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8K放送開始へ、ハード/ソフト環境整うアストロデザイン。8Kカメラレンズの測定も

 アストロデザインは、放送事業者やメーカーなどに新製品やソリューションを紹介する「Private Show 2017」を7月13日と14日に開催。8Kカメラなどの収録機器から伝送、表示製品のほか、メーカーの8K製品開発を支援する測定器まで幅広く展開している。開催前日の12日にプレス向けに展示内容が紹介された。

インターフェイスコンバータなど、アストロデザインの8K製品

フルスペック8Kをトータルサポート。8Kに最適なレンズの測定も

 2018年の4K/8K実用放送開始を見据えた「フルスペック8Kカメラ・収録システム」として紹介しているのは、単板CMOSで8K/120p撮影対応のカメラヘッド「AH-4801-G」と、カメラコントロールユニット(CCU)の「AC-4813」、最大1kmの長距離伝送を実現する光伝送装置ヘッドアダプタの「AT-4812」。これらを収録システムという形で今秋ごろに発売する。

8K/120pカメラヘッド
8Kカメラ対応のCCU
光伝送装置ヘッドアダプタ

 その他にも、既発売の55型8Kの液晶モニタ「DM-3815」や、SSDレコーダの「HR-7518/HR-7518-A」などと合わせて、トータルでフルスペック8Kのラインナップがそろう形となる。

55型8Kの液晶モニタ「DM-3815」

 8K製品の拡充に合わせて、8Kに最適なレンズを含むカメラ開発のための解像度特性(Modulation Transfer Function/MTF)を正確に測る「リアルタイムMTF測定装置」も開発。

 シンプルなチャートをカメラで撮影し、その映像からリアルタイムでMTFを測定するというもので、光学系の歪みなどを把握し、8K(解像度3,200TV本)に適したレンズかどうか判断できるという。また、同じレンズでF値を変えながら測定すると、どの値が好成績(8K映像に最適)になるかを確認できる。

「リアルタイムMTF測定装置」の測定画面

 スタジアムから放送局などへ8K映像を伝送するIPネットワーク技術も紹介。NHKに納入し、テスト中という装置で、遠隔地間で非圧縮8K映像伝送が行なえ、パブリックビューイングなどに活用できる。伝送元と伝送先の同期には、通常のNTP(Network Time Protocol)に比べて高精度なPTP(Precision Time Protocol)を採用する。

8K非圧縮映像のIPネットワーク伝送装置。左が送信、右が受信機

 ディスプレイ開発などに利用できる8K信号発生器「VG-876」もデモ。8K/120p表示対応のシャープ製パネルを用いた27型モニターの試作機と組み合わせて紹介している。

8K信号発生器「VG-876」
シャープの27型8Kパネルを使ったモニター試作機

 さらに、信号発生器の新機種「VG-879」も7月から発売。12G-SDI対応で、SMTPE規格のほぼすべてのフォーマットをカバーするという。本体に備えた液晶ディスプレイでメニュー表示を見やすくしたのも特徴。

8K信号発生器の新モデル「VG-879」

 4K/8KやHDRに対応した評価画像ライブラリも発売。14種類の静止画を収録し、サイズは3,840×2,160ドットと7,680×4,320ドットの2種類、色数は10bitと12bit。全画像で1,000nits、4,000nits、HDR2SDR、HLGの4種類を用意する。

4K/8K、HDR対応の評価画像ライブラリ

 8Kリアルタイムマルチ処理システム「GP-8001」は、8K/60p 4:2:2映像を、リアルタイムでDPXなどにファイル化し、解析処理可能。SSDを最大48台内蔵でき、大容量映像データのリアルタイムプロセッシングが行なえる。これを活用し、映像編集やレンダリングなどのほか、顔認証などのAIによる自動監視や、機械学習などの分野にも活用できるという。

8Kリアルタイムマルチ処理システム

 8KのCG映像を使ったユニークな取り組み「バーチャルミュージアム」も紹介。NVIDIAのハイエンドグラフィックカードQuadro P6000を内蔵したPCと8Kモニターを使って、超高精細な8K画質のデータをバーチャル空間に作ったミュージアム内で展示するもので、観る人が自由に歩き回るような感覚で、視点を変えて作品を眺められるほか、テレビ番組のように、自動で館内の作品を次々に表示しながら字幕で解説するといった見せ方も可能。ソフトウェアにはゲーム開発エンジンのUnityを使用している。

バーチャルミュージアムのシステム
美術館の中を歩くように自由に作品を眺められる
立体の展示物も
近くによっても精細さが伝わる
グラスバレーのEDIUS 8などを用いた8K編集システム
SSDからLTO7などのテープメディアへのバックアップシステム。秋ごろの発売を目指す
内視鏡など、医療分野に向けた製品も

4K/HDR映像信号や、USB Type-C映像伝送のチェック機器など

 4K製品では、HDMI 2.0bとHDCP 2.2に対応したテスター「VA-1844A」を開発。4K/60p 4:4:4映像をスルーさせて解析が行なえるもので、例えばUltraHD Blu-rayプレーヤーとAVアンプ、4Kテレビのそれぞれの機器間に接続すれば、プレーヤーからテレビまで4K/HDRで正しく映像信号が通っているか、もしそうでない場合はどの機器間で問題が生じているかをチェックできる。

HDMIテスター
HDMIテスターでチェックした信号のPC用ビューワーソフト画面

 そのほか、USB Type-C対応機器の増加に伴い、DisplayPortとUSB Type-Cのマルチテスターの試作機も展示。メーカーの機器開発などに活用できる。

DisplayPort/USB Type-C対応マルチテスター

 4K/8K実用放送と合わせて導入される、放送/通信多重化のMMT(MPEG Media Transport)関連製品も展示。送出側の機器開発などに使うアナライザ「SP-5800」、受信機開発や通信用途の検証などにはMMTレコーダ「CP-5541A」を用意。MMTのストリームを作成するシミュレータ「SP-5017」と「SP-5018」も開発した。

MMTレコーダやアナライザなど

 4K/8K放送のリアルタイム検証環境を構築するソリューションとしては、MMT対応のマルチプレクサ「CX-5545」と、IPパケットを放送で効率的に伝送するTLV方式に対応したマルチプレクサ「CX-5546」を用意。これらを使って、MMT/TLVの信号を挿入してチューナなどの機器を検証できる。

MMT/TLVマルチプレクサのデモ

 このデモには、ピクセラが9月に発売する4K試験放送対応の業務用チューナ「PIX-HAT40F-BB1」が参考展示。このチューナは、別売オプションの使用で、MMT/TLVフォーマットのデータパケットをLANポートから入力可能になる。チューナの価格は20万円でオプションの価格も20万円。

ピクセラの4K試験放送対応チューナ「PIX-HAT40F-BB1」

 また、HD素材から4Kへのアップコンバートや、SDR-HDR変換などが行なえる4Kコンバータボード「SB-4024/4027」も展示。この製品は1月から出荷されているが、ファームウェアアップデートによりSDRからHDRへの変換時に、よりHDRらしく見せる「逆Knee」機能を実装予定。これは放送局などからの要望に合わせて開発したものだという。

4KコンバータボードのHDR変換デモ