2018年3月20日 08:00
前々回の本コーナーでは、Gemini PDAの仕様をお伝えしたところである。あれから2週間、様子を見ながら徐々に原稿書きサポートマシンとして現場投入してきているところだ。今回はそこから見えてきたノウハウをご紹介したい。
苦渋の選択、日本語入力
そもそも原稿書きのサポートマシンとして導入したわけであるから、まず日本語入力環境をどうするか、という問題がある。Androidだと日本語変換の選択肢は多い。定番のGoogle日本語入力のほか、Mozc、Simeji、ATOK、Wnnなどが考えられる。
パソコンでもATOKを使い続けていたし、変換効率という点ではやはりATOKは外せないところだろうと思っていた。ところが、物理キーボードと組み合わせてみると、意外にも使い勝手が悪かった。
一番の問題は、長文を入力して一気に変換させる際に、自動で文節が分割され、そのひとつひとつに対して確定していかないと入力されないという仕様であることだ。
これはおそらく、Android版ATOKがフリック入力を前提にチューニングされているからだろう。考えてみれば、フリック入力で一気に長文を入力してしまうという使い方は普通しない。予測変換が表示された時点で適切なものを選択し、入力作業を省略していくほうが、どう考えても効率がいい。
だが物理キーボードで全文をガリガリ入力してしまうという使い方では、この確定の多さが邪魔になってしまって、話を聞きながらメモを取るみたいな使い方にはスピードがついて行かなかった。
もうひとつAndroid版ATOKの難点は、日本語入力モードのままでアルファベットが入力できないことである。パソコン版ATOKでは、Shiftキーを押して最初の位置文字を大文字で入力すると(ローマ字入力の場合)、以降の文字はアルファベットのままで入力される。設定を変えれば、変換候補にも英単語候補が出てくるなど、日本語英語混在の文章を打つのにもこなれた仕様だ。
だがこの機能が、Android版ATOKにはなかった。日本語-英語切り替えはAlt + Spaceなので使いやすいが、筆者がよく書くような原稿では、切り替え頻度が高すぎる。なのでハードウェアキーボード標準の端末で使うには厳しいという結果となった。
現在は上記の問題がないGoogle日本語入力で様子を見ているところである。
ハードウェアのキーボードタイプに関しては、日本から発注した人は日本語キーボードバージョンを選択した人が多いようだ。だがこうした新しい端末に関しては、どうしてもローカル言語のキーマップは開発が後手に回ることが多い。今後はLinuxとのデュアルブートもサポートされることも考えると、英語キーボードのほうが手間が少ないだろうと考えたのだが、これは正解だったようだ。
ペナペナ故に懸念されたキータッチだが、実際に入力してみると案外取りこぼしが少ない。Psion 5MXのキーはかなり固く、しっかりハードパンチしないと取りこぼすことがあったのに比べると、これはこれなりに実用性を考えて改善された結果なのかなと思う。
環境も改めてテスト
続いてはテキストエディタの選択である。入力した文章は、最終的にはパソコンへ転送して記事にまとめるので、クラウド(具体的にはDropbox)内の文章を直接いじれるようなものが望ましい。
こうした作業のために、Jota+というエディタは定番である。Dropboxへは、別途プラグインを入れればアクセスできる。
加えてメルマガの執筆向けに、MarkDown記法で書けるエディタが必要だ。以前はDropboxとの連携機能があるMarkDownXというアプリを使っていたのだが、いつの間にかDropboxとの連携ができなくなっていた。
仕方がなく他のアプリを色々インストールしてテストしてみたところ、JottarPadというアプリがなかなかよくできている。見た目もいいし、文字数も確認できる。もちろんMarkdownだけでなく普通のテキストエディタとしても使えるので、当面はこれ1本で行けそうだ。
マルチウィンドウにも対応しているので、左側をテキストエディタに固定しておき、右側でアプリを切り換えながら原稿を書くこともできる。一度に把握できる文章は少なくなるが、効率としては悪くない。
そう言えば先日の記事で、Gemini本体右側のUSB-CポートはHDMI出力だと説明した。実際に説明書にもそのように書いてあったのだが、Mac用のUSB-C Digital AV Multiportアダプタを接続してみたところ、映像出力は得られなかった。このアダプタはHDMI以外にもUSB-A端子とUSB-C端子があり、いわゆるハブ構造となっている。こうしたマルチポートハブになっているものはサポートしていないようだ。
一方でシンプルなUSB-C to USB-Aアダプタを使い、SDカードリーダーを接続してみたところ、問題なく読み出すことができた。ただし現時点でのGeminiでは、exFATフォーマットが読み出せない。したがってデジカメなどで使っている64GB以上のSDXCカードが読み出せなかった。これは単にドライバが提供されれば解決できるのか、ハードウェア固有の制限なのかは、今のところよくわからない。
デジカメで撮った写真を直接取り込んで作業したかったところだが、仕方がない。もっとも昨今は、カメラ側からWi-Fiで画像転送できるので、そっちを使ったほうがスマートだろう。
この2週間のうち、数回の取材や打ち合わせはノートPCを持たず、Geminiだけでこなしてみたが、今のところ大きな不都合はない。UIは画面タッチでしかできないため、画面の指紋汚れが気になるが、さすがにこうしたマイナーな機種の保護フィルムが発売される可能性は低い。最近は液体のコーティング材も人気があるようなので、評判の良さそうなものを試してみたいと思っている。
小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」
本稿はメールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」からの転載です。
コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。
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2018年3月16日 Vol.165 <意味と理解号>
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