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機種数の増加と機能の拮抗から、価格競争に突入しつつあるUSB接続タイプのワンセグチューナ。そんな中、「デジタルラジオ対応」という新たな差別化機能を搭載した製品として、3月にピクセラの「PIX-ST050-PU0」を取り上げた。 携帯電話ではauを中心に、搭載機種が増加傾向にあるデジタルラジオ(デジラジ)だが、電話以外の対応製品は「PIX-ST050-PU0」が初。第1弾モデルとしては完成度の高い製品だが、著作権保護の観点からWindows Vistaでしかデジラジの受信が行なえないこと(ワンセグはXPでも利用可能)。直販のみで店頭販売が行なわれていないことが気にかかる点だった。 そんな中、ワンセグ/デジラジ対応のチューナ第2弾としてエスケイネットが「MonsterTV 1DR」を5月25日に発売した。最大のポイントは、Windows XPでもデジラジの受信を可能にしたこと。また、デジラジ対応製品としては初めて、店頭販売が行なわれるモデルでもある。 さらに、オプションでブースター付き外付けアンテナを用意するなど「屋内でのワンセグ受信」も意識した製品になっている。
■ シンプルデザイン カラーリングは白で統一されており、業界最小を競う他社製品と比較すると、筐体はやや大ぶり。外形寸法は64×24×10mm(縦×横×厚さ)。バッファローの「ちょいテレ」の58.6×18×12.6mm(同)と比べると一回り大きい。重量も18gと12gで6gほど重い。表面はつるつるした質感で、シンプルなデザインとマッチしている。ロッドアンテナを標準で装備する。
特徴的なのは、楕円形の台座と延長ケーブルを同梱していること。チューナをPCから遠ざけるために延長ケーブルを同梱するモデルは多いが、机の上にしっかりと設置できる台座もセットにしている製品は珍しい。ここからも屋内利用も意識した製品だということがわかる。ケーブルを含めて全体がホワイトで統一されており、高級感がある。 なお、USB保護キャップなどは付属しない。台座がキャップの代わりというイメージだ。 ロッドアンテナは着脱可能。付属のRF変換ケーブルを利用すれば、屋内のUHF用アンテナ端子と接続できる。また、後述するブースター付きアンテナも接続可能だ。内蔵するチューナモジュールは、1/3セグメント受信に対応したシャープ製。auのAQUOSケータイ新モデル「W51SH」に搭載しているものと同じだ。
パッケージも面白い。前述のように店頭販売も行なわれる製品だが、販路として従来のPC周辺機器売り場だけでなく、CDショップや楽器店なども検討しているという。それに伴い、パッケージデザインもPC周辺機器売り場をイメージしたものと、ピアノの鍵盤の写真を使った“それ以外の売り場用”の2種類を用意している。機能や製品型番を前面に出したパッケージのチューナが多い中、妙に新鮮。「ワンセグって何?」というお客さんも、思わず手にとりそうだ。
■ 快適な予約録画機能 視聴/録画は専用ソフト「1D Controller」で行なう。ピクセラの「PIX-ST050-PU0」はデジタルラジオとワンセグで利用するソフトが分かれていたが(統合予定)、「1D Controller」は同じソフト上からボタン1つで、両放送の切り替えられる。インストール時にWindows XPでは「.NET Framework」のインストールが必要。Vistaでは不要だ。レビューではバージョン「2.0.8924.1」のソフトを使っている。 GUIはシンプルなデザイン。メインウインドウの左上に映像、下部には操作パネルを配している。右側には「現在の番組」、「保存番組」、「データ放送」のタブが作られており、それぞれの表示が切り替えられる。EPGは別ウインドウになっており、「番組表」ボタンを押すと画面左側に現れる。なお、これらのパネルは表示/非表示が可能。全てのパネルを非表示にすれば、画面のみのコンパクトな表示にできる。 画面サイズは等倍表示と1.5倍表示、フルスクリーン表示が可能。フルスクリーンは画面のダブルクリックで切り替え。戻る時はESCキーかWindowsキーを使用する。1.5倍表示への切り替えはタイトルバーの右側にボタンが用意されている。
コントロール部には大きな録画ボタンやボリューム、番組表、チャンネル切り替えボタンなどを用意。デジラジとワンセグを切り替えるボタンもここに用意されている。説明書を読まなくても直感的に操作できるだろう。Windows XPのマシンでも問題なくデジラジが受信できた。ワンセグとの切り替え時間は約7秒。各チャンネルの切り替えはワンセグ/デジラジともに2~3秒程度だ。 録画ボタンを押せばリアルタイム録画がスタート。録画したコンテンツは「保存番組」タブから呼び出せる。ダブルクリックで再生。右クリックメニューから「削除」することもできる。
