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ソニーの立体音響「360RA」ゲームの世界へ。開発者向けプラグインソフト提供開始

ソニーは、ヘッドフォンで立体音響が楽しめるゲームを制作するための開発者向けプラグインソフト「Gaming Virtualizer by 360 Reality Audio」の提供を開始する。世界のゲーム開発会社でさまざまなプラットフォーム向けのゲームにおける立体音響開発に使用されているミドルウェアソリューション「Wwise」のプラグインとして機能。低負荷、低遅延かつ自然な立体感のあるヘッドフォン向けゲームサウンドの制作が可能になるという。

昨今、立体音響に対応した3Dゲームが増加し、モバイルやPCなどのさまざまなプラットフォームで展開されている。その一方で、ヘッドフォンを使用したプレイスタイルが定着しているという状況もあり、多チャンネルのスピーカー環境だけでなく、ヘッドフォンでも立体音響のゲームサウンドを楽しめる環境が求められている。

そこで、立体的な音場に没入できる360 Reality Audioの開発で培った360立体音響技術を生かし、ヘッドフォンで再生できる立体音響のゲームサウンド制作を可能にするGaming Virtualizer by 360 Reality Audioを導入する事になったという。

従来は、3Dゲームなどで使用される立体音響をヘッドフォンで再生する信号処理には、ゲームをプレイするハードウェアの高い処理能力が必要とされていた。しかし、Gaming Virtualizer by 360 Reality Audioにより、最適化された効率のよい信号処理が可能になり、ハードウェアへの負荷を小さくすることで、モバイル機器などの処理能力の限られた機器でもヘッドフォンを使用して没入感のある立体的なゲームサウンドを楽しめる。

また、360 Reality Audioで培った立体音響技術やノウハウを生かし、低遅延で自然な立体感のある音場を実現。音の定位感に優れているためゲーム内で上方や後方から鳴る音の位置感覚が分かりやすく、位相干渉の少ない処理によりプレイヤーの視点が大きく動いた際に追随する周りの音の動きもスムーズに体感できるとする。

Audiokineticの協力を受け開発され、同社が提供するオーディオミドルウェア・Wwiseのプラグインとして使用。Wwiseはさまざまなプラットフォーム向けのゲーム開発に使用されているため、モバイルやPCなどのそれぞれのプラットフォーム向けのゲームサウンドのデザインを統一して行なえる。

サウンドデザインをプラットフォームごとに調整する必要がないため、ゲームの開発効率が向上。ゲーム内のすべての音を一括して立体的な音場に調整するのではなく、音を分けてそれぞれ調整することも可能。

例えば、人物の声や効果音など、位置を明確にしたい音はGaming Virtualizer by 360 Reality Audioを用いて立体音響化し、環境音などの特定の位置から鳴っていない音は別の処理を行なえる。ゲームクリエイターの意図をより忠実に反映した自由度の高い空間表現が可能。

コロプラ、Cygames、ガンホー・オンライン・エンターテイメント、ナイアンテック、スクウェア・エニックスなど、日本、アメリカ、イギリス、中国のさまざまな企業や開発スタジオなどでゲーム開発への実装に向けた検証が進められている。

また、コロプラが提供するアドベンチャーゲーム「PRINCIPLES」では、このソフトウエアの実装による新たなサウンドデザインにより、足音やむき出しの電気回路から漏れる音、洞窟内の反響音などを、臨場感のある立体的な音場で体感できるという。

コロプラ オーディオプログラマー 渡邉大輝氏

「Gaming Virtualizer by 360 Reality Audio」の導入によって、音像の定位感が向上し、視点移動などを行った際にも違和感の少ない定位の変化を感じられるようになりました。ゲームエンジン「Unity」と「Wwise」を利用した開発環境に手軽に導入することができ、モバイルゲームで問題なく利用できる処理負荷である事も嬉しいポイントです。

ガンホー・オンライン・エンターテイメント シニアサウンドクリエイター 尾崎景吾氏

ゲームに立体音響を取り入れることで、より臨場感を高めた豊かな音響表現が実現できると確信しています。

「Gaming Virtualizer by 360 Reality Audio」の技術はサラウンドシステムのように特定の機材環境に依存しないため、幅広い層に楽しんでいただけるサービスになるのではないかと考えております。

Cygames サウンド本部 音響研究室 マネージャー 牧村亮治氏

実スピーカーでの立体音響の出力機器をお持ちのユーザー様は少なく、作り込んだ音響体験を多くの方々に届け切れない中で、プラットフォームを問わず、ヘッドフォンにて再現度の高い立体音響を提供できる手段があれば、皆さんにより広くお届けできると考え、本ソフトウェアの検証を行わせて頂いております。