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薄型テレビ購入ガイド 2007夏
【その2】技術/機能トレンド編



 地上デジタルのスタートとともに、大型化が加速した薄型テレビ。世帯普及率が20%を超え、市場の拡大が続いている一方、価格下落が激しく、買い時の判断の難しい製品ともいえる。

 第1回では、サイズやデバイスの特性などの視点から、テレビの選び方を紹介したが、今回は、今シーズンの新製品の技術や機能のトレンドを確認しながら、各社の新製品の特徴を紹介する。


■ 残像感の低減が、液晶テレビの差別化ポイントに

 今シーズンの液晶テレビのトレンドが、液晶固有の残像感を低減する技術だ。以前から、1,366×768ドットのWXGAモデルなどで採用例があったが、今シーズンはシャープやビクター、日立などからフルHDモデルで残像低減を導入した製品が発表されている。

シャープ「LC-57RX1W」 日立「Wooo L37-XR01」 ビクター「LT-47LH805」

 液晶には、次の映像が来るまで直前の映像を表示し続ける特性(ホールド表示)がある。次の映像まで同じ画を見続けることから、人間の目に残像として知覚されてしまう。こうした残像、動画ボケが、液晶の弱点として指摘されてきた。

倍速表示で残像感を低減

 この“ホールド”を低減するための技術として注目されているのが「倍速駆動」だ。通常1秒間/60フィールドで構成されている映像に対し、中間フレームを生成するなどで2倍の120コマ/秒まで増やし、ホールド時間を半減、残像感を低減するものだ。通常(60Hz)の2倍の駆動速度となるため、「120Hz駆動」などとも呼ばれている。

 同技術では、前後の映像を元に演算し、生成する「中間フレーム」の精度が、画質を決定するポイントとなる。そのため、動きを検出する方法やアルゴリズムなどに各社の違いが出る。たとえば、どの部分の動きを抽出するか、横/縦方向だけでなく、斜め方向の動きをいかに中間フレームに反映するのかなど、細かいノウハウの積み重ねが、違和感の無い映像再生に必要になるのだという。


人間の視覚特性上ブレて見えてしまう映像(左)を、中間フレームを挿入し、動きを見せることで実感される「ボケ」を低減する。(イメージ図。提供:ビクター)

 店頭デモなどでは、倍速駆動の違いは理解できるが、各社の違いはなかなか判断が難しい部分ではある。ただし、いずれも効果としては非常に大きく、高画質な映像を見慣れたマニアだけでなく、多くの人が実感できる違いがある。画質面だけでなく、「目が疲れにくい」というメリットもある。特に高速に横移動するテロップなどでは効果がすぐに確認できる。

 ただし、生成されるフレームの精度によっては、逆にノイズに見えてしまうこともある。このあたりが各社の導入したノウハウの違いとなる。ソニーのBRAVIA J5000シリーズでは、中間フレームの生成量を3段階に調整できるなどの機能を盛り込んでおり、フレーム生成時の違和感低減などを図っているという。

日立の「倍速スーパーインパルス駆動」技術

 一方、日立の液晶「Woooシリーズ」で採用している方式は、補間フレームを利用した他社の倍速駆動とは仕組みが異なっている。120Hz駆動という点は他社と共通だが、独自のスーパーインパルス駆動を導入しているためだ。

 従来より、液晶テレビのホールド現象を改善するため、一定の間隔で黒の表示データを書き込む「黒挿入」技術が導入されていた。しかし、単純な黒挿入では輝度が相殺されてしまうこととなる。そのため、新Wooo「L37-XR01」では、「倍速スーパーインパルス駆動」を導入。120フレームのうち60フレームは通常の映像を表示。中間フレームは、前後映像からの補間で生成するのではなく、元画像の一部の明るさを落としたフレームを挿入する。この方式により、輝度低下を抑えながら残像の低減を果たしている。明るい映像では残像低減効果が薄くなるが、テレビのトータルの画作りの中で調整しているという。

 倍速駆動は、2005年11月にビクターの液晶テレビ「LT-37LC70」で初導入。同モデルは1,366×768ドットのWXGAモデルで、以来同社はWXGA製品で残像低減を積極的にアピールしていた。しかし、フルHDモデルでは映像処理ための演算量の増加や、パネルやIC側の対応が必要となるため、製品化されていなかった。

