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デノン110周年記念アンプ、Quad-DACやSX1 LIMITED技術投入で33万円
2020年9月8日 16:00
ディーアンドエムホールディングスは、デノンブランドの創立110周年記念モデルとして、プリメインアンプ「PMA-A110」を10月上旬に発売する。価格は330,000円。USB-DAC機能も搭載。サウンドマネージャー・山内慎一氏が「究極のデノンサウンド」が味わえる次世代フラッグシップとして作り上げたプリメイン「PMA-SX1 LIMITED」の技術を多く投入している。カラーはグラファイト・シルバー。
1993年に発売された超弩級モノラルパワーアンプ「POA-S1」のために開発されて以来、改良を重ね、デノンのHi-Fiアンプに投入されてきた大電流素子UHC-MOSによるシングルプッシュプル回路。 そして1996年の発売以来、人気の「PMA-2000シリーズ」から現行の「PMA-2500NE」に至るまで8世代に渡って磨かれたアンプ設計技術。それらを融合させたという110周年記念モデル。
デノンのサウンドフィロソフィーである「Vivid & Spacious」を具現化したリファレンスモデル「SX1 LIMITED」からも数多くのカスタムパーツや高音質パーツを受け継ぎ、サウンドマネージャーによる徹底したサウンドチューニングも施している。
増幅部には、出力段には微小領域から大電流領域までのリニアリティに優れ、大電流を流すことができるUHC-MOS(Ultra High Current MOS)FETをシングルプッシュプルで用いるシンプルな回路を採用。多数の素子を並列駆動して大電流を得る手法において問題となる素子の性能のバラツキによる音の濁りを解決し、楽音の繊細な表情までを描ききる表現力を実現するために、1ペアという最小単位の素子による増幅にこだわっている。
PMA-A110では、従来の差動3段アンプと比較し、発振に対する安定性に優れる差動2段アンプ回路を採用。UHC-MOSの大電流出力と安定性の高い回路構成により、様々なスピーカーを正確に、そして力強く駆動する。
ベースモデルとなるPMA-2500NEでは、ハイゲインアンプによる一段増幅を採用していたが、PMA-A110は新たに可変ゲイン型プリアンプとパワーアンプによる二段構成を採用。
音量に合わせてプリアンプのゲインを増減させることで、一般的に使用される音量の範囲内ではプリアンプでの増幅を行なわず、パワーアンプのみで増幅することにより、ノイズレベルの劇的な改善を実現。限りなく繊細で透明感の高い空間表現力を獲得している。
ボリュームは電子ボリューム。ノブを回す感触はそのままにボリュームの調整を電子化しており、センサーによりノブの回転角を検出。その情報を元に高精度な電子ボリュームで音量をコントロールする。左右バランスやトーンコントロールにも同様の構成を採用。これによりフロントパネル上のノブとプリアンプ基板を行き来していた信号ラインを短縮することが可能となり、「理想的なミニマムシグナルパスを実現した」という。
電源部には、ノイズの原因である漏洩磁束の影響を打ち消すために、2つのトランスを対向配置するLC(リーケージ・キャンセリング)マウント方式を採用。整流回路には低損失、低ノイズなショットキーバリアダイオードを採用。ブロックコンデンサーにはPMA-A110専用の大容量カスタムコンデンサーを搭載し、十分かつクリーンな電流供給を実現している。
シンプル&ストレートな回路構成を生かし切るために、ダイオードユニットとブロックコンデンサーの接続部を最短化し、パワーアンプへの電源供給ラインを極限まで短くした。電源ラインには極太のOFC線を用いて低インピーダンス化を図っている。
MM型とMC型の両方に対応したフォノイコライザーを搭載。PMA-SX1 LIMITEDと同様に、二段構成のCR型を採用しており、周波数によって音色が変化してしまうNF型フォノイコライザーに対して、全帯域で均一な音色、繊細で素直なサウンドを実現した。
USB-DAC機能も搭載。DSDは11.2MHz、PCMは384kHz/32bitまでに対応する。DSDの伝送方式は、ASIOドライバーによるネイティブ再生とDoP(DSD over PCM Frames)に対応。PC側のジッターを多く含んだクロックを使用せず、PMA-A110の超低ジッタークロック発振器によって生成されるマスタークロックで制御を行なうアシンクロナスモードも利用可能。192kHz/24bit PCMに対応した光デジタル入力を3系統、同軸デジタル入力を1系統装備している。
