレスの光学マウスが付属しており、店から製品を買ってきただけですぐに使えるのがポイントだ。本体が小さいからか、3製品のうちこれだけHDMIの延長ケーブルが付属しないので、直刺し必須である。

唯一マウス同梱のADH-40 これは紛れもなくスティック状
脇のボタンを押すと、PCにマウントできる

 また本機はmicroSDカードスロットがないが、その代わり面白い機能がある。電源を取るためのminiUSBポートをPCに繋ぐと、そこから電源を取りつつ、内部ストレージがPCにマウントするのである。外部からのファイル供給はそうやって突っ込め、ということだろう。

 CPUはTCC8925 Cortex-A5/1GHzで、メモリは512MB。内蔵ストレージは4GBだが、やはり標準で1GBほどはOSで使われている。出力解像度は、最大で1,920×1,080ドット。


付属マウスはやや薄型

 付属のマウスは取り立ててどうというタイプではないが、一般的なものよりもちょっと薄型になっている。ホイールの後ろにボタンがあるが、これは本製品の操作上は特に機能しないようだ。付属マウスの代わりにUSBハブを接続して、マウスとキーボードを両方繋いでみたが、これも普通に使える。

 OSはAndroid 4.0を採用しており、オリジナルのランチャーはない。プリインストールのアプリは標準的なものばかりだが、日本語入力は最初から「Google日本語入力」がインストールされている。Google Play対応、OSも最新なので、かなりのアプリに対応できるだろう。Webブラウザを起動すると、ホームのデフォルトがYahoo! Japanに決め打ちされているのは珍しい。


オリジナルランチャーはなく、タブレットの印象に近い ブラウザのホームはYahoo! Japanに設定

 動画再生フォーマットは、MPEG-1/2とMPEG-4(SP/ASP)、MPEG-4 AVC/H.264、WMV、MKV、MOVと、こちらもかなり豊富。一番重いAVCHDのMTSは、一応中味はわかる程度の再生能力だ。

 Android端末としては、すっぴん状態でパフォーマンスも悪くないので、タブレット代わりの格安動作検証機としても使えそうだ。さらにHDMIキャプチャ製品と組み合わせれば、簡単にスナップショットも撮れるので、ナニゲにライターには便利である。ただキーボードまでフルで使おうとすると、HDMIの延長ケーブルは自分で用意した方がいいだろう。



■ホームネットワーク拡張型、オンキヨー「NT-A1」

 最後はまだ発売前のオンキヨー「NT-A1」である。サイズ的にはサンコーのモデルと同程度で、スティックと呼ぶには若干太い。横や背面には放熱用のスリットが空いており、小さいながらもかなり本気でプロセッサぶん回していくよ的な勢いが感じられる作りだ。

放熱スリットが多いオンキヨー「NT-A1」 後ろも穴だらけ

 このモデルの最大の特徴は、赤外線リモコンと、受光部が別に付いているところである。コストは結構かかってると思うのだが、価格が他社とほとんど変わらないのは魅力だ。

赤外線リモコン付きで、値段は他社と同等 リモコンボタンもなかなか工夫されている

 本体のコネクタの構成はサンコーのものと同じで、電源供給用にはminiUSB、マウスやキーボード用にUSB、microSDカードスロットも装備している。HDMI延長ケーブルも付属するが、こちらは長さ約15cmと、さらに短い。

横もスリット入り microSDスロットはUSBの下

 赤外線受光部のケーブルは本体横に差し込むタイプで、長さは約80cm。リモコンの光が届くところまで受光部を出して、両面テープで貼り付けるというイメージだ。

 OSは2.3で、CPUはARM Cortex-A9/1.0GHz、3Dグラフィックにも対応しているタイプだ。ただ現状は、3D用のソリューションが何か入っているわけではない。メモリは512MBで、内蔵ストレージは4GBと、スペック的には同じようなタイプである。出力解像度は、最大で1,920×1,080ドット。

 リモコンでAndroidの操作でどうなの? と最初疑問だったが、使ってみると案外悪くない。Androidの標準GUIではなく、大きめのボタンで専用に作られており、Android端末というよりもマルチメディアプレーヤー的な作りを感じさせる。

動画再生に関しては、他製品と同等の再生能力はあるようだ リモコン操作用に専用のGUIを用意
試作機だからか、音楽アプリではなぜかソート順が逆に

 日本語入力環境は、最初からSimejiが入っているあたりは渋いチョイスだ。なおこちらも、USBハブ経由でマウスとキーボードにも対応するので、リモコンに馴染めなくても大丈夫である。

 本機最大の弱点は、Google Playに対応していないところだろう。このあたりも、“Android端末”という方向性とはちょっと違う。ただアプリのインストーラは付いているので、apkパッケージの形でアプリが入手できれば、インストールは可能だ。

 その代わり、他2機種にない機能がある。「メディア共有」というアプリを使うと、ホームネットワークの共有フォルダへアクセスできることだ。試作機のため詳細がわからないが、おそらくDLNAで共有されているものを見に行くようだ。HDCP対応なのかどうかは、該当コンテンツファイルがなかったので確認できていないが、価格を考えたら非対応ではないかと思われる。


ホームネットワーク内の共有フォルダにアクセス可能 テレビのオーバースキャン調整ができるツールを搭載するなど、かなりきめ細やかな配慮も



■総論

 オンキヨーの製品はちょっと違うが、他の2製品は「テレビをスマート化する」的なニュアンスで宣伝されている。だが、そもそもテレビ画面にAndroidが映るって事がスマート化ではないんじゃないかという気がする。

 YouTubeなどフリーのサービスがテレビで見られるという良さはあるが、それがそんなにうれしいか? ということである。今回の3モデルはいずれもHuluに対応していないが、もう一歩踏み込むとするならば、Huluなどの有料オンデマンドサービスが使えて、このスティック一本持っていけば旅先でもどこでも自分が契約している有料サービスがHDMI対応機器で楽しめるとか、そういうところまで実現して、初めてスティック状でよかったね、という話になるのであろう。

 特にHuluに関しては、対応デバイスがPS3やWii、最近ではAppleTVにも対応するなど、製品決め打ちながらじわじわと広がりを見せている。米国では「roku」という据え置き型小型端末が人気で、これもAppleTV的な立ち位置だ。そういう世界にこれらの製品が乗っていくのか、あるいは別の道を歩むのか。

 個人宅で楽しむという点では、オンキヨー「NT-A1」のように、用途限定でリモコン対応という方向性もアリだろう。Androidとしての汎用性、拡張性ではなく、専用機として開発していく、という道だ。

 Androidはスマホやタブレットでも、各メーカーがいろんな仕掛けを施して差別化を図ってきているが、こういったアプローチはLinuxでもあまりなかった。いやもちろん組み込み用Linuxは潜在的には利用されていただろうが、ユーザーがOSに慣れているという点で、Linuxとは違った進み方である。

 これらが新しいジャンルを作れるのか、あるいは一部マニアのオモチャで終わるのかは、結局テレビのスマート化に対してどういう回答を用意できるのかというところに集約されるのではないかと思われる。

Amazonで購入
サンコー
Androidスティック
with DUALCORE
GEANEE
HDMIスマートスティック
ADH-40
オンキヨー
インターネットスティック
NT-A1
(2012年 9月 5日)

= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。

[Reported by 小寺信良]