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デノン、医療技術を応用した測定で“音を最適化”するTWS「PerL」シリーズ

PerL Pro(AH-C15PL)

デノンは、完全ワイヤレスの新製品として、医療技術を応用した測定技術でユーザーの聴こえ方を調べ、それをデノンが理想とするサウンドに補正するパーソナライズ機能を備えた2機種を7月1日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は空間オーディオやSnapdragon Soundに対応する上位機「PerL Pro(AH-C15PL)」が57,200円前後、下位の「PerL(AH-C10PL)」が33,000円前後。

PerL Pro(AH-C15PL)
※写真は試作機で、実際はロゴのカラーが異なります
PerL(AH-C10PL)
※写真は試作機で、実際はロゴのカラーが異なります

医療技術を応用した測定でサウンドをパーソナライズ化

PerL(AH-C10PL)

2機種に共通する特徴は、ユーザーの聴こえ方を測定し、その結果に基づいてサウンドを最適化するパーソナライズ化機能を備えている事。同様の機能を備えたTWSは他社からも発売されているが、デノンの新製品はその測定において、医療技術を応用しているのが大きな特徴。

デノンやマランツ、Bowers & Wilkinsといったオーディオブランドを展開している米Sound Unitedは、2022年に医療機器などを展開する米Masimo Corporationに買収されている。Masimoは、皮膚を通して動脈血酸素飽和度や脈拍数を測定するパルスオキシメーターなどを手掛ける世界的な医療技術メーカーで、今回のTWSは、親会社となるMasimoの技術「Masimo AAT」を取り入れたデノン初の製品となる。

Masimo AATは、新生児の難聴検査に用いられる医療技術。新生児は「聞こえていますか?」などの呼びかけに答えられないため、特定の周波数の音を耳に入れた時に、耳の中から戻ってくる音を、高感度のマイクで集音する事で、その周波数の音が聴こえているのか、いないのかを判断できる。

人の耳は、耳の入り口から鼓膜までの“外耳”、鼓膜付近の“中耳”、鼓膜より奥の“内耳”という3つのエリアに分けられる。一般的なTWSにおけるサウンドのパーソナライズ機能は、イヤフォンからテスト音を出し、それが聴こえたらユーザーがアプリのボタンをタップするなどの手法で測定するが、この技術の場合、耳穴の入り口から鼓膜までの“外耳”エリアの形状・特性を測定している事になる。

耳の中に音が入ると、それが鼓膜で振動に変わり、蝸牛へと送られ、その中にある毛のような細胞を揺らし、音が電気信号へと変換され、聴神経を経て脳に届く。

Masimo AATではその際に、入ってきた音が蝸牛の奥で異なる周波数の音に変化し、その微小な音が中耳を通して外耳道内に戻ってくる「耳音響放射」という現象を活用。その音を高感度のマイクで集音し、聴覚の特性を、ユーザーの感覚に頼らずに自動で解析する。そのため、測定時にユーザーがボタンを押すなどのアクションをする必要はない。

イヤーピースを外したノズル部分。ここに高感度マイクを備えている

そして、測定結果をもとに、ユーザー専用にチューニングされたプロファイルを作成。ユーザーが実際に聴いている音と、デノンが理想とするターゲットカーブのズレを補正し、理想の音へと近づける補正を行なうという。

この測定には「Denon Headphones」というアプリを使用。ユーザーのアカウントを作成すると、それにプロファイルを紐づけられる。

また、上位機のAH-C15PLでは、5バンドのイコライザーも搭載しており、自動調整されたサウンドに対して、さらに好み反映する微調整も可能になる。

AH-C15PLでは、5バンドのイコライザーも搭載

なお、今回の2モデルは、パーソナルの“P”とリスニングの“L”を遣い、「PerL」(パール)シリーズと名付けられている。

PerL Pro(AH-C15PL)の機能

PerL Pro(AH-C15PL)
※写真は試作機で、実際はロゴのカラーが異なります

上位機のPerL Proは、クアルコムのSnapdragon Soundに対応。対応機器と連携し、CDクオリティのロスレスサウンドが楽しめるaptX Losslessと、不可逆圧縮だが96kHz/24bitのハイレゾ伝送が可能なaptX Adaptive(96kHz/24bit)に対応する。

さらに、Snapdragon Soundの特徴として、高音質な通話も可能。通話時のサンプリング周波数を一般的な16kHzに対し、32kHzまで高めたaptX Voiceが使えるほか、48msの低遅延で動画やゲームも快適に楽しめるという。

PerL Pro(AH-C15PL)

ハイブリッド・アクティブノイズキャンセリング機能も備えており、その効果の強度を、周囲の環境に合わせて自動調整してくれるアダプティブ・ノイズキャンセリング機能が使用可能。

空間オーディオ技術の「Dirac Virtuo」も搭載。AVアンプなどでお馴染みのDiracが手掛けた空間オーディオ技術で、ソースが空間オーディオのファイルでなくても、変換して再生。「まるでハイエンドのスタジオモニターが整備された空間に入ったような体験ができる」という。

ユニットは10mmのダイナミック型ドライバーで、音質を追求し、超低歪3レイヤー・チタニウム振動板を採用している。さらに、イヤフォンの音声出力を6dB上げるハイゲインモードも用意。コーデックは前述のaptX Lossless/aptX Adaptive(96kHz/24bit)に加え、aptX、AAC、SBCに対応する。

2台のデバイスへ同時接続し、シームレスに切り替えられるマルチポイント接続に対応。

充電ケースはQiに対応し、ワイヤレス充電が可能。イヤフォンの駆動時間は8時間、充電ケース分は24時間。

PerL(AH-C10PL)の機能

PerL(AH-C10PL)
※写真は試作機で、実際はロゴのカラーが異なります

10mmのダイナミックドライバーを備えているのは上位モデルと同じだが、振動板は超低歪3レイヤー・チタニウム振動板ではなく、低歪振動板となる。

ハイブリッド・ノイズキャンセリング機能も備えているが、周囲の環境に自動的に合わせるアダプティブ機能は省かれている。空間オーディオ機能、マルチポイントは非対応で、充電ケースもワイヤレス充電には対応しない。

Snapdragon Sound非対応で、対応コーデックはaptX、AAC、SBC。再生時間はイヤフォン単体が6時間、充電ケース分が18時間。

充電ケースはワイヤレス充電非対応

実際にパーソナライズ化を体験

PerL Pro

PerL Proを使い、測定を体験した。なお、写真のアプリは英語版だが、製品版では日本語となる。

測定は非常に簡単で、アカウントを作成し、測定を開始すると、ユーザーが選択・装着したイヤーピースが耳穴にフィットしているかをアプリがチェックしてくれる。

それをクリアすると測定がスタートするのだが、前述のように何もしなくてよい。静かな環境で、黙って、SF風な測定音を聴いていると、測定が無事に終了。アプリの画面上に、低域のこの帯域があまり聴き取れていないなどの測定結果をグラフィカルに表示したものがあらわれる。

測定中の画面
測定結果をグラフィカルな表示で表現

この画面で、デフォルトのサウンドと、パーソナライズ化した後のサウンドを簡単に切り替えられる。実際に切り替えてみると、サウンドは激変。音のコントラストが深くなり、音楽に奥行きが感じられる。音像もよりクッキリと明瞭になり、様々な音が聴こえやすくなった。まるで自分の耳の性能がアップしたかのよう。他社も含め、パーソナライズ化機能としてはかなり“効果の効き目”が強く感じられるイヤフォンだ。