小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第642回

“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

Eマウントでフルサイズ、ソニーα7で動画を撮る

フルサイズらしい端正な絵。多彩なレンズの組み合わせ

ついに出た! フルサイズミラーレス

 デジタル一眼の黎明期、センサーサイズに関してはずいぶん議論があった。フィルムカメラからの置き換えを考えれば、レンズの都合上当然35mmフルサイズが求められる。一方で当時の技術的コストバランスや、“もっと小さく軽く”を求める声も強かった。

 個人的には、最終的には35mmに向かうんだろうなと思っていたのだが、案外APS-Cやマイクロフォーサーズのレンズが揃ってくるうちに、コンシューマではそれが主流になっていき、35mmは業務クラスのハイエンドという棲み分けが何となくできたように思われる。

 またそれと並行して昨今のトレンドは、ミラーレスをハイエンド機に持ち上げるという動きも起こっており、オリンパス「E-M1」の登場は記憶に新しいところだ。

 11月15日に発売を開始したソニーの「α7」および「α7R」は、この両方のトレンドが合流した先にあるような製品だ。実売はα7が15万円前後、α7Rが22万円前後となっている。

 従来ソニーのミラーレス機が採用してきたEマウントは、APS-Cサイズのセンサーだったが、これにフルサイズセンサーを搭載したのがポイントだ。ただ、Eマウント+フルサイズセンサーは、これが最初ではない。2012年のハンディカムシリーズとして「NEX-VG900」が、このコンセプト第一弾である。つまり、ビデオカメラのほうが先だったのだ。

 今回はVG900の時の経験も生かし、動画の画質だけでなく、マウントアダプタも各種使ってAFの性能なども比較してみた。相変わらず動画中心のレビューだが、写真レビューとは違ったα7の魅力がお伝えできるのではないかと思う。

複数のAFシステムを持つ「α7」

キットレンズ「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS」を取り付けたα7

 同時発売のα7Rは、高画素(3,640万画素)で、さらにローパスフィルタレスということで、写真を撮る人はこちらのほうが注目度が高いようだ。だがα7RがコントラストAFのみなのに対し、α7ではコントラストAFと像面位相差AFを組み合わせた、「ファストハイブリッドAF」となっている。AFとしてはこちらのほうが面白そうだということで、今回はα7のほうをお借りした。

モデル名 α7R α7
実売 22万円前後 15万円前後
フォーマット 35mmフルサイズ
有効画素数 3,640万画素 2,430万画素
光学ローパスフィルタ 無し  有り
AF検出方法 コントラスト ファストハイブリッド
(コントラスト+位相差)
Eマウント内にフルサイズセンサーを搭載
メモリーカードは手前から前に差し込む
バッテリーはNEXシリーズと共通のNP-FW50

 発売済みということで、すでに多くのレビューが出ており、あまり細かいスペックは述べないが、AFと動画関係のポイントだけご紹介しておく。

ファストハイブリッドAFの図解

 撮像素子は有効約2,430万画素のCMOSで、ここに位相差AF用の距離点を117点配置している。ただ、距離点はセンサーの全面をカバーするわけではなく、中央のエリアに集中している。なおAPS-Cサイズのレンズを付けた時は、距離点が99点になるということなので、カバーエリアはAPS-Cサイズよりは広いということだろう。

 これよりも外側は、コントラストAFでカバーする。コントラストAFも画像処理エンジンが新しくなり、またレンズの駆動アルゴリズムを最適化したことで、従来よりも35%高速な「ファストインテリジェントAF」となっている。

 そもそもVG900のときは、Eマウント用のフルサイズ用レンズが存在しなかったのだが、今年4本登場し、年間5本ペースで増やしていくということのようだ。ちなみにフルサイズのEマウント用ということで、「FEレンズ」というらしい。キヤノンの「EFレンズ」と似ているので、ややこしいことになりそうだ。

 軍艦部の突起はビューファインダ部で、ミラーレス機ゆえに当然光学ではないが、プリズムが入ってます的なデザインになっている。一眼レフ的なフォルムにまとめたということだろう。

中央にビューファインダも装備
軍艦部のデザインはオールドカメラの雰囲気もある

 ビューファインダは目を近づけると、センサーによって自動的に液晶ビューから切り替わるようになっているが、これを生かして目を近づけるだけで自動でAFをとりにいく「アイスタートAF」を搭載している。シャッター半押し動作が必要なくなるわけだ。

