ニュース
JASRACと音楽教室、楽器演奏の著作物使用料で合意。大人の受講者1人年額750円
2025年2月28日 18:57
音楽教育を守る会と日本音楽著作権協会(JASRAC)は28日、新たな音楽教室規定「音楽教室における教師による楽器演奏等」に関して合意に至ったことを発表。音楽教室事業者がJASRACに使用料を支払うもので、大人のレッスンの著作物使用料は、受講者一人当たり年額750円(税別)、中学生以下(こども)のレッスンについては、受講者一人当たり年額100円(税別)になる。
また、極少利用(普段は管理楽曲を使用しないが、年に数回程度利用する場合)の場合は、レッスン単位および曲単位での使用料を定めるとのこと。新しい規定の実施日は4月で、今後、音楽教室事業者は管理開始(2018年4月)に遡り支払い、両者は新しい音楽教室規定に沿った運用を進めていくという。
音楽教室で教師や生徒が演奏した際に、著作権料をJASRACに支払う必要があるか、音楽教室事業者とJASRACが争っていた。発端は2017年6月に、JASRACが音楽教室における演奏等に関する使用料規定を文化庁に届出。これに対して、音楽教室事業者がJASRACを提訴した。
その後、2022年10月に最高裁において「生徒の演奏には著作権料は不要」との判決が下ったが、一方で「講師の演奏」と「録音物の再生演奏」については、著作権料の徴収対象となることが確定。これを受けて、音楽教育を守る会とJASRACが、音楽教室における演奏利用のうち、教師の演奏および録音物の再生についての使用料等の協議を行なっていた。
協議においては、最高裁が示した著作権のおよぶ範囲(教師の演奏または録音物の再生演奏)について、適正な使用料の在り方を議論。協議当初は、最高裁判決の解釈に多くの時間を要したため、判決から2年をかけて合意に至ったという。
今回の規定の主旨は、「音楽の未来を守ることにある。特に、こどものレッスンにおいて楽曲の選定に制約が課されないよう配慮した内容になっている」という。また、これまで通り、個人で経営する教室については適用対象外としている。
音楽は、人の心を豊かにし、人と人との繋がりを促し、社会にとって無くてはならない要素です。音楽文化の発展には、(1)利用の促進、(2)権利者の保護、そして(3)演奏人口の拡大、の好循環が必要であり、今回の事案はその在り方が問われたものでした。8年間という時間の中で、著作権に関する新しい法解釈が生まれたこと、そして未来を担う子どもたちへの配慮がなされた新しい料率規定が定まったことは大きな成果です。我々音楽教室事業者は今回の決定を真摯に受け止め、より一層演奏人口拡大に向けた取り組みを進めてまいります。
音楽教育を守る会との間で使用料規定について合意が整いました。8年間という時間のなかで、著作権の保護と利用のバランスについて改めて検討を行ない、特に教室に通う子どもたちにとって、多様な音楽に接する機会を確保することが持続的な音楽文化の発展のために重要であるとの認識のもと、今回、良い形で新たな使用料規定について合意ができました。JASRACは、新たな使用料規定での管理の開始にあたり、音楽教室事業者の皆様に事前に丁寧なご案内を行ったうえで、安心して音楽をご利用いただけるよう、取り組んでまいります。