|
ファインテック・ジャパンの初日の基調講演で先陣を切って講演したのが、経済産業省商務情報政策局長の岡田秀一氏。「日本の情報政策とFPD産業の国際競争力強化に向けた取り組み」と題して講演した。 ■ 液晶/PDPの省電力パネル製造などに支援
岡田室長は、フラットパネルディスプレイの現状として、テレビにおける大型液晶パネルの世界シェア、プラズマテレビの世界シェア、パソコンや携帯電話などに利用される中小型液晶パネルの世界シェアを示しながら、「フラットパネルを製造するメーカーは、日本、韓国、台湾、中国の4カ国に集まっている。この4カ国のメーカーが熾烈な競争と協力関係を持ちながら事業を推進している」と前置きし、「さらに、これらのメーカーが大きな再編の時期を迎えている。フラットパネルディスプレイ産業が選択と集中の時期に入ってきたと判断しており、政府としては、日本のパネル製造メーカーの強いところを伸ばし、資源を集中させることに対して支援したい」と語った。 周知のように、国内の液晶パネルメーカーは、日立、松下、キヤノンによる陣営と、シャープ、東芝、パイオニアによる陣営が存在し、さらに、韓国サムスンおよびシャープとそれぞれ提携関係にあるソニーがある。一方、プラズマパネルでは、当初は、競合関係にあった松下電器と日立製作所が包括的協業関係を持つ一方、パイオニアがプラズマパネルの自社生産終了を発表。韓国サムスンSDIと、韓国LG電子がそれぞれパネル生産をする、3つの陣営による争いとなっている。 こうした再編の動きは昨年後半から一気に加速しており、まさに群雄割拠の状況が続いている。
経済産業省では、日本のパネル製造メーカーに対する支援策として、液晶パネルの消費電力量を半減し、プラズマパネルの消費電力量を3分の2に削減する「次世代大型低消費電力ディスプレイ基盤技術開発」(2007年~2011年、予算61.8億円)、TFTアレイ工程やセル工程、モジュール工程などに関わるプロセスエネルギーの消費電力量を2分の1とする「エネルギー使用合理化液晶デバイスプロセス研究開発」(2001年~2004年、予算27.4億円)、周辺回路とパネルをガラス基板上に一緒に作り込むことでプロセスエネルギーの低減を目指す「高機能化システムディスプレイプラットフォーム技術開発」(2005年~2007年、予算16.1億円)、プラズマパネルの低消費電力化を目指した「省エネ次世代PDPプロジェクト」(2003年~2005年、予算24.4億円)、フューチャービジョンと産総研との共同研究推進体制として設立した大型FPD連携研究体により、次世代ディスプレイの研究開発を行なった「低消費電力次世代ディスプレイ製造技術共同研究施設整備」(2003年~2006年、予算153億円)がある。 すでにプロジェクトが終了している「エネルギー使用合理化液晶デバイスプロセス研究開発」では、従来は約120kWhだったものを約60kWhに、「省エネ次世代PDPプロジェクト」では、40インチのプラズマディスプレイで約400Wだったものを約150Wに低減した実績が出ている。 また、シャープの亀山工場、富士通日立プラズマディプレイ、日立ディスプレイズのIPSアルファテクノロジ、オプトレックスに対して、それぞれ産業活力再生特別措置法(産活法)を認定。一定減税や特別償却などで支援を行なってきた。 「政府として様々な支援を行なってきているが、民間企業の製造拠点への投資額に比較すると、応援する金額は小さく、企業の投資規模の100分の1、10分の1程度となる。政府は、方針を少し示し、少し後押しをしただけ。日本のフラットディスプレイパネルの成長は、民間企業の活力と努力によるものであり、そのイニシアティブに対して心から敬意を表したい」と語った。 岡田室長は、今後の展望として、100インチを超える超大型ディスプレイによる「大型化」、自動車や音楽プレーヤー、ゲームなどに搭載される小型液晶ディスプレイ、壁への埋め込み、ポスターの代替といった新たな用途での利用が促進される「用途の拡大」、ブラウン管テレビに比べて大幅な低消費電力を実現した「省エネ化」、有機ELをはじめとする「新技術の登場」、拡大する海外市場に向けて国際競争力を高める「海外への展開」の5つがポイントになるとした。 ■ PDP/液晶テレビも’08年内に家電リサイクル法の対象に
一方、省エネ法で推進している「省エネラベリング制度」についても言及。「省エネはもはやスペックのひとつ」とし、「古いブラウン管テレビに、安いセットトップボックスを接続して地上デジタル放送を見るという方法もあるが、そうした議論とは別に、中小型でもいいからフラットパネルのテレビに買い換えることも、促進したい。その方が鮮明な画像が見られ、遙かに省エネである。ブラジルでは、日本と同じ地デジ方式が採用されるが、フラットパネルテレビの方がブラジルの方も喜ぶはずだ。ブラジルや中国のように人口が多いところで、フラットパネルディスプレイの導入が進めば、省エネに貢献する効果は極めて大きくなる」とした。 また、現在、ブラウン管テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機が対象となっている家電リサイクル法の対象品目に、液晶テレビ、プラズマテレビの追加検討を行なっていることに触れ、「今年のどこかの時期で、追加することになる」とした。 そのほか、岡田室長は、日本における情報政策への取り組み、グリーンITへの取り組みなどについても紹介した。
なお、基調講演では、野村證券金融経済研究所経営役チーフリサーチオフィサーの海津政信氏が「内外経済の展望と今後の企業経営-FPD産業への期待」をテーマに講演。アナリストの観点から、世界経済の動向や北京オリンピック後の中国経済の動向、FPD市場の現状などについて触れ、「液晶テレビの地域別構成比を見ると、中国およびその地地域の構成比が、2008年には35%を占め、来年には40%を超えることになる。携帯電話に続いて、液晶テレビの需要も新興国向けが主役となる」とした。 また、「野村證券では、再編を促進することで収益性の改善を図ることが、フラットディスプレイ産業に求められていると判断している。販売力が強いソニーと、パネル供給力が高いシャープとの提携は、合理的な判断に基づくものである。日本の企業同士のM&Aは2007年だけで2,000件ほどある。再編によって、収益性が向上しているという結果が出ている」と語った。
□ファインテック・ジャパンのホームページ ( 2008年4月17日 ) [Reported by 大河原克行]
Copyright (c)2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|