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デノン、新フォーマット見据えた“冒険心溢れる”AVアンプ、11.2ch X6500H、9.2ch X4500H
2018年8月30日 11:00
デノンは、AVアンプの新製品としてAuro-3Dや、未発表の新フォーマットにも対応できるという、11.2ch「AVC-X6500H」と、9.2ch「AVR-X4500H」を9月中旬に発売する。価格はAVC-X6500Hが32万円、AVR-X4500Hが17万円。カラーはどちらもブラック。
2機種の“Monster”サラウンドアンプ
どちらもオブジェクトベースのサラウンド「Dolby Atmos」と「DTS:X」、チャンネルベースの「Auro-3D」に対応。さらに後日のアップデートにより、未発表の新フォーマットにも対応可能という。
目指した音質は「Adventurous(冒険心溢れる音)」で、「デノンの伝統である“Energetic”なサウンドをベースに、低域をさらに拡張し、一貫したポリシーの下、デジタル回路、アンプ回路、DAC回路、電源回路のパラメータ一つ一つを細やかにファインチューニングすることで、トータルサウンドを一段とスケールアップさせた。ハイクオリティーな作品群の魅力を余すことなくお届けする、ストレートデコード&“Monster”サラウンドアンプ」と表現されている。
定格出力は、X6500Hが140W×11ch(8Ω)、X4500Hが125W×9ch(8Ω)。前モデル「AVR-X6400H」はラジオチューナ搭載だったが、新モデル「AVC-X6500H」は非搭載。そのため型番は「AV“R”(レシーバー)」ではなくなっている。X4500は引き続きラジオを搭載する。
X6500Hは、1chごとにアンプの基板を分けているこだわりの「モノリス・コンストラクション・パワーアンプ」構造を採用。筐体サイズを抑えるため、「11chチェッカー・マウント・トランジスタ・レイアウト」を活用。ヒートシンクに出力パワートランジスタを一列に並べると筐体に入らなくなるため、格子状に並べるもので、スペースファクターの問題を解決すると共に、熱効率を改善させる効果もある。
X6500Hの出力素子はDHCT(Denon High Current Transistor)を採用。普通の素子は3本足だが、DHCTは4本足となっており、温度補償回路を内蔵。急激な温度変化に追従でき、アイドリングの安定度が向上するという。薄膜技術によりトランジスタの熱効抵抗を下げ、放熱性も高めている。
X4500Hは、9ch同一クオリティでのディスクリートアンプを採用。4chのパワーアンプブロックと、5chのブロックを組み合わせた構成で、相互干渉を防いでいる。アンプブロックには、アルミ押し出し型のラジエータを採用。放熱しつつ、不要な振動を抑え、透明感の高いサウンドを実現するという。
パワーアンプの入力素子には、ハイエンドと同じデュアルトランジスタを採用。差動回路を構成するトランジスタの温度ドリフトが最小になり、カレントゲインの差も小さく、DCオフセットを最小化。これにより、微小信号や低域の表現力が向上したという。
11.2chのX6500Hは、パワーアンプの多さを活かし、フロントスピーカーを4チャンネルアンプでバイアンプ駆動できるほか、サラウンドも含めた5chスピーカーを全てバイアンプ駆動する「5ch Full Bi+Amp」も可能。2系統のフロントスピーカーを切り替えて使う事もできる。
Auro-3Dデコーダを搭載。X6500Hは、5.1chスピーカーにフロントハイト、サラウンドハイト、トップサラウンドを組み合わせた10.1chシステムを構築できる。X4500Hは、フロントハイト、サラウンドハイトを組み合わせた9.1chシステムに対応可能。
Auro-Maticアルゴリズムを使い、モノラルやステレオなどのソースを、3Dサラウンドにアップミックス再生可能。Auro-3D再生にはサラウンドハイトを使うのが理想的だが、サラウンドハイトの代わりにリアハイトスピーカーを設置し、Auro-3D、Dolby Atmos両方を再生できるシステムにする事もできる。
AtmosとDTS:Xの再生では、X6500Hの場合、パワーアンプ追加無しに7.1.4のシステムを構築できる。X4500Hでは、パワーアンプ追加無しに5.1.4、7.1.2を構築でき、2chパワーアンプを追加すれば7.1.4に対応できる。
DACチップは、どちらのモデルも旭化成の「AK4458VN」を2基搭載。DAC専用基板とすることで、映像回路やネットワーク回路との相互干渉を低減。ポストフィルタの抵抗を、温度変化による特性の変化が少ない薄膜抵抗とし、歪やSN比を改善している。
