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デノン“内部にケーブルがほとんど無い”新世代プリメインアンプ「PMA-3000NE」

PMA-3000NE

デノンは、新時代の最上位プリメインアンプとして「PMA-3000NE」を9月13日に発売する。価格は528,000円で、カラーはプレミアムシルバー。USB DAC機能も搭載する。既存のPMA-SX11やPMA-A110は今年の12月で生産完了となるため、その後はPMA-3000NEが最上位プリメインアンプとしてラインナップされる。

デノンがこだわるUHC-MOS(Ultra High Current MOS)FET」をシングルプッシュプルで採用したシンプルなアンプ回路が特徴。PMA-3000NEではそれをさらに進化させている。

UHC-MOS FETは、デノンの研究部門がHi-Fiアンプの理想形を求める中でたどり着いたもの。一般的に、大電流を取り出すためには、多くの半導体を用いるのが通例だが、多くの半導体を使うと、素子ごとにバラツキが存在するため、それが音に悪影響を生むという問題がある。

そこでデノンの研究部門は「少ない半導体で大電流を取り出せる半導体」を探したが、高SN比で低歪なものはオーディオ用半導体からは見つけられなかった。それでも諦めずに探し続けたところ、製鉄工場などで使われる産業用半導体の中に、大電流が取り出せ、電気抵抗も低く、高SN比なMOS-FETを発見。それをベースとして改良を続けているのがUHC-MOS FETを採用したアンプとなる。

銅の板を介してヒートシンクに接続されているのがUHC-MOS FET

PMA-3000NEでも1ペアという最小単位の素子による増幅にこだわりつつ、さらにシンプル化を推し進め、差動1段アンプ回路を採用。110周年記念モデル・PMA-A110は差動2段アンプだったが、それと比べても、発振に対する安定性に優れ、特性の異なる様々なスピーカーをより正確に駆動できるのが特徴。設計の難易度は高くなるが、それを技術でカバーした。

究極のシンプルを求め、差動1段アンプ回路を採用

ワイヤーがほとんど見えない内部

発表会場には、PMA-A110の天板を外したものと、PMA-3000NEの内部が見えるものが展示されていたが、見比べるとすぐにわかる違いとして、ワイヤーの少なさがある。PMA-A110は、基板と基板の接続にワイヤーを使っている部分も多く、基板の上をワイヤーが通っている部分もあるが、ワイヤーにはノイズを拾うアンテナにもなってしまうという弱点がある。

PMA-3000NEでは、多層基板を使うことでワイヤーを極力削減。基板と基板の結合もダイレクトに行なっているほか、A110では2つの基板にまたがっていたものを、1つの基板に集約するといった工夫をしている。

PMA-A110の内部。基板などを接続するケーブルが見える
PMA-3000NEの内部。中央の電源まわりにケーブルは見えるものの、それ以外はほとんどケーブルが見えない
メイン基板や電源部分を取り出したところ。基板同士が接続されていたり、バスバーで接続されている

ワイヤーの削減に加え、パワーアンプ基板の銅箔の膜を厚くする事でインピーダンスを下げており、ノイズとして流れる信号が削減され、SN比も改善。PMA-A110も、通常の35μmから70μmに膜の厚さを2倍にしていたが、PMA-3000NEはパワーアンプ基板からスピーカー出力端子への接続に、さらに2倍となる140μmの銅箔および銅製のバスバーを採用。低インピーダンス化を徹底した。

裏側にスピーカーターミナルがあるが、そこまでケーブルではなく、銅製のバスバーで接続されているのがわかる

アンプの構成としては、PMA-A110と同様に可変ゲイン型プリアンプとパワーアンプによる二段構成を採用。音量に合わせてプリアンプのゲインを増減させることにより、一般的に使用される音量の範囲内ではプリアンプでの増幅を行なわず、パワーアンプのみで増幅することで、ノイズレベルを劇的に改善。

アナログボリュームのノブを操作する感触を維持しながら、音量の調整を電子化。センサーによりノブの回転角を検出し、その情報を元に高精度な電子制御ボリュームで音量をコントロール。アナログボリュームで問題になる小音量時の左右の音量差やクロストーク、経年劣化による音質への悪影響を解決している。

