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ヤマハ、渋谷に楽器・配信機材に触れられる新ブランド発信拠点

Shibuya Sakura StageのSAKURAサイド3階にある「Yamaha Sound Crossing Shibuya」の「LAB」

ヤマハは、若者に向けたブランド発信拠点と研究開発のサテライト施設として、「Yamaha Sound Crossing Shibuya(YSC渋谷)」を、11月15日にオープンする。それに先駆けて、14日にメディア向け内覧会が行なわれた。

所在地は、東京・渋谷のShibuya Sakura Stage内のSAKURAサイド。YSC渋谷には、一般の人でも自由に利用できるブランド体験施設「LAB」(SAKURAサイド3階)と研究開発のサテライト施設で一般非公開の「LOUNGE」(SAKURAタワー8階)のふたつで構成される。

LAB

LAB内にはギターなどの楽器類が置かれている

一般公開されるLABは、「新しい音楽を生み出し、音楽を表現・発信することに興味を持つ若者や、アマチュアのミュージシャンなどの一般のかたに向けて、最新の楽器や音楽を紹介する体験型の施設」で、SAKURAサイドの広場・にぎわいステージに面している。

LAB内は製品や最新テクノロジーを体験できる「エクスペリエンス」エリア、配信もできるライブエリア「ステージ」、最新技術をプレゼンテーションする場となる「スタジオ」、オリジナルコーヒーやクラフトビールなどを楽しめる「カフェ」で構成。空間デザインは“Musician's share house”をコンセプトにヤマハデザイン研究所が監修したという。

エクスペリエンスエリア

エクスペリエンスエリアでは、バンドやステージパフォーマンス向けの楽器を中心とした製品を展示し、体験も可能。音楽制作機器・配信機器に関するワークショップも定期的に開催予定で、楽器・音楽制作について相談できるスタッフも常駐する。

配信機器の展示スペースも用意
モニタースピーカー「HS5」なども置かれている

展示エリアには、ギターやシンセサイザー、電子ドラムといった楽器類に加え、オーディオインターフェース「AG08」やライブストリーミングミキサー「AG03MK2」といった配信機材、モニタースピーカー「HS5」やヘッドセット「YH-G01」、そのほかヘッドフォン製品なども置かれていた。

ライブやイベントが行なえる「ステージ」エリア
内覧会ではバイオリンとドラムのユニット「Resonance」がパフォーマンスした

ステージは、楽器や音響機器などを完備し、ライブやイベントが開催できるスペース。フレキシブルな会場づくりができる開閉式で、小規模ライブのほか、エクスペリエンスエリア、カフェと連結させることもできる。14日に行なわれた内覧会では、バイオリンとドラムのユニット「Resonance」によるライブパフォーマンスが披露された。

“ライブの真空パック”がコンセプトの「Real Sound Viewing」のデモも行なわれた

スタジオは、配信機器などの施設を完備しており、同社の最先端テクノロジーを使って、「楽器・音楽・音響情報を世界に向けてインタラクティブに発信するスペース」とのこと。同エリアでは、演奏をデジタル技術で再現する「Real Sound Viewing」の実演・演奏の配信、イベントの実施・配信などが行なわれる。

カフェで提供されるメニュー

カフェでは、スペシャルティコーヒー専門店のScrop COFFEE ROASTERSが監修した「渋谷×音楽」をテーマとしたオリジナルコーヒー、創業100年の佐々木製茶による深蒸し茶を使った抹茶ラテやほうじ茶ラテ、同施設限定のクラフトビールや「葡萄ミルクティーIN ゼリー」などのオリジナルメニューを提供。飲食を楽しみながらライブや配信動画を視聴することもできる。

ヤマハのシンセサイザー「EOS」など、過去の銘機を展示するスペースも

LOUNGE

一般には非公開となる「LOUNGE」エリア。天井には“音叉マーク”

