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「PSYCHO-PASS 3」の裏側を、冲方丁ら脚本陣が語る。Prime Videoで配信中
2019年11月8日 18:00
人間の心理状態を数値化し管理する近未来社会を舞台に、正義を問われる警察機構を描くSFアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」。その最新作「PSYCHO-PASS サイコパス 3」がフジテレビ“ノイタミナ”で毎週木曜日24時55分~25時55分拡大枠にて放送中。Amazon Prime Videoでも日本・海外独占配信されている。本作の脚本を手掛ける冲方丁、深見真、吉上亮、3名の脚本陣インタビューが到着。脚本づくりの舞台裏、新キャラクターの魅力、作品に対する想いなどが語られた。
――「PSYCHO-PASS サイコパス 3(PP3)」の脚本は3人の作家による共作ということになりますが、どのように脚本づくりは進められたのでしょうか。
冲方:プロデュースサイドや塩谷(直義)監督から、今回のキャラクターを全部新規にして、時間軸をどこ(劇中の時間は第二期から6年後の2120年)にする、といった具体的な注文がありました。それを受けてシリーズ構成を組みあげて、おふたり(深見、吉上)に脚本を書いていただいたというかたちです。
深見:冲方さんと塩谷監督のコンビネーションが良くて。まず、ふたりの中で出来上がっている感じがありました。冲方さんが組み上げられたシリーズ構成がすごく緻密で。こんな緻密な構成は見たことがない! というレベルのものだったんです。そこで僕が最初にやった仕事は「そのシリーズ構成から柱(エピソードのテーマ)を立てて、ハコ書き(シーンの具体的な要素をまとめる)にしてください」というものでした。
冲方:深見さんはさすがだな、と思ったのは僕が投げた球を、曲げて返してくるんですよ(笑)。シリーズ構成にはいないキャラが、足されて返ってくる。たとえば、小畑ちゃん(ファースト・インスペクター梓澤廣一の協力者である小畑千夜)は深見さんだから生まれたキャラクターです。深見さんの変化球がおもしろいから、こちらもさらに曲げて返す。
深見:僕らのシナリオ作業を見て、もっとおもしろくしてやろうと冲方さんが後半のシリーズ構成をさらに書き換えるんです。
冲方:ここぞとばかりにふたりが変化球を投げてくるので。良いリズムで脚本作業ができたと思います。時間はかかったけれど。
深見:冲方さんがおつくりになったシリーズ構成やプロットを読んだときはびっくりしたんです。どこを切っても新しい『PSYCHO-PASS サイコパス』なんです。ビフロストの登場、インスペクターたちの設定。全員がちょっとずつ事件に加担していて、誰も犯罪者と自覚していない仕掛け……。おもしろいものになっていると思います。
――吉上さんは『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰』で脚本に初参加、そして今回TVシリーズの脚本に初参加ですね。
吉上:僕は中盤の話数を担当していたのですが、プロットの段階でみんながどんどんアイデアや要素を盛り込んでいくので、脚本がものすごい文字数になってしまって。
冲方:それは吉上さんのクセだよね。何を書いても、すごいボリュームに仕上げちゃう。
深見:吉上さんの脚本は、どちらかと言うと小説なんですよ。
冲方:わかる! 僕もアニメの脚本を書き始めたころはそうだった。
吉上:冲方さんに脚本の修正を細部の細部まで入れていただき、すごく鍛えられました。
――主人公の慎導灼、炯・ミハイル・イグナトフは、どういったキャラクターでしょうか。キャラクターの特徴や魅力を教えてください。
冲方:最初に塩谷監督、プロデュースサイドから「キャラクター総とっかえ」という話があって、その中で「監視官はバディふたり」で考えてきてほしいと依頼されて。「監視官のバディもの」で「片方が入国者で、ふたりは幼なじみ」「身長差がある」というのも最初から決まっていたと思います。そこから僕が心理担当と戦闘担当のコンビはどうだろうと考えて、メンタリスト(心理分析者)と軍事経験者のバディを提案しました。
深見:最初にホン読み(脚本打ち合わせ)に参加したら、いきなり冲方さんから「深見さんの書いた慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフを見たいから、第1話を書いてみてください」と言われたんですよ(笑)。灼は一見、ふにゃっとしているけど頭が良い。へらへらしているけど正解をすぐに見つけて、そこへ走っていく。最初は苦労しましたね。