 だが、この夏の新製品では、各社から1,920×1,080ドット/フルHDでの倍速駆動モデルが発売された。

 パネルやドライバICなどの多くのデバイスでの対応が必要なため、各社の倍速駆動対応のフルHDモデルはフラッグシップ機が中心だ。しかし、最近ではWXGAモデルながら、ソニーの「BRAVIA J5000」や松下電器の「VIERA LX85シリーズ」などさらに多くのメーカーが、中位シリーズで導入しており、さらなる対応製品の拡大が続いている。まだ対応製品を発表していないメーカーのフラッグシップ機においても、「フルHDで倍速」は今後増加すると思われる。

【倍速駆動対応のフルHD液晶テレビ】
メーカーシリーズパネルサイズ備考
シャープAQUOS R65/57/52/46/42型世界初のフルHD/120Hz駆動
コントラスト3,000:1
日立Wooo XR01
(L37-XR01)
37型倍速インパルス駆動
ビクターLH80547/42/37型倍速フルハイビジョン対応ドライバー
10bitフルハイビジョン倍速IPSパネル


■ 録画機能に注目

 DVDレコーダの世帯普及率が40%を超え(3月の内閣府消費動向調査では43.2%)、タイムシフト視聴が一般的になった現在、録画機能も非常に重要だ。

 前項でも触れたが、録画機能の実現には大きく分けて2つの方法がある。HDMIなどのリンク機能を使って、外部のレコーダと連携する方法。もうひとつはHDDレコーダを内蔵してしまう方法だ。

・レコーダ市場を一変させたテレビのHDMIリンク機能

 外部レコーダとの連携という点では、HDMIを使ったリンク機能に注目したい。HDMI Ver.1.2a以降で定められている「CEC(consumer electronics control」と呼ばれる機能を利用して、テレビやレコーダ、オーディオシステムなど、HDMI接続した機器の連動動作を実現するというものだ。

 現在積極的にこのHDMIリンク機能を導入しているのが、松下電器のVIERAシリーズと、シャープのAQUOSシリーズ。松下は「VIERA Link」、シャープは「AQUOSファミリンク」という名称で、展開している。

VIERA Linkでテレビとレコーダ、周辺機器を連携

 HDMIリンク機能により、同一のリモコンでテレビ視聴から、番組の録画予約/視聴、DVD再生などまでこなせることから、シンプルな操作性が実現できる。特に、AV機器に詳しくない人にはビデオ1、2といった「外部入力」の概念が理解できないことが多いという。リンク機能によりそうした入力切替を意識しなくても操作できるため、より多くの消費者に「タイムシフト視聴」を提供できるというわけだ。

 操作のナビゲーション方法は、VIERA Linkは、テレビ画面上のGUIを見ながら操作を選ぶ方式。一方のAQUOSファミリンクは、リモコンの専用ボタンでレコーダ/テレビ切替を行なうなど、「ダイレクトボタン」にこだわった操作体系をとするなど、使い勝手はかなり異なっている。このあたりはメーカーの設計思想の違いもなかなか興味深い。もし、販売店などで体験できる機会があれば、ぜひ確かめておきたい。

VIERA LinkはGUIを見ながら操作 AQUOSファミリンクはリモコンのハードウェアスイッチにこだわる作り

 さらに、シャープのAQUOSファミリンクでは、HDMI連携だけでなく、i.LINK接続を利用した「ハイブリッド録画」も提供している。同社のi.LINK搭載ハイビジョンレコーダや、録画対応BDプレーヤー「BD-HP1」のBD-REに録画を行なうという仕組みだ。同社製のレコーダの所有者であれば、こうした機能がAQUOSの魅力をさらに高めてくれることとなる。

 各社が連携機能は強化していると同時に、販売店でも、レコーダとのバンドル販売を積極的にプッシュしている。そのため、レコーダ市場では、リンク機能を導入したメーカーのシェアが高まっている。ある意味、松下、シャープとテレビ市場の強者が、そのシェアを活かしてレコーダ市場を取ったという形だ。

 ただし、専用のレコーダが用意されていなくても、例えば三菱電機の「REAL MZ70シリーズ」はCECに対応している。全ての機能が利用できるわけではないが、AQUOSハイビジョンレコーダやDIGAなどのCEC対応機器の電源ON/OFFやDVD操作などが可能だ。

 ソニーのBRAVIA J5000/2000シリーズもレコーダは用意していないものの、専用シアターシステム「RHT-G800」と連動動作する「HDMIコントロール機能」を搭載。今後、対応機器の拡充に取り組むと思われる。

【テレビ/レコーダのHDMIリンク機能】
メーカー名称現行テレビの対応シリーズ特徴
松下電器VIERA LinkPZ700/PX70シリーズ
PZ600/PX600シリーズ
LX75/70シリーズなど
PZ700はAVCHDカメラ対応
対応シアターシステムなども用意
シャープAQUOSファミリンクAQUOS R/D/G
シリーズの大半
対応1bitシアターシステムも用意

