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他イヤフォンの音を再現するTWS。開発者レベルの音色カスタマイズ機能を開放
2023年7月27日 13:00
エムピートレーディングは、JPRiDEブランドの新イヤフォンとして、あえてメーカーとしてデフォルトの音色を持たせず、ユーザーがアプリから50種類以上のプリセット音色が選択でき、10バンドイコライザーで好みの音を作り込む事もできる“サウンドメイクイヤフォン”「model i ANC」を8月1日から本格販売する。Amazonで先行販売しており、価格は9,999円。
完全ワイヤレスイヤフォンに採用されているBluetoothのチップには、ワイヤレスでのデータ授受に加え、DA/AD変換機能、DSPによる信号処理能力などが盛り込まれている。メーカーのエンジニアは、ユニットや機構などのハードウェア的な音作りだけでなく、DSPを用いたソフトウェア上での音作りにも注力している。
model i ANCはこの、メーカーのエンジニアがイヤフォンを作り込む時に使う機能を、ユーザーにほぼ全て開放。プリセットを選んで音色をカスタマイズするだけでなく、ゼロから新規音色を作ることも可能。ゲイン設定やフィルターのコントロールなどもできる。
プリセット音色は50種以上を搭載し、「ユーザーにとって、プリセット設定数と同じ数のイヤフォンを所有する事と同様の恩恵をもたらす」という。プリセットをユーザーがカスタマイズする事もできる。
JPRiDEが独自に開発したサウンドメイク・エンジンによるデジタル信号処理によって実現。「アプリでワンクリックするだけで、まるで別物に変化する」としている。
なお、音色設定を書き出し・読み込みも可能なため、ユーザー間での音色設定の共有もできる。
他社イヤフォンの音色を再現!?
さらに、8月1日にはアプリのアップデートを配信予定で、この最新バージョンには売価15万円クラスのハイエンド・イヤフォン6機種の音色を再現したというプリセット音色パック「HSP(ハイエンド・シミュレート・パック) Vol.1 & 2」を搭載する。あわせて既存プリセットの音質も向上する。
この音色シミュレーターのパックは、今後も追加予定だという。
イヤフォンとしての機能も充実
アクティブノイズキャンセリング機能を備え、外音取り込みや風切音抑制も可能。BluetoothのコーデックはSBC、AACに対応。ユニットは10mmのダイナミック型ドライバーを搭載する。
再生時間は、ノイズキャンセルOFFで7.5時間。付属のケースで、約2.6回分の充電が可能。イヤフォンの充電所要時間は1.5時間。
カスタマイズしてみた
実際にアプリから、プリセットやカスタマイズを試してみた。
基本となる音色が無いイヤフォンだが、まず「クセがなく、オールジャンルで使いやすい」と説明されている「オール・ラウンド」を選択し、「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を聴いてみた。
まさに“オール・ラウンド”にふさわしい、バランスの良いサウンドで、低域から高域まで過不足なく耳に入る。10mmのダイナミック型ドライバーを搭載しているが、音色はナチュラルで分解能が高く、ボーカルの口の動きや、ベースの弦の動きなども見やすい。
オール・ラウンドをしばらく聴いた後で「僕はヘビーロックしか聞かない(Solid)」というプリセットを選ぶと、ベースのラインがグッと太くなり迫力がアップ。輪郭がソリッドになり、刺激的なサウンドになる。隣にある「僕はヘビーロックしか聞かない(Tube)」を選ぶと、基本的な音色は同じだが、(Solid)よりはメリハリが抑えられ、全体的に穏やかなサウンドになる。
「ドンシャリにしてやる」を選ぶと、音場がグッと狭くなり、低域が盛り上がり、モコッとしたサウンドに。しかし、ボーカルやピアノの高域は鋭く抜ける、文字通りドンシャリサウンドに。
「音圧とデジタルと私」を選ぶと、音場が拡大し、低域はタイトに。中高域のソリッドさがアップし、全体的にスピード感のある軽やかなサウンドに変化した。打ち込み系の細かな音やSEなどが聴き取りやすくなる。
一般的なTWSでも、ユーザーが設定できるイコライザーやプリセットが用意されている事はあり、音の変化は楽しめるが、model i ANCではプリセットを設定した後の“激変ぶり”が凄まじい。確かに何個もイヤフォンを入手したかのように、ガラッと違う音が楽しめる。
また、基本となる音色モードが存在しないため、逆に「イコライザーを使わずに聴こう」という気にならず、「どんどんプリセットやカスタマイズを使おう」という気分になる。アプリをタップすると、瞬時に音色が変化するので、変更の面倒臭さもあまりない。聴く楽曲が変わるたびに、一番自分が「美味しい」と感じるプリセットに変えるというのも面白いだろう。
また、前述のように膨大なパラメーターからカスタマイズもできる。設定できる項目が非常に多いので最初は戸惑うかもしれないが、既に存在するプリセットをベースに、自分でカスタマイズしていく事もできるので、好きなプリセットを選んでから「ここだけもう少し変えたい」という部分に手を入れて、別の名前で保存する……などを繰り返していくと、勘所がつかめるだろう。
AV Watch読者の場合、「イコライザーを搭載しているのはわかっているけど、あまり使わない」という人も多いかもしれない。しかし、model i ANCはサウンドがガラッと変わるため、使っていて非常に面白く、「最高のプリセットを作ろう」というクリエイター心も刺激される。自分がイヤフォン開発者になったような気分も味わえる、今までにないユニークなTWSだ。