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「超臨場感」へ。ソニー新4K BRAVIAが目指した画/音質

3シリーズで4K本格普及。「感動に最短距離」の快速設計

 現在の薄型テレビ市場におけるホットなトピックといえば「4K」だろう。2013年に急拡大し、2014年はワールドカップイヤーということもあり、この4月に入ってから、パナソニック、ソニー、東芝と相次いで新製品を発表。「4Kテレビラッシュ」ともいえる状況だ。

商品企画担当の荒木俊之氏(左)とマーケティング担当の伊勢由樹氏(右)

 その4Kテレビ市場で「主役」といえるのがソニーだ。'13年の市場シェアは70%と圧倒的。55~84型までのサイズ展開を用意し、特にサイドに大型スピーカーを搭載した「BRAVIA X9200Aシリーズ」は大ヒットモデルとなった。

KD-65X9200B

 アナログ停波以降不振だったテレビ市場の反転の象徴ともいえる4Kテレビ。それだけに各社の期待も大きいが、2014年のソニー4K BRAVIAは、さらにラインナップを拡充し、最高画質の「X9500Bシリーズ」、大型スピーカーの中核モデル「X9200Bシリーズ」、49~70型までの4Kスタンダード「X8500Bシリーズ」の3シリーズ8モデル展開となる。

 ソニーは新4K BRAVIAで何を狙うのか? そして、4Kテレビ市場をどう変えていくのだろうか? BRAVIAのマーケティングを担当するソニーマーケティング ホームエンタテイメントプロダクツマーケティング部 ディスプレイMK課 シニアマーケティングマネジャー 伊勢由樹氏と、ソニー ホームエンタテインメント&サウンド事業本部 商品企画部門 TV&VIDEO商品企画部 企画4課の荒木俊之氏に聞いた。

4K市場を牽引へ。4K BRAVIA新ラインナップの狙い

マーケティング担当の伊勢由樹氏

伊勢氏(以下敬称略):業界的にも、地上アナログ停波後に市場は縮小、横ばいとなっていましたが、一方で大型モデルへの買替需要が増えはじめています。BRAVIAとしては、12年から大型テレビのイメージ形成に取り組み、そこにプラスして高画質化へチャレンジしたことが、'13年の4Kで実を結び、4Kテレビの市場を作ることができました。

 '14年も、'13年の取り組みは継続しますが、より4Kを牽引しようという強い意志を込めて、3シリーズ揃えました。全体として目指したのは「シンプルで上質」。これから4Kの市場が広がる中で、いろいろな要望に応えていきたいと思っています。

 ソニーが4K拡大に向けて展開するのが、直下型LEDで“ブラビア史上最高画質”を謳う「X9500Bシリーズ」、大型スピーカーの中核モデル「X9200Bシリーズ」とスリムな4Kスタンダード「X8500Bシリーズ」だ。それぞれの狙いを見てみよう。

型番サイズ特徴発売日価格
KD-85X9500B85型直下型LED
最高画質
7月26日200万円
KD-65X9500B65型5月24日80万円
KD-65X9200B65型サイドスピーカー
中核モデル
65万円
KD-55X9200B55型45万円
KD-70X8500B70型スリム/スタンダード4K6月28日65万円
KD-65X8500B65型6月14日56万円
KD-55X8500B55型36万円
KD-49X8500B49型32万円
KD-65X9500B(左)とKD-85X9500B(右)

 「X9500Bシリーズ」は、「ずっと待望されていた(伊勢氏)」という直下型LEDと、輝度を向上する「X-tended Dyanmic Range PRO」を搭載したフラッグシップシリーズだ。85型と65型の2モデル展開で、価格も85型は200万円、65型が80万円と「インチ1万円」を切る他のシリーズとは“別格”だ。X9500Bシリーズについて、商品企画担当の荒木氏はこう語る。

荒木氏(以下敬称略):ソニーは、2008年のXR1からLED部分駆動と直下LEDを導入し、毎年進化させてきました。2013年の4K元年は、4Kシフトに注力しましたが、2014年は満を持して直下LEDのモデルを出す。それがX9500Bです。最高画質のBRAVIAで、2013年に直下型を待望されていた映画ファンや、プラズマからの買い替えのお客様に届けたいと思います。

 「X9200Bシリーズ」は、65型と55型の2サイズ展開。大型サイドスピーカーを擁し、ヒットモデルとなったX9200Aシリーズの後継機となる。音と映像の融合を目指したという製品らしく、画質だけでなく、音質も強化し、デザインも一新された。

伊勢:X9200Bでは、画質はもちろんですが、昨年にも増して音を強化しました。音と映像が融合した、“超臨場感”というのがX9200Bシリーズの目指すものです。特に低音を強化し、全体として艶感のある音が打ち出せるようになりました

