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世界初放送の8K版「2001年宇宙の旅」を体験! 23日には特番も

NHKは7日、BS8Kチャンネルで放送が予定されている「8K完全版 2001年宇宙の旅」の先行試写会を開催した。70mmのオリジナルネガフィルムを8Kスキャンした“ピュア8K”マスターによる本作の8K放送は世界初の試み。12月1日の放送に先駆け、8K解像度に生まれ変わった「2001年宇宙の旅」を一足先に体験した。

8K完全版 2001年宇宙の旅
©Turner Entertainment Company

既報の通り、「NHK BS8K」チャンネル開局に合わせ、12月1日午後1時10分から映画「2001年宇宙の旅」が8K解像度で世界初放送される。

「2001年宇宙の旅」はスタンリー・キューブリック監督の代表作であり、また“SF映画の最高峰にして映画史上の傑作”との呼び声もあるほどに、これまで多くの人々を魅了し、その後の映画や文化に多大な影響を与えた金字塔的作品だ。

NHKは、この金字塔的作品の8Kテレビ放送を新チャンネル開局の“メモリアル”とすべく、版権元のワーナー・ブラザースに8K放送の企画を提案。それに応えたワーナーが8K化とレストアを行ない、まだ誰も観たことが無かった“8K版2001年”が世界に先駆けて放送されることとなった。

8K完全版 2001年宇宙の旅
©Turner Entertainment Company

オリジナルネガは温度や湿度など、徹底した管理の下で厳重に保管されていたそうだが、撮影当初から数えれば既に50年以上経過していたこともあり、フィルムには傷や裂け目、退色などの劣化が発生していたという。

ワーナーはこれらの修復と8Kスキャンを専門の作業チームに依頼。65/70mmフィルムの高精細スキャンに対応したスキャナーBig Footで8Kスキャニングした後、フィルムの傷を丹念にデジタル修復し、漆黒の宇宙空間や謎の物体・モノリス、クライマックスの極彩色のシーンなど、すべての色彩を検証、細かく補正し、初公開時の映像と音声にできるだけ近づけるレストアを行なった。

作業チームは細心の注意を払いながらマスターを制作。8Kや4Kモニターでのチェックはもちろん、補正具合の確認のためにフィルムに焼いて、それを投映しオリジナルと比較して差分を微調するなど、あくまで原版が持つ世界観を“足さず引かず”地道で忠実なレストア作業に約1年を費やした。完成した8K/SDRマスターを観るや、作業チームもその出来栄えに思わず息をのんだと話す。

NHKにテストファイルが届いたのは今年6月。その後、正式に納品された8K/24pマスターをNHK側で60pに変換し、放送用のマスターを完成させた。

放送される「8K完全版 2001年宇宙の旅」の仕様は、8K解像度(7,680×4,320ドット)、60Hzのプログレッシブで、BT.709色域のSDR映像。音声は5.1chのサラウンドとなる。「ワーナーから提供いただいた8K/SDRマスターをそのまま使った」(編成局チーフプロデューサー・坂本氏)とのことで、HLGや22.2ch仕様では放送されない。

なお今回は公開当時の上映とキューブリック監督の意図を尊重し、前奏曲(2分53秒)や間奏曲(2分18秒)、終曲(4分23秒)の黒画面もカットせずに放送する“完全版”となっている。ただし、故障や放送事故と勘違いされないよう、NHK側でテロップを追加している。

8K完全版 2001年宇宙の旅
©Turner Entertainment Company

マスコミ向けの試写は、NHK放送センター内の試写室で行なわれた。

映像は、8Kレコーダー(P2)から非圧縮の放送用マスターを、JVC製の業務用8Kプロジェクター(画素ずらし8Kモデル)に入力し、約6.6×3.7m(幅×高さ)の300インチスクリーンに投射。音声も非圧縮のまま、5.1chサラウンドで再生。実際の放送では送出時、映像はHEVC圧縮、音声はAAC圧縮にダウングレードされてしまうため、試写での“非圧縮鑑賞”はかなりの好条件と言えるだろう。