同社AVアンプ回路設計の中核技術と言える「D.D.S.C.-HD32」も採用。どちらのモデルも32bit処理する最上位バージョンを使っている。サラウンド再生に必要な信号処理回路を1つ1つのブロックに独立させ、32bitフローティングポイントDSPなど、高性能なデバイスを使ってディスクリート化。全チャンネル同一レスポンス、同一クオリティを念頭に構成されている。
32bitフローティングポイントDSPは、SHARCプロセッサ4基で構成。11.2ch分のデコードやアップミックスなどの処理を、余裕をもって行なえるという。高い処理能力を活かし、マルチチャンネル信号を32bit精度に拡張し、元のアナログ波形に近付けるという「AL32 Processing Multi Channel」も搭載する。
音場補正技術の「Audyssey MultiEQ XT32」も搭載。アプリ「Audyssey MultiEQ Editor Apps」を利用すると、タブレットなどから詳細な音の調整も可能。
HDMI端子は、どちらのモデルも入力×8、出力×3系統を装備。HDCP 2.2や、広色域のBT.2020に対応するほか、4K/60p/4:4:4/24bitや、4K/60p/4:2:0/30bit、4K/60p/4:2:2/36bitなどに対応(前面のHDMIは4K/60p/4:2:0/24bitまで)。HDRはHDR10、Dolby Vision、HLG(ハイブリッドログガンマ)をサポートする。
HDMIケーブル1本で、テレビの音声をAVアンプから再生する「ARC」(オーディオリターンチャンネル)は、ファームアップにより「eARC」(Enhanced ARC)にも対応予定。ARCはPCM、ドルビーデジタル、ドルビーデジタルプラス、DTS、AACまでの対応だが、eARCでは非圧縮の5.1ch PCM、Dolby Atmos、DTS:Xなどの伝送も可能。
対応するBDプレーヤーと接続する事で、ジッタ・フリー伝送を可能にする「Denon Link HD」もサポートする。
X6500Hの音質進化点
全オーディオ帯域において細部まで描き出す表現力の向上、エネルギッシュな駆動能力の改善を実現するため、プリ・パワーアンプ部において低域の伝送特性を改善した。低域不足した状態で矩形波やトーンバーストを入れると、理想的な波形が維持できず、変形してしまうが、それを防ぐための施策となる。
そこで、X8500Hで培った技術を活用。パワーアンプの入力結合コンデンサの容量を47μFから100μFへ、約2倍にアップ。これは上位機X8500Hと同様。ボリュームの出力抵抗を47Ωから0Ωへと変更、アンプに直結させている。
パワーアンプ用電源の整流回路はPN接合タイプから、高速ショットキーバリアタイプに変更。プリアンプ用電源のコンデンサは、10000uF/16Vから10000uF/25VのELNA製音質グレードモデルへと変更した。
DACまわりも強化。X8500Hは2ch DACを8基搭載しているが、X6500Hは8ch DAC×2基構成となり、DAC自体もワンランクグレードが落ちる。それを踏まえながら、X8500Hに迫る音質を実現するため、周辺回路の設計を最適化。
DAC出力のポストフィルタに使っているオペアンプに定電流負荷をつけ、A級動作させたり、DACの出力抵抗を低減させ薄膜抵抗を使ったり、温度変化による抵抗値のばらつきが小さく、電流起因によるノイズと歪みも低い薄膜抵抗をポストフィルタに使うなどの工夫を施した。電源、および基準電源コンデンサの容量も220uFから、470uFのELNA製オーディオグレードに強化している。
こうした、X8500Hに搭載している技術やパーツをふんだんに投入する事で、「X8500に近い音質を実現した」という。
AVR-X4500H音質改善点
パワーアンプの電源ブロックコンデンサを、X4500H専用品としてニチコンと共に新たに開発。コンデンサのサイズ自体がX4400Hの35mm径から40mm径に大型化。オーディオ用ACエッチング方式の高倍率箔を使った上で、上位機譲りの大きなケースに変更。内部材料も吟味し、新しい電解紙を採用。約10%の低ESR化を図り、ロスの少ないクリアな音質になったという。
ケース外部のスリーブまでこだわり、PETから、固有振動の少ないポリオレフィンを使っている。
ボリューム回路やセレクタ回路の電源品位を向上させるために、電源ブロックコンデンサの容量アップと、整流ダイオードを汎用品からFast recovery品へと変更。このダイオードは、ON状態からOFF時に逆向きに電流が流れる時間(逆回復時間)が短く、汎用品よりもエネルギーロスを低減できるという。
