MediaFLO実証実験向けに無線LAN接続のチューナを試作

-パソコン用チューナも開発し、免許取得をアピール


1月26日発表


 メディアフロージャパン企画とKDDIは、沖縄県那覇市と豊見城市の「ユビキタス特区」における「携帯端末向けマルチメディア放送(メディアフロー)サービス実証試験」の一環として、両社が推進するMediaFLOのVHF対応USB接続型チューナと、Wi-Fi転送型試作チューナ機を用いた、PCや携帯端末などへのコンテンツ配信実証試験を1月26日より開始する。

パソコンでMediaFLOにアクセス可能にPC用のMediaFLOチューナ

 メディアフロージャパンとKDDIは、アナログテレビ放送が終了する2011年以降に空く予定のVHF帯を使い、マルチメディア放送サービスの実施を計画している。沖縄における実証実験では、2009年4月から実験用の20の映像チャンネル、3つの音声チャンネルを同時に送信し、MediaFLO方式の周波数効率の高さを実証。加えて、11月からは、リアルタイムの映像/音声のストリーミング配信や、随時更新される情報をリアルタイム更新するIPデータキャスティング、デジタルコンテンツを蓄積型で配信するクリップキャストなどの実験を行なっていた。

 今回メディアフロージャパンとKDDIは、パソコン用のUSB接続型のMediaFLO受信機と、無線LAN機器をMediaFLO対応にするMediaFLOチューナを開発。これらの新チューナを用いた実証実験を26日から開始した。

 USB MediaFLOチューナは、パソコンと接続するだけで、MediaFLOの多チャンネル放送やファイル自動蓄積型配信、ニュースや株価、交通情報などのリアルタイム配信などの多様なサービスが受信可能となる。

 また、Wi-Fi転送型MediaFLOチューナは、50×87mmと小型でポケットなどに収納可能。スマートフォンや携帯プレーヤーなどの無線LAN機器に無線LAN経由で、映像やデータを伝送可能となる。発表会場では、スマートフォンやiPod touchと組み合わせて、デモを行なっていた。

Wi-Fi転送型MediaFLOチューナの映像をiPod touchで受信スマートフォンでのデモも実施

 メディアフロージャパン企画では、1月14日に東京 表参道のKDDIデザイニングスタジオにおけるVHFバンド(11ch)の実験試験局免許を取得。26日から、同スタジオ来場者が沖縄における実証実験と同等のサービスを体験できるMediaFLO展示コーナーを設けている。また、2009年11月に開発し、実証実験に利用した携帯電話型の試作受信機も展示している。

MediaFLO対応携帯電話。ワンセグ/MediaFLO両対応となっているトップメニューからストリーミングや株価、天気などの各種サービスにアクセスできる

 


■ 大容量/即時性を活かし、免許取得に取り組む

メディアフロージャパン企画増田社長

 新チューナの発表に合わせて、MediaFLOに関するセミナーも開催。メディアフロージャパン企画の増田和彦代表取締役社長は、MediaFLOを「放送技術を利用し、携帯端末に対してマルチメディアコンテンツを提供するサービス」と定義し、ストリーム映像配信や株価や天気情報、ニュースなどのデータ放送的なコンテンツなど“即時性”を活かしたコンテンツと、電子コミックや音楽などファイルダウンロード型の”蓄積型”コンテンツなども展開できることを紹介。携帯向けコンテンツビジネス拡大のプラットフォームとしてのMediaFLOをアピールした。

 沖縄ユビキタス特区における実証実験では、AXNやFOX、ディスカバリーチャンネルなどのコンテンツプロバイダが参加し、QVGA/30fpsの映像配信を実施。テレビ朝日や、レーベルゲート、ウェザーニューズなどが、ファイル自動蓄積配信や、ニュース、株価、交通情報のリアルタイム配信を行なっている。

 なお、携帯電話向けのマルチメディア放送については、MediaFLOのほかの技術方式として、VHF-High帯でISDB-Tmmが、VHF-Low帯でISDB-T SBが提案されており、それぞれが免許の取得に向けて動いている。増田社長は、「総務省が実施した参入意向調査に対して、受託事業、委託事業方法への参入意向を提出した。年内には全ての枠組みが決まるだろうが、なんとか免許を