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総務省の情報通信審議会 情報通信政策部会の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 第40回」が19日に開催された。 同委員会で、地上デジタル放送の新しい録画ルール「ダビング10」について「開始日が7月5日ごろ」と決まった。近日中にデジタル放送推進協会(Dpa)が日時確定する。
ダビング10の開始期日は、「同委員会中で合意を受けて決定する」としていたが、私的録音録画補償金制度の維持と適用機器の拡大を求める著作権権利者と、機器メーカーの対立が続き、当初予定の6月2日の開始日時を延期。その後も開始日を確定できない状況が続いていた。今回、委員会内での合意を得たことで、「7月5日前後」で、Dpa内で放送事業者や機器メーカーが調整の上、日時を確定する。
■ 文化庁と経産省の合意の経緯について総務省が説明 同委員会の活動を取りまとめて報告する情報通信審議会 情報通信政策部会が23日月曜日に開催される。同部会への報告のため、今回の委員会での決着が望まれていた。 ダビング10に関連する機器メーカーや、権利者、放送局など関係者から構成されるフォローアップWGの主査を努める慶應義塾大学の中村伊知哉教授は、同WGの活動状況について、「前回の会合以降も意見を交換しているが、合意に至っていない。残るポイントは単純で、クリエーターへの対価をどうするか。補償金について、経済産業大臣と文部科学大臣の合意を得たということ聞いているが、文書は拝見していない。少なくとも関係者がそれで決着したとは聞いていない」と報告した。 また、私的録音録画補償金制度の対象にBlu-ray Discを加えることで文化庁、経済産業省が合意した件については、総務省の中田政策統括官が説明した。昨年の中間答申で、コピーワンスの緩和とともに、私的録音録画補償金の合意形成を目指す方針が打ち出されていた。しかし、(文化庁の)文化審議会で議論が難航したため、「文化庁と経産省が連携して、意思統一を図り、早期決着をお願いしたいと申し入れた」という。 「その後、局長、課長クラスで議論をすすめていきた。こうした中、ダビング10に向けた環境整備ということで、2省から発表されたのは報道のとおりです。努力に深く感謝している」とした。しかし、「両省の合意が発表されて以降も、まだ決めるべきこと、明らかにするべきことが多々あると指摘されており、状況が整備されている、とはいえない状況にある。調整されたのが今週の火曜日ということで、近日中に急展開があるとはなかなか期待できないと認識している」と近日中の合意形成に悲観的な見通しを示し、「他方、北京オリンピックが間近に近づいており、視聴者、消費者からの早期確定の声が大きくなっているのは事実。非常に厳しい現状ですが、時間がなくなりつつあります。一層の努力を皆様にはお願いしたい」と報告した。 委員会の主査を務める慶應義塾大学の村井純教授は、「早期確定は共通認識だと思っている。あらためて伺いたい」とし、各委員を指名した。 消費者団体の代表からは、「水面下の動きを知らないので、この3日間の報道を見る限り大変不愉快。文化庁と経産省が合意したから、あとは総務省で、というボールが突然来たように思ったが、実は総務省が投げたボールだった。外から追い込まれているようなことで残念。辛抱強く議論してきたし、あくまでも主体的にダビング10の早期実現に向けて努力していく」(高橋委員)と、水面下の動きに不快感を表明した。 実演家著作隣接権センターの椎名和夫氏は「委員会の大きな成果であるダビング10の実現に向け、省庁の枠を超えて実現に向けて取り組まれた両大臣や事務方にお礼を申し上げたい。補償金制度について関係者の意見が離れたままであるということを、あらためてご認識いただき、解決に向けた決意を示されたことに期待している。しかし、会見の内容は文書もなく、権利者は理解できない」とし、17日の発表でも指摘していた「Blu-rayの指定がデジタル放送に着目したものであるか明確でない」、「すでに文化庁が提案している補償金制度の枠組みに関する今後の取り扱いが明確でない」点について言及。「両省の合意で、クリエータへの対価の還元が果たされたとは思われず、ダビング10の問題が進展するとも考えていない。ユーザーの利便性に配慮して、早期の実現に向けて取り組みたい」と語った。 また、権利者団体の代表からは「明日誕生日なんですが、誕生日には何もおこらず。残念な思い(当初予定日時が委員の誕生日だったという前々回の委員会から続くジョークを踏まえて)。経産大臣の会見の抜粋をホームページで見たが、質問しているほうも、答えるほうもよくわかっていないようで、どちらともとれるような内容。文書がないと確認できないので、いいとも、悪いともいえない」(堀委員)との意見もあがった。 