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創業100年のパナソニック“家電ビジョン”。正方形の映像端末「AMP」など披露

 2018年3月で創業100年を迎えるパナソニックは、今後の100年を見据えた「家電ビジョン」と、それを実現するための取り組みを説明。NTTドコモや、西川産業らとの協業を発表したほか、健康や食、エンターテインメントに関連した開発中の家電機器やサービスなどを披露した。

3月で創業100年を迎えるパナソニック

 説明会の中で、Googleアシスタント搭載スピーカーとヘッドフォンを'18年度内に日本市場へ導入することも発表。これらの機器とクラウド経由で、テレビやエアコンなど家電との連携を進めていく。家電のスマートスピーカー連携については別記事で掲載している。

“テレビじゃない”正方形ディスプレイ「AMP」や段差を見て越えるロボット掃除機など

 パナソニック社内で、ユニークな提案を素早く形にするという組織「Game Changer Catapult」が手掛けたAMP(Ambient Media Player)は、一見するとリビングに置かれたテレビのようだが、本体が横長ではなく正方形で、上下は映像がない黒帯のようになっている。この部分にはスピーカーが内蔵され、部屋全体に広がるように音が出るのが特徴。

AMPの展示

 1枚板のようなシンプルなデザインを採用。テレビのように画面に集中して観るのではなく、「何となく見る、感じる」という利用を想定。ディスプレイ単体で販売するのではなく、表示するオリジナルコンテンツのプラットフォームと合わせて提供する仕組みを作ることで、ビジネス化を図る。

 '17年のSXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)で展示され、好評だったことから量産に向けて進めており、既に京都の「ホテルアンテルーム」やカフェなどに設置されているという。

 55型の4Kパネルや映像処理回路など、パナソニックが持つ技術をそのまま活かしつつ、木製のフレームを採用するなどテレビとは違うものとしてデザイン。映像入力端子などは備えず、内蔵ストレージや、インターネットで受信したコンテンツを再生することに絞った仕様となる。

 表示するコンテンツも、アーティストやクリエイター、コンテンツホルダーなどの意見を採り入れながら決めていく予定。リモコンはダイヤルを回して押すだけのシンプルなもので「機能を足すのではなく削ぎ落とす」ことを意識している。現在のモデルは55型パネルを使用しているが、より小さなサイズ展開の可能性もあるという。

リモコン操作は「回して押す」に限定

 Game Changer Catapultは'16年7月にスタートし、メンバーは自身の業務とは別にプロジェクト単位で集まって製品化を進めてきた。'17年には社内の部署として組織化されたが、アプライアンス社の本間哲郎社長による直轄に近いという組織のため、意思決定も素早く行なえるという。

Game Changer Catapultによる他のプロジェクトも。スマートコンシェルジュサービス「Bento」は、オフィスに置かれた冷蔵庫から弁当を買う場合に、決済と冷蔵庫のドアのロック解除にスマホを使える
歯のホワイトニング技術として、COm2やHm2、大気圧プラズマを使った「Sylphid」。ジェルではなく気体で歯を白くするという

 パナソニック・千葉工業大学産学連携センターで開発されているのは、「fuRo ロボット掃除機」のプロトタイプ。「ホームに必ず帰る」ことや、「事前の片づけがいらない」、「部屋の隅までくまなく掃除する」というコンセプトに基づいて開発中で、家のラグやじゅうたんなど厚めの段差も検出して本体を持ち上げ、段差を越えて掃除。“座礁”せずにホームに帰還するという。検出方法としてカメラの映像を使うのか、レーザーを使うかなどについて、最終的な仕様は今後検討していくという。

「fuRo ロボット掃除機」のプロトタイプ
「fuRo ロボット掃除機」プロトタイプが段差を乗り越える
NTTドコモと共同で行なう「LPWA」活用の実証実験。詳細は別記事で掲載
セブンドリーマーズ、大和ハウス工業と共同で展開する世界初の全自動洗濯物折畳み機「laundroid(ランドロイド)」
ナノイー関連の展示

家の外、社会全体を“HOME”に。他社と協業で暮らしに“憧れ”

 パナソニック 専務執行役員 アプライアンス社 本間哲朗社長は、100年の歩みとこれまでの製品について「創業者・松下幸之助が松下電器を立ち上げてから100年間、人々の暮らしに寄り添い多様な価値を届けてきた。生み出した製品の一つ一つが家電の基準となり、人々の暮らしの定番となった」と振り返る。

これまでの家電製品

 一方で、今後の家電事業への取り組みとしては、「これまでのやり方では、市場の早い変化に応えられない」とし、“家(HOME)”が指すものを住居内だけにとどまらず、周辺のコミュニティや社会にまで広げ、「心が安らげる」、「大切な人と過ごす」、「安心・安全」、「一人一人が活躍できる」場所をHOMEであると位置づけて、様々な場所に“憧れ”を届けていくという方針を説明。

これからの“HOME”はコミュニティや社会全体も含める
パナソニックの考える“HOME”

 そのために“パナソニックだからできること”として、「総合家電メーカーとしての強み」に、「パートナーとの協創」、「オープンイノベーション」を掛け合わせることで、新しい価値を生み出すことを目指す。

 本間氏は「私が入社した30年前、間違いなく家電は“憧れの存在”だった。今『アプライアンス社は何を作っているところですか』と聞かれたら『憧れを作っている』と答えたい。家電事業を通じて、これからも暮らしの憧れを作って世界の人々に届けることが私たちの未来向けた仕事」と述べた。

パナソニック 専務執行役員 アプライアンス社 本間哲朗社長

 他社との具体的な協業については、寝具などの西川産業(東京西川)と協力し、睡眠環境をサポートするサービスを開発することや、NTTドコモとの協力で、家電を簡単にネット接続できるようにする「LPWA(Low Power Wide Area)」の実証実験を行なうこと、スタートアップ企業を支援するScrum Venturesと共同出資で、新規事業の創出を目指す新会社「BeeEdge」の設立を発表。西川産業の西川八一行社長と、NTTドコモの古川浩司常務、BeeEdgeの春田真社長が登壇して今後の取り組みなどを説明した。

左から西川産業の西川八一行社長、パナソニック アプライアンス社 本間哲朗社長、NTTドコモの古川浩司常務、BeeEdgeの春田真社長