小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第738回:CESで見つけた新4Kカメラ。ニコンは360度アクションカメラ投入

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

第738回:CESで見つけた新4Kカメラ。ニコンは360度アクションカメラ投入

2016年、4Kレース開幕

 すでにプレスカンファレンスなどのレポートが出ていてご承知のことと思うが、現地時間の1月6日10時より、世界最大級の家電展示イベント「CES 2016」が米国ラスベガスで開幕した。前日は砂漠の街には珍しく大雨となり前途多難が予想されたが、会期本番初日はいつものように快晴に恵まれた。

ようやく快晴に恵まれたラスベガス・コンベンションセンター

 さて筆者ら取材陣は3日より現地入りして事前取材などを行なってきているが、今年は誰に聞いても「テーマが絞りにくい」という答えが返ってくる。PCはもうCES的なテーマではないし、モバイルはヨーロッパや台湾が中心となり、テレビも今更4Kどうこうというものでもない。そうなるとIoTか? ということになるが、小さいものが多くてまだ全体像が見えてこないというのが正直なところだ。

 ただそうはいっても、実際に4K機器は今現在普及が進みつつあり、日本と米国は粛々と4K化への道を進むことになる。初日となる本日は、4K撮影が可能なカメラを取材してきたのでご紹介したい。

「いつの間にか4K」作戦が順調のパナソニック

 総合家電メーカーであるパナソニックは健康器具から4K BDプレーヤーまで幅広い展示を行なっているが、イメージング機器も好調だ。ただブース来場者の流れを見ると、カメラコーナーが移動の動線から少し奥の高い位置にあるため、以前のように人だかりで写真も撮れないという感じでもない。

セントラルホールの一等地に陣取るパナソニックブース

 パナソニックの4Kビデオカメラは、昨年2月に同社初となる「HC-WX970M」をレビューしたところだが、ブースでは後継機となる「HC-WXF991K」が登場した。日本国内向けモデルもちょうど今日発表されており、「HC-WXF990M」となっている(日本の発売は1月21日/オープンプライス:実売145,000円前後)。

米国向け最上位モデル「HC-WXF991K」

 30.8~626mm(35mm換算)の光学20倍ズームレンズ搭載で、5軸ハイブリッド手ブレ補正を備える。また昨年のモデルにはなかったビューファインダも搭載した。ワイプ撮影用のツインレンズスタイルも継承している。

ビューファインダも搭載した

 最大のポイントは、4Kで撮影した動画をHD解像度にダウンコンバートする機能が搭載されており、その際にズームやパンをしたり、特定の被写体にロックして拡大したり、強力なスタビライザーをかけながら切り出しを行なうことができるようになっている。

4KからHDへの切り出しに3つのモードを搭載

 まだ4Kテレビを持っていないということで敬遠されがちな4Kビデオカメラだが、HDへの切り出し機能にスパイスを加えることで、4Kテレビがなくても4Kで撮るメリットを打ち出す作戦と言える。

 ズーム/パンはファーストとスローの2段階で、速さはそれぞれ20秒、40秒。早いズームは撮影時に自分でやればいいが、これぐらいのじんわりしたズームはレバー操作ではできないので、後からじっくり取り組めるようにしたという。

ズームスピードは2種類

 その他マニアックな機能として、ホラー/サイコサスペンス映画などでよく使われる「ドリーズーム」をサポートする機能が搭載された。これは被写体に対してカメラを前進させながらズームアウト、もしくはカメラを後退させながらズームインすることで、メインの被写体のサイズは変わらないまま、背景のパース感だけが変わっていくという撮影方法である。

ブースではレールを使って「ドリーズーム」の効果を実演

 通常はカメラをレールに乗せて、カメラを押す人とズームする人が阿吽の呼吸で行なうわけだが、本機では画面中央のガイドフレームに顔が入るようにドリーすることで、初心者でも半自動的にこの効果を得ることができる。なお再生時には、効果がわかりやすいように自動的に2倍速再生となる。これはサンプル撮影が楽しみだ。

ガイドに合わせて撮影することで、簡単に効果が得られる

 なお同スペックでビューファインダとサブカメラがない「VX981K」も同時に展示されている。

同スペックのビューファインダ、サブカメラなしモデル「VX981K」

 一方デジカメの方は、昨日のプレスカンファレンスでも発表された4K動画対応コンパクトデジカメ「DMC-ZS100」(日本名DMC-TZ100)も展示されていた。プレスカンファレンスでは赤いラインの入ったシルバーモデルだったが、展示機はブラックモデルしかなかった。

プレスカンファレンスで紹介されたシルバーモデル

 1インチ/20メガピクセルのセンサーを搭載したコンパクトデジカメのハイエンドモデルで、25~250mm(35mm換算)の光学10倍ズームレンズを備える。4K動画撮影機能だけでなく、4K撮影機能を利用した「4Kフォト」や「フォーカスセレクト」も搭載する。

4K撮影対応のコンパクト機「DMC-ZS100」
小型ながらFnキーが多く、使いやすそうだ

 これまでフォーカスセレクト機能は、GX8、G7、FZ300、GH4といった大型カメラしか搭載されてこなかったので、コンパクトモデルとしては初搭載ということになる。この辺りが、2013年末に発売された4K対応コンパクト「DMC-LX100」との大きな差ということになるだろう。

