小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第712回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

“全自動”がキーワード? 全録史上最強、6TB/10chのパナソニック「DMR-BRX6000」

行くところまで行き着いたのか

 レコーダという製品は、見たいものを事前に予約録画という世界から、とりあえず「全部録っときゃいいじゃん」の世界へシフトが始まったとたん、力を入れるポイントが変わってきた。以前は、放送前の事前情報としてテレビ局から出されるEPG情報を頼りに、ユーザーが録画予約したり、録画したものを管理していた。一方全録機では、事前情報はそれほど重要ではなくなり、むしろ放送後に蓄積した番組の解析やメタデータによって、より詳しい番組の内容がわかる。ユーザーが録画を管理する必要がないだけでなく、検索によって番組をくくったり、見たいシーンだけ見られるようになった。この先は、番組を見なくてもだいたい中身がわかる……ぐらいのところまで行くのかもしれない。

パナソニックの全録レコーダ「DMR-BRX6000」。天面に光沢があるので背景の壁紙が映り込んでいるが、実際には柄は無い

 さてそうなってくると、レコーダはむしろAV機器というよりもIT機器に近くなってくるわけだが、IT企業がそこにバンバン参入してくるような状況にはない。そもそも全録を積極的に推進しているのは、現在パナソニックと東芝、シャープぐらいになってきたが、家電メーカーがIT企業を抑えてよく頑張っているジャンルだ。

 その中でパナソニックは今後、全録という訴求はやめて、「全自動」というキーワードで押すようだ。どうもキーワードとして“全録”という言葉が弱いのと、「どうせ全部は見られないのに録ったの大半無駄じゃん」的な、ネガティブ印象を持たれてしまったようだ。家庭内で何かのサーバを1日中動かしてるみたいな人の感性と、一般の方は違うということだろう。

 そんなわけで今年の「全自動」モデルは、DMR-BRX6000/4000/2000の3タイプが登場した。店頭予想価格は順に21万円前後、16万円前後、10万円前後となっている。今回は最上位モデルのDMR-BRX6000をお借りした。ネットの実売では16万円半ばといったところだろうか。

 丁度1年前に出たDMR-BXT970も人気の高いモデルだったが、今回はBRXという新シリーズになっているあたりからも、なかなかの気合いが感じられる。その中身をさっそく見ていこう。

ほぼ真っ黒な筐体

 まず外観だが、前作BXT970がサイドを切り落としたスモークの鏡面仕上げで、フロントパネルに強い印象を与えていたのに比べると、BRX6000は至って物静かなたたずまいだ。両サイドと下に幅広くベベルをかけ、ブラックにアクリル張りでツヤを出している。天板もお馴染みのヘアラインプリントで、その上にアクリルを貼ることで、全体黒いんだけどひかり感もある。

ボディは黒だが、アクリル張りのためひかり感が強い
横と下に幅広くベベルをかけたフロントパネル

 ボタン類も電源とBDのイジェクトしかなく、極限までシンプルだ。フロントパネルを開けると、左側にBlu-rayドライブ、その下にUSBとSDカードスロット。なおBlu-rayプレーヤー機能としては、パナソニック独自の階調拡張フォーマット、MGVC(マスターグレードビデオコーディング)に対応している。B-CASカードは赤のフルサイズで、右側に2つ挿入する。

表面にボタンは2つしかない
Blu-rayドライブとUSB端子、SDカードスロットを装備
B-CASカードはフルサイズが2枚

 中身の仕様としては、HDDはチャンネル録画(全録)用に3TB、チャンネル録画と通常録画どちらでも使える領域が3TBで、合計6TB。チューナは、まずチャンネル録画用が8つで、通常録画用が3つ。通常録画用のうち2つはチャンネル録画にも使えるので、最大だとチャンネル録画10ch + 通常録画1chという組み合わせにできる。

 BS/110度CSチューナは、通常録画用の3チューナにはフルに入っているが、チャンネル録画側には3つしかない。チャンネル録画チューナと通常録画チューナでB-CASカードが分かれているので、最初に録画チャンネルの割り当てをどう設計するか、ユーザーの腕の見せ所である。

