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コルグ、DSD 11.2MHz録音可能なUSB DAC/ADC/プリ「Nu I」。Nutube搭載

コルグは、DSD 11.2MHzまでの録音、再生に対応し、新世代の直熱双三極管Nutubeを搭載したUSB DAC/ADC「Nu I」を10月下旬に発売する。価格は425,000円。

USB DAC/ADC「Nu I」

同社はDSDでPCに録音するDS-DACシリーズを手掛けてきたが、その楽しみ方が「このNu Iによって全く別の次元へと進化する。オーディオ・カテゴリー製品で初めて“コルグだけが出せる音”に挑戦した」という製品。

DSD 11.2MHzの再生に加え、録音も可能。MCカートリッジ対応のフォノアンプ、バランス入力などレコーディングに関する新機能 、バランス・ヘッドホン出力、トロイダル・トランス電源などを備え、リスニングにも配慮した製品となっている。

アナログレコードをDSD録音可能

入力端子として、XLRバランス×1、RCAアンバランス×1、フォノ×1を搭載。USB B×1も搭載。出力は、XLRバランス×1、RCAアンバランス×1に加え、「USB-DAC DIRECT OUT」としてXLR×1、RCA×1も装備。標準ヘッドフォン×1、XLRバランスヘッドフォン×1も搭載する。

USB ADCとして、付属ソフトウェア「AudioGate Ver4.5」と組み合わせる事で、アナログ入力した音声をDSD 11.2MHzでPCに録音可能。USB DACとして11.2MHzの再生もできる。

11.2MHzでの録音にあたっては、「単にスペック上の数字を追い求めたわけではなく、厳しいプロの録音現場でも使われるDSDレコーダ、MRシリーズで培ったDSDやアナログ回路に関するノウハウを、11.2MHz対応に合わせてさらにアップデートした形で全て注ぎ込んだ」という。

MM/MCカートリッジ対応のフォノ・アンプも搭載し、レコードプレーヤーの出力を直接接続可能。アナログレコードを高音質にデジタル録音できる。

さらに「DSDフォノ・イコライザー」機能をAudioGateに内蔵。アナログレコードのカッティングマシンは、音の周波数が低くなるにつれ溝の幅を広く刻むため、そのままだと針が正確にトレースできない、収録時間が減るなどの問題点がある。そのため、カッティングされたレコードは低域を減衰、高域を強調して記録されており、再生時に逆特性のカーブで補正。この補正をするのがフォノイコライザー。

また、レコードプレーヤーは出力レベルが一般的なオーディオ機器に比べて低いため、入力信号を増幅する必要がある。フォノイコライザーでその役割を兼ねている機器も多いが、Nu Iでは増幅はアナログ回路、イコライジングはAudioGateによるデジタル信号処理へと振り分けている。

「DSDフォノ・イコライザー」では、一般的なRIAA以外にも、LP用の5種類のカーブにも対応。AudioGate 4.5では、SPレコード用に3種類カーブを追加。録音時に掛け録りするだけでなく、そのまま入力/録音したレコード盤の原音に、後掛けもできる。

AudioGateは再生ソフトでもあり、曲順を入れ替えたり、シャッフル再生も可能。豊富なフォーマットの再生に対応し、DSDで録音したソースをMP3やFLACなどに変換もできる。リアルタイムDSD変換再生も進化。DSDマスタリングの第一人者、オノ セイゲン氏がプロデュースした「DSDで遊べる」Nu I 専用オーディオ・ドライバ「S.O.N.I.C.(Seigen Ono Natural Ideal Conversion)リマスタリング・テクノロジー」を付属。

PC で再生するサウンド全て、YouTubeやVimeoなど動画や、iTunesの再生音なども含めて、リアルタイム変換によりDSDクオリティに“リマスタリング”してNu Iから出力するもので、単なるアップ・サンプリングとは一線を画す、「オノ セイゲン氏のノウハウを注ぎ込んだマジック」だという。

フォノ入力端子とは独立したライン入力としてRCAアンバランスとXLRバランス端子を備えているため、オープンリールデッキ、カセットデッキなどと接続し、デジタル録音が可能。

背面

PC不要でプリアンプとしても動作

PCと接続せず、スタンドアロンで動作するアナログプリアンプとしても利用可能。PCに接続する際は「USB モード」と呼ばれるが、アナログRIAA回路を内蔵したプリアンプ機能「ANALOGモード」も用意。Nu Iにレコードプレーヤーを接続した際に、レコードを聴くためにアンプに接続し直したり、PCを立ち上げる必要はない。ライン入力利用時もアナログプリアンプとして動作するため、後述のNutubeによる真空管サウンドをオーディオシステムに導入できる。

業務用機器との接続も想定。入力にはXLRバランスのライン入力を備えるほか、出力にはXLRバランスのラインアウトと、USB-DAC DIRECT OUTの計2系統を装備。ラインアウトはボリュームノブによる音量調整とNutubeの効果が楽しめ、USB-DAC DIRECT OUTはDACからのピュアなアナログ信号をダイレクトに出力する。業務機器レベルの+4dB出力にも対応。

最大4台まで同時にUSB接続でき、付属ソフト「AudioGate Recording Studio」を使う事で、8トラック・マルチDSD録音にも対応。WORDクロック入出力端子も備え、業務機器とも連携できる。2010年に発表されたDSD対応DAW「Clarity」の技術も活用されている。

ADCは旭化成エレクトロニクスの「AK5574」、DACは「AK4490」を採用。録音時は、XLRバランス入力からの音声信号を、平衡処理を保ったままAK5574に入力。再生時は2基のDAC AK4490を使い、左右独立で構成された出力回路、及びNutube回路(バイパス可)を経由し、XLRバランス出力、およびXLR-4タイプのバランス・ヘッドホン端子から出力できる。これにより、アナログ信号部分は入力から出力まで、基板上でのノイズによる影響を抑えたフル・ディファレンシャル回路で構成されている。

コルグとノリタケ伊勢電子が共同開発したNutubeは、従来の真空管では難しかった長寿命、省電力を実現した高品質な日本製の真空管。直熱管としてリニアリティのある特性を持ち、真空管特有の豊かな倍音も楽しめるのが特徴。

新開発の「Nutube HDFC」(Harmonic-Detecting Feedback Circuit/倍音抽出帰還回路)も搭載し、この倍音量をユーザーが調整可能。「新しいのにどこか懐かしいNutubeのサウンド」が体験できるとする。

アナログ音質を重視し、電源部にはトロイダルトランスを採用。DS-DACシリーズはUSB バスパワーで動作したが、Nu IではAC電源による駆動に対応。内部の電源がより安定することで、特にアナログ回路の音質が向上したという。新たに設計された電源回路には、磁束漏れが少なく効率が良いトロイダル・トランスを採用している。

コルグが技術協力する、インターネットイニシアティブ(IIJ)によるハイレゾ音源ストリーミング・サービス「PrimeSeat」にも対応。2017年9月に開催されたベルリン・フィル演奏会では、世界初のリアルタイムDSD 11.2MHz配信を実施したが、Nu Iはこの11.2MHz の配信に対応。他のコルグ製品同様に今後使用推奨機器となる予定だが、それに加え、PrimeSeat配信のための収録機材として、IIJが採用を検討しているとのこと。「Nu Iで録音されたDSD 11.2MHzの美しいサウンドを、そのまま再現できるのは世界で唯一Nu Iだけであり、今後の展開が期待される」という。

消費電力は40W。外形寸法は432×282×93mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は5.9kg。対応OSは、Windows 10、Mac OS X 10.11 El Capitan以降。