USB接続されたPCから流入する高周波ノイズを遮断するため、USB-DAC回路と周辺の回路を電気的に絶縁する高速デジタルアイソレーター回路を搭載。同時にグラウンドも独立させることで、ノイズ対策を徹底している。電源回路も回路ごとに独立させており、電源ラインを介した干渉も防止。デジタル入力回路を1.6mm厚の鋼板3枚によるトランスベースの下に配置することで、デジタル入力回路からの不要輻射によるアナログオーディオ回路への悪影響を排除している。
デノンの最新アナログ波形再生技術「Ultra AL32 Processing」も搭載。PCMデジタル入力信号に対して、前世代の2倍となる1.536MHzへのアップサンプリングと、32bitへのビット拡張処理を行なうもので、独自のビット拡張&データ補間アルゴリズムにより前後データの前後のデータの離散値からあるべき点を導き出し、本来のアナログ波形を再現する理想的な補間処理を行なう。デジタル録音時に失われたデータを高い精度で復元することで、歪みのない繊細な描写、正確な音の定位、豊かな低域など原音に忠実な再生を実現したとする。
DACには、より力強いサウンドと、より良い空間表現を実現するために、DCD-A110と同様にQuad-DAC構成を採用。DCD-SX1 LIMITEDにも搭載されているステレオDAC「PCM1795」を左右チャンネルにそれぞれ2基(4ch)ずつ使用する。
Ultra AL32 Processingによりアップサンプリングされた1.536MHzの信号を、768kHzに分割。MONOモードで動作する2基(4ch)のDACに入力。片チャンネルあたり4chのDACを用いる並列構成で、出力電流は4倍となり、SN比の向上とよりエネルギッシュなサウンドを実現したとする。
DACに供給するクロックの精度を最優先するために、DACの近傍にクロック発振器を配置。DACをマスター、周辺回路をスレーブとしてクロック供給を行なうことでD/A変換の精度を高めている。
PMA-A110は、2つの超低ジッタークロック発振器(44.1kHz系/48kHz系)を搭載。ソースのサンプリング周波数に応じて切り替えることでジッターを徹底的に抑制した。
音の純度を高めるために、2種類のアナログモードを搭載。アナログモード1に設定すると、デジタルオーディオ回路がオフになり、繊細なアナログ入力信号への干渉を防ぐことができる。
アナログモード2に設定中は、ディスプレイ表示も消灯。PMA-A110は純粋なアナログアンプとして動作する。なお、アナログモード中はUSB-B、同軸デジタル、光デジタル入力は無効となる。
光・同軸デジタル入力は、テレビなどの外部ソースからの入力信号を検出すると自動的に電源が入る自動再生機能を搭載。4系統の入力から1系統を選択、または機能をオフにすることも可能。
理想的なサウンドに仕上げるために、音質担当エンジニアとサウンドマネージャーが試作と試聴を繰り返し、多くの候補の中から厳選した高音質パーツを採用。PMA-SX1 LIMITEDの開発過程においてデノン専用にチューニングされたカスタムコンデンサーなど、多くのカスタムパーツも投入した。
SX1 LIMITEDの流れを汲むアルミ製トップカバーとフットも採用。パーツ単体としての性能だけではなくPMA-A110とのマッチングを慎重に吟味し、試聴を繰り返して素材や形状、仕上げを決定したという。
スピーカーターミナルには経年劣化を防ぐ金メッキを施し、大型のYラグやバナナプラグにも対応する。
外部プリアンプを接続してパワーアンプとして使用するための「EXT.PRE」入力端子(固定ゲイン入力)も装備。AVアンプのプリ出力を接続し、フロントスピーカーをホームシアターシステムと共有することもできる。
CD/Phono入力は、真鍮削り出し金メッキ入力端子を採用する。入力端子は、アナログアンバランス×3、Phono入力×1、EXT. PRE×1、USB-B×1、同軸デジタル×1、光デジタル×3を搭載。出力は、アンバランス(RECORDER)×1、ヘッドフォン×1。その他にIRコントロール入出力も備えている。
定格出力は80W×2ch(8Ω、20Hz~20kHz、THD0.07%)、160W×2ch(4Ω、1kHz、THD0.7%)。スピーカー負荷は4~16Ωに対応する。外形寸法は434×450×182mm(幅×奥行き×高さ)。重量は25kg。消費電力は400W、待機電力0.2W。