一般には原則非公開となるLOUNGEは、先端技術の体験や実験などを行なう場所で、ミュージシャンやアーティスト、クリエイターなどと関係を深めて共創活動を推進するほか、新製品の企画開発、プレゼンテーション、新製品発表会の会場などに活用していく。

ギター向けスタジオの「STUDIO A」
STUDIO A内にはさまざまなギターがかけられているほか、パーテーションの奥にはギター工房も完備

フロア内は「MUSICIAN'S SALON」をテーマに空間設計。フロア内にはギターやピアノ/シンセサイザーなど楽器別に分かれたスタジオが計4つ用意されるほか、それぞれをネットワークで繋いだ「Creative Sound Studio」も用意。ここでレコーディングやミックス、CDプレスまで行なえるという。内覧会ではLOUNGEのスタジオをつないだデジタルレコーディグのデモが行なわれた。

「Creative Sound Studio」
LOUNGE内の各スタジオと繋いだデジタルレコーディグのデモが行なわれた

そのほか「プロアーティストの仕事部屋」をイメージした応接室や、商品企画開発や次世代素材・機能のエバリュエーション(評価)などの研究開発に使える防音室、ミーティングルームなどを備えている。

また入口すぐのラウンジスペースには、ギターやシンセサイザー、坂本龍一氏の希望をもとにヤマハデザイン研究所がデザインしたピアノ「Opera Piano」を展示。天井にはブランドマークである音叉マークもあしらわれている。

ラウンジスペースに置かれたOpera Piano。「戦場のメリークリスマス」が自動演奏されていた
ヤマハの“赤ラベル”こと「FG-150」も展示
各ミーティングルームには音叉やドラムスティックなどで「YAMAHA」の一文字を表したオブジェも。なかには2,000個のノブを使ったオブジェもあるという

Yamaha Sound Crossing Shibuyaは「尖った位置づけ」の施設

ブランド戦略本部コーポレート・マーケティング部の吉川剛志部長

14日に行なわれたメディア内覧会で、ヤマハのブランド戦略本部コーポレート・マーケティング部の吉川剛志部長は、ヤマハにとってYSC渋谷がある渋谷桜丘はゆかりの深い土地であると説明した。

「1975年、(YSC渋谷がある)まさにこの場所にエピキュラスという名前の施設を作りました。ここでは中島みゆきさんや長渕剛さん、そのほか多くのアーティストの方々にレコーディングスタジオとして活用していただいたり、ミニコンサート会場として使っていただいたりと、当時のポピュラーミュージックの盛り上がりを支えてきた場所です」

「1995年には施設名称をエレクトーンシティ渋谷に改名しました。ここはエレクトーンの聖地でもあり、またボーカロイドの開発拠点としても親しまれてきました。そして2024年、新たな新拠点がオープンします」

ヤマハとしては首都圏のブランド発信拠点として、ヤマハの旗艦店となる「ヤマハ銀座店」と今年6月にオープンした体験型ショップ「ヤマハミュージック 横浜みなとみらい」を構えており、今回のYSC渋谷で3拠点目となる。各拠点の役割について、吉川部長は次のように説明した。

「ヤマハ銀座店は、高い専門性と上質なブランド体験を備えた旗艦店として位置づけています。ここで行なわれるブランド体験やイベント、発信コンテンツをグローバルに届けていく役割も担っています」

「一方、横浜みなとみらいのほうは、音楽の初心者や未経験者、新規顧客などをターゲットにして、楽器に触れる体験、音を出す体験というところから、さまざまなステップを経て、音楽の楽しみに出会える場所と位置づけています」

「今回オープンする渋谷は、若干尖った位置づけにしています。お客さまとの接点を広げてブランドの価値を伝えるという基本方針はそのままですが、大きく違う点がふたつあります」

「ひとつは新技術、新しい技術を搭載した製品、あるいはバンドやステージパフォーマンス向け機材、ネット配信、ライブ配信に特化した拠点だということ。もうひとつは研究開発チームと連携・協力しながら最新技術の紹介を行なっていくなど、最新楽器や最新テクノロジーを展示、発信していきます。これによって最新トレンドを取り込んで、若年層向けのブランド発信を強化していきます」