また、左右バランスやトーンコントロールにも同様の構成を採用。これによりフロントパネル背面のボリューム回路とプリアンプ基板を行き来していた信号ラインの短縮も可能になり、ミニマムシグナルパスを徹底している。

ボリュームなどを搭載した基板で、スタンバイ用の電源部も搭載。この基板はフロントに配置。フロントパネル背面のボリューム回路とプリアンプ基板を行き来していた信号ラインを短縮している

電源部も見直し。専用のヘッドフォンアンプも新たに搭載

PMA-A110と同じ大容量かつ高品位なEIコアトランスを採用。ノイズの原因である漏洩磁束の影響を打ち消すために、2つのトランスを対向配置するLC(リーケージ・キャンセリング)マウント方式を採用。

整流回路には低損失、低ノイズなショットキーバリアダイオードを採用。従来の1系統から2系統のパラレル構成に強化して抵抗を低く抑え、発熱が少なくなり、より安定した電源供給を可能にしている。

ブロックコンデンサーにはPMA-3000NE専用に新規開発された大容量カスタムコンデンサーを搭載し、クリーンな電流供給を実現。シンプルでストレートな回路構成を生かすために、ダイオードユニットとブロックコンデンサーの接続部は銅製のバスバーを用いて最短化。パワーアンプ回路への電源供給ラインには、片面一層70μmから両面二層140μmに強化された基板上の銅箔を用いて低インピーダンス化を図っている。

デジタル回路用とスタンバイ用の電源回路は、プリアンプおよびパワーアンプ用電源回路から独立させ、相互干渉を排除。PMA-A110の際は、出力電圧に対して用途用途で分けており、デジタル用の電源とプリアンプ用の電源を同じ巻線から取っていたが、PMA-3000NEでは、トランスの巻線からどう取るかを再検討。デジタル電源用の巻線、アナログ電源用の巻線という感じに、専用の電源を使うように設計した。

筐体の後部からフロントパネル背面に移設し、回路間および基板間の接続にワイヤーを用いない設計にして、ノイズの輻射、飛び込みを抑制。ワイヤーの引き回しのわずかな差異から生じる音質の個体差も排除した。

MM/MCカートリッジ両方に対応するフォノイコライザーを搭載。フォノイコライザーは高いゲインを持ち、パターン上のループによる音質への悪影響を受けやすいため、回路のシンプル・ストレート化を徹底することで大幅に音質を向上が可能。PMA-3000NEでは、プリアンプ基板から独立した基板にレイアウトして信号ループを最小化することで、漏洩磁束の影響を低減してSN比を向上させた。

MM/MCの切り替えはリレーで行なうため、基板上の余分な信号ラインの引き回しを必要とせず、繊細なアナログ信号をより純粋に増幅できる。

右の基板の右下にあるのがフォノイコライザー部分

ヘッドフォン専用アンプも搭載。一般的なアンプでは、スピーカー出力から分岐させてレベルを下げた信号をヘッドフォン出力に使っているが、PMA-3000NEはプリアンプ基板上に専用のヘッドフォンアンプを搭載。これによりフロントパネル上のヘッドフォン出力端子までの信号ラインを大幅に短縮し、信号の劣化やノイズの影響を大きく低減させた。

USB-DAC機能も進化

PCと直接接続できるUSB-B入力を搭載。DSDは11.2MHz、PCMは384kHz/32bitまで対応。DSDの伝送方式はASIOドライバーによるネイティブ再生とDoPに対応。PC側のジッターを多く含んだクロックを使わず、PMA-3000NEの超低位相雑音クロック発振器によって生成されるマスタークロックで制御するアシンクロナスモードにも対応した。

USB接続されたPCから流入する高周波ノイズを遮断するために、USB-DAC回路と周辺の回路を電気的に絶縁する高速デジタルアイソレーター回路を搭載。同時にグラウンドも独立させることで、ノイズ対策を徹底。電源回路も回路ごとに独立させ、電源ラインを介した干渉も防止している。

さらに、デジタル入力回路を1.6mm厚の鋼板3枚によるトランスベースの下に配置し、デジタル入力回路からの不要輻射によるアナログオーディオ回路への悪影響を排除した。

USB入力に加え、192kHz/24bit PCMに対応した光デジタル入力を3系統、同軸デジタル入力を1系統備える。光・同軸デジタル入力は、テレビなどの外部ソースからの入力信号を検出すると自動的に電源が入る自動再生機能を搭載する。

