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カセットの音をハイレゾ相当で楽しめる“ハイレゾCDラジカセ”。東芝Aurexから

 東芝エルイートレーディングは、Aurexブランドの新製品として、カセットでもハイレゾ相当の音質を再現できるというCDラジカセ「TY-AK1」を3月下旬に、カセットデッキを省き、Bluetooth機能やPC接続機能を搭載した「TY-AH1」を4月下旬に発売する。価格はどちらもオープンプライス。店頭予想価格は、AK1が27,000円前後、AH1は22,000円前後。

CDラジカセ「TY-AK1」

カセットデッキ搭載のTY-AK1

 TY-AK1は、CD、USBメモリ再生、カセットデッキ、ラジオなどを備えたCDラジカセ。カセットテープの再生音も含め、様々なソースの音質を、ハイレゾ相当の周波数帯域と高解像度音源に変換するアップコンバート機能を備えているのが特徴で、懐かしのカセットのサウンドを、最新の音質で楽しめるという。40kHz以上の再生が可能な40Wのスピーカーも搭載している。カラーはサテンゴールド。

前面にハイレゾマークを装備

 カセットデッキは、ノーマルテープに加え、ハイポジションテープ(TYPEII)の再生にも対応している。

カセットをハイレゾ相当のサウンドで楽しめる

 SDカードスロットとUSB端子も搭載。USBメモリやSDでカードに保存した、192kHz/24bitまでのFLAC、WAVファイル再生も可能。

 さらに、カセットテープの再生音を、MP3の192kbpsでSDカードやUSBメモリに録音でき、テープのデジタル化に活用できる。CDやラジオなどの音を録音する事も可能。ラジオのタイマー録音もサポートしている。なお、ラジオはAMとワイドFMにも対応する。

上部にCDプレーヤー

 前面にはヘッドフォン出力、ステレオミニのライン入力に加え、3.5mmのマイク入力も用意。カラオケを楽しむ事もでき、マイクボリューム、エコー、ボーカルダウン機能も備えている。

 前面には日本語LCD表示が可能なディスプレイを搭載。その上部にある窓から、再生中に回転するカセットテープを見る事ができる。さらにその上部には、LEDのレベルメーターを用意。アップコンバート用ボタンも備え、アップコンバートすると、アップコンバートの文字が光るようになっている。

ディスプレイやLEDのレベルメーターを搭載

 スピーカーは、6.4cm径ウーファと、2cm径ドームツイータによる2ウェイで、出力は20W×2ch。「最適にチューニングされた大出力デジタルアンプとの組み合わせで、豊かな低域から瑞々しい高域までハイレゾの魅力を繊細、鮮明に描写する」という。

 消費電力は22W。外形寸法は、350×218×126mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約3kg。

背面
左が「TY-AK1」、右が「TY-AH1」

BluetoothやPC接続機能を搭載した「TY-AH1」

 外形寸法やデザインの傾向はAK1と同じ。AK1はカセットデッキを搭載しているが、AH1は搭載しておらず、その代りにBluetooth受信と、PC入力機能(microUSB/Windows 10のみ対応)を搭載。

TY-AH1

 CD、SD、USBメモリ、AM/ワイドFMも備え、外部入力も搭載。カラオケ用のマイク入力も搭載。見やすい日本語表示のディスプレイも前面に搭載する。ラジオのタイマー録音も可能。

 BluetoothはNFCに対応し、天面のマークに対応スマートフォンなどをタッチしてペアリングできる。プロファイルはA2DP、AVRCP。

天面にNFCマークを搭載

 PCと接続し、PCスピーカーとしてAH1を活用する事も可能。192kHz/24bitまでのデータを再生できる。

 AH1の消費電力は22W。重量は約2.9kg。

カセットテープ、ラジカセという文化を21世紀のさらに先へ

 東芝エルイートレーディングの松本健一郎代表取締役は、同社が手がけるCDラジカセなど、ポータブルなオーディオ機器分野について、「成長性は無いのではないかと思われるかもしれないが、今後、良い音にこだわる元気なシニア層が増えることや、2020年の小学校英語教育義務化など、伸びしろが大きく、成長可能な分野であると考えている」と説明。

