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2030年の実現目指す立体テレビが高精細に。スマホサイズでも裸眼3D

 NHK放送技術研究所で5月25日~28日に開催される「技研公開2017」。23日にマスコミ向け先行公開が行なわれ、NHKが手掛けている「インテグラル立体テレビ」の最新技術が展示された。

スマホサイズの「インテグラル立体テレビ」

 裸眼で立体視が可能なインテグラル立体テレビは、多くの微小なレンズを多数並べたレンズアレーを用意し、そこを通って生成された画像を複数のカメラで撮影し、同じくレンズを組み合わせた専用のディスプレイで表示するシステムを基本としている。2030年頃の実用化システム構築を目指し、立体像の高品質化が進められている。実現するのが放送なのか、通信経由なのかは未定で、スマホなどをセカンドスクリーンとして観られる形も検討していくという。

スマホサイズのインテグラル立体テレビを様々な角度から眺める

 2017年の展示では、現在のスマートフォンディスプレイをベースとした小型のディスプレイを展示。手に取って様々な角度から立体映像を観ることができる。試作機の解像度は4Kで、今後ディスプレイの精細化が進めば、より滑らかな解像感を実現できるようになるという。

既存のスマホ用4Kディスプレイを使用

 新たに、複数の立体映像を連続的に合成する手法も提案。画素数の増加を目指して、独立した複数の直視型表示パネルによる立体映像を連続的に画面合成する方式を紹介している。レンズ構成がシンプルで拡散板を必要としない薄型の合成光学系も新たに設計し、表示装置を試作。立体映像の画素数を、映像を合成しない場合の約4倍に増加したという。

4画面合成の並列型インテグラル立体ディスプレイ
並列型の主な仕様
多画素化によって滑らかな映像を実現
従来型(写真)と比べて高精細に

 また、複数の表示装置を組み合わせることで、色モアレ(本来の色とは異なる色のついた縞状の模様が見える現象)を解消する技術を開発。これまで、色モアレの対策として光学素子で光を拡散させていたが、画質低下が課題だった。新たな技術では、立体ディスプレイ3枚を、ハーフミラーにより合成。これにより、1枚の場合に比べて明るさや解像度を高めて、モアレも抑えた高画質な立体映像を表示できる。

3枚のディスプレイの映像を合成した、色モアレ低減/解像度向上表示技術
ディスプレイ3台を合成した高画質な立体映像

 コンテンツ制作については、7台のカメラを使ったインテグラル立体撮影手法を紹介。スポーツなどで使われている多視点ロボットカメラをベースとしたもので、今回は1台のカメラを中心に、6台のカメラを協調動作。各カメラの撮影パラメータや映像情報を相補的に活用して奥行きを推定、その奥行き情報から各カメラの画像を仮想空間に投影し、3次元モデルを生成する。

7台のカメラでインテグラル立体撮影
撮影時の画角のイメージ

 今後も家庭視聴用のインテグラル立体テレビの実現を目指し、立体映像の品質向上の研究を進めていく。