X9200Bシリーズではウェッジデザインを採用

 また、デザイン面からもBRAVIAのこだわりを体現した象徴的なモデルになっているという。それゆえ、X9200Bシリーズが中核モデルと位置づけられるのだ。

伊勢:4Kクオリティにふさわしい、シンプルで上質なデザインを目指したのはもちろんですが、そこに“機能美“を入れました。それを象徴するのがX9200Bのウェッジデザインです。企画/設計/デザインのそれぞれの担当者が、音を良くするならば、スピーカーを前面に出したいと考えていましたが、ウェッジにより、デザインと機能を融合した“機能美”を体現できたと思います。

荒木:X9200Bのウェッジデザインは、横から見て、くさび形、下部が三角形に見えるというものですが、印象的なデザインとなっているだけでなく、スピーカー容積を稼いで、音質を向上するという狙いもあります。スピーカーを前面に装備し、容積を拡大し、グラスファイバーユニットを採用したことで、低音の迫力と音のレスポンスや艶感を改善しました。あわせて、低重心となり、スタンドの奥行きが短くなるため、省スペースでの設置が可能となりました。また、スタンド位置はラック幅にあわせて外側と内側の2通りが選択できるようになっています。

 つまり、デザイン、音質、設置性の“いいとこ取り”を狙ったものが、このウェッジデザインというわけだ。

KD-49X8500B

 4K BRAVIAのスタンダード機と位置づけられる「X8500シリーズ」は、2014年の拡大が見込まれる4K市場に向けた戦略製品となる。49型~70型までの豊富なサイズ展開で、ファミリーから写真鑑賞などの幅をカバーする。

伊勢:拡大していく4K市場に対応し、本質的な価値にこだわる方、ファミリー層から写真愛好家など、様々なこだわりに全4ラインで応えたい。特に49型ができたのは大きいと思います。これまで4Kは55型以上の大型でやってきましたが、スペースの都合上設置できないという方もいらっしゃいました。49型を用意することで、いままで4Kを手にとっていただけなかった方にも、触れていただければ。

明るさと部分駆動で4K画質を進化。それぞれの4Kの狙い

新4K BRAVIAの進化点

 ターゲット市場が異なる新4K BRAVIAだが、目指した進化の方向性は明確。「画質の向上」、「音質の向上」、「快速設計」の3点となる。

 まず画質について。荒木氏は「画質については正常進化。愚直にやっていきます」と語る。中でも、今回のX9500B/X9200Bシリーズで改良したポイントが「輝度/明るさ」だ。X9500B/X9200Bシリーズでは、光の煌きを忠実に再現し、高輝度な映像表現を行なうという「X-tended Dyanmic Range」と、LED部分制御技術の進化により実現したものだ。

 X9200BとX9500Bの画質面の主な違いは、LEDバックライト方式。X9500Bではより高画質を実現できる直下型LEDを採用したほか、従来比、最大約3倍の高輝度表現を有す「X-tended Dynamic Range PRO」を搭載。X9500Bでは、直下型の特徴を活かし、LED部分駆動(ローカルディミング)もより細かな制御が可能となり、臨場感の向上を実現できたとする。X9200Bではエッジ型LED+X-tended Dynamic Rangeにより、同約2倍の高輝度表現を行なう。

X-tended Dyanmic Range/X-tended Dynamic Range PROを搭載

 輝度/明るさについては、東芝のREGZA Z9Xシリーズでも強化しており、4Kテレビにおける画質トレンドともいえる状況だ。BRAVIA X9200B/X9500Bシリーズの狙いはなんだろうか?

荒木:シンプルな正常進化ですね。画質の三要素を、“解像度”、“色”、“明るさ”と考えると、2年前にまず解像度/4Kに対応し、'13年にはトリルミナスで色(広色域化)に本格的に取り組んだ。その次の順番としては“明るさ”が順当で、これをひとつひとつ極めていく。画質に関しては愚直にド直球でやっていきます。

 また、LEDの部分駆動については、ソニーは2008年から取り組んでおり、技術的な差異化資産があります。特に細かい階調の表現などは、培った技術力がある。そこに今回、X-tended Dyanmic Rangeという輝度を高める技術を導入したわけです。

伊勢:'13年モデルでも「ソニーの4Kはあざやかでキレイ」と評価いただいていました。そこに突き抜けるような明るさを入れたのが、X9500B/X9200Bシリーズです。我々のゴールは「超臨場体験」、あたかもそこにいるかのような体験を提供したい。単に明るくなったというよりは、ピーク輝度を2~3倍にできたことで、よりリアリティある体験にしていきたい。


X9500BX9200BX8500B
サイズ85/65型65/55型70/65/55/49型
解像度3,840×2,160ドット
LED
バックライト
直下型エッジ型エッジ型
エリア制御-
オプティコントラスト
パネル
-
高輝度技術X-tended
Dyanmic
Range PRO
X-tended
Dyanmic
Range
-
スピーカーアンダーサイドアンダー
快速設計

 ターゲット層も、価格帯も異なる3シリーズ。それぞれに画質傾向の違いはあるのだろうか?

