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キヤノンが8K対応CINEMA EOS、パナソニックは8Kレコーダ。4K全天球映像をライブで

 国際放送機器展「Inter BEE 2016」が16日、千葉県の幕張メッセで開幕した。期間は16~18日までで、入場は無料(登録制)。ここでは、4K映像の新たな活用や、8Kへの対応を見据えた参考展示を行なっていたパナソニック、キヤノンブースをメインにレポートする。

会場の様子

キヤノン

 キヤノンブースは、「入力から出力まで、拡がる表現力で、映像はその先へ。4K HDR BY CANON」をテーマに展示を行なっている。

 注目を集めているのは、CINEMA EOSの新モデルとして、本体で4K/60p撮影が可能な「C700」(12月下旬発売/オープンプライス/実売300万円前後)。EFマウントを採用し、ローリングシャッターを採用。PLマウントでグローバルシャッターを採用した「C700 GS PL」も2017年1月下旬に発売予定(実売330万円前後)。

CINEMA EOS「C700」

 従来の「300 MarkII」は4K/30pまでのカメラ内部録画に対応していたが、C700は4K/60pのカメラ内部録画が可能になったのが特徴。さらに、アップルの中間コーデックであるProResのカメラ内部録画にキヤノン製のカメラとして初めて対応。トランスコードする手間を省き、ワークフローを効率化できるという。

 さらに、4K液晶マスターモニターの新モデルとして、HDR表示機能を高めた24型の「DP-V2420」(オープン/286万円前後)も紹介。キヤノンはこれまで4Kマスモニとして、30型の「DP-V3010」や、24型の「DP-V2410」をリリースしているが、30型は撮影現場や中継車で利用するにはやや大きく、なおかつ需要が高まっているHDR映像の表示性能を高めたモデルとして開発されたのが24型となる。

24型の4K液晶マスターモニター「DP-V2420」

 11月15日から順次発売を開始したばかりの、4K LCOS(反射型液晶)プロジェクタの新製品も展示。4,096×2,400ドットのパネルを搭載した2モデルで、レーザー光源を採用した「4K600STZ」が798万円前後で'17年4月上旬、ランプ光源の「4K501ST」が'16年11月15日で598万円前後。学校の講堂やイベント会場、デジタルサイネージやプロジェクションマッピングなどでの利用を想定している。

レーザー光源を採用した「4K600STZ」
ランプ光源の「4K501ST」

 デジタルシネマ規格の4,096×2,160ドットを上回る解像度を持ち、レーザー光源の4K600STZは輝度6,000ルーメン、400Wランプ光源の4K501STは5,000ルーメンを実現。4K対応の広角ズームレンズと高性能映像エンジンも組み合わせ、臨場感のある映像投写ができる事をアピールしている。ネイティブコントラスト比は、4K600STZが4,000:1(ダイナミックコントラスト時は最大1万:1)、4K501STが3,000:1。

 4K600STZは、新開発のレーザー光源システムと独自の光学システム「AISYS(エイシス)」を採用。新開発のレーザー光源システムは、青色レーザーダイオードが発した光を蛍光体デバイスに照射することで、白色光を生成。蛍光体デバイスへの集光効率を高めつつ、適切な光密度で効率的に光の波長を変換することで、少ない数のレーザーモジュールで6,000ルーメンの高輝度投写を実現。小型化と高輝度化を両立した。光源の寿命は約2万時間。HDRにも対応している。

投写デモの様子

 また、将来を見据えた展示として、CINEMA EOSの8K撮影対応カメラと、8K HDRディスプレイも参考展示。詳細は発表されていないが、8Kカメラは8Kスーパー35mm/60pセンサーを搭載し、有効画素は8,192×4,320ドット。EFマウントを採用し、8K RAW出力が可能。HDRはCanon Log(13ストップ)に対応する。Ext.BOXを経由し、リアルタム現像しながら8K映像をディスプレイに出力している。HDRはPQカーブを採用。

 8Kディスプレイは55型で、8K/60p表示を行なっているという。なお、ブース内には30型の8K HDRディスプレイも参考展示。虫眼鏡を使い、画素と映像の細かさをチェックできるようになっていた。

参考出品された8K対応のCINEMA EOSカメラ
55型の8Kディスプレイ
30型の8Kディスプレイも
ルーペで映像の細かさをチェックできる

 さらに、キヤノンマーケティングジャパンが今後、商社として取扱を検討しているドローンや360度カメラ技術、バーチャルサラウンド技術などを手がけるメーカーも出展。VR時代の本格的な到来も見据えた展示になっていた。

2chスピーカーでも、サラウンドが再生できるという「KISSonix3D」技術とエンコーダの展示。5.1chなどのマルチチャンネルソースを、テレビ向けなどの2ch再生用にエンコード。包み込まれるような自然な臨場感が特徴だという
EOS Mを複数台使った全天周カメラ
VideoStitchが開発したVRカメラ「ORAH 4i」

パナソニック

 パナソニックは、8Kスーパーハイビジョン放送や4K放送の番組製作向けに、8K対応のレコーダ「AJ-ZS0580」を開発した。2017年10月に8K対応モデルを、4K対応を同年12月に発売する予定。価格は未定。

