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国産有機ELスマホ登場。シャープ「AQUOS zero」は曲面6.2型OLEDで'18年冬発売

シャープは、初の自社製有機ELディスプレイ搭載のスマートフォン「AQUOS zero」を2018年冬モデルとして商品化する。価格は「通常のフラッグシップモデルと同様の価格帯。液晶モデルと大きくは変わらないと予測している」(同社通信事業本部 パーソナル通信事業部 小林繁事業部長)という。カラーはアドバンスドブラック。Android 9.0を搭載する。

AQUOS zero

スマートフォンのAQUOSで初となる有機ELディスプレイ(OLED)を搭載。6.2型/解像度2,992×1,440ドット(WQHD+/19:9)のシャープ製有機ELパネルを備え、100万:1の高コントラスト比と、DCI-P3規格100%の広色域を実現。

AQUOS初の自社国内製有機ELスマホ

これまでのAQUOSで培った高画質化技術のリッチカラーテクノロジーモバイルによる滑らかな階調表現や豊かな色調で、映像を表示。

同技術は、テレビのAQUOSの技術をスマートフォンに投入するために培われてきたもので、その心臓部に当たる色調機能を、有機EL搭載に合わせて見直した。これは、スマートフォンで実際に表示できるコンテンツの色域よりも、有機ELが表示できる色域が広く、その差の部分をどう表示させるかが重要になるためだという。今回の見直しにより「元のコンテンツでは存在していない色の表現に成功した。液晶では見たことのない濃い色、深い赤などを表現できる」(小林事業部長)としている。

リッチカラーテクノロジーモバイルの比較デモ
元のコンテンツにない色域も表現可能としている

なお、AQUOSのフラッグシップモデルとしては、「AQUOS R2」が今夏より販売されている。今回のAQUOS zeroは「ゲームや映像視聴にもガンガン使う人」を想定、R2は「カメラ、ビジュアルコミュニケーションを楽しみたい人」に向け、それぞれ別基軸のフラッグシップモデルとして展開する。

HDR映像のDolby Visionと、立体音響のDolby Atmosに対応。シーンに合わせたリアルな映像と没入感のある音を楽しめるとしている。対応する映像配信コンテンツとして、シャープのCOCORO VIDEOがDolby Vision/Atmos対応予定のほか、U-NEXTのDolby Atmos音声作品にも対応。新たに、TSUTAYA TVでもDolby Atmos音声で映像配信を開始予定としており、AQUOS zeroで楽しめる。内蔵スピーカーはステレオ。

有機ELパネル部
Dolby VisionとDolby Atmosに対応
Dolby VisionとDolby Atmosの対応コンテンツ。TSUTAYA TVもAtmos対応になった

バックライト不要な有機ELを採用し、側面にマグネシウム合金、背面に軽量で強度が鉄の5倍というアラミド繊維のテクノ―ラ(帝人製)を用いた軽い本体を実現。ボディはマグネシウムダイキャストから24の切削・加工工程を経て、AQUOS R2のアルミ製構造に比べて41%軽量化した。重量は、6型以上/バッテリ3,000mAh超のスマホで世界最軽量とする約146g。この重さは文庫本を基準にしたとのことで「ベッドで見ても、重さで疲れることはない」としている。外形寸法は約154×73×8.8mm(縦×横×厚さ)。

マグネシウム合金のボディ
軽量で高強度な素材テクノーラを採用

同社の3Dフリーフォームディスプレイ技術を採用し、ディスプレイ中央に向かって緩やかに盛り上がる独自のラウンドフォルムの形状も特徴。端末の側面近くで急にカーブするのではなく、全体に渡って曲率100Rのカーブとなっているため、画面の端に近い場所をタッチした時も認識されやすく、指の動きにあった自然なタッチ操作が行なえるという。

薄型でラウンドフォルムの本体
エッジ近くでも正確にタッチ可能

チップセットはSnapdragon 845で、オクタコア 2.8GHz+1.7GHzのCPUを搭載。メモリは6GBで、ストレージは128GB。従来のAQUOSで培った放熱技術や、2つの充電ICを併用した初搭載の「パラレル充電」により、充電しながら使用しても発熱を従来より抑え、ゲームや動画を快適に楽しめるという。