DACのポストフィルタで使っていた汎用の厚膜抵抗は、薄膜抵抗に変更。製造プロセス上、抵抗膜を均一に形成できるため、温度変化による抵抗値のばらつきや、電流が流れることによるノイズの低減も可能。歪やSNの悪化を防げるという。
ネットワーク再生機能も搭載
ネットワークプレーヤー機能「HEOS」も搭載。無線LANも内蔵し、IEEE 802.11a/b/g/nをサポート。デュアルバンドで2.4GHzに加え、5GHzもサポート。2×2のMIMOにも対応しており、通信性能を高めている。
LAN内のNASなどに蓄積した音楽を再生可能。再生対応ファイルは、DSDが5.6MHzまで、PCMは192kHz/24bitまでサポートする。MP3/AAC/WMAの再生も可能。USBメモリに保存したファイルの再生にも対応する。インターネットラジオ受信も可能。
iOS 11.4で追加された「AirPlay 2」もサポート。Apple Musicの再生や、複数の、AirPlay 2対応機器によるマルチルーム再生がカヌお。操作してから音楽が再生されるまでの時間の短縮、動画再生時の映像と音声の動機精度向上などを実現している。
Bluetooth受信機能も用意。スマートフォンと手軽に連携してワイヤレス再生できる。ラジオチューナも備え、ワイドFMにも対応する。
iOS/Android/Kindle Fire対応のリモコンアプリ「Denon 2016 AVR Remote」も配信。スマホやタブレットからAVアンプを操作でき、PCやNASなどに保存した音楽ファイルの検索、再生キューの作成・保存、ネットラジオの選局なども可能。
その他の特徴
脚部は両モデル共通で、台形リブを採用した高密度フットを採用。筐体は、どちらのモデルもダブルレイヤードシャーシを採用。振動源となるパワートランスのマウント部にトランスベースを入れたもので、強度や安定感を増し、オーディオ回路への影響を抑えている。
シャーシ厚は、X4500Hが1mm×2、X6500Hが1.2mm×2。フロントパネルのデザインも変わっており、X8500Hの流れを汲む、力強く重厚なイメージになったという。トップドアの厚みは、X6400Hの4mmから、X6500Hでは5mmに厚くなっている。重心をセンターに集め、重量を上げて不要な共振を抑える効果があるとする。
HDMI以外の端子は、X6500Hが入力としてコンポーネント×2、コンポジット×4、アナログ音声×8、光デジタル×2、同軸デジタル×2。出力端子は、コンポーネント×1、コンポジット×2、11.2chプリアウト×1、ゾーンプリアウト×2、ヘッドフォン出力×1を装備。LAN端子、Denon Link HD、USB、RS-232C、DCトリガー端子なども備えている。
X4500は入力としてコンポーネント×2、コンポジット×3、アナログ音声×6、光デジタル×2、同軸デジタル×2。出力端子は、コンポーネント×1、コンポジット×2、11.2chプリアウト×1、ゾーンプリアウト×2、ヘッドフォン出力×1を装備。LAN端子、Denon Link HD、USB、RS-232C、DCトリガー端子も備えている。
消費電力はX6500Hが750W、X4500Hが710W。外形寸法と重量は、X6500Hが434×389×167mm(幅×奥行き×高さ)で14.6kg、X4500Hが434×389×167mm(同)が13.7kg。
音を聴いてみた
サウンドマネージャーの山内慎一氏は、新モデルについて「音が緻密になると共に、付帯音も減り、シャープネスも増している。その結果、コンテンツにより没頭できる音になったと感じている」とコメント。
その進化を体験すべく、X6500Hを試聴した。
ノラ・ジョーンズのライブ映像作品「ライヴ・アット・ロニー・スコッツ」から、「Don't Know Why」を再生すると、「低域をさらに拡張し、Adventurous(冒険心溢れる音)を目指した」という言葉どおり、アコースティックベースの低域が、パワフルかつ深く沈み込む。それでいて、低域自体は非常に描写が細かく、トランジェントに優れている。中広域のシャープさも特筆すべきレベルだ。
SACDマルチ・チャンネルの「マイルス・デイビス/Bitches Brew」では、広がる空間の広大さがわかると同時に、マイルスのトランペットが稲妻のように鋭く吹き出し、トランジェントの良さを感じる。低域の安定感もあり、大音量再生でもまったくふらつかない。
4K UHD BD版「プライベート・ライアン」のAtmosサラウンド音声でも、戦場の広さや、反響音などがリアルに再現される。銃撃音もトランジェントが良いため、旋律だ。頭上を飛行する飛行機の音像、移動感も明瞭に再現されていた。