 またAFと言うことでは、今回同時発売されたαレンズ用のマウントアダプタ、「LA-EA4」も面白い。以前APS-Cサイズ用の「LA-EA2」というモデルもあったが、これは同社αシリーズで採用していた、ハーフミラーを使って分光し、片方を位相差AFセンサーに送るという、「トランスルーセントテクノロジー」を採用している。要するにただのマウントアダプタではなく、これを使うとミラーレスでないα並みの位相差AFが使えるようになる。

 また、VG900の時に登場したアダプタ「LA-EA3」もお借りした。これはフルサイズ用ではあるが、トランスルーセントのない、素通しのアダプタである。だがこれも一部のレンズではカメラ側のAFが使えるというので、試してみたい。

フルサイズセンサーに対応した新アダプタ、LA-EA4
以前から発売されているLA-EA3(右)とLA-EA4

 ちなみにLA-EA3が出たときに、なぜフルサイズ対応アダプタで位相差AF機構が入れられなかったのかと質問したところ、このフランジバック長ではフルサイズのガラスが斜めに入らないこと、またAFセンサーが大きくなってしまうといった理由から見送られたと伺った。「やればできるじゃないですか! 話が違うじゃないですか!」と今度機会があったら開発者を問い詰めたい。

 なお今回使用したレンズは、FEレンズとして「28-70mm F3.5-5.6 OSS」、Aマウントレンズとして「Zeiss Planar 50mm F1.4」、ミノルタレンズとして「24-85mm F3.5-4.5」、同「100-300mm F4.5-5.6」の4本である。また撮影には使用していないが、「Zeiss Sonnar 135mm F1.8 ZA」は動作確認だけ行なった。

キットレンズの「FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS」
「Zeiss Planar 50mm F1.4」(右)と「Zeiss Sonnar 135mm F1.8 ZA」
ミノルタ「24-85mm F3.5-4.5」(右)、同「100-300mm F4.5-5.6」
Zeiss Planar 50mm F1.4を装着したところ
Zeiss Sonnar 135mm F1.8 ZAを装着

動画専用モードも搭載するが……

 では動画に関するスペックもまとめてみよう。録画フォーマットは、AVCHDとMP4の切り換えとなっており、最高でフルHD /60pでの撮影が可能。ただし例によって、連続記録時間は1回につき29分までとなっている。

【AVCHDモード】

解像度 フレームレート ビットレート
1920×1080 60p 28Mbps(最大)
60i 24Mbps(最大)
60i 17Mbps(平均)
24p 24Mbps(最大)
24p 17Mbps(平均)

【MP4モード】

解像度 フレームレート ビットレート
1440×1080 30p 12Mbps(平均)
640×480 30p 3Mbps(平均)

 昨今60pはもうAVCHDフォーマットを諦めてMP4で高ビットレートで撮る流れになってきているが、AVCHDフォーマットを推進してきたソニーとしてはなかなかそこには乗れないのかもしれない。

録画ボタンはかなり「辺境」の位置に

 録画ボタンは撮影者から見てボディの右側、ほとんど横に付いている言ってもいい位置だ。従来はもう少し内側だったが、誤って押してしまうという意見があったのだろう。誤動作は減るかもしれないが、動画を撮ろうとしたときに使いづらい。

 ボディ左側には、HDMI出力がある。撮影中はクリーンフィードが出力されるので、外部モニタと併用しての動画撮影には便利だろう。また外部マイク入力と、イヤホン出力も備えている。イヤホン出力は、現場音を遅延なく聞かせるライブと、映像と同期したリップシンクの2タイプが選択できる。映像の遅延は、おそらく2フレームぐらいだろう。

動画撮影に対応したI/Oを備える
音声モニターは2タイプから選べる

 動画撮影時のISO感度は、200〜25600となる。静止画は50〜25600なので、多少制限があるといったところか。

動画は別にモード設定メニューがある

 なお動画撮影時には、ボディの撮影モードダイヤルによる絞り優先などのモードは無効になる。その代わり、メニュー内に動画撮影時のモード選択画面がある。ただしマウントアダプタを使用したAマウントのレンズでは、LA-EA3では撮影モードが使用できるものの、LA-EA4ではプログラムモードでしか動作しなかった。

 LA-EA4の登場で、位相差AFが使えないLA-EA3の役目は終了かと思われたが、動画モードの対応を考えればまだまだLA-EA3も利用価値がある。それよりもなぜ両方の機能が1つのアダプタで同居できないのか、そちらのほうが不思議だ。LA-EA5の登場を期待したい。

