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「たけし城」など“日本発の番組”に注力するAmazon Prime Video

「PRIME VIDEO PRESENTS JAPAN」

Amazonは3月30日、Prime Videoの今後の番組ラインナップや戦略を説明する「PRIME VIDEO PRESENTS JAPAN」を開催。「モダンラブ・東京」「僕の愛しい妖怪ガールフレンド」「エンジェルフライト」や「復活!風雲!たけし城(仮題)」といった、Amazonスタジオが日本主導で製作する新作を発表した。

こうしたオリジナルコンテンツへの取り組みは、今後どうなっていくのだろうか。また、それらを手掛ける日本のAmazonスタジオの方向性について、アマゾンジャパン日本オリジナルコンテンツ製作責任者の早川敬之氏に聞いた。

日本オリジナルコンテンツ製作責任者 早川敬之氏

――今回発表されたAmazonオリジナル作品は、ドラマ3本と「復活!風雲!たけし城(仮題)」の計4本でした。その一方で、日本独自のコンテンツといえば、他社でも力を入れている”アニメ”があると思います。Amazonスタジオでは、オリジナルアニメの制作をどのように考えていますか。

早川氏(以下敬称略):アニメは是非やりたいと思っています。日本主導でのプロジェクトは始まったばかりで、今回のラインナップは第1弾です。今回発表した新作ドラマ3本は、インターナショナルな部分を意識した作品となりましたが、今後は日本のクリエイターや俳優陣を集めた純日本製のような作品も登場すると考えていただければと思います。

私たちにとって大事なのは日本のお客様であって、そのお客様に面白いと思っていただけるものをどれだけ作ることができるか? が勝負だと考えています。人と会ったときに「昨日のアレ観た?」と自然に会話に挙がるような作品を作りたいですね。

「モダンラブ・東京」の発表時の様子。左から黒沢清監督、池松壮亮氏、水川あさみ氏
『モダンラブ・東京』| 特別映像

――クリエイター支援について、「ホーム・フォー・タレント(Home for talent)」というワードが出てきましたね。具体的にどのような取り組みを行なっていくのでしょう。

早川:ホーム・フォー・タレントというのは、グローバルでの戦略を表したものです。例えば、番組や映画制作において、企画段階では非常にスムーズに事が運んでも、作っていく最中で意見の相違が生じることもあります。最悪、完成する頃には「二度と口もききたくない」なんて、考えてしまう関係になることだってあるかも知れません。でも、例えそのような状況になったとしても、振り返ったとき「Amazonと作ってよかった」と思ってもらいたいと考えています。

Amazonの強みは、何事も長期で取り組めるにことにあると思います。そもそもAmazonの創業は1994年にまで遡りますが、純利益が出たのは相当経ってからのことです。日本のAmazonスタジオでオリジナル作品を作ることも、これから20年、30年かけて作っていくという覚悟を持っています。

もちろん作品の出来映えや結果を見て一喜一憂することはありますが、作ることに情熱を持っている人達に「Amazonとやってよかったな」と思ってもらうようにやる。そうすることで、10年、20年、30年後、自分が引退した後の次の世代でも、「Amazonと作ろう」と思っていただけるように、基礎の土台を作りたいと考えています。

――長期の撮影ではしっかり休暇を作るといったお話もありましたが、そういったフォローもAmazonが行なっていくのですか?

早川:クリエイターや俳優さんが「Amazonとやって良かったな」「一緒にまたやりたいな」と思うためには、全力で取り組める体勢を作る必要があります。

野球に例えると、1人だけが全力でバットを振り抜いて一塁打しか打てなかったとしても、その場の全員が同じように本気で振り抜ける状態を作れば、もっと良い結果になるかもしれません。そのためには、ちゃんと休むことが必要です。無理のあるスケジュールでロケをしたりしない、みんなが健康で安心して働けることが大事だと考えています。

――例えば、Netflixの場合は企画段階から、既存のスタジオなどに対してプロデューサーのように関わったり、企画を練る場所を提供するなどのサポートをしています。Amazonスタジオと組んだときのクリエイター側のメリットはどこにあるとお考えですか。

早川:グローバルなチームなので、映像表現をしたいと思う方に対して、様々なテクノロジーを提供できます。チームで提供するので、「こういう映像を作りたい」という希望を持つクリエイターや監督などに対して、どのように再現性のある方法で実現できるかを提供できるノウハウを我々は持っています。

例えば、“偶然撮れた最高のワンシーン”をもう一度作りたいという相談があれば、Amazonスタジオ側から、同じようなワンシーンを再現するため方法をスタッフやリソース、マシンなどと共に提供できます。

基本的には、1つの企画が終わった際に得た「あの場面はこのような映像を撮っておけばよかった」といったノウハウというものは、次に始まった企画では全然関係のないものになってしまい、概ね活かされないものです。ですがAmazonのチームでは、ある程度のグローバルでの知見を活かして、「このように作ればこういったリソースが提供できる」という提案ができます。構想を持っているクリエイターの方は、楽しみながら制作できると思います。

――企画を持ち込めば、グローバルな知見を活かした、クオリティの高い映像製作をサポートしてくれるということですね。

日本でのAmazonオリジナル作品というと、リアリティショーやバラエティ番組の印象が強いのですが、2015年の日本サービス開始から約7年が経過した中で、日本ユーザーの視聴傾向や、求められているジャンルに変化はありますか。また、今後ターゲットとしたい視聴者層などはありますか。

早川:一言で言うと「多様」ですね。お客様の層の厚さ、数の多さに加え、皆さんが自分の観たい作品というものを持っていて、それがバラバラという状況です。その分スタジオとしては作る機会がたくさんありますから、本当にありがたいです。

お客様にどれだけ喜んで貰えるかと言う点で、その希望や要望の数だけスタジオとしても是非作っていきたいと思っています。故に20年、30年掛かりますし、次の世代にも続いていきます。日本でコンテンツ製作することに対して、Amazonは並々ならぬ覚悟を持っています。

――配信サービスは、若年層やスマホ利用者の視聴が多く、とくに新作はそういった層が好む作品が手厚くなる傾向にありますが、Amazonは年齢や性別関係なく幅広いユーザー層がいることが強みというわけですね。

現在の日本のAmazonスタジオの規模は20人程度とのことでしたが、チームとしては今後拡大していくのでしょうか。

早川:拡大します。それだけは間違いありません。まず作るものが増えますから、仲間も増えていくと思います。日本のAmazonスタジオはまさに始まったばかりの段階ですので、多様なスキルを持った人達を引き入れながら、様々なオリジナル作品の製作に取りかかっていきます。