・レコーダ内蔵テレビも「外付けHDD」対応に

 一方、外部レコーダに頼らず、テレビ本体にHDDレコーダを内蔵した製品も多数発売されている。日立の「Wooo XR01シリーズ」や、東芝の「REGZA H3000シリーズ」などだ。

iVDRに対応した日立「Wooo P50-XR01」 外付けeSATA HDDへのムーブに対応した東芝「REGZA 42H3000」

REGZA H3000シリーズの番組表。番組を選択して決定するだけで、録画予約が行なえる

 テレビそのものがレコーダも兼ねているため、番組表を立ち上げて、録画予約を行なうだけで録画可能。全ての操作がテレビのリモコンで行なえ、レコーダ利用時に問題となる「入力切替」も存在しないので、もっともシンプルでわかりやすいデジタル録画環境といえるだろう。

 価格的にも、HDDレコーダ無しの同クラス製品プラス数万円程度で購入できる。もし、特にDVD化やライブラリ化をあまり考えていなければ、一番簡単なタイムシフト視聴環境ともいえる。

 さらに、最新モデルでは、外付けのHDDへの録画に対応した製品も登場した。日立Woooシリーズでは、リムーバブル式のHDD「iVDR」に対応。内蔵のHDDに録画したデジタル放送番組をiVDRにムーブできるほか、iVDRへの直接録画も可能。今後対応機器が発売されれば、iVDRを持ち出して、対応カーナビやレコーダでも使えるリムーバブルメディアとして活用できるようになる。

 REGZAも市販のeSATA接続のHDDを接続し、HDD容量を拡張できる。ただし、内蔵HDDからのムーブのみの対応で、外付けHDDへの直接録画はできない。また、録画したREGZA以外の機器では再生ができないという制限もある。

 一方、HDDのコスト面では、iVDRカートリッジは80GBで約2万円、160GBで約35,000円と高価。一方、REGZA用のeSATAは、300GBでも35,000円程度とはるかに安価だ。拡張性や将来への期待をとるか、コストパフォーマンスと容量をとるかという選択が迫られるわけだが、利用イメージをしっかりもって選びたい。

 また、東芝のREGZA Z2000は、外付けのLAN HDD(NAS)にネットワーク経由で録画可能。録画した番組が他のメディアに転送できず、録画したREGZA以外では再生できないほか、レジューム再生が利かないなどの制限はあるが、汎用的なLAN HDDをレコーダとして活用できるので、安価で簡単に録画環境を構築できるのは魅力的だ。

iVDRは価格がやや高い LAN HDD録画に対応したREGZA「47Z2000」

【HDD録画対応テレビ】
メーカー現行テレビの対応シリーズ外付けHDD対応特徴
日立Wooo XR01シリーズ
HR01シリーズ
XR10000シリーズなど
iVDR(XR01シリーズ)・iVDR-S対応の各機器で
録画番組再生可能
・iVDRが高価
東芝REGZA H3000eSATA・拡張HDDが安価かつ大容量
・録画した本体以外の再生不可


■ 最新テレビのキーワード

 前回も説明したが、外部入力として重視したいのはHDMI入力端子。端子数も重要だが、HDMIと一口に言っても1080/24pやx.v.Colorなど、新機能への対応はさまざまだ。

・1080/24p

パイオニアの「PDP-5000EX」は24p入力に対応

 HDMIにおけるフルHD解像度でプログレッシブの1080p(60p)信号は、最新の大手メーカー製テレビはほぼ全て対応している。一方、にわかに対応機器が増えてきているのが、1080/24p出力。映画は通常24フレームで撮影されており、それをそのまま出力できるため、「映画フィルムの質感を最大限に生かせる」ことをアピールした機器が増えている。

 たとえば、パイオニアでは、24p入力対応の50型フルHDプラズマディスプレイ「PDP-5000EX」と、24p出力対応のBDプレーヤー「BDP-LX70」と組み合わせで“フィルムクオリティ”を訴求。セットとしての付加価値をアピールしている。

 1080/24p出力対応したプレーヤー製品としては、パイオニアのBDプレーヤー「BDP-LX70」のほか、PLAYSTATION 3などがある。数としては多くないが、今後の再生機器、特に高級機器においては必須の機能になっていくと思われる。現時点では、出力側、ディスプレイともに、対応機器はさほど多くないが、映画鑑賞にこだわる場合は、チェックしておきたいポイントだ。


