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映像+最新技術でリアルなスポーツ観戦と技術向上。「スポーツビジネス産業展」

 IT/テクノロジーのスポーツへの活用や、スタジアム向けの映像ソリューションなどが展示される、第1回「スポーツビジネス産業展」が2月21日に幕張メッセで開幕した。関係者向けの商談会となっており、招待券がない場合の入場料は5,000円。期間は2月23日まで。キヤノンやJVCケンウッドなどが出展しており、日本野球機構(NPB)やJリーグなどの団体が後援している。

 場所は幕張メッセの3~6ホール。同ホールでは、コンサートやライブ、エンターテイメント分野の専門展「ライブ・エンターテイメントEXPO」や「イベント総合EXPO」なども併催されている。同時開催展を含む出展社数は630社(最終見込み)。

タブレットで選手や審判の目線も分かる自由視点映像

 キヤノンは、現在開発を進めている「自由視点映像生成システム」をデモ。サッカーの試合映像を、タブレット端末を使って好きな視点から眺められるコーナーを設けている。

キヤノンの自由視点映像生成システム

 今回のデモで体験できるのは、30台のカメラで撮影したサッカーの試合映像を合成し、俯瞰や選手目線など様々な角度/画角で観戦できるという映像。'17年に行なわれたInter BEEでも同技術の展示を行なったが、今回は手元のタブレットでタッチ操作して視点を自由に変えられるようになったのがポイント。

タブレットでの表示画面
1本指で観る角度などを変更、2本指で拡大/縮小などができる

 同じシーンを、特定の選手の視点や、審判から見た映像に切り替えて見返すことも可能。選手/審判目線の映像も、前述した30台のカメラから、選手の向きに応じた画角の映像を切り出して使うため、選手らがカメラを身に着ける必要はない。

選手からの視点

 実用化の具体的な時期などは明らかにしていないが、競技観戦の楽しみ方を広げる用途のほか、チームや選手の強化などへの活用も見込んでいるという。

自由視点映像生成システムの概要
自由視点映像のデモ('17年公開のデモ動画)

 初展示となったのは、8K映像を元に、65型ディスプレイ3面を使ってスタジアムにいるかのような臨場感を提供するという「映像空間ソリューション」。魚眼レンズを装着した8Kカメラ1台のサッカー映像に、視聴/撮影環境に合わせた変換を施し、3面のディスプレイにそれぞれフルHD相当で出力。中央に立って観ると、視界をほぼ覆うような映像でフィールドを見渡せて、広い画角ながら選手を近くに感じられる映像になっているのが特徴。

3面ディスプレイを使った「映像空間ソリューション」
広い画角で精細な映像を楽しめる

 撮影には、8Kカメラと、EF8-15mm F4LフィッシュアイUSMレンズ、変換ボックスを組み合わせたシステムを使用。3面の映像を確認しながら構図を決める撮影支援ツールも用意する。ディスプレイだけでなく、複数のプロジェクタを使ったパブリックビューイングの用途なども想定している。

8Kカメラの撮影システム

 モバイルライブ中継やセキュリティなどに利用できる小型多目的モジュールカメラ「MM100-WS」も参考出展。スポーツ向けとして、審判が装着してライブ配信するという使い方を提案している。今回は、モバイル回線で配信できるソリトンシステム製のH.265エンコーダ「Smart-telecaster Zao-S」と有線接続してリアルタイム伝送するという方法を紹介しているが、カメラとZao-Sを無線LAN接続することもできるという。

MM100-WS
審判がMM100-WSとSmart-telecaster Zao-Sを装着

試合映像とスコアを1画面で配信。JVCケンウッド

 JVCケンウッドは、競技団体やスポーツ施設運営者に向けて、効率的なライブ映像の制作/表示を実現する方法や、アスリートのパフォーマンス向上を図るスポーツコーチングなどを提案している。

 「リモートプロダクションシステム」は、スタジアムなどの遠隔地に設置したJVCカメラシステムを、スタジオにあるStreamstar製ライブプロダクションシステムからネットワーク経由でリモートコントロールできるというもの。少ない撮影クルーでも配信できるのが特徴。

JVCケンウッドの「リモートプロダクションシステム」

 競技会場を盛り上げる「場内エンタテインメントシステム」としては、試合のスコアを映像に重ねて記録できるカメラ「GY-HM200BB」とPTZ(パン/チルト/ズーム)カメラ「KY-PZ100」を、Streamstar製ライブプロダクションシステムと連動させるシステムを紹介。アリーナなどの大型ディスプレイにスコア付きの映像を表示できる。

カメラ「GY-HM200BB」(左)と、スコア用のタブレット/アプリ(右)

 さらに、タブレットから、カメラ内蔵のスコアデータを場内のスコア表示盤と連動させるアプリも紹介。スポーツ向けの計測機器などを手掛けるベンチャーのスポーツセンシングによるアプリで、「バレーボールコーチングタイマー」や「バスケットボールコーチングタイマー」など競技に合わせてスコアアプリを用意。アプリで入力したスコアを得点板として会場内のディスプレイなどに表示するとともに、カメラから配信できる。アマチュアなどの試合でも、スコアを付ける人がいれば、一人で配信までの作業ができる“ワンオペレーション”が可能なため、学校などでもスコア付き映像を競技力向上に役立てやすいという。