型番 BRX6000 BRX4000 BRX2000
チャンネル録画 8 4 4
通常録画 3 3 3
HDD 6TB
(チャンネル用3TB+
可変3TB)
4TB
(可変)
2TB
(可変)
リモコン ボイス&モーション 新フルリモコン
標準録画時間 8ch×7日
(5倍)
4ch×7日
(5倍/1.5TB)
4ch×7日
(8倍/1.5TB)
最大録画日数 10ch×21日 6ch×36日 6ch×16日

 チャンネル録画はMPEG-4 AVC/H.264のAVC形式で、2〜15倍録画に対応。さらにBRX6000のみ、チャンネル録画でも通常録画でもDRモードが使える。下位モデルではチャンネル録画側はDRモードが使えないので、購入検討の際は注意していただきたい。

 背面に回ってみよう。RF端子は地デジと衛星放送で1つずつ。音声の光デジタル端子、HDMI出力は1系統ずつ、アナログAV出力も1系統だ。2つのUSB端子は共にUSB 3.0対応で、USB HDDの増設も可能。通常録画用とチャンネル録画用で端子が分かれている。i.LINK端子も1系統搭載、Ethernet端子を備えるが、無線LANにも対応している。

端子類は比較的シンプルな背面

 リモコンも見ておこう。こちらも新型となり、フタに隠れたボタンはなく、すべて表面に露出している。したがってかなりのボタン数になるが、ほとんどの操作は十字キーの周りで完結するので、使いづらくはない。

 ボタン配置のポイントとしては、十字キーの上の一等地がスタートボタンではなく、新着番組になった点は興味深い。確かにまずメニューを見るより、多くのユーザーは録れた番組を探しに行くはずだ。またこの秋からサービス開始が予定されているNetflix専用のボタンもすでに用意されている。

全てのボタンを表に出した新リモコン
スタートボタンは端に寄せ、新着番組、音声コマンドボタンがセンターに

 新着番組ボタンの上には、音声コマンド入力用のボタンがあり、扱いとしてはかなり大きいと言えるだろう。マイクはリモコン表面の一番上にある。裏面には、画面上でマウスカーソル的なポインタを出して操作するための、モーションボタンがある。リモコンそのものを上下左右に動かしてコントロールするもので、Wiiの操作みたいな感じと言えばいいだろうか。

 リモコンの通信は、赤外線だけでなく無線でもOKなので、本体に向けて操作する必要はない。なお無線接続とモーション操作ができるのはBRX6000と4000のみで、最下位モデル2000では対応しない。

裏側にはモーション操作用のボタンが

十分な量のチャンネル録画

 ではチャンネル録画の設定から見ていこう。登録画面では、8つのチャンネルのほか、追加チャンネルとして2つのチャンネルの「空きスロット」がある。そこに全録したいチャンネルを埋めていくというスタイルだ。

空きスロットに全録したいチャンネルを追加していく

 追加チャンネルまで設定すると、通常録画は1チューナになること、BDビデオ再生中などは録画が一時停止するというアラートが表示される。BDの再生は頻度が低いのなら問題ないと思いがちだが、実はネット関係のサービスにアクセスしても停止する。

追加チャンネル使用時に表示されるアラート

 具体的にはhuluやYouTube、Netflixなどにアクセスすると、2チャンネル分の録画が止まってしまうわけだ。ネットコンテンツへのアクセスを終えると、また録画が再開される。それを考えると、映画や海外ドラマなどのプレミアムコンテンツをネットサービスで見る機会が多い人は、追加チャンネルまで使ってテレビ放送を録画するのは、やめておいたほうがいいかもしれない。

ネットコンテンツへアクセスしようとすると、追加チャンネルの録画が停止する

 通常録画領域の3TBは、チャンネル録画用と通常録画用で内部を分けることができる。こちらのHDDは元々3チューナでしか使わないので、チャンネル録画領域をめいっぱい確保すれば、DR録画によるチャンネル録画でも十分な視聴可能期間を確保できる。録画停止期間を多くとるなどして節約していけば、さらに視聴可能期間は伸びる。