 また、ほぼ同機能ながら1/5インチセンサーを搭載、24~720mm(35mm換算)の光学30倍ズームを誇るDMC-ZS60(日本名DMC-TZ60)も展示された。米国での価格はZS100が699ドル、ZS60が499ドルとなっている。

センサーは小型ながら、光学30倍を誇る「DMC-ZS60」
背面の佇まいもなかなかいい

ソニーも新4Kハンディカムとアクションカムを展示

 2014年という早い段階で4Kハンディカムを投入したソニー。昨年は空間光学手振れ補正を搭載した「FDR-AXP35」を発売したが、今年はその後継としてFDR-AX53が登場した。

4Kハンディカムの新スタンダード「FDR-AX53」
サイズ感は前モデルと大体同じだが、軽量化されている

 型番が“AXP”ではないのでプロジェクタはついてないが、レンズ、空間光学手振れ補正ユニット、センサーが新開発となっている。前作は29.8mmスタートの光学10倍ズームだったが、今回は26.8mmスタートの光学20倍ズームとなった。またユニットの小型化により、本体サイズはほぼ同じながら約75g軽量化されている。

レンズは光学20倍に

 センサーは1/2.5型の16:9、総画素数857万画素の裏面照射型。デジカメ兼用の4:3センサーが多いなか、わざわざ16:9のセンサーで、しかも1ピクセルの面積が大きくなっているため、暗所感度の向上が見込める。

 手振れ補正も、空間光学手ぶれ位補正と電子補正「インテリジェントアクティブモード」を組み合わせるモードを用意。走りながら撮影するといった、周波数の揺れに強くなっている。ただし、インテリジェントアクティブモードは、4K撮影では使えないのが残念である。

 AFは一眼やデジカメで採用されている空間被写体検出方式を搭載することで、高速で正確なAFを実現したという。またマイクも上面向きではなく、前後左右から音が入るように高さを設けており、よりクリアな集音ができるようになっている。

 もう一つ、これは厳密には4Kではないが、アクションカムも新モデルが出たのでご紹介したい。「HDR-AS50」は、アクションカムのエントリーモデルに位置する製品で、サイズ的にはHDR-AS200などと同程度ながら、液晶画面が新規となり、視認性が向上した。

液晶モニタで細かい表示が可能になった「HDR-AS50」

 細かい改善点としては、シリーズとして初めて電源ボタンを搭載した。これまで電源OFFするにはメニュー操作が必要で面倒だったが、そういう手間もなくなる。

上面の後ろに電源ボタンを搭載

 手振れ補正機能も同じエントリー機であるHDR-AZ1と比較すると3倍向上しており、特に自転車やバイクといった細かい振動周波数に対応したという。ボディカラーは久々にブラックに戻ったが、これは本体のみで防水・防滴機能がないからだそうである。ラインナップ中では、ホワイトのモデルのみ、本体防水・防滴ということである。

 タイムラプス機能は静止画をインターバル撮影するわけだが、このモードのみ4K解像度での撮影が可能だ。ただし静止画の連番ファイルが大量にできるだけなので、実際に動画にするにはソニーで用意しているソフトウェア「Action Cam Movie Creator」か、何らかの動画編集ツールを使う必要がある。

 またライブビューリモコンも新モデルとなった。従来は手首に着けるにはかなり大仰だったが、新型は体積比でおよそ30%になり、スマートウォッチ的な感じになる。

大幅に小さくなった新リモコンとアクセサリ(写真右)

VR業界注目? ニコンの「KeyMission 360」

 以前からCESではVRが元気だが、いわゆる360度カメラも元気である。国内では昨年後半にリコー 「THETA S」とKodak 「SP360 4K」が相次いで発売されたが、米国ではそれ以外にもベンチャー製品がいくつか存在する。

 そんな中、ニコンが360度カメラ市場に製品を投入する。「Keymission 360」と名付けられたカメラは本体防水・防滴で、“アクションカメラ的なもの”という位置付けでもニコンでは初となる。

ニコン初のアクションカメラ兼360度カメラ、「Keymission 360」

 CESの展示では参考出品ということで、ガラスケースの中に展示されているのみで、実機を触ることはできなかった。詳細を確認したかったのだが、現地の説明員もセンサーサイズや記録画素数などは分からないということであった。ニュースリリースでは「360度の全方位を4Kで撮影できる」としている。

 ボディとしては、正面から見れば正方形に近く、前後に同形状のレンズを搭載する。天面に動画の録画ボタンがあり、側面には静止画撮影ボタンらしきものがある。ボディに記載されたロゴなどから判断する限り、Wi-Fi、Bluetooth、NFCを搭載するようだ。

天面に録画ボタン

 底面に三脚穴があり、自転車のハンドル装着用アクセサリや、グリップなどがつけられる。またゴム製のカバーも提供されるようだ。

専用のゴム製カバーも供給されるようだ
リモコンはかなり小型で、電源と動画、静止画の撮影ボタン、Fnキーがある

 公式ムービーとして、本機で撮影した動画が3本アップされている。見える場所をユーザーが操作できる360度動画だが、これを見る限り左右のカメラのステッチがあまりうまくいっていないように見える。おそらく胴体に幅があるため、完全に2つの映像が繋がらない仕様なのではないかと想像する。

 まだ発売まで間があるので、この辺りのクオリティが改善されることを期待したい。

Nikon KeyMission 360 sample movie #1
Nikon KeyMission 360 sample movie #2
Nikon KeyMission 360 sample movie #3

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。