放熱性能の比較。充電しながらYouTube再生した場合、左のAQUOS zeroの方が、右のAQUOS Rに比べて温度が低い

バッテリ容量は3,130mAh。カメラは外側が有効2,260万画素CMOSセンサーとF1.9レンズ、内側が有効800万画素CMOSセンサーを搭載。AQUOS R2のようなデュアルカメラではないが、光学手ブレ補正など「必要十分な機能を備えた」としている。顔認証や、指紋認証に対応する。インターフェイスはUSB Type-C。

内部構造
カメラ部。おサイフケータイにも対応する
USB Type-Cを搭載

液晶ではできなかったことを有機ELで

シャープは3日に製品発表会を行ない、有機ELのAQUOS zeroに加えて、IGZO液晶とAI搭載カメラのスタンダードモデル「AQUOS sense2」も冬モデルとして披露した。'17年発売モデルの「AQUOS sense」はシリーズ累計200万台を達成した同社スマホ最大のヒットモデル。AQUOS sense2については、別記事で掲載する。

IGZO液晶のAQUOS sense2

シャープの通信事業本部 中野吉朗本部長は、'18年夏モデルのフラッグシップAQUOS R2も、従来のRシリーズ同様に販売は好調と説明。sense2も、初代のsenseと同様の売上規模を目指すという。なお、zeroの販売目標については「新しいジャンルのフラッグシップのため、具体的な目標台数は予測しづらい」(前出の小林事業部長)とした。

シャープの通信事業本部 中野吉朗本部長

通信事業本部 パーソナル通信事業部 小林繁事業部長は、有機Elのzeroと、IGZO液晶のsense 2について、ディスプレイの進化を中心に説明。「AQUOSの歴史≒ディスプレイの歴史。超高解像度や、フリーフォームによるノッチ部分など、世界の先頭集団で切り開いてきた」とこれまでの取り組みを紹介。

通信事業本部 パーソナル通信事業部 小林繁事業部長
「AQUOSの歴史≒ディスプレイの歴史」と説明

AQUOS zeroは「究極のコアガジェットを目指した」としており、動画やゲームなどの「エンターテイメント・フラッグシップ」という位置づけ。製品名の「zero」には、「スマートフォンの本質に立ち返り、ゼロベースで挑戦や革新を続ける」といった思いが込められている。

zeroで有機ELを採用した理由については「OLEDの薄型、ハイコントラスト、曲げられるという特徴は、液晶ではできなかった。軽量化のニーズが拡大する中でパワフルなデバイス」とした。

軽量な本体については、最新スマホの大画面化が進む一方で、映像ストリーミングやリアルなゲームを楽しむために、大容量バッテリーと堅牢な構造が必要となるため、結果として「'18年のハイエンド機種は6インチ/200gまで達している」と指摘。「スマホを使い込むコアなお客様ほど、重たいスマホを使っている。大画面・大容量電池と軽量化の両立を目指し、軽量化に取り組んだ」という。

最近のハイエンドスマホの傾向
「コアユーザーが重いスマホを使っている」という問題解決を目指す

有機ELパネルの生産は、同社の三重工場が前半工程を、大阪の堺ディスプレイプロダクトが後半工程を担う。自社でのパネル製造については「画質にこだわり続けること」を理由に挙げ、「一体となって開発することで、より大きなイノベーションを起こせる。特徴が良く分かったデバイスを使うことがに意義がある」とした。有機ELパネルの他社への販売については、具体的な計画は明らかにしていないが「当然デバイスは広く、と認識している」とした。

スマートフォンAQUOS全体の特徴として、「人に寄り添うAI」や、「カメラ技術(R2の静止画/動画別カメラなど)」に加え、秋冬モデルは「ディスプレイの革新でAQUOSの選択肢を広げる」としており、「2020年の目標は国内Androidシェア40%超」(中野本部長)を掲げている。

2020年にAndroidシェア40%超を目指す