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「アレクサ」などが小声でも通じるADコンバータ。バーブラウン再び強化

日本テキサス・インスツルメンツ(TI)は18日、従来製品と比べて4倍離れた場所からでもクリアな音声がをキャプチャできるBurr-Brown(BB)ブランドのADコンバータ「TLV320ADC5140」を発表した。主にAlexaやGoogleアシスタントなどの音声アシスタントを備えるスマートスピーカーやサウンドバー、テレビなどへの採用を見込んでおり、1,000個受注時の単価は2.99ドル。

BBブランドを冠したADコンバータの最上位チップ。「このレベルの性能においては業界最小(4mm×4mm)となるクワッドチャンネル対応のオーディオADC」を謳う。

最大の特徴は、優れた音声キャプチャ性能。

同社オーディオ製品マーケティング・エンジニアのアビ・ムッピリ氏は「これまでは、限られたマイクの数と信号処理能力の制限から、騒音の大きい環境の中で音声コマンドをキャプチャ・認識することが難しかったが、同チップを用いることで騒音の大きい環境化でも遠くから、そして小声でも音声のキャプチャが可能になる。ユーザーは、大声で何度も音声コマンドを言わなくて済む」と同チップのメリットを話す。

限られたマイク数と信号処理性能の中で、音声コマンドを正確に、クリアにキャプチャすることが課題という

120dBダイナミック・レンジ・エンハンサ(DRE)技術を内蔵することで、小音量のオーディオ信号を増幅しながら、スピーカー出力のすぐ近くでも歪みの少ない録音を維持。ADコンバータとして初めて、ダイナミック・レンジが106dBを超える高性能マイクもサポートした。

「ユーザーが発した音声コマンドを増幅しつつ、不必要な外部の騒音やSPから発するサウンドをアルゴリズムのフィルタで除去することで、高性能なキャプチャが可能になった。130dBのスピーカー音量下で話しても、歪みの少ない録音ができる。キャプチャはマイクの性能に左右されることにはなるが、最も高音質なマイクを組み合わせた場合、従来の4倍・10m以上遠く離れた場所からでも音声をクリアにキャプチャできる」(同)と説明。

さらに聞き取れる音量については「マイクや設置環境にも左右されるが、40dB程度の騒音がある室内環境の場合、15dB程度の小声をキャプチャできる性能があることを確認済み」という。

最大で4チャンネルのアナログマイク、もしくは8チャンネルのデジタルマイクに対応。アナログ・デジタルマイクの混在も可能で「例えば、待機中はデジタルマイク、起動後はアナログマイクに遷移させるなどすれば、性能と消費電力の点で互いの強みを活かせる。コンバータの認識性能向上により、搭載マイク数を減らすことができ、コスト削減にも貢献できるはず」という。

マイクアレイの不整合を均等化するゲインと位相キャリブレーションのほか、プログラム可能なゲイン・アンプ、ハイパス・フィルタ、チャネル・ミキシング、リニア・フェーズ、超低レイテンシのデシメーション・フィルタなどの機能を用意。チャネルあたり9.5mW(48kHz時)の省エネルギー性能も強みとする。

写真右が評価モジュール(199ドル)

BBブランド再強化。今後数年間の間で高音質製品を投入予定

会見でムッピリ氏は「現在のエレクトロニクス製品には、これまで以上に“高音質・高性能”への需要が高まっている。TI買収以降、BBブランドの訴求・展開が弱くなっていた面があったかもしれないが、今回の新チップには、最新のプロセス技術導入に加え、BBが培ってきたオーディオの哲学や質の高いエンジニア陣を起用している。今後数年間の間に、主にスマート製品と車載市場をターゲットとしたBBの高音質製品を投入する予定」と述べ、BBの再ブランディングを強化する計画を示唆した。

オーディオ製品マーケティング・エンジニアのアビ・ムッピリ氏