「ヤマハは大変歴史の長いブランドで、そのおかげもあって“伝統的”“信頼性がある”というブランドイメージを持っていただいています。これは大変ありがたいことですが、この施設を通じて、より当社が持つ技術力や先進性、トレンドを作っていく、取り入れていくという姿勢を訴求していきたいと考えています」

研究開発統括部先進技術開発部新価値グループの森隆志リーダー

研究開発領域における施設の活用方法については、同社研究開発統括部 先進技術開発部 新価値グループの森隆志リーダーが「新しい、まだどうなるか分からないもの(技術)をどんどん提案していく場所と捉えたい」と説明する。

「我々の全開発拠点は浜松にあり、世界にも誇れるような充実した研究開発設備を持っています。みなとみらいは、他社さまを含めて研究拠点の集積地のひとつになっていますので、主に首都圏の拠点として、企業さまとの連携、中長期の実証実験などを行なっていくことを想定しています」

「この渋谷は先端文化の街というところで、もっと積極的に発信していく、新しい、まだどうなるか分からないもの(技術)をどんどん提案していく場所と捉えたいと思っています。拠点としては“首都圏サテライト”という位置づけで、浜松やみなとみらいから“旬なもの”を持ち込んで、それと人や技術が出会ってなにかが創発されることを期待して、この場所を活用したいと思っています」

ヤマハミュージックジャパンの松岡祐治代表取締役社長

ヤマハでは、このYSC渋谷をアーティストなどと関係を深める“アーティストリレーション”の場所としても活用。ヤマハミュージックジャパンの松岡祐治代表取締役社長も「音楽シーンの中心地である渋谷から、若年層に向けたマーケティングを推進していく」とした。

「ヤマハミュージックジャパンは、YSC渋谷でプロダクトマーケティングとアーティストリレーションを進めてまいります。プロダクトマーケティングでは、若年層を対象に渋谷の発信力を使いながら、渋谷のみならず全国に情報を広め、需要を喚起してまいります」

「具体的には、アーティストのイベントを3階(LAB)のステージを中心に開催します。またステージと8階(LOUNGE)のスタジオからコンテンツを発信します。そして、スペシャリストを配置することで、商品の体験だけではなく、使用場面の説明も行なうことで、アーティストやクリエイターの創造性をサポートします」

「アーティストリレーションでは、アーティストに当社製品を使っていただいて製品の認知度を高めるとともに、そのフィードバックを商品開発に活かしてまいります」

「ヤマハミュージックジャパンは、アーティストリレーションの専門部隊『ART』を持っており、アーティストの機材サポートや商品開発・改良・試作評価時のアーティストのコーディネート業務を行なっています。商品評価も行なえる、この施設を活用してアーティストとの接触機会を大幅に増やして、創造性やアイデアを後押ししていきます」

内覧会の最後には、アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の後藤ひとり役の声優・青山吉能や音楽プロデューサー・ベーシストの亀田誠治、バーチャルシンガーの初音ミクたちから、YSC渋谷オープンを祝うビデオレターも流された。

ヤマハにゆかりのあるアーティストからのビデオレターが流された

ボカロ誕生20周年のオープニングセレモニーやコラボ企画も

オープン日となる11月15日は、11時45分からボーカロイド誕生20周年にちなんだ「グランドオープニングセレモニー」を行なうほか、18日までの期間中に来場した人にオリジナルピックのプレゼント、各クリエイターとのコラボ企画などを展開する。

コラボ企画は、「演奏してみたの投稿者・ボカロPなどを目指したいユーザー」に向けたもので、11月27日から12月9日まで開催予定。まらしぃとのコラボレーション企画のほか、「●●してみた」(歌ってみた・演奏してみた)をテーマにした展示などを行なうという。

いずれも詳細はYSC渋谷の公式サイトまで。