ニュース

Acoustune、12,980円のモニターイヤフォン「RS ONE」。音質レビュー付き

RS ONE Teal

アユートは、Acoustuneブランドの新ライン「Monitor(モニター)」シリーズ第1弾として、ステージモニターイヤフォン「RS ONE(アールエス・ワン)」を12月10日に発売する。価格は12,980円。カラーはGraphite、Teal。

Hi-Fiイヤフォン「HS」シリーズで培った音響技術や、3Dカスタムフィットシェル「ST1000」や「ST300」で培った知見を活用し、ステージモニターとして重要な堅牢性とモニタリング性を重視して設計したという。

左からRS ONE Teal、Graphite

Acoustuneは独自のダイナミックドライバーとして、人工皮膚や手術縫合糸などに使われるポリマーバイオマテリアル「ミリンクス」を振動板素材に採用しているのが特徴。ミリンクスを薄膜化し、ドライバー構造に最適化した振動板は、軽量ながら高い強度と柔軟性を持つ。ステージモニターとして設計されたRS ONEでは、このミリンクスドライバーのノウハウを活かし、RS ONE用に新たに「ミリンクス EL ドライバー」を開発した。

通常のミリンクスドライバーに比べ、より正確なモニタリングを実現する為のドライバーとして作られており、医療用に使用されながらも軽量かつ剛性が高く、内部損失も大きい、超高機能樹脂を採用。内部損失が大きいことで、余計な付帯音を減らし、モニタリング性能を高めているという。

このドライバーを活かすために、振動板の背面のバックキャビティを大きく確保。振動板からグリルまでの距離を置くことで、瞬間的に最大250mWの信号が入力された後でも正常に使用できる高耐入力性を実現した。これにより、突発的にステージ上でハウリングのような大きな入力があった場合でも壊れにくい堅牢性を獲得。振動板のストローク幅が大きいため、「まるでラウドスピーカーさながらのライブ感がありながらも、イヤモニの正確さが共存したサウンド」を実現したとする。

筐体部品点数を可能な限り低減。市場調査によりイヤモニで壊れやすい部分を研究し、堅牢性の高いボディを実現した。ハウジングは2つのパーツで構成されており、耐衝撃性、耐候性、耐熱性に優れたポリカーボネートを使用。シンプルかつ部品単位での剛性を上げることで、過酷な環境下でも故障のリスクを大きく低減させるという。

フェイスプレート部分は、イヤモニとしてのアイデンティティを出しながら、ボディの剛性向上にも寄与。小型なボディにすることで「どなたでも幅広く使用できるハウジングデザインに仕立てた」という。

ステージモニターは主にワイヤレスイヤモニシステムと組み合わされて使用されるが、イヤモニシステムとイヤフォンのインピーダンスが合っていない場合、音量が取りにくくなる。RS ONEではトラブルを避けるため、インピーダンスマッチングを的確に行なうことでイヤモニシステムと相性問題を徹底して少なくしたという。

新規開発の「ARM011」をケーブルに採用。高純度リッツ線とケブラーワイヤーを編み込んだ線材を4芯構造で使用し、取り回し性を高めるためにPU素材の被覆を採用。これをツイストすることで、しなやかで取り回しが良いながらも癖がつきにくく、かつ断線しにくい強靭なケーブルになったという。

新規開発の「ARM011」をケーブルに採用

プラグ部はストレートタイプ。コネクターには日本ディックスが設計・生産する高音質・高信頼性を誇る新IEMコネクター「Pentaconn Ear」を採用。従来型のMMCXよりも、プラグ部分とジャック部分がより密接に接触し、伝導性能に優れ、脱着の容易性と堅牢性の両立も実現したとする。

汗対策として、ボディに対して埋め込み式となりコネクター部分に汗が入りにくい構造の「Pentaconn Ear Long-Type」を採用。他のコネクターに比べて着脱や使用による摩耗、汗による接触不良リスクを減らしている。

Acoustuneイヤフォン開発時のリファレンスとしても使用されているシリコンイヤーピース「AET07」に加え、フォームタイプならではの密閉感を得られるという「AET02」が付属する。

シリコンイヤーピース「AET07」に加え、フォームタイプならではの密閉感を得られるという「AET02」が付属

ユニットサイズは9.2mm径。周波数特性は20Hz~40kHz。感度は108dB @ 1KHz(1mW)。最大入力は30mW(定格5mW)。インピーダンスは32Ω。ケーブル長は約1.2mで、ケーブルを含めた重さは約26g。

音を聴いてみる

実物を手にしてまず驚くのは軽さだ。ダイナミック型ユニット1基で、筐体もコンパクトにまとまっており、このシンプルさが心地良い。12,980円と購入しやすい価格だが、金属のフェイスプレートを採用しており、試用したTealカラーは上品さも漂い、安っぽさは感じられない。

“ステージモニター”を謳うイヤフォンだけあり、非常にバランスの良いサウンド。低域から高域まで、どこかの帯域が不足していたり、出すぎていたりといった部分がまったくなく、非常に良く出来ている。ダイナミック型1基だけあり、ワイドレンジかつ繋がりの良い音で、自然なサウンドだ。

モニターイヤフォンというと“低域が弱めでタイト、腰高なバランスで中高域がシャープ”といったバランスを想像しがちだが、RS ONEはそれとは異なる。特に低域がしっかり出ており、タイトさと共に量感の豊かさも感じられる。

細かなサウンドまで描写する解像感は、Acoustuneの上位モデルに通じる特徴。それでいてRS ONEは、音像の線が細くなりすぎず、しっかり、クリアに描いてみせる。メリハリがあり、パワフルさ、元気の良さが感じられ、聴いていて楽しいイヤフォンだ。

中低域にパワーがあるため、空間描写は狭くなりそうなところだが、そこもキッチリ対策されており、響きが広がる空間もしっかりと広い。ヌケの良い中高域の余韻が、広がっていく様子もよく見える。

バランスが良く、情報量が多いため、モニターイヤフォンとして使えるのは間違いない。それでいて、しっかりとした低域も楽しめるため、リスニング用イヤフォンとして一般ユーザーが使うのも大いにアリだ。価格帯やハウジングの小ささを考えると、Shureの「SE215」のライバルになりそうだが、情報量の多さ、中低域の深さや迫力といった面で個人的にはRS ONEの方が好みだ。買いやすく、使いやすく、非常にコストパフォーマンスに優れた、要注目イヤフォンだ。

パッケージ
キャリングケースも付属する