映像とスコアを重ねてライブ配信可能

 60~600fpsのハイスピード映像に対応したスポーツコーチングカメラシステム「GC-LJ25B2」も紹介。ハイスピード撮影を複数のアングルから行ない、多視点で選手の動きなどを確認できる。撮影しながらタグを入力するタギング機能も備え、シーン検索も簡単にできる。

スポーツコーチングカメラシステム「GC-LJ25B2」

 専用ソフト「Multi-Video Viewer」で上記カメラを最大4台の遠隔同時制御/再生も可能。精度の高いフォーム分析ができるほか、プロスポーツや試合の判定などのビデオ判定システムもローコストで構築可能としており、実際にプロスポーツにも導入されているという。

頭上など様々な角度から撮影して確認できる

スタジアムのディスプレイ向けに、Ciscoが4K配信システム

 2020年東京オリンピックのネットワーク製品におけるオフィシャルパートナーを務めるシスコシステムズ(Cisco)は、海外のスタジアムを中心に採用されているライブ配信用メディアプレーヤーの4K対応モデル「CV-UHD」とHDの「CV-HD」を紹介している。

Ciscoの「CV-UHD」

 試合のライブ映像を、スタジアムに備えた数千台単位のHDディスプレイに同時配信できるシステム「Cisco Vision Dynamic Signage」で使われるプレーヤー。遅延を抑えたことで、会場で沸き起こる歓声などと配信映像にズレが起きず、会場の盛り上がりにマッチした映像が楽しめるという。

 ライブ映像だけでなく、チームなどのロゴや、スポンサー企業のCM、他試合結果のRSSなど、5層の映像を重ねて表示可能。プレーヤーとディスプレイはRS-232で接続することで、ディスプレイの電源などをサーバーから集中制御できる。

表示例
ライブ映像にCMなどを加えた5層の映像を重ねる

 NFLなど海外のスタジアムなどでは120以上の採用事例があるほか、日本ではパナソニックシステムネットワークが同社のソリューションを採用し、Jリーグガンバ大阪のホームである市立吹田サッカースタジアムにおいて導入された。Ciscoは、今後のオリンピックに向けた競技場などの建設に合わせて導入の拡大を見込んでいる。

ボールの速度や人の動きを映像で解析、技術向上に

 大阪大学発のベンチャー企業Qoncept(コンセプト)は、カメラで撮影した映像を処理して、選手やボールの動き、速度などが分かる「Qoncept 4D Tracker」を展示。バレーボールのサーブやスパイクの速度を測定したり、どのエリアが狙われているかを統計的に解析してプレイに役立てられるという。「世界卓球2016」などの生放送でも既に採用されている。

Qoncept 4D Trackerのデモ

 60fpsのフルHD映像からの画像認識のみで速度などを測れるため、特殊なセンサーやハイスピードカメラなどは必要なく、コストを抑えられるのが特徴。2つ以上のカメラを使ったマルチビュートラッキングにより、ボールなど対象の実寸の座標(3次元)を、計測中の任意時刻(1次元)について復元。復元された3次元座標の時間方向の変化から速度などを計算する。

デモに使われたカメラ

 画像からの特徴量の抽出方法を独自開発し、リアルタイム計測できるよう高速に動作。バレーボールの場合、ボールのサイズは直径15~20ドット程度の表示になるが、安定してトラッキングできるという。

「Qoncept 4D Tracker」で卓球のボールの動きを分析

コンパクトな4K/120fpsカメラなど

 エヌジーシー(NGC)は、中国・深圳のKANDAO Technology製VRカメラ「Obsidianシリーズ」を1月から日本で販売開始。8K/30fps対応の「Obsidian R」と、4K/120fpsの「Obsidian S」を用意し、価格は各80万円。120fpsのObsidian Sはスポーツなどの用途も想定している。

4K/120fpsの「Obsidian S」。8Kモデルも外観は同じ

 6つのレンズからの映像をアプリでスティッチングして、360度映像としてYouTubeやFacebookでライブ配信が可能。microSDカードスロットも6基備え、配信しながらmicroSDへ記録し、後からパソコンなどで編集することなどもできる。バッテリ駆動のほか、Ethernet給電でも動作可能。重量は1.1kg。

YouTubeやFacebookでライブ配信できる

 360度写真上に、文字情報やURLなど様々なコンテンツを追加できる「Panoviewn(パノビューン)」を展開するアスノシステムは、野球のスタジアム内をバーチャルツアーできるコンテンツを紹介。東北楽天ゴールデンイーグルスのKoboパーク宮城で、マウンドや客席などの眺めをGoogleマップのような操作で移動しながら見られるほか、グッズショップで購入ページまでジャンプできるのも特徴。スポーツ施設だけでなく、アウディの「Audi Virtual Showroom」などにも採用されている。

パノビューンを使った360度仮想空間内の楽天イーグルスのショップ
リブゼント・イノベーションズは、物理シミュレーションでリアルな打球感が味わえるという「VRテニストレーナー」を展示
ダスキン レントオール事業部のブースでは、“世界最小のモータースポーツ”ミニ四駆の大会など、イベントを開催するためのセットプランを提案
併催の「ライブ・エンターテイメントEXPO」で、スカパー・ブロードキャスティングは4K/HDR対応の中継車を展示。内部を観覧できる