最新アナログ波形再生技術「Ultra AL32 Processing」も搭載。PCMデジタル入力信号に対して、前世代の2倍となる1.536MHzへのアップサンプリングと32bitへのビット拡張処理を行ない、SN比を改善。独自のビット拡張・データ補間アルゴリズムにより前後データの前後のデータの離散値からあるべき点を導き出し、本来のアナログ波形を再現する理想的な補間処理を行なうという。

DAC部分は、PMA-A110と同様にQuad-DAC構成を採用。ESSのES9018K2Mを左右チャンネルにそれぞれ2基ずつ搭載。Ultra AL32 Processingによりアップサンプリングされた1.536MHzの信号を768kHzに分割し、MONOモードで動作する2基のDACに入力。片チャンネルあたり4chのDACを用いる並列構成により出力電流は4倍となり、SN比の向上と、よりエネルギッシュなサウンドを実現した。

ES9018K2Mを左右チャンネルにそれぞれ2基ずつ搭載

さらに、PMA-A110の4層基板に対し、6層基板にすることで、ショートシグナルパス化も実現。6層中2層をグラウンド層とすることで、高周波ノイズの輻射と飛び込みを抑制。DAC以降のフィルター回路も単体のプレーヤーに匹敵するパーツや回路構成を投入している。

DACに供給するクロックの精度を最優先するために、DACの近傍にクロック発振器を配置。DACをマスター、周辺回路をスレーブとしてクロック供給を行なうことでD/A変換の精度を高めている。

3つの超低ジッタークロック発振器(PCM 44.1kHz系/48kHz系+DSD)を搭載。ソースのサンプリング周波数に応じて切り替えることでジッターを徹底的に抑制した。PMA-A110では採用できなかった、「DCD-A110」に搭載されている低ジッターのクロックバッファーも採用することで、より精度の高いクロックをDACのICに供給している。

2種類のアナログモードを備え、アナログモード1に設定すると、デジタルオーディオ回路がオフになり、繊細なアナログ入力信号への干渉を防止。アナログモード2に設定中はディスプレイ表示も消灯し、PMA-3000NEは純粋なアナログアンプとして動作する。

専用に開発・チューニングされたカスタムコンデンサーなどを多数投入

音質担当エンジニアとサウンドマスターが試作と試聴を繰り返し、多くの候補の中から厳選した高音質パーツを多数採用。PMA-SX1 LIMITED EDITIONやPMA-A110の開発過程においてデノン専用に開発・チューニングされたカスタムコンデンサーなど多くのカスタムパーツも投入した。

「PMA-A110と比較してもデノン専用のカスタムコンデンサーが占める割合が大幅に増加しており、サウンドマスターの理想とするVivid & Spaciousなサウンドを実現に大きな効果を発揮している」という。

脚部には振動を抑制するリブ入り高密度フットを採用。PMA-A110と同じ高剛性なアルミ製フットとなっており、防振効果を高めるとともに、入念な音質チューニングも施した。

スピーカー端子は、AVアンプのフラッグシップモデルである「AVC-A1H」用に開発された高品位な端子を採用。経年劣化を防ぐ金メッキが施されており、長期にわたり高い信頼性を維持。Yラグやバナナプラグにも対応する。また、2系統のスピーカー端子を装備しているためバイワイヤリング接続が可能。

アナログ音声入出力端子には、高剛性な真鍮削り出しタイプを採用。こちらも金メッキ仕上げ。外部プリアンプ入力端子も備えている。

定格出力は80W + 80W(8Ω、20Hz~20kHz、THD 0.07%)。アナログ音声入力端子はアンバランス×3、PHONO×1、EXT. PRE×1。アナログ音声出力端子はアンバランス(RECORDER)×1、ヘッドフォン出力×1。デジタル音声入力端子はUSB-B×1、同軸デジタル×1、光デジタル×3。IRコントロール入出力も備えている。

外形寸法は434×443×182mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は24.6kg。消費電力は400W、待機時消費電力は0.2W。リモコンも付属する。

東京インターナショナルオーディオショウに出展

7月26日~28日の3日間、東京国際フォーラムで開催される「2024東京インターナショナルオーディオショウ」に出展。PMA-3000NEの展示、製品紹介および実際にサウンドが体感できるデモンストレーションも予定されている。