放送事業者からは、「この場でバトルという状況になっているが、権利者とメーカーの対立は、実施日を決める、決めないだけでなく、より大きな視点で見てマイナスだ。それぞれの立場で踏み込んで早期実施に前進させていただきたい」(元橋委員)との意見が出たほか、「放送事業者は、この実施に向けて作業をしてきたし、準備も整っている。設備回収費用も負担するということで、キー局から末端の事業者まで、誠実に準備をすすめてきた。委員会の合意と、Dpaの発表があればできる状態。ダビング10はプロセスに過ぎない。コンテンツへのリスペクトや対価という問題は、ダビング10が開始されても、ずっと議論していかなければならない問題だ。したがって、この一里塚にすぎない、ダビング10に対して、2月、4月、5月と、新聞紙上を通じて、情報を得るという状況がどうして続いているのか。情けない。“なるべく早く”が中間答申の方針で、準備は整っている」(福田委員)などの意見が出た。 機器メーカーからは、「両省庁の発表、努力を高く評価している。ダビング10を一刻もはやく進める、というのがメーカーの立場。メーカーとしては、準備が整っており、早期に開始することを重ねて強く希望する」(田胡委員)との意見が出た。
■ 急転直下の誕生日決定で「7月5日ごろ」に 村井主査は、「議論を続けることにはコンセンサスがある。ダビング10が永遠に続くのではなく、改善するときにはする。これもコンセンサス。タイミング感、北京オリンピックをうまく使って、普及を進めていく。これもひとつのステップ。私どもは、今のタイミングでダビング10を議論したい。そこは一致しているはず」と議論を整理し、「親委員会に報告するためにまとめていくと、“みな合意しているけれど、期日の確定に至らなかった”。私は、こういう報告をすればいいでしょうか? 」と委員に問いかけた。 問いかけに対し、椎名委員が回答。「メディアの反応を見ると、“権利者とメーカーが対立していてダビング10が頓挫している。ユーザーの利便性はどこにいってしまった”という。それも現実だな、と残念に思う。この委員会の最初の成果であるダビング10が、世に出ずにいるのは残念。あらためて、第4次答申に書かれた対価というのは、きわめて当たり前のもので、特別なものではない。給食費を払わない親もいる世の中ですが、メーカーに言いたいのは、ただ食いや食い逃げはしないで欲しい。それは主張していきたい。対価の還元が実現できない中で、スタックしているが、そこから脱出したい。メーカーは“ダビング10と補償金は一体化すべきでない”と考え、われわれは“補償金こそがダビング10の前提、対価の還元”と考えている」と現状を分析。 しかし、「食い違いがあるが、ユーザーの利便性についてのメッセージを出されてきた村井主査や増田大臣の意思を何とか受け止めたい。この際、ダビング10に限っては、補償金と切り離し、本日この場においてダビング10の実施期日を確定してはどうか。村井先生にご提案しておきたいと思う」と表明。「決して村井先生から暗がりで凄まれた、BD(補償金指定)が嬉しくて涙に暮れたとかではない。解決できる人間が汗をかくべきと考えた。答申に空白があるのはみっともない。村井主査には、期日の確定を前提に、答申をまとめていただきたい。村井主査と事務局、総務省を信用しておまかせしたい」とした。 その上で、「補償金制度問題の合意形成に向けて、情報通信審議会の場でもサポートしてほしい」、「クリエーターへの対価の還元について、情報通信全体の問題として捉え、補償金に限らないのであれば、ほかにどのような方法があるのか、知恵を出してほしい」と要望した。 椎名委員の提案を受けて、村井主査は「答申案の中で期日を指定していく」と言及。Dpaの代表である関委員に意見を求めた。「正直、急転直下で日時を出せない。開始日を確定するとなるとその確認が必要。準備はできているが、関係者との話の中では2週間ぐらいは期間が必要」とした。 6月19日から2週間で「7月3日以降」となるため、村井主査は7月生まれの委員に誕生日を尋ねた。「5日」(川村委員)、「14日」(椎名委員)の2つの候補が挙がり、村井主査は「それでは5日でよろしいでしょうか?」と問いかけた。しかし、メーカーからは「5日は土曜日で、顧客対応を考えるとまずい。4日のほうがまだいい」との声も上がり、メーカーも放送事業者もDpa内での調整の必要性を訴え、関委員は「5日をターゲットに前後する」との見込みを示した。 村井主査は、「4日か5日。誕生日は事情により前に祝うということもありますので、7月5日という気持ちで、調整を」とし、委員会での合意に至った。開始日時について混迷を深めたダビング10だが、開始日時確定のための準備が整った。 □総務省のホームページ ( 2008年6月19日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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