300インチのスクリーンと22.2chのサラウンドシステムが設置された試写室

もしかしたら、8Kなど必要ないという意見もあるかもしれないが、大画面で鑑賞する“ピュア8K”の威力は絶大だ。

人物のバストアップを捉えたシーンでは、顔の細部がより鮮明に映し出され、背景のぼけと相まって、一段と立体的に見える。70mmフィルム上映や2KのIMAX上映で感じたもっさり感は皆無で、クリアで高精細な映像が全編にわたって楽しめる。

特にパンフォーカスのシーンでは、3,300万画素によるスキャニングが一段と真価を発揮した感があり、細部までディテールが湧き上がる。

スーツの生地感やガウンの起毛、ストッキングの網模様まで、はっきりと視認できる。舞台セットの内壁表面のザラつきや宇宙船のタイル模様、月面基地に着陸するシーンの作業員の様子まで、今まで気がつかなかった微細な情報にあふれている。

無重力トイレの使用10箇条やコックピット内の文字盤まで読め、本作のファンであれば、画面の隅々までじっくり観察することで、新たな気付きがあるに違いない。

アンレストア版の70mmフィルム上映では、オリジナルネガの傷もそのままプリントされていたが、前述した通り“8K版2001年”ではそれらもキレイに修復されていた。映画冒頭のシーンにあった切れ目も、一度の視聴では分からないほど元通りに復元されている。

マスターがSDRであり、使用した液晶プロジェクターのコントラスト性能や部屋の迷光対策が不十分だったことも関係し、色やダイナミックレンジはやや薄味。ただ液晶や有機ELの直視型ディスプレイで観れば、また印象は変わるだろう。ここは放送までのお楽しみだ。

8K完全版 2001年宇宙の旅
©Turner Entertainment Company

NHKによれば「8K完全版 2001年宇宙の旅」は、8Kで体感してほしいとの狙いから、NHK BS8Kチャンネルでのみ放送する。同時開局するNHK BS4Kでの放送や、パブリックビューイングでの上映も計画に無いという。

現在放送が確定しているのは、BS 8K開局の12月1日のみだが、「開局日は視聴者が限られるため、来年以降複数回の再放送を予定している」(制作局8K制作事務局長・落合氏)とのことなので、本作を視聴、録画できるチャンスは何回かありそうだ。

NHKは「2001年宇宙の旅」のほか、'19年3月に「8K版 マイ・フェア・レディ」(70mmフィルムの8Kスキャンマスター)の放送を準備中。8K放送の魅力を広めるためにも、今後も定期的にピュア8K映画の放送を期待したいところ。そして是非とも、HLG版でお願いしたい。

解像度だけが映像品質を決めるバロメータでは無いにせよ、“素材が良ければ”解像度はいくらあっても構わない。8K解像度の映像が持つ可能性と、それにも増して8Kスキャンしてもなお映像のアラやセットのチープさを感じさせない70mmフィルム「2001年宇宙の旅」の偉大さを改めて痛感させられた試写会だった。

なお11月23日には、特別番組「8Kでよみがえる究極の映像体験! 映画“2001年宇宙の旅”まもなく放送」が放送される。芸能界きっての“2001年ファン”の佐野史郎と中川翔子がパーソナリティーを務め、8K化までの裏側をドキュメント形式で紹介。両者が8K版を鑑賞した感想を交え、映画の魅力や見所をお届けするという。放送はNHK総合で午前4時30分から。

佐野史郎
中川翔子

8K完全版 2001年宇宙の旅

チャンネル:NHK BS8K
放送日時:12月1日(土) 午後1時10分~

8Kでよみがえる究極の映像体験! 映画“2001年宇宙の旅”まもなく放送

チャンネル:NHK総合テレビ
放送日時:11月23日(金・祝) 午前4時30分~4時59分