通常録画用HDD内でチャンネル録画領域を大量に確保
録画しない時間帯を多く設定すれば、視聴可能期間は延びる
1chをDR録画にしても、約6日程度の視聴可能期間を確保

 あとはそのままほっとけば、どんどん録画番組が溜まっていく。それをどうやって見るかが、いわゆる「全自動」の腕の見せ所である。

 従来レコーダは、電源を入れるとまず現在放送中のどこか適当な放送局の番組が映り、それからおもむろにメニューを出して録画番組を探す、という段取りであった。今回の「全自動」モデルでは、電源を入れるとまず最初に現われるのが、「新着番組」だ。

電源を入れると最初に表示される「新着番組」画面

 これは挙動としてはごく自然で、放送中の番組が見たければテレビで見ればいい。わざわざレコーダを起動するのは、録画番組を見たいからだ。ニュース番組も中身のニュースごとに分類され、右側にまとめられている。最新ニュースだけを自動録画して分類する機能はVIERAにも搭載されているが、レコーダでテレビ全部の情報がまとまっていると利用度も上がるだろう。

 パナソニックはこの起動時の挙動を旧来の方法から変える事に、熱心に取り組んでいる。2013年には、スマートVIERAの起動時に、放送中の番組と共にネットサービスへアクセスするアイコンが示されたことで、民放各社がVIERAのテレビCM放映を拒否するという騒動が起こった。今回はテレビではなくレコーダの挙動なので、問題ないという事だろう。

多彩な再生機能をサポート

 新着番組画面は、かなり大きなアイコンでコンテンツが分類されている。今や50インチ越えの大型テレビも珍しくない昨今、こんなに大きく表示する必要があるのかと思われるかもしれないが、実はこれには理由がある。新しい操作方法である、モーション操作を実現するためだ。

「新着番組」のジャンル画面

 リモコンの裏側にあるボタンを押すと、モーション操作用の丸いポインタが出る。一度押すと青い○が出て、何かを選択するまで出たままだ。またボタンを押し続けると緑の丸になり、この時はボタンから指を外すとポインタが消えるという、2つの方法がある。

 このポインタをWiiを操作する要領でリモコンを上下左右に動かし、コンテンツを選ぶ。十字キーを使った移動でも操作はできるが、より直感的に、しかも現在選択されているポイントから離れたポイントまで一気に動かせるのが魅力である。

シーン一覧もモーション操作可能

 操作感は良好だ。テレビ画面の方には当然何のセンサーもなく、単にリモコンのジャイロセンサーだけでポジショニングしている割には、実用的な挙動である。たまに決定ボタンで選ぶ瞬間に力が入ってポインタ位置がずれてしまい、隣のボタンを押してしまうこともないわけではないが、いちいちボタンをプチプチ連打するのは疲れるという人は、この操作方法をマスターするといいだろう。

 ユーザーにとって魅力ある再生方法としては、ザッピングがある。従来のザッピングは、放送中の番組の中でチャンネルを乗り換えるだけだったが、全録レコーダでこれをやると話が違ってくる。再生中の番組を中心に、同じ時間帯の裏番組へ飛んだり、あるいは時間を遡って前の番組を見たり、先へ進んで次の番組を見たりできる。

 本機ではそのインターフェースを、再生中に十字キーを押すだけというシンプルな操作にまとめた。名前もタイムマシンなんたらという仰々しいものではなく、「らくらく番組ザッピング」である。このイージーさがいい。いちいち録画番組表に戻らず、番組を流しながら上下左右に動けるといったイメージでいいだろう。

番組再生中に十字キーのいずれかの方向を押すと、ザッピングメニューに入る
初めて使う機能に出会うと、ヘルプが出現する。こういった配慮もなかなかいい

 また番組再生も、これまでは最後まで見たら自動で録画一覧などに戻されていたが、本機では番組が最後までいくと、次の番組が自動的に再生される。ギャップレスで再生されるわけではなく、少し間は空くが、テレビ点けっぱなしと同じ状態が再現される。これなら本当にタイムマシン録画と言える。

