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“スタジオ生まれ”のMYTEKから、新DAC「Brooklyn DAC+」「Liberty DAC」
2018年4月27日 12:00
エミライは、米MYTEK Digitalのコンシューマ―・オーディオ製品を5月1日より取り扱い開始。近々に発売を予定している「Brooklyn DAC+」、「Liberty DAC」の2機種についての説明会を開催。同じく、近々に取り扱うハイエンドモデル「Manhattan DAC II」や、開発中のポータブルDAC搭載アンプ「Clef(クレフ)」も紹介した。
MYTEK Digitalは、ニューヨークに本拠を置くプロ用レコーディング機器メーカーで、ミーハウ・ユーレビッチ氏が設立した。ミーハウ氏はポーランド生まれで、1989年にアメリカへ移民。1992年にニューヨークでMYTEKを立ち上げた。
もともとミーハウ氏は、'89年から'92年の3年間、マンハッタンの二大スタジオであるザ・ヒットファクトリー、そしてスカイライン・レコーディング・スタジオでエレクトロニクスのエンジニアを担当。スタジオに導入する機器の改造などを手がけていた。
2011年までプロ機を専門に開発してきたが、同年に初のコンシューマ向けのDAC「Stereo192-DSD DAC」を発表。この製品はPCからのUSB経由でDSDをデコードできる世界初の製品でもあったが、もともとプロ機として開発。「オーディオファンに見せたらどうか」と言われ、実際にオーディオファンに紹介したところ、大きな反響があり、コンシューマにも販売する形になったという。
ミーハウ氏とDSDの関わりは古く、2002年にSACDプロジェクトに参加。当時ソニーに在籍し、SACDの第一人者である西尾文孝氏と交流、DSDのマスターレコーダーのプロトタイプも手がけている。
5月からエミライが扱うラインナップは、新製品の「Brooklyn DAC+」と「Liberty DAC」。また、これまで扱っていた今井商事が販売していたハイエンドモデル「Manhattan DAC II」も、エミライが継承して扱っていく。
価格や具体的な発売日はまだ未定だが、5月中の発売を予定。価格のイメージとしてエミライは、「Manhattan DAC II」が80万円を切る程度、「BrooklynDAC+」は30万円以下、「Liberty DAC」は15万円を切る事を目標にしているという。
Brooklyn DAC+
Brooklyn DAC+は、ハイエンド機の性能をリーズナブルな価格で提供するというモデル。ESSのDAC「ES9028PRO」を採用し、384kHz/32bitまでのPCMや、11.2MHzまでのDSDデータをネイティブ再生可能。さらに、認証取得済みのハードウェアMQAデコーダも搭載する。
内部ジッター0.82psを誇る「MYTEK フェムトクロック・ジェネレーター」を備えるほか、ワードクロック入出力も備え、複数台のBrooklyn+ DACによるマルチチャンネル同期が可能。
リファレンス・グレードのプリアンプ部や、バランス駆動対応のヘッドフォンアンプ部、多彩なボリューム調整機能も備えている。
従来モデル「Brooklyn DAC」からの改良点は、DACが「ES9028PRO」に進化した事と、より高グレードで、色付けの少ない低ノイズなアナログアッテネータ回路を搭載。アナログ入力パフォーマンスの向上や、フォノステージのトランスペアレンシーの向上、ヘッドフォンアンプの音質向上など。アナログ信号経路もデュアルモノラル構成に変更している。これにより、「フォノプリアンプとヘッドフォンアンプはともに最高品質の専用機に匹敵する」という。
デジタル入力端子として、USB 2.0、AES/EBU、同軸デジタル×2、光デジタルを搭載。出力は、アナログRCA、XLRバランスを用意。MM/MCのPhono入力にも対応する。
出力インピーダンス0.5Ω×2系統のヘッドフォン出力も搭載。高い駆動力を必要とするバランス駆動ヘッドフォン用に設計されており、別売のバランス駆動アダプタケーブルを使い、バランス駆動も楽しめる。
外形寸法は216×216×44mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は2kg。
Liberty DAC
Liberty DACは、「あらゆるハイレゾフォーマットを含むすべてのデジタルオーディオフォーマットの高音質再生とモニタリング用に設計された」という製品。Brooklyn DACの弟モデルとして設計され、1/3ラックサイズのコンパクトさも特徴。
ESSのDAC「ES9018K2M」を採用し、384kHz/32bitまでのPCM、11.2MHzまでのDSDをネイティブ再生可能。認証取得済みハードウェアMQAデコーダも内蔵する。
マスタークロックの性能は、上位モデルからは劣るが、低ノイズタイプで10psの回路を搭載。強力なヘッドフォンアンプも搭載しているが、ヘッドフォン出力はシングルエンドのみとなる。
デジタル入力として、AES/EBU、同軸デジタル×2、光デジタル×1を搭載。アナログ出力は、RCAアンバランス、TRSバランス(TRS/XLR変換用ケーブルが必要)を各1系統備えている。
外形寸法は140×216×44mm(幅×奥行き×高さ)、重量は1.5kg。
Clef
同社初のポータブルオーディオ製品であり、幅広いユーザー層に向けて訴求する製品として開発が進められている。発売時期は未定。
384kHz/32bit、DSD 5.6MHzまでに対応するDACを搭載し、USB DAC兼ポータブルアンプとして使えるほか、Bluetooth受信も可能。スマートフォンからワイヤレスで音楽を受信し、楽しむこともできる。
Bluetoothのコーデックは、aptX、aptX HDに対応、LDACへの対応も検討中だという。
「ADCも開発している事が、DAC開発に活きている」
ミーハウ氏はMYTEKの強みについて、「我々はメーカーだが、マスタリングスタジオを発端としており、アーティストやエンジニアが音楽をどうやって作っていくのか、どんな音で聴いて欲しいのか、そうした考え方や手法、録音技術などに精通しており、また、それを大切にしている。実際に現場の声を聞きながら、バランスのとれた製品を開発する事を心がけている」と説明。
実際に同社の製品は、著名なアビー・ロード・スタジオなどにも導入されており、出来上がった音楽を再生して確認する時のプレイバック用としても使われている。「コンテンツを作る際の、出る音の確認用として使われているという意味で、再生時のトランスペアレンシー(色付けの無さ)を担保していると言っていい。使っていただければ、音楽が生まれる現場と限りなく近い音が楽しめるところに優位性がある」という。
また、DACだけでなく、業務用のADCも手がけ、スタジオで支持されている事を紹介。その上で、「(オーディオ用DACを開発する際に)製品から出てくる音が良いのか、悪いのか、出る音だけで判断するのは難しい。そこで使っている曲が、どのように録音されたのかわからないまま、製品を作る事になる」という。
MYTEKでは、自社のADCを活用。「元のソースをAD変換し、それをDACでアナログに戻した音と、何も変換していない元のソースを聴き比べる。その時に、機材で変換していない音と、元ソースの音がほとんど変わらなければ、トランスペアレンシーが実現できていると言うことになる。ADCも作っている事で、どうAD変換したかがわかっており、それがDAC開発にも活きている。定量的に、音が良いとか、悪いとかを判断しながら開発している」と、開発時のこだわりを語った。