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パイオニア、新構造でノイズ低減した5万円台のアンプ「A-40AE」。4万円切るシンプル機も

 オンキヨー&パイオニアは、パイオニアブランドのプリメインアンプ2機種を7月下旬に発売する。価格は、新たな構造「ダイレクトエナジーコンストラクション」を採用した「A-40AE(S)」が57,500円、同構造を採用しないシンプルな「A-10AE(S)」が38,800円。

A-40AE(S)

 '12年発売の「A-30」と「A-10」の後継となる、プリメインアンプのエントリーモデル。アナログアンプを搭載し、定格出力はA-40AEが60W×2ch(4Ω)、A-10AEが50W×2ch(同)。

A-40AE(S)
A-10AE(S)

 パイオニアの基本思想である、アンプからのエネルギーをロス無くスピーカーに伝える「ダイレクトエナジーコンセプト」に基づき、A-40AEには「ダイレクトエナジーコンストラクション」を採用。基板への電源供給において、線材での経路を従来よりも大幅に短くし、追加した専用の基板にパターン化して重ねて配置。電源と信号ラインの相互干渉や、筐体内での線材の配置による個体のバラつきを防ぐことで、信号のロスとノイズの混入を防止。音場が広く、音像が明確でクリアなサウンドを実現するという。この構造は特許出願中としている。

伝統のダイレクトエナジーデザイン
新しいダイレクトエナジーコンストラクション
基板を下側から見たところ。左上に見える小さな基板が、電源用に追加されたもの

 下位モデルのA-10AEは、別基板を使う形ではないが、同じ思想を受け継ぎ、電源から出力までの回路ブロックや部品のレイアウトを見直し、信号経路の最適化を図ることで信号伝達とSNを改善したという。

A-10AE

 A-40AEのみの特徴として、光/同軸デジタル音声入力を装備。プリメインアンプをリビングに置くユーザーが増えていることを背景に、テレビ周りに設置することも想定してエントリー機にもデジタル入力を採用した。内蔵のDAC部はWolfson製で最大192kHz入力に対応。また、アナログ入力時にはデジタル入力の動作を停止する処理も行なう。なお、上位機のA-70DA/50DAなどとは異なり、USB DACは搭載しない。

 さらに、AVアンプなどと組み合わせて使える「パワーアンプダイレクト」にも対応。同機能利用時は、ボリュームコントロールをバイパスし、A-40AEをパワーアンプとして使える。

 両モデルとも、ボリューム以外の回路をバイパスし、よりピュアなサウンドを再生可能とするソースダイレクト機能も搭載。よりシンプルな回路を新開発し、音の純度がより向上したという。

ソースダイレクト機能に対応

 電源部には大型のEI型トランスを使用し、底面のシャーシに固定。トランスから発生する不要振動を抑えている。また、大電流を扱うパワーアンプ部と、インプットセレクト、ボリュームコントロールなど小信号系を扱うプリアンプ部、マイコンなどへ電源を供給する制御系と、各回路間で扱う信号の電磁的な特性が異なるため、相互に影響を与えないようトランス内部で巻き線を3つに分離。物理的に相互干渉を抑制し、各回路へノイズの影響のないクリーンな電源を供給可能としている。

3系統独立電源回路

 A-40AEのメインコンデンサーには、新たにカスタム設計されたELNA製の10,000μFのコンデンサーを2基搭載。回路全体の電源容量にも余裕を持たせた設計とし、高いドライブ能力を確保している。

A-40AEに搭載するELNA製のメインコンデンサー

 全ての回路のグランドを1点化。外部入力などを通して接続された機器のグランドも同じ場所へ導き、機器間でグランドを明確化した。これにより、動的信号に対しても揺らがず、常にクリーンなグランドを実現するという。

 シャーシには底面からの振動によるノイズの影響を防ぐため、重量系パーツを支える1.6mm厚の高剛性スチールシャーシを採用。A-40AEは、フロントパネルとボリュームコントロールノブにアルミニウム素材を使用。外部からの不要振動がアンプ内部に伝播するのを防止。さらに、ボリュームコントールノブの振動やぐらつきを抑えるボリュームスタビライザーを備える。そのほか、A-40AEには大型インレットタイプ着脱式電源ケーブルを採用する。

ボリュームノブ部
インシュレータ/ボリュームスタビライザー

 アナログ入力は、40AEが7系統(1系統はパワーアンプダイレクト用)、10AEが5系統で、PHONO入力(MM)も装備。スピーカー端子は40AEが2系統、10AEが1系統。ライン出力やヘッドフォン出力も装備。消費電力はA-40AEが110W、A-10AEが100W。外形寸法は435×323×129mm(幅×奥行き×高さ)で共通。重量は40AEが8.2kg、10AEが6.8kg。

A-40AEの背面
A-10AEは、シンプルなアンプとしての性能を追求
A-40AEとA-10AEの主な違い

高音質の徹底と、エントリー機らしい聴き疲れしないサウンドの追求

 サウンドマネージャーを務める平塚友久氏は今回のA-40AEについて、開発当初から電源専用基板を用いたダイレクトエナジーコンストラクションを提案したことを紹介。実際に音の確認をしたところ、当初の予想よりも大きな効果があったという。また、振動を抑えるインシュレータは、3Dプリンタを活用して多くの試作パーツを用意。定在波の影響となる平行面や、不要な共鳴/共振のないように設計したことなど、高音質化のポイントを解説した。

サウンドマネージャーの平塚友久氏
多くのインシュレータを試作。一番手前が実際の製品に採用されたもの

 商品企画を担当した田口浩昭氏は、音質のコンセプトを「音楽性の高い、躍動感のあるサウンド(Crisp & Clear Sound)」と説明。高音質を追求しながら、幅広いユーザーを想定し、聴き疲れしないことにもこだわったとのこと。

商品企画の田口浩昭氏

 試聴は、CD/SACDプレーヤー「PD-70AE」やネットワークオーディオプレーヤー「N-70AE」からA-40AEに入力、スピーカーはB&W「801 Nautilus」を使用した。

 ジェニファー・ウォーンズの17年ぶりとなるCDアルバム「ANOTHER TIME, ANOTHER PLACE」から2曲目「Tomorrow Night」を再生。70代とは思えない艶のあるボーカルの熱気と、芯の太いベースの低域を力強く再現。ウォームな音質ながら、現代のアンプらしい軽やかさ、スピード感のある音を体感できた。ギタリストの木村大による「ラ・イスラ・ボニータ~美しき島」(マドンナのヒット曲のアレンジ)は、96kHz/24bit FLACで再生。フラメンコギターの沖仁との超絶技巧の共演が聴きどころだが、それらの正確な再現だけでなく、2人を支えるパーカッションの厚みのある低域まで体に響くように伝わる。エントリー機の価格で、ハイエンドのスピーカーである801 Nautilusをしっかりドライブできる基礎能力の高さも確認できた。