 音声入力による操作は昨年の「BXT970」でもご紹介したが、この機能も強化されている。検索したいキーワードと動作をいっぺんに話しても、対応できるようになった。例えば疲れて帰ってきてソファーに倒れ込んだのち、リモコンで「名曲アルバムを再生」と入力すれば、レコーダが電源OFFから起動してHDMI CECでテレビの電源も入れ、名曲アルバムが再生される。全自動で癒されるわけである。

音声操作も初めて使う時にヘルプが出る

 さらに有料サービスである「MeMORA(ミモーラ)」に登録しておけば、番組内のメタデータ検索もできるので、「誰々の出演シーン」といった音声検索も可能だ。

 最後にアウトプットの話をしておこう。本機はHDMI端子から、4Kのアップコンバート出力が可能だ。ただし24p/30pまでで、60pには対応しない。

 一般的に今の4Kテレビには、HD解像度の入力を4Kにアップコンバートする機能が付いているので、機能としてはダブる事になる。しかしレコーダは再生素材が何なのか、例えばBlu-rayの映画で元が24pだといった素性を把握しているので、アップコンバートのアルゴリズムを最適化できる。さらにMGVC対応ディスクを再生した場合は、4K24p/4:2:2/36bitの出力が可能になっており、階調表現でかなりの威力を発揮しそうだ。

 もう一つのアウトプットとして、宅外からのリモート視聴にも新機能がある。すでに多くのレコーダで宅外へのストリーミング視聴が可能になっているが、気になるのはデータ量だ。キャリアでは月に7GBの制限があり、MVNOでは1GBから10GBまで色々あるようだ。一部無制限のプランを提供する事業者もあるようだが、そういう契約でない限り、テレビを見ていたら他のことができなくなったというのでは困る。

 そこで本機ではデータ量を抑えた「パケット節約」モードとして、150kbpsという転送レートが新設された。解像度としては180pとなり、データ通信を安定させるためにVBRながらもそれほど極端に増減しないという独特のアルゴリズム、「ネット最適VBR」が採用されている。1GBのデータ通信量で、約15.5時間の視聴が可能になるという。

 実際に150kbpsで視聴してみたが、画質に関してはほとんどワンセグ並みといったところだろうか。内容は把握できるが、コンテンツとして楽しめるかというと、そこまでのクオリティはない。もう1段階上の400kbpsになるとかなり綺麗に見られるのだが、そうなると1GBあたり約5.5時間となる。もう少し画質とデータ量のバランスをとって、250kbpsぐらいでなんとかならないだろうか。

総論

 以前からパナソニックは、全録機で何か面白いことをやろうとずっとトライを続けてきているが、本機の登場によって大きく他社をリードしたのではないかと感じさせる製品だった。VIERAで開発したUIや音声認識などもどん欲に取り込みつつ、新しいテレビ視聴体験のメインストリーム機としての位置を確立しつつある。

 まず、番組表形式にこだわらない見せ方を徹底したところが大きい。新着番組メニューでは、ジャンルごとに分類はもちろん、ランキングやニュースも取り入れるなど、まさにテレビ番組の総合商社的な見せ方になった。テレビを見る入り口を変えたわけだ。

 実際にランキングの番組を見ると、最近忙しくてどんな番組が面白いのか見失った人でも、すぐに現役復帰できるラインナップになっている。関連番組やおすすめなども駆使していけば、これまで中身をよく知らないために見る機会がなかった番組にもたどり着ける。

盛り上がりランキングでネットの話題も追える

 「らくらく番組ザッピング」も面白い機能だ。同じ時間帯の番組をハシゴしたり、どんどん次に進んだりと、いちいち番組表に戻らず映像で進めていけるので、番組名に惑わされず、偏見なく面白いものにたどり着けるという強みがある。ここはさらなる進化の可能性が感じられる部分だ。

 最強という意味ではBRX6000という事になるが、チャンネル録画数とHDDを減らして実売15万円以下に抑えたBRX4000も魅力だ。BRX2000はさらに安く10万円を切るが、リモコンが違うので音声検索やモーション操作が使えないのが惜しい。

 どれを買っても全録機としての満足度は高いだろうが、新しいイノベーションを体験したいと思えば、やはりBRX4000以上ということになる。このシリーズがテレビを新しい切り口で再体験する装置として、一般の認知が高まることを期待したい。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。