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「ドルビーアトモスはいいぞ!」「ガルパン 最終章」第4話、音響監督らが魅力紹介
2023年10月14日 00:00
10月6日に劇場上映を迎えた「ガールズ&パンツァー 最終章」第4話。それに先立ち、3DCGI監督の柳野啓一郎さんと、音響監督・岩浪美和さんによるDolby Atmos版ティーチイン付き試写会が開催され、レポートが到着した。 試写会では、2人が第4話の音響やCGの作りこみについて熱く語った。
ドルビーアトモスはいいぞ!
10月3日に「竹芝メディアスタジオ」にあるIMAGICA 第2試写室にて行なわれたマスコミ向け試写会。上映されたのは、新宿バルト9やグランドシネマサンシャイン池袋など、一部劇場で採用されている立体音響技術Dolby Atmosバージョンだ。
2017年に第1話が劇場上映された「最終章」(全6話予定)の後半戦、第4話となる今回は、「冬季無限軌道杯」の準決勝が描かれる。大洗女子学園 VS 継続高校による雪原の戦いに加え、黒森峰女学園 VS 聖グロリアーナ女学院による渓谷での激しいバトルをフィーチャーした構成。
上映時間54分の大半が戦車戦に割かれ、そのハイスピード・ハイテンションのド派手なアクションが作品の大きな特徴となる。戦闘シーンでは敵・味方問わず多彩な戦車が入り乱れるパートも多いが、そこで鑑賞者の助けになっているのが、Atmosによる音響。
砲撃の位置や場所に応じて細かく音の“出どころ”が変化するほか、恐怖すら感じられる低音、耳が痛くならない高音など、音の分離と質感にもこだわられた設計となっている。
登壇した音響監督を務める岩浪さんは、Atmosの特徴をわかりやすく伝えるため、2分程度にまとめた5.1ch版、Dolby Atmos版の本編映像を続けて上映。その音響の違いを解説した。
5.1ch版は、すべての音を文字通り5.1chの中に振り分ける。一方でAtmos版は、タテ×ヨコ×高さの位置(空間)情報が紐付けられた音源を使用。これを、スクリーン裏をはじめ、サイドや後方の壁、天井に設置された劇場のスピーカー群を個別に制御することで、位置情報通りに音を再現する。
この位置情報はタテ、ヨコ、高さのそれぞれを1,000段階で設定できるため、「実質10億個のスピーカーを使っていると考えてもらって良い」と岩浪さんは説明する。
例えば、「後方から(鑑賞者の)真上を通過して前方へ移動する音」を、位置情報に沿って制作者の意図通りに正確に再現できる。イマーシブ(没入型)サウンドと言われるこのシステムが、最終章 第4話の高速戦闘では特に活きているという。
3DCGI監督の柳野さんは、CG制作を中心とした最終章 第4話の制作について紹介。
シナリオや絵コンテにも目を通しているという岩浪さんは、まず「(元の)コンテより盛っていますよね?」と、柳野さんに直球の質問をぶつける。これに対し、柳野さんは「だいぶ変わっていますね。でも、監督の了承は取っています(笑)」と回答。
その理由に関して、コンテに描かれた戦車の動きから意図を読み取る中で、「自然と演技ができてくる。勝手に戦車が動きはじめる」と説明し、それに合わせて絵コンテを修正していると語った。
また、戦車の3Dモデル自体も、TVシリーズからは細かくバージョンアップが行なわれているそうだ。
ちなみに、最終章 第4話の合計カット数は1,000カットを超えるが、そのうちの約800カットがCGで制作されたカット。それだけ戦闘シーンに力が入っている。
一方、これまで音による「ガルパン」らしさを追求してきた岩浪さんも、映像の情報量が膨大なこともあり、第4話では「今までのように出しゃばってはいけない。音でドヤってはいけない」と、映像をサポートする役割に徹したそうだ。
特に、画面外やフレーミングアウトしていく戦車の動きを音でフォローアップ。柳野さんも、「立体的に包まれるような音響によって、映像がさらに分かりやすく、より楽しめるようになっている。映像と音との組み合わせの完成度はかなり上がったのではないか」と感想を述べていた。
「板野サーカス」ならぬ「柳野サーカス」!?
さらにふたりのトークは、大洗 VS 継続の戦闘シーンについて掘り下げるものに。
アクロバティックな戦闘シーンの組み立てについて聞いた岩浪さんは、柳野さんの師匠筋にあたる板野一郎氏のアニメ演出「板野サーカス」をなぞり「柳野サーカスだね!」と表現。これには柳野さんも思わず「怒られる」と苦笑いを浮かべていたが、迫力ある、新たな映像表現への追求という意味でその志が受け継がれているのは確かだろう。
話はさらに、準決勝のもう一試合である黒森峰 VS 聖グロリアーナの戦闘シーンにも及んだ。
その中で、柳野さんは「特技演出」という肩書についても言及し、「映像としてどうやって見せるべきかを計算した上で、CGが一番効果的に使えるように検討・実行する」と、その包括的な役割を説明。本作におけるCGが、どれだけ重要なポジションであるかをうかがわせる回答となった。
岩浪さんも、「アクション映画という映像芸術の映画では間違いなく最高峰だ」と断言。会場を埋めた記者からも拍手が送られていた。
「雪原と渓谷での砲撃音の違い」については、「雪は吸音体なので音は響かない。逆に渓谷や砂漠は周りに岩山があるので音が反射する。そういう想像上のリアリズムを意識した」(岩浪さん)とのこと。
最後に本作の見どころを改めて問われたふたりは、「今までにないぐらい、アクション密度が高い内容です。初見では迫力や戦闘の展開を楽しんでいただけると思いますし、2回目以降も、キャラクターや戦車のひとつひとつの行動にすべて意味があるので、必ず発見があると思います。そうやって何度も楽しめる作りになっています」(柳野さん)。
「(記者の)みなさんのお力で、Dolby Atmosは良いよ! というのを広めてください。それだけです。お願いします!」(岩浪さん)と笑顔でコメントした。