伊勢:ソニーの4K画質の価値を全てのお客様に届ける、という姿勢は変わりません。その中で、最高画質、画質音質の超臨場感、スリムスタイリッシュという選択肢を用意しています。

商品企画担当の荒木俊之氏

荒木:X9500B/X9200Bでは、まるでその場にいるような臨場感ある光の表現を実現し、こだわりの強い映画ファンにも「刺さる」ものにしたかった。そのための直下型LEDであり、X-tended Dyanmic Range PROの効能ですね。X8500Bについては明るい自然な画質で、映画だけでなくお子様の写真など、4Kにより大画面の魅力をより幅広く伝えたい。

 ただし、X8500Bシリーズについては、X-tended Dyanmic Rangeのほか、LEDの部分制御や、前面ガラスと本体を一体化した「オプティコントラストパネル」も省かれている。この理由は「コスト」なのだろうか?

荒木:もちろんお客様の裾野を広げるという意味で、価格は重要です。ただ、前モデルのX8500Aシリーズと比べても、トリルミナスとX-Reality PROのチューニングを改善し、より4Kのインパクトが出るようになっています。また、お求めやすさだけでなく、スリムで設置しやすいということも、X8500Bシリーズの狙いです。

音もよりクリアに。X9200Bシリーズの進化

KD-65X9200B

 音については、前述のとおりX9200Bシリーズで、ウェッジデザインを採用。大容量スピーカーを内蔵可能となったほか、従来は背面側に設置していたサブウーファを前面に配置し、低域のクリアさを向上。また、ツィータユニットもグラスファイバー製(従来はプラスチック)とし、応答速度を向上している。ウーファには磁性流体ユニットだ。

 発表会場では、X9200BとX9200Aの比較デモも行なわれていたが、X9200Bでは明らかに低域のレスポンスとキレが良くなっており、それにより中域の情報量も改善したように感じられた。定位感も明瞭になり、全体的に音像がすっきりと聴きやすくなった印象だ。X9200Aも、薄型テレビの中で群を抜いた大型スピーカーを搭載し、音質にこだわった製品だっただけにこの差には驚かされた。

伊勢:X9200Aシリーズのヒットにより、目指していた絵と音が一体になった体験というコンセプトが正しかったことがわかりました。だから音の強化というのは当然重要で、そこでウェッジデザインが必要になりました。

荒木:デザインやユニット、ユニット配置なども強化しましたが、サウンドの内部処理も進化しています。「S-Forceフロントサラウンド」の内部処理も進化しました。従来は5.1chなどマルチチャンネル音声入力時に、一度ステレオにダウンミックスしてからサラウンド化していました。サラウンド化に伴う処理が非常に大変だったためこうしていたのですが、この際にサラウンド情報を欠損していました。新モデルではマルチチャンネル信号からをそのままサラウンド化を行なえるようにしたので、より自然なサラウンドにしています。

1秒起動+サクサク動作。本当のスマートTVを目指した「快速設計」

スピーディ/ダイレクトを謳う「快速設計」

 新BRAVIAのもうひとつの特徴が「快速設計」だ。

 電源オフ状態から1秒前後で起動する「高速起動」に対応。よく視聴される時間帯を自動的に学習して、1日のうち6時間が高速起動モードが動作するようになる。さらに、放送番組/ネット動画/ホームネットワーク上のBDレコーダ、nasneの録画番組など、多様な映像ソースから見たいコンテンツを簡単に探せる「番組チェック」機能も搭載。「タッチパッドリモコン」により、スマートフォンのようなフリック操作で、多様な映像ソースからシームレスに簡単にコンテンツを探すことができるようになった。

ユーザーインターフェースも一新
通常の入力切替も可能

 なぜいま、4K BRAVIAで「快速設計」に取り組んだのだろうか?

伊勢:画質と音質の進化はテレビとして当然です。一方、4Kでデータは膨大になっており、これらを扱うときに動きが遅い、カクカクしているのでは、せっかくのコンテンツの体験/感動が台無しになってしまいます。画質、音質を、裏方としてしっかり支えるのが快速設計。この3つが揃うことがソニーのプレミアムな体験と考えています。

 (快速設計の)メッセージはシンプルで、「スピーディ」と「ダイレクト」です。

タッチパッドリモコン

 まずは、電源ONが早い「1秒起動」が一番。そしてコンテンツをサクサクさがして再生できる。高速起動は“起動するだけ”ではなくて、チャンネル選局や検索などの操作も速く、写真もYouTubeもすぐに探して再生できる。あたりまえの操作がストレスなく出来るようにしました。

 ダイレクトというのは、スマートフォンやタブレットの操作に慣れた方にもわかりやすい操作方法として、タッチやフリック操作ができるタッチパッドリモコンを用意しました。インターフェースもタッチパッドで直感的に操作できるようにしています。

荒木:これまでは、電源ONから5秒、メニュー操作まで2~30秒ぐらいかかっていましたが、番組チェック機能であれば、約1秒で立ち上げから操作までできるようになったというのが大きな違いです。立ち上げて、すっとフリックが操作できる。

 この2~3年ぐらい「スマートテレビ」が提案されていました。ただし、コンテンツにアクセスするために、何かのアプリを開いて、そこから選択するなど、たくさんのステップが必要になってました。IPTVだけでなく、録画コンテンツも、入力を切り替えて、録画リストを開いて、とか……。コンテンツはたくさんあっても、そこのアクセスの方法がバラバラだったり、階層が深かったりというのでわかりにくい。それってホントにスマート? というのが我々の疑問でした。

 そこで快速設計は、放送コンテンツも録画コンテンツも区別なく、いままでのテレビのザッピングのように、感動に最短距離でたどり着けるようにしましょう、という狙いで導入しました。とにかく、ストレスを減らすことがコンテンツの感動につながる。見えないところも徹底的にやりました。

 また、番組を見ながら関連ツイートをチェックできる「ソーシャル視聴/Twitter連携」機能も装備。リモコンのソーシャル視聴ボタンを押すだけで、トレンドキーワードや関連ツィートなどを表示できる。

 一方、個人的に新4K BRAVIAでやや疑問に思ったのが「Skype」の搭載だ。「ビデオ通話でテレビで双方向コミュニケーション」を、「実家の両親に子供を見せましょう」といった提案は、多くのテレビメーカーが取り組んできたが、現状あまり成功したという話は聞かない。死屍累々の歴史、と言っても過言ではない。

 しかし、荒木氏によれば、今回のSkype対応の狙いはそこではないという。

荒木:我々は、「Skypeでビデオ電話」がやりたいわけではないんです。「ソーシャル視聴」で、目指しているのは「擬似臨場体験」。つまり、スタジアムの体験で隣の人と一緒に楽しんでいるような感覚をテレビで実現したいんです。

 そのひとつは、Twitterでネット上の他の視聴者と一緒にリアルタイムで盛り上がりを体験するというものです。そしてSkypeは、友人とビデオでつながりながら、コンテンツを“一緒”に体感するための機能として提案しています。つまり、「ライブ体験の向上のための機能」で、それが我々の目指す超臨場体験です。

ソニーのプレミアム4K体験を

 一方で、市場には当然2K/HDも残っており、ソニーでも当然ラインナップを継続する。ソニーにおける4K/2Kの住み分けはどうなるのだろうか? また、4Kにどこまで注力するのだろうか。

荒木:やはり4Kを拡大して、その臨場感を体験いただきたい。それが第1のメッセージです。ただし、まだ4Kは早いよ、という方も当然いらっしゃいます。2Kもソニーはきっちりとやるというととを示していきます。例えばX-Reality PROを全2K製品に入れ、我々の画質へのこだわりをきっちり伝えます。

 今回のW920Aは4倍速のプレミアム2Kでワールドカップイヤーに訴求しますし、新しい画質、音質、快速設計を盛り込んだのが2KのW800B/W700Bシリーズも発売します。また、32型でもフルHDを揃えて、ソニーの価値を入れ込んでいます。

 夏商戦を目指し、投入される新4K BRAVIA。2014年にBRAVIAが目指すものとはなんだろうか?

伊勢:今年は4Kの市場が大きく拡大すると期待しています。競争し、一方で協力しながら、4K市場を拡大したいと考えています。大型テレビ市場全体で、4Kを13年の倍以上にもっていきたいと思っています。

 BRAVIAで、自信を持っているのは画質と音質。そしてそれを支える快速設計です。本質価値をしっかり作りましたので、そこの価値をしっかり伝えたい。店頭でも、画質、音質、快速設計の「ソニーのプレミアム」を体験して欲しいと思います。

(協力:ソニーマーケティング株式会社)

(臼田勤哉)