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シャープ、画面にスマホをかざして決済できる透明NFCアンテナ搭載液晶
2018年4月5日 15:29
シャープは5日、透明なNFCアンテナを搭載したディスプレイを開発したと発表。NFC対応スマートフォンや非接触ICカードを画面にかざし、決済や認証などの通信に対応する。スマホサイズから最大42型まで、様々なサイズに応用できる。2019年に量産開始し、2020年には画面全域で複数のNFC対応機器やカードを同時検出可能なディスプレイの量産を目指す。
NFC(近距離無線通信)は、交通系ICカードや自販機といった決済分野や、教育・医療などの認証分野で導入が進み、身近なものになっている。
シャープ ディスプレイデバイスカンパニー 開発本部長の伊藤康尚氏は、「現在のスマートフォンは、ディスプレイとNFCリーダーが別々になっており、どこにタッチしていいか迷うことがあった」とし、今回の透明NFCアンテナ搭載ディスプレイのメリットについて、「ディスプレイとNFCリーダーを一緒にして、“ここにタッチしてください”とメッセージを出し、支払ったら“決済が終わりました”とフィードバックを表示するような、ユーザーフレンドリーなUIが作れる」と説明した。
透明NFCアンテナ搭載ディスプレイのアンテナと液晶ディスプレイをシャープが供給し、コントローラやUIは採用するサービスなどと協業で開発する形となる。
2014年から社内の若手メンバーの発案で透明NFCアンテナ搭載ディスプレイの開発が始まり、NFCを読み取れる領域が1箇所に固定される製品を開発、2019年度に量産体制を構築する。
さらに、画面上のどこでもNFCを読み取れる「ポジションフリー」のディスプレイを開発。同時に十数枚のNFCカードを読み取れる複数同時検出に対応する。こちらは2020年の量産化を目指す。
目に見えないサイズの極細線を使うメタルメッシュ技術を用いて、透明化したNFCアンテナをディスプレイ全面に配置、アンテナ層の光透過率80%以上を確保した。
FeliCaなど一般的なNFCでは通信距離2.5cmだが、シャープが開発したディスプレイでは面内12点で約3~3.5cmという性能を実現。通信の応答速度は1秒以下としている。
画面サイズは現在は最大42型まで実現しており、液晶ディスプレイだけでなく電子ペーパーなどにも応用が可能。小型化についても、スマートフォン程度のサイズであれば開発可能だという。
具体的な用途として、まずはコンビニやスーパーなど小売店のPOSターミナル、ATM、自動販売機での活用を想定。画面内のどこでもNFCをかざして通信できるので、自由に画面をデザインできる。商品の画像に直接かざす直感的なデザインも可能になる。「コストは従来のNFCリーダーに比べればアップするが、潜在的な需要は大きいと考えており、量産効果を見込んでいる」(伊藤氏)。
また、オフィスや教育・医療機関での個人認証、クルマのインフォテイメントシステム、ゲームセンターなどのアミューズメント施設、サイネージ分野での応用も見込む。伊藤氏は「将来的には、NFC以外の通信規格にも対応できるよう、開発を行なっていく」とした。