 同社は既に、8K-DualGreen方式の8Kメモリーカードレコーダを開発しているが、2020年に向け4K・8K放送が普及し、東京オリンピック・パラリンピックの中継等が広く放送されることを見据え、AVC Intraコーデックに対応するなど、実用性を高めた8K、4Kレコーダを開発。

8K対応のレコーダ

 8Kスーパーハイビジョンレコーダ「AJ-ZS0580」は、AVC-ULTRA(AVC-Intra 4:2:2)で、より高画質な8K-YPbPr方式/59.94p In/Out(12G-SDI×4)端子を備え、放送用ストレージメディアのexpressP2カード、およびmicroP2カードに8K映像を記録。HD解像度での同時記録や、4K、HDの同時出力にも対応する。

 さらに、55型の8K液晶ディスプレイも参考展示。解像度は7,680×4,320ドットで、コントラスト比は1,500:1。輝度は400カンデラ。映画や印刷物の色を100%カバーする広色域を実現。IPS-Pro技術による広視野角178度も実現している。

55型の8K液晶ディスプレイ

 ブースではさらに、4K対応のフリースタイルポータブルレコーダ「POVCAM」や、12G-SDI対応4K/2K大型ライブスイッチャー「AV-HS8300」なども出展される。

4K対応のフリースタイルポータブルレコーダ「POVCAM」

 「POVCAM」は2017年春発売予定で、レコーダの「AG-UMR20」と、4K撮影対応の小型カメラヘッド「AG-UCK20」で構成される。価格は未定。2009年発売の業務用HDポータブルレコーダー「AG-HMR10A」の後継モデルで、映像制作をはじめ文教、官公庁、企業などでの利用を想定している。

 レコーダの「AG-UMR20」は、3G-SDI入力を備え、1080/60pのHD録画が可能。ストレージとしてSDXC対応のSDカードスロットを2基搭載し、リレー記録による長時間録画が可能。カメラヘッドの「AG-UCK20」は、広角かつ20倍のズームレンズと、16軸独立色補正機能、5軸ハイブリッド画揺れ補正、赤外線撮影機能、NDフィルタなどを搭載。別売で、最長20mの専用ケーブルで、AG-UMR20と接続できる。AG-UMR20のカメラリモート端子を用いたレックS/S・ズームの手元操作に加え、フォーカス・アイリスも手元で操作できる。

 ライブスイッチャー「AV-HS8300」は、2017年秋発売で価格は未定。現行機「AV-HS7300」の上位モデルで、4Kおよび2Kでの大規模入出力に対応。4Kモード(HDR対応含む)で最大80入力/40出力、4ME+4DSKが可能。4K映像伝送は12G-SDIを標準採用し、4Kマイグレーションも容易とする。

ライブスイッチャー「AV-HS8300」

4Kカメラの新たな利用法を

 パナソニックブームには、筒のような形をした4K全天球撮影システムも参考展示されている。ネット配信番組などでの利用を想定したもので、遅延の少なさにこだわって開発。300msecを実現したという。

4K全天球撮影システム

 ライブのステージや、イベント会場の中央などに設置。複数のカメラで撮影した映像を、繋ぎ目などなく、自然に繋げるステッチ技術も開発。レンズの端がとらえた映像は、ゆがみが出るものだが、それも目立たないよう処理をしており、自然な画質で360度を見回せる事から、アーティストがパフォーマンス中にカメラに近づいても、顔がおかしく撮影されないといった利点もあるという。

360度映像から、見たい部分を表示するアプリ。指で画角を変更できる
映像を処理するユニット。HDMIなどで出力し、配信PCへと接続する

その他

 ソリトンシステムズは、世界最小・最軽量を謳う、H.265モバイルエンコーダ「Smart-telecaster Zao-S」を開発。HD-SDIとHDMI入力を備え、1080i、720pなどの映像をH.265でエンコード。連携したスマートフォンアプリを介して3Gや4G/LTE回線を使って映像を配信。バッテリで動作するため、リュックや自転車などに取り付け、機動力を活かした中継などに利用できるという。

「Smart-telecaster Zao-S」
追加バッテリやケーブルなども収納できるリュックも用意

 テレビ朝日のブースでは、AbemaTVのニュースチャンネルで活用している「Qテイクによるアドサーバー連携技術」を紹介。通常のテレビ番組では、押す事でCMが流れるQテイクボタンが存在する。

 しかし、AbemaTVのようなネット配信番組ではPCの操作になる。そこで、テレビと同様のQテイクボタンを開発。押すことで、映像にフラグが埋め込まれ、そのままエンコードされ、配信サーバーを流れる途中で、フラグが埋め込まれたフレームを検知すると、アドサーバーからCM映像が挿入され、ユーザーへと配信されるという仕組み。

 テレビの現場に慣れたスタッフが、Web番組でも直感的にCMが流せるほか、フレーム単位でCMが入るタイミングを制御できる事も利点だという。

「Qテイクによるアドサーバー連携技術」
Qテイクボタン

 フロンティアファクトリーのブースでは、12月9日に発売する米360flyの360度撮影対応アクションカメラ「360fly」シリーズを紹介。上部にレンズを搭載し、水平方向に360度の撮影が可能。価格は4K対応の「360fly 4K」が59,400円(税込)、HD対応「360fly HD」が37,800円(税込)。

米360flyの360度撮影対応アクションカメラ「360fly」シリーズ