・x.v.Color

x.v.Color対応の三菱「REAL LCD-H40MZ70」

 ソニーの「BRAVIA X2500シリーズ」と、三菱電機の「REAL MZ」シリーズが対応するのが、「x.v.Color(xvYCC)」。広色域の色空間規格だ。HDMI 1.3からオプションとして規格に取り込まれているものの、Ver.1.3だからといって全ての機器でx.v.Colorに対応しているわけで無いので、注意したい。

 人間の目が認識できる物体色をほぼ全て表現できるという広い色空間を持ち、エメラルドグリーンなどの深い緑色や、物体の立体感、微妙なグラデーションなどの表現の向上が見込めるという。

 現時点では、放送、パッケージメディアなどでx.v.Color対応のコンテンツがないため、その真価を体験する環境は十分とは言えないが、それでもソニーのAVCHDカメラでは各機種がx.v.Colorをサポートするなど、対応機器が増えている。こうした周辺機器の利用を考えているのであれば、留意したいポイントだ。

・ネットワーク/メディアファイルの拡張性

PZ700シリーズはSDカード内のAVCHDの再生に対応

 各メーカーともに周辺機器との連携に力を入れており、多くのテレビがメモリーカードスロットを装備。デジタルカメラで撮影した写真や動画の表示が簡単に行なえるようになっている。特に、松下電器のプラズマVIERA「PZ700」シリーズでは、AVCHD記録したSDメモリーカードを直接再生できる機能を備えるなど、さまざまなコンテンツを視聴するための、ディスプレイとしてテレビの機能強化が図られている。

 対応機器は少ないが、DLNAやDTCP-IP機能もそうしたマルチメディアディスプレイとしての魅力を向上させる機能だ。DLNAは対応サーバーとクライアントの間で、ネットワークを介してメディアファイルをストリーム視聴するための仕組みだ。

 さらに、東芝のREGZA Z2000シリーズでは、DTCP-IPに対応し、同社の新HD DVDレコーダ「VADRIA RD-A600/A300」に録画したデジタル放送番組をネットワーク経由で視聴可能となる。東芝がサポートするサーバー機器はVARDIAだけだが、今後対応機器が増えることで、さらなる使い勝手の向上が期待される。

アクトビラのトップページ

 ネットワークという点では、多くの製品が対応しているのが、テレビポータルサービスによるデジタルテレビ向けポータルサイト「アクトビラ」。地域/生活情報から、ニュース、株価情報まで、各種情報をテレビで視聴できるサービスだ。

 現在は、静止画で必要な情報をチェックするだけの機能だが、今秋には動画の配信が計画されており、ブロードバンド環境があれば、VODサービスなどをテレビだけで利用可能となる見込みだ。ただし、ビデオ配信については、H.264や新DRMのMarlinを利用するために現行機種でアクトビラの動画配信対応を謳う製品はない。現時点ではさほど重要ではないが、ネットワークにどう対応するか、来シーズン以降大きな動きがありそうだ。

 また、ソニーのBRAVIA J5000シリーズでは、「アプリキャスト」と呼ぶ独自のネットワーク機能を装備。テレビを見ながら、画面の右脇に表示したウィジェットに天気やオークション情報などを表示できるという機能。こうしたネット連携機能は各社が模索している最中だけに、注目したいポイントではある。


■ 利用イメージをしっかりもったテレビ選びを

 環境や使い方によって、テレビ選びの最適解は変わってくる。自分の使い方や、重視する方針をしっかり決めた上でテレビ選びに取り組みたい。

 映画鑑賞が中心で、予算に限りが無ければ、24p対応のパイオニアのプラズマなどは非常に魅力的。レコーダとの連携を考えればVIERAやAQUOSを選ぶのがいいだろう。よりシンプルな録画環境を求めれば、WoooやREGZAのHDD録画モデルなど、機能を見ただけでも、さまざまな選択肢が浮かんでくる。

 たとえば、ビデオカメラで録画した自作映像を、リビングで楽しむのであれば、HDMIやSDカードを備えて、テレビですぐにビデオや写真を確認できるテレビがいいだろう。明るいリビングであれば、デバイスも液晶のほうがいいかもしれない。こうした利用イメージを描きながら最適解を探っていきたい。

 もちろん、画質や機能に惚れ込んだ、とか、省エネ性能にこだわるというのもひとつの見識。高解像度なPCディスプレイとレコーダを併用するのも面白い使い方だろう。さまざまな選択肢を検討しながら、カタログを眺めたりするのも、AV機器選びの醍醐味ともいえる。

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( 2007年6月15日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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