冲方:下手をするとイヤみな奴になっちゃうんです。
深見:最初は「イヤみな奴に見えても良い」と冲方さんもおっしゃってましたよ。
冲方:しらずしらずのうちに会話をリードして、自分の有利な方向に持っていくキャラクターですからね。
吉上:人たらしなんですよね。そういう意味では一番刑事っぽいかもしれない。
冲方:犯罪者と仲良くなってべらべらしゃべらせて、そして逮捕するっていう良い刑事ですね。
――『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズに参加するおもしろさをお聞かせください。
深見:僕はもともと冲方さんの小説をがっつりと読ませていただいていて。『マルドゥック』シリーズ、『シュピーゲル』シリーズ、そして時代もの……そんな方とご一緒させていただくだけでも刺激になりますよね。頭の良くない言い方になりますが「頭が良い方だなあ」と(笑)。冲方さんと打ち合わせをすると、自分の頭もフル回転させないといけない。この打ち合わせを経たあとだと、脚本の見方が変わるような刺激的な現場だったと思います。
冲方:『PSYCHO-PASS サイコパス』の現場にいると、「クリエイターってみんな頭がおかしいんだな」と思いますね(笑)。もちろん誉め言葉なんですが、第一期を手掛けた虚淵(玄)さんも、深見さんも、吉上さんも、みんなどこか普通じゃない。だから、楽しいものができるんだなと思いますね。
吉上:僕は10代のころから、冲方さん、深見さんの作品を愛読してきて。おふたりからの影響をすごく受けているんです。自分自身にもすごく大きな成長の機会になりましたし、深見さんがおっしゃるように脚本の読み方が変わりました。日本SFエンタメの先端で活躍する作家が集まって、本当にすごいTVアニメがつくられているんだぞ、「みんな、見てくれ!」と断言できる現場でした。
冲方丁 うぶかた・とう
小説家、漫画原作者、脚本家。日本SF作家クラブ会員。『PSYCHO-PASS サイコパス 2』のシリーズ構成・脚本を担当。『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、『天地明察』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞などを受賞した。アニメ『攻殻機動隊ARISE』シリーズ構成・脚本、『HUMAN LOST 人間失格』ストーリー原案・脚本を手掛ける。
深見真 ふかみ・まこと
小説家、漫画原作者、脚本家。『PSYCHO-PASS サイコパス』のTVシリーズ第一期で脚本家としてデビュー。以来、小説家としてだけでなく多くのアニメ作品に関わる。『revisions リヴィジョンズ』ではシリーズ構成を担当。自身が漫画原作を手掛ける『魔法少女特殊戦あすか』のアニメ版も自らシリーズ構成を担当している。
吉上亮 よしがみ・りょう
小説家、脚本家。日本SF作家クラブ会員。日本推理作家協会にも所属。『パンツァークラウン フェイセズ』で作家デビュー。『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズではスピンオフ作品『PSYCHO-PASS ASYLUM』(全2巻)、シリーズの過去を描く『PSYCHO-PASS GENESIS』(全4巻)を執筆。新作として『泥の銃弾』を上梓。
あらすじ
「正義」は、新たな世界を切り開く。
魂を数値化する巨大監視ネットワーク・シビュラシステムが人々の治安を維持している近未来。シビュラシステムの導入後、日本は海外との交流を断ち、長らく事実上の鎖国状態にあった。
2120年、開国政策により変革の刻が迫ろうとしている。変わりゆく世界で、犯罪に関する数値〈犯罪係数〉を測定する銃〈ドミネーター〉を持つ刑事たちは、犯罪を犯す前の〈潜在犯〉を追う。
2012年にスタートしたオリジナルTVアニメーション作品『PSYCHO-PASS サイコパス』は、2014年にTVシリーズ第二期を放送、2015年に劇場版を公開、そして2019年に『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』として三部作が劇場公開された。
そして、TVシリーズ第三期となる本作は、ふたりの新人監視官の物語。
慎導灼と炯・ミハイル・イグナトフは、厚生省公安局の刑事となり、変わりゆく世界で真実を求めていく。はたして2人のたどり着く場所は?
世界が待ち望んでいた『PSYCHO-PASS サイコパス』の新時代が幕を開ける。