動画でも十分わかるキレの良さ

水面の動きにも破綻がなくなった

 今回の動画撮影はすべてAVCHDの1080/60pで撮影しているが、まずざっとした印象としてアルゴリズムの見直しが進んだのか、絵の破綻はほとんどなくなってきている。以前問題だった水面のような動きのランダムな被写体でも、画面の荒れは目立たなくなった。一方、広角の絵柄では、木々の細かいディテールがもう少し欲しいところだが、ローパスフィルタの影響もあるのか、少し描画が甘いところも見られる。

1080/60pで撮影したサンプルをYouTubeにアップロードしたもの。オリジナルファイルは以下のリンクから
sample.mp4(180MB)
※編集部注:動画は編集しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい
絶妙な発色とコントラストを実現

 色の深みや解像感なども申し分なく、フルサイズらしい端正な絵作りとなっている。レンズごとに特徴もよく出ており、静止画だけでなく動画でも楽しめるカメラとなっている。

 キットレンズでもあるFE 28-70mm F3.5-5.6 OSSは、可もなく不可もなくという優等生的なレンズで、最初の1本としてはオールマイティに使える描画であろう。AF動作もほとんど無音なので、動画撮影で威力を発揮する。

FE 28-70mm F3.5-5.6 OSSの描画
3本のレンズでAF動作音を比較。FE 28-70mmが一番静か
af.mp4(124MB)
※編集部注:動画は編集しています。編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい
FE 28-70mm内蔵手ぶれ補正のテスト
stab.mp4(31MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 手ぶれ補正も内蔵しており、静止画撮影時には重宝するが、動画での補正能力はそれほど高くはないようだ。重量が軽いことで、かえって手持ちでの撮影ではブレやすいかもしれない。

クールだが解像感が高いZeiss Planar

 Zeiss Planar 50mm F1.4はさすがの描画力で、トーンは若干クールな印象がある。APS-Cサイズでは中望遠になっていたのだが、α7の登場で気軽にその威力が発揮できるようになった。

 ミノルタのズームレンズは、どちらもやや暖色方向へ転ぶ傾向がある。今から20年前のレンズで設計の古さは感じるが、LA-EA4で問題なくAFが動く。現役当時でもこんなに早く動いたことはなかったんじゃないかと思わせるほど、素早いAFが可能だ。

ミノルタ24-85mmの描画
同100-300mmの描画
AF機能ごとに比較。本体、LA-EA3、LA-EA4でAF動作が異なる
af2.mp4(86MB)
※動画は編集しています。編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 なお、LA-EA3を使った場合でも、ZeissレンズならコントラストAFが使える。一方ミノルタレンズではAFが動かず、マニュアルフォーカスのみとなる。マウントとレンズの組み合わせによるAF動作を録画してみたので、動作音共々確認していただきたい。

 マウントアダプタのおかげで多彩なレンズが楽しめるのはメリットがあるが、マウントアダプタが下方向に出っ張っているため、撮影時には三脚のシューをそちらに付ける必要がある。一方、Eマウントレンズを使う場合は、ボディにシューを付け替える必要がある。手持ちなら問題ないが、三脚を使った撮影ではとたんに面倒が増えるのが難点だ。

総論

 動画撮影時には、AF追従の連続性が問題となる。今回はマウントアダプタの機能も含めて多彩なAFのテストができたので、写真を撮る方にとってもなかなか貴重なレポートになったのではないだろうか。

 もちろん、α7の本業である静止画撮影では、フル35mmセンサーらしい立体感が美しい。新シリーズではあるが、ユニークなマウントアダプタのおかげで、今からもう多彩なレンズバリエーションが楽しめるというのは、他社にはないメリットと言えるだろう。

 操作性ではさすがに勝負ナンバーである「7」を冠するカメラ、しかも今回からはNEXではなく「α」シリーズだけあって、コントロールボタンやダイヤルも多く、現場ですばやく設定変更が可能だった。ボディ形状がオーガニックなAマウントαと違って角張っているので、シャッターボタンをはじめとするボタン位置や角度に不満がないわけでもない。ただこのような角張ったルックスはオールドカメラ的な魅力もあるので、一概にそれがダメとは言い切れない。

 今後、ミラーレスマウントでフルサイズがやれるのはどうもソニーぐらいしかなさそうであり、さらにセンサーも内製という強みを生かしてどこまでフルサイズのラインナップを拡充できるのかがポイントとなってくる。そうは言ってもソニーの一人旅ではブームにならないのもまた事実で、他社がこの動きに乗ってくるかどうか、このあたりが来年の見所になってくるだろう。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。