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カン高い“クロちゃん音声AI”誕生。検索や悩み相談に回答、東芝コエステ活用

Web接客事業などを展開する企業の空色は、お笑い芸人・安田大サーカスのクロちゃんの声を活用した「空色音声AIボット」のサービスを2019年秋に開始。サービススタートに先駆けてデモンストレーションを披露。ゲストとしてクロちゃん本人も登場した。

クロちゃんの声を元に「空色音声AIボット」のサービスが開始予定

人がスマートフォンやスマートスピーカーに話しかけると、ハイトーンボイスの“クロちゃん音声AI”が自動で返答。ショップ店員や相談相手のようにふるまい、「まるでクロちゃんとおしゃべりしているように楽しめるサービス」を実現するという。

空色は、Web接客ソリューション「OK SKY」の開発・運営を中心に、チャットセンターの運営受託、コミュニケーションコマースに関するコンサルティングなどを展開している企業。

東芝デジタルソリューションズの「コエステーション」は、 スマートフォンアプリを使って指定の文章をいくつか読み上げることで自分の声の分身である「コエ」を生成、 テキストを入力するとその「コエ」でしゃべるというサービス。 個人向けにアプリを提供しているほか、声優やタレントなどプロの声を活用したビジネス向けサービスも展開している。

東芝コエステーションの概要

空色による今回のサービスは、「コエステーション」を活用し、店頭やWeb通販などの接客に活用するもの。特徴あるクロちゃんの声を元に音声サービスとして提供することで、親しみやすく使えたり、文字入力の手間を省けるといったメリットがある。試着時の相談などにも答えてくれるという。小売以外にも、カーナビの音声や、コールセンターなど幅広い用途を想定。AIが応答することで人手不足の現場への活用も見込んでおり、パートナーとなる企業と今後協議して実際にサービスへつなげる。

音声AI「クロちゃん」を今秋リリース予定
返答の例

話しかけた内容に対する、クロちゃんの答え方については、空色がこれまで様々なクライアントへのサービスで蓄積してきた一般的な対話のログデータを元に、普通の会話で発生する言語と、クロちゃんがこれまでTwitterで発信してきたメッセージを掛け合わせて、今回のAIを実現しているという。

クロちゃん音声AIのデモ(もしもクロちゃんに恋愛相談できたら/開発中のもの)
クロちゃん音声AIのデモ(もしクロちゃんが店員さんだったら/開発中のもの)

商品選びの悩みを解決。店舗の人手不足解消も

空色の中嶋洋巳社長は、音声AIサービス導入の背景について、小売業界を例に「洋服をネットで買う場合に『情報量は増えたが、選択肢が多くて調べきれない』というのがコンシューマーの反応。一方で、スタッフ不足に悩む経営者からの(チャットによるサービス提供に)問い合わせが増えている。その中で、音声を活用したAIへの要望が多かったため“声に破壊力のある”クロちゃんに協力いただいた」と説明。

空色の中嶋洋巳社長
空色の事業
空色のサービスを利用しているパートナー企業

今回のサービスに使われている東芝デジタルソリューションズのコエステーション(コエステ)には、現在一般の「コエ」が4万以上、プロなどの“公式”の声は30以上が既に集まっているという。プロジェクトリーダーの金子祐紀氏は法人向けサービスについて「スタジオ収録で100~400文くらいを読んでいただいて、声のデータベースに集めている。これを活用する企業から利用料をいただき、タレントや事務所に一部をバックするシステムを実現している」と紹介した。

東芝デジタルソリューションズ コエステーション プロジェクトリーダーの金子祐紀氏

「声色だけではなくしゃべり方の癖もある程度学習する。特に“淡々としゃべる”分にはクオリティが高くなっているほか、最近少しずつ感情を付けて抑揚もつけられるようになった。音声合成で“怒りのパラメーターを何パーセント”でしゃべらせるという調整も実現しており、エンタメ業界からのオファーも増えている。スマートスピーカーやカーナビ、オーディオブックなど、固定の声だったものが、大好きなアイドルや芸能人の声に切り替えが簡単にできるようになる」とした。

店内放送、駅のアナウンス、観光ガイドなどについても「声優さんに来てもらって(従来の方法で)収録しても、内容が1つ変わるだけで収録し直さないといけないなど、メンテナンス性が悪い。コエステであれば、声を選んでテキストを修正するだけで変更できるので、そういった利用も増えている。また、コールセンターや接客業務も、人手不足が進んでいて、引き合いをいただいている」とした。

コエステーション活用の一例

広告分野でも提案を受けているとのことで、「コエステを使うと、いろんなパターンを一気に大量生産できる。(広告を届ける)相手が誰で、どういう趣味趣向なのかに合わせて、同じ商品でもその人に合った声で紹介できることでコンバージョン率を上げようといった取り組みも進んでいる」という。

現在、コエステーションは11言語に対応しているが、日本語から日本語、英語から英語というように同じ言語での合成に限られている。将来的には日本語から英語などの「クロスリンガル」への対応を予定。日本語で収録したセリフを、同じ声優で英語バージョンで海外へも提供できるほか、ハリウッドスターの声で日本語の吹替えをするといった可能性も生まれるという。

コエステーションの将来的な取り組み

クロちゃん「アイドルの声で朝起こして」

クロちゃんの声を採用するにあたり、東芝デジタルソリューションズの金子氏は、過去のアンケートで女子高生に聞いた「声に特徴のある有名人」でダントツだったのがクロちゃんだったというエピソードを紹介。しかし、「声の嫌いな有名人」でも同じく1位だったという。また、これとは別に10代~50代の男女1,000人に聞いた「声が好きな有名人」のアンケートでは、クロちゃんは一票も入らなかったという結果を明かしたところで、「ちょっとまって、おかしいじゃない! ハイトーンボイスかわいいじゃん」とクロちゃんが登場。

クロちゃんが登場して感想を語った

初めて完成版を聞いたというクロちゃんは、「ここまで似ていたら夢が広がる。(音声AIと)2人で掛け合い漫才するのもいいかも知れない」とコメント。自分がサービスを使う側だとしたら、「アイドルが好きなので、朝アイドルが起こしてくれたらいい。やる気が起きない時にも、音声で『がんばってね』といってくれて、気持ちを変えてくれたら本当にいい」と語った。