ニュース
ソニー、大画面化で没入感がアップした空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」
2023年5月12日 13:03
ソニーは、裸眼での立体視が可能な空間再現ディスプレイの新モデルとして、サイズを従来の15.6インチから27インチに大画面化しつつ、立体空間画質も向上させた「ELF-SR2」を6月12日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は55万円前後。
ディスプレイ上部に高速ビジョンセンサーを搭載。画面を見ている人の顔(両目)の位置を感知し、その情報をもとにリアルタイムレンダリングアルゴリズムによって、立体視に最適な映像をリアルタイム生成して表示する。
ディスプレイの解像度は4K/3,840×2,160ドット。パネル表面に「マイクロオプティカルレンズ」が高精度で配置。このレンズが映像を左右の目に分割して届けることで、3Dメガネが不要な裸眼立体視を実現している。
初代機ELF-SR1は15.6インチで、2020年に発売。日産自動車で車のデザイン確認や、医療分野において手術での活用、科学館や展示会などでの展示、被写体の周囲に複数のカメラを配置して撮影するボリュメトリックキャプチャのデータ確認用ディスプレイなどに活用されるなど、様々な使われ方をしているという。
一方で、サイズが15.6インチと小さめである事から、空間再現ディスプレイ向けのアプリ開発者が購入し、アプリ開発に活用する側面が強かった。新機種のSR2は、27インチに大型化した事で、近くで視聴すると視野角をほぼカバーでき、高い立体没入感が得られるほか、工業製品などは原寸表示が可能になる。これにより、アプリ開発者だけでなく、例えば、ゲームのキャラクターデータ作成者や、フィギュアの原型など、クリエイターが創作する際に便利なディスプレイとしての活用を見込んでいる。
ELF-SR2では大型化した事に伴い、表示の精細感が低下しないように、新たに超解像エンジンを搭載。3D時の副作用を回避するため、エッジや高帯域信号を検出して最適に補正する「超解像ゲイン制御」により、大画面になっても解像感を損なわず立体映像を楽しめるという。
さらに、2Kコンテンツを表示する際に4Kへのアップコンバートも可能。これによりGPU負荷を低減でき、スペックが高くないPCでも運用できるようにした。
ほかにも、大画面化により目立ちやすくなる色モアレを補正する処理や、それぞれの眼向けの信号が混じって見えてしまうクロストーク現象を補正するため、左右の視線の角度差を考慮したリアルタイム・クロストーク補正処理、パネルの局所的温度変化を補正し、クロストークの原因を低減する処理なども加えている。
また、テレビのブラビアで培った技術も投入。10bit処理でAdobe RGB約100%のより正確な色再現ができるほか、処理プロセスを見直し再設計した色調整機能も搭載。ELF-SR1ではできなかった、個別画質調整ができ、PCアプリで画質調整が可能。
高速ビジョンセンサーも第2世代となり、視線認識・トラッキング性能が向上。低照度環境でも高い視線認識率を実現しているほか、マスクを着用した人物の認識にも対応。様々な角度から確認できるように、広角認識設計にもなっている。また、従来PC側で処理していた顔認識を本体側にオフロードすることで、PCのCPU負荷を大幅に軽減した。
こうした工夫により、高いスペックのタワーPCだけでなく、ゲーミングノートPCクラスでも運用できるようになったという。
さらに、着脱可能なスタンドを採用。VESAマウントにも対応する事で、VESAスタンドやアームに取り付けて使えるようになった。
付属のスタンドの場合は、45度の傾斜スタイルとなり、左右にリアルとバーチャルの区切りをつける独自のサイドパネルを取り付け可能。パネルは磁石で固定されているため、簡単に取り外せる。さらに下部にもボトムスタンドを供えている。箱庭的空間表現を演出するため。
入力端子は従来のHDMIに加え、新たにDisplayPort入力も装備。USB-CはDisplay Alt modeに対応し、対応するノートPCからケーブル1本で空間再現ディスプレイと接続できる。なお、スピーカーはモノラルとなる(SR1はステレオ&ウーファーの2.1ch構成)。
外形寸法は419×622×51mm(縦×横×厚さ)。パッケージは発泡スチロール素材を使わない環境に配慮したものになった。
業務に使えるアプリ群も充実
空間再現ディスプレイのサイトに、各業界に役立つ商用アプリを紹介するポータルサイト「アプリセレクト」を用意。ディスプレイを購入して、すぐ使えるアプリを見つけられるという。
無償でダウンロードできる、ソニーが開発した「空間再現ディスプレイプレーヤー」では、利用頻度の高い3DCGフォーマットのデータを簡単に表示・確認可能。さらに、年内にゲームキャラクタ制作や映画制作、モデラーなど3DCG制作ツールとして広く使われているAutodeskのMayaから、直接空間再現ディスプレイ上で立体視を可能にするプラグインもリリース予定。
ソニー以外のパートナーが手掛けたアプリも増加。リアルメタバースプラットフォームのSTYLYが空間再現ディスプレイにも対応しているほか、神奈川歯科大学XR研究室の汎用3Dモデルビューワー「SR view」、点群データを表示するエリジオンの「Inifipoints」が存在するほか、年内にはシュルード設計が「Clear points」を年内に対応予定。
医療分野では、CT/MRIで撮影したデータフォーマットであるDICOMデータを立体視できるアプリも登場。サイアメントの「Viewtify」、神奈川歯科大学XR研究室「DSR viewer」、Singular Health Groupの「3Dicom MD」がある。医療教育用には帝京大学冲永総合研究所Innovation Labの「Cancer Reality」、神奈川歯科大学XR研究室の「SR anatomy」、神奈川歯科大学XR研究室「SR Movie player」。