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シャープ、'16年第2四半期は営業黒字に。戴社長「真似される商品で、栄光を回復」

 シャープは1日、2016年度上期の決算を発表した。売上高は前年同期比28.1%減の9,196億円、営業利益は7,900万円。営業黒字ながら、純利益は454億円マイナスで赤字となっている。

シャープ 戴正呉社長

 上期は、大手顧客向けの中小型液晶、カメラモジュールの販売減や、米国テレビ事業のブランドライセンス化、国内スマートフォンの低迷により売上高が減少。ただし、第2四半期単体では、売上高が前年比17.2%増の4,962億円、営業利益250億円の黒字となった。純利益はマイナス179億円。カメラモジュールやディスプレイの販売増により、売上伸長。構造改革の成果もあり、営業黒字となった。

2016年度上期業績

 上期のセグメント別では、スマートフォンなどのIoT通信が、売上高前年比38.5%減の723億円、営業利益は同41.2%減の61億円。携帯電話などの販売減が響いた。白物家電中心の健康・環境システムは、同7.7%減の1,390億円。エアコンや冷蔵庫などの販売減により、売上減となったが、営業利益は5.2倍の131億円となった。

セグメント別売上高

 複合機の販売減により、ビジネスソリューションの売上高は前年同期比7.3%減の1,596億円、営業利益は32.9%減の112億円。カメラモジュールも同31.3%減で、営業利益は11億円の赤字。電子デバイスは、売上高が同27.8%減の934億円、営業利益は3億円の赤字。エネルギーソリューションは国内太陽電池販売減少が要因で、売上高は同33.6%減の522億円で、48億円の赤字。

セグメント営業利益

 液晶やテレビを含む、ディスプレイデバイスについては、売上高が前年同期比36%減の3,575億円。テレビ用大型液晶やスマートフォン向け中小型液晶、液晶テレビ販売台数減少が響いた。営業利益は146億円の赤字。大きな赤字額ではあるが、前年同期の415億円の赤字よりは大幅に改善した。

 液晶テレビの上期販売台数は、216万台(前年同期は299万台)、売上高は899億円。デジタル情報家電は、単価下落はあったものの、4Kテレビの販売を拡大したため、黒字になったという。

 また、北米や欧州のテレビ事業など「ブランド供与型」のビジネスの見直しにも言及。北米ではHisense(ハイセンス)がシャープブランドのテレビを手がけているように、他社がシャープブランドでビジネス展開するものだが、シャープ戴正呉社長は、「シャープは輝けるグローバルブランドになりたい。なるべく、自分のブランドを取り戻す」と語った。

 2016年度の通期業績予想も発表し、売上高は2兆円。営業利益は257億円の黒字、経常利益は163億円の赤字、純利益は418億円の赤字で、営業黒字を見込む。

2016年度通期業績予想

'16年下期からは成長軌道に

 シャープは1日に、新コーポレート宣言は「Be Original.」を発表し、グローバルブランドを目指すとアピールしている。野村勝明 代表取締役 副社長は、2016年上期までを「構造改革期」、下期以降は「成長軌道への転換期」と位置づけ、鴻海とのシナジー発揮や、経営効率向上、重点事業への積極投資を行ない、2018年の東証一部復帰を目標に掲げた。

野村勝明 副社長

 野村副社長は、拠点の統廃合や子会社再編などの「経営資源の最適化」、分社化経営の徹底やサプライチェーン改革、取締役削減などの「責任ある事業推進体制」、報酬制度などの「人事制度の改革」などの進捗について説明。

輝けるグローバルブランドを目指す

 成長に向けた施策については、有機ELディスプレイのパイロットライン投資や協力会社からの生産設備買い取りによる「キーテクノロジーのシャープ主導強化」、ブランドライセンス先との出資を含めた業務提携やブランド再強化、田辺ビル買い戻しやキャリア採用などによる人材強化などについて説明した。

 さらに、事業間の連携強化や全社経営資源の有効活用など「One SHARP」による「全体最適」と、分社化経営による「部分最適」の両立によりオールシャープの総合力を発揮するとした。

オールシャープの総合力を発揮

「シャープ子会社多すぎ」。「One SHARP,Be Original.」

 戴社長は、鴻海との連携や今後の成長戦略について説明。鴻海とのシナジーについては、物流を共同会社にし、「半年間で、白物とテレビの一部だけでも、20億円削減できる」とし、「鴻海は世界最大EMS。調達部隊は凄く大きな数を扱えるため、費用を削減できる」と語る。

 また、シリコン調達などの既存のシャープの契約の見直しにも着手。「非常に長期で不平等な契約がある。これまでのシャープは、資金力が弱く、利息も高く、支払い期間も長いなどで、調達価格が高かった。いままでの契約は尊重します。ただし、必ず見直しの空間がある。単体のシャープでは弱かったが、鴻海の購買とシナジーしたらコスト負担はすごく減る。交渉して改善する」と説明した。

 有機ELの展開については、「シャープがいちばん有名なのは、ディスプレイとテレビ。だから、ディスプレイには投資する。有機ELが成功できるかはまだわからない。ただ、今作っている4.5世代の試作ラインが成功したら、その先を考えます」と語った。

 鴻海グループ内でのシャープの扱いについては、「シャープの独立性と透明性は私の使命だ。だから、鴻海の役員も来月か今月には辞めます」と、戴社長がシャープの経営に集中する方針を示した。

 One SHARPを掲げているが、分社化経営では事業間連携が難しいのでは? との質問について、「これまでの5つのカンパニーは、お互いが競争してあまりOne SHARPを考えていなかった。ひどい状態。各国それぞれに、各カンパニーが販売会社、開発部門な3~5つの会社を作って、200以上の子会社がある。こんなに弱い会社なのに200の子会社を管理するのはとんでもない。例えば、ある事業部が『表面実装機が欲しい』と言った場合、違う事業部で空いていることもある。それぞれが買ってしまえば、赤字が増える。たくさんの経費上のオーバーヘッドがあるので、これを減らすのもOne SHARP」と説明。「真似される商品を作り、栄光を回復する。オープンな心でOne SHARPを進め、Be Original.を目指す」とアピールした。