 さらに、「当社はこのポータブル音響の分野で、国内市場50%のシェアを持つトップメーカー。海外でも、北米、欧州、アジア圏などで事業展開を行なっており、そこでは日本では売っていないトゥルーワイヤレスイヤフォンや、ゲーミングヘッドフォン、屋外で迫力のサウンドが楽しめるパーティースピーカーなども扱っている。これらの製品は、やがて日本でも発売したいなと考えている」と、今後の展望を語った。

東芝エルイートレーディングの松本健一郎代表取締役

 オリジナル事業部の渡辺利治氏は、ハイレゾを手軽に楽しみたいという需要はあるものの、高価格で大型のオーディオシステム導入や、ハイレゾ音源データを入手するなど、一定のハードルが存在すると指摘。手軽で良い音が楽しめる製品として、今回の新製品を開発したという。さらに、カセットテープの音楽を高音質で楽しみたいというニーズも根強くあり、潜在的なものも含め、そうしたニーズに応えられるようにアップコンバート機能を搭載したという。

 発表会では、レトロな家電を発掘・収集・修理し、現代に蘇らせたり、それらをドラマ、映画などの撮影現場に貸し出したり、大阪の梅田や、東京の池袋や渋谷で「大ラジカセ展」を開催するなど、家電蒐集家として活躍する、デザインアンダーグランド主宰・松崎順一氏がゲストとして登壇。

デザインアンダーグランド主宰・松崎順一氏

 レトロな家電の中でも、特に'70年代、'90年代のラジカセについて「日本人の、デザイナーの知恵が詰まった面白さがあり、“大ラジカセ展”を女性が多いロフトやパルコで開催した時も、オープン前からおじさん達が並んだという歴史を作りました(笑)。それだけ、おじさんホイホイと言いますか、40代、50代、60代に支持されている証拠だと思う」と、魅力を説明。

 一方で、「ここ10年ほど、30カ国くらいをまわってカセットの分布状況を調べましたが、ほとんど使われておらず、かろうじて日本だけがガラパゴス的に使われている。しかし、ここ4、5年、アナログのリバイバル復興が、アメリカや欧州、東南アジア、ロシアでアナログレコードから始まり、世界的な広がりを見せている。その数年遅れて発生してきたのがカセットのリバイバル。レコードが復興すれば、必然的にカセットもという流れ」だという。

 実際に「アメリカではロサンゼルスやニューヨークでも大変盛り上がっていて、まだコンシューマがメインではなく、センスがとんがっているアーティストやクリエイターを中心にカセットが見直されている。レコードはインディーズで作ろうとしても、プレスしなければならずハードルが高い。カセットは、ダブルラジカセがあれば自分でダビングできるくらい簡単で、エントリーとして参入しやすい」ためだという。

松崎氏が手掛けた「大ラジカセ展」

 松崎氏はラジカセの魅力について、「YMOの高橋幸宏さんが、“ラジカセで聴くカセットの音は、今のハイレゾの音と全く違う。デジタルとはまるで次元の違う音”と仰っていたが、まさにその通り。現代の、クラブ的な様相の、低音重視のサウンドと異なり、カセットの音は中低域の音に特徴があり、ラジカセは膨らんだ中域の音を表現できる。そこが、(ラジカセとカセットらしい)やわらかい音に繋がっていくのだと思う」と説明。

 TY-AH1については、「カセットの音がこんなに良くていいんだろうか(笑)、と思ってしまうくらい、クオリティの高さでビックリしました。これが現代の技術なんだなと実感した。カセットブームが続いていますが、音質の良いラジカセが登場することで、カセットのカルチャーがより一段広がっていき、ラジカセも進化し、この文化が、21世紀、そしてその次の世代へと受け継がれていって欲しい」と語った。