なお、デジラジ/ワンセグのどちらの番組を録画しても、「保存番組」メニュー内では放送別に区別はされない。新しい録画が下に順次追加されていくだけだ。番組名とチャンネルが表示されているので目的のファイルは探せるが、全体が灰色で統一されていることもあり、コンテンツが増えてくるとパッと見で「ラジオなのかワンセグなのか」がわからなくなる。番組名の横にラジオ、もしくはテレビのアイコンが表示されるなど、一工夫欲しいところだ。 ワンセグ/デジラジともに、データ放送に対応。操作は下部に用意されたカーソルボタンで行なう。マウスでの操作には後日対応予定だという。なお、データ放送からWebへリンクされている場合は、ブラウザが立ち上がり、ページにアクセスできる。携帯電話専用サイトの場合は不可だ。
設定画面では、録画した番組を保存するフォルダ指定と、受信局の設定が可能。オートスキャンでの登録が可能で、登録情報をプロファイルとして最大10個保存できる。他のエリアに移動する事が多い場合は重宝するだろう。
録画予約は、タスクバーに常駐するアイコンから行なう。1D Controllerの起動もこのアイコンから可能だ。日時や時刻を指定するマニュアル予約に加え、iEPGサイトからの予約もサポートする。システム的にはデジタルラジオのiEPG録画にもすぐ対応できそうだが、そもそもデジタルラジオのiEPGサイトが存在しないので意味が無い。また、EPGからの予約はサポートしていない。
マニュアル予約では、予約画面で放送種類を「テレビ」から「ラジオ」を選ぶことで、ラジオの予約録画も可能。録画終了後にPCをスタンバイ/休止させることもできる。 毎週予約は、「決まった曜日1つを毎週」だけでなく、複雑な指定が可能。日~土曜日までのアイコンが用意され、録画したい曜日に色を付けるタイプだ。ラジオでは変則的な編成が多いので嬉しいポイント。もっとも、現在のデジタルラジオは番組数が少なく、聞き逃しても大半の番組がリピート放送されているが……。 ワンセグはiEPGからの予約にも対応。各サイトで目的の番組をクリックすれば、前述の予約ウインドウに情報が流し込まれる。登録後の編集も楽だ。
タイムシフト再生など、特殊な機能は備えていないが、現在のワンセグチューナで求められる機能は網羅。GUIもそつなくまとまっている。欲を言えば操作パネルと映像表示部の分離や、映像ウインドウのフリーサイズ変更などにも対応して欲しいところだ。
また、3セグメントのH.264簡易動画を使ったデジタルラジオには非対応となっているが、これは近々に公開されるアップデータで対応する予定。操作性の面でも、データ放送のマウス操作をサポート予定だという。
■ ノートPCでUSBスピーカーを使う場合は注意? 冒頭でも書いたように、「1DR」の特徴はXPでもデジタルラジオが受信できることだ。もともとピクセラの「PIX-ST050-PU0」がVistaのみしか許可していなかったのは、Vistaの著作権保護機能がXPよりも優れていただめだが、「1DR」ではXPの環境でどのような対策がとられているのだろうか。 まず、光デジタル出力がついていないノートPC(Let's note W4)では、デジラジ/ワンセグともに問題なく受信でき、内蔵スピーカーやステレオミニのイヤフォン端子から音も出る。しかし、これにオンキヨーの光デジタル出力付きのUSBオーディオ(UD-5)を接続したところ、「コンテンツ保護の為、USBオーディオには出力できません」というアラートメッセージが表示された。 そのまま「1D Controller」を起動させることは可能だが、音が出ない。ワンセグも同様で、映像は表示されるが音は出ない。録画していたコンテンツの再生でも同様だ。
どうやらUSBオーディオ機器が再生デバイスに登録された時点でアラートが出るようだ。そこで、今度は光デジタル出力を備えていないオーディオテクニカのUSBヘッドフォン「ATC-HA7USB」や、ロジクールのUSBスピーカー「V20 Notebook Speakers」などを接続してみると、やはり繋げた時点で同様のアラートが表示された。
なお、同社ではコラボレーションUSBスピーカーとしてヤマハの「NX-U10」とのセットモデルを直販サイトで6月上旬から発売する予定だが、この「NX-U10」にはデジタル出力は付いておらず、そのままワンセグ/デジラジの音声出力が可能だという。 USBオーディオ機器は種類や数が膨大なので、その全てでデジタル出力の有無をチェックして出力制限を行なうのは現実的ではない。そのため、おそらく「NX-U10」以外のUSBオーディオ機器が検知された時点で音声を出さない仕様になっているのだろう。今後NX-U10以外のデジタル出力の無いUSBスピーカーなどが利用可能になるかどうかは不明なので、現時点では「NX-U10」以外のUSBオーディオ機器と組み合わせて利用しない方が無難だろう。 次に、自作のデスクトップPC(Windows XP SP2)にインストールしてみた。サウンドカードは「Sound Blaster Audigy2 Digital Audio」(ドライバはVer 02.09.0016)。このサウンドカードにも光デジタル出力がついているので、弾かれるかと予想したが、こちらはすんなりと光デジタルから出力された。 そもそもUSBワンセグチューナ自体、ARIB(社団法人電波産業会)の意向に完全に沿った製品ではない。地上デジタル放送の一種でありながら、現行のUSBワンセグチューナではHDCP非対応のディスプレイに出画できるものや、デジタル音声出力が可能な機種も多くある。製品ジャンル自体が新しいもので、このあたりの規制が固まりきらないうちに、製品が先行しているという状況。実用化試験放送中のデジラジでも同様だ。 こうした流動的な状況の中で、「1DR」ではノートPCでの利用が多いと想定し、USBオーディオ機器に対して制限を行なうことで、XPでの動作を可能にしたモデルと考えられる。なお、ピクセラの「PIX-ST050-PU0」でもXP対応は検討されており、こちらはどのような仕様になるかも気になるところだ。
■ 便利なパワーアンテナ 最後に、オプションとして直販サイトで販売されるブースター搭載のパワーアンテナ(予価2,980円)も使ってみよう。ワンセグチューナ用の外部アンテナは幾つか製品化されているが、このアンテナの特徴は約3.5mというケーブル長と、小型のブースターをケーブルの途中に備えていることだ。 さらにユニークなのが、ブースターの電源をUSBポートから給電できること。ACアダプタが不要なため、スッキリとした接続ができる。移動先や自動車の中などで利用する際にも便利だろう。
背面に吸盤を供えており、窓ガラスや壁などに取り付けられる。アンテナの先には両面テープも備えており、好みの角度に固定できる。
気になる感度の方だが、編集部(千代田区)や自宅(杉並区)でテストしたところ、標準のロッドアンテナと比べ、より安定受信ができることが確認できた。例えば受信表示のアンテナが1本しか立たないチャンネルで、その場でパワーアンテナに付け替えるだけで3本立つ場面もある。また、人が通ると受信が乱れるような不安定な場所でも安定受信できるようになった。
しかし、1つのチャンネルも受信できないような環境で、パワーアンテナに変更することで沢山のチャンネルが受信できるほど劇的な向上は無い。あくまで不安定な受信の補強というレベルだ。それよりも3.5mというケーブル長を活かし、「窓近くなら受信できるけれど、PCが置いてあるのは部屋の奥は無理」というような環境で威力を発揮する。
実際に、自宅の部屋はベッドの側では1つのチャンネルも受信できない状態だったが、窓のサッシにアンテナを付けたところ、寝ながら全てのチャンネルが視聴できるようになった。購入前には、利用する部屋で正常な受信が行なえる場所があるかどうかを、ノートPCなどを利用して探してからの方が良いだろう。
■ ワンセグは家の中で観る人の方が多い?
エスケイネットの調査では、PC用のワンセグチューナを、屋内でメインに使用しているユーザーは7割以上にのぼるという。「屋外や移動中にテレビが楽しめる」というのがワンセグの売りだったはずだが、PC用に限って言えば「手軽なテレビチューナ」として、屋内で利用している人が多いようだ。 となると、可搬性を重視して小型化を競う以外に、「1DR」のように「しっかりした設置台」を用意したり、ブースター付きアンテナをオプションで用意するといった、“屋内利用の快適さ”へのアプローチも大きな魅力になる。製品の選択肢が増えたからこそ、“自分が何処で利用する時間が長いか?”を考えて選びたいところだ。 また、デジラジ受信に限って言えば、Windows XPに対応したチューナは「1DR」が初であり、デジラジの普及にとって大きな役割を担うモデルと言えるだろう。関東と近畿の一部エリアのみという受信可能エリアの狭さが最大のネックだが、一足先に新しい放送サービスをPCで楽しみたいという人にはお勧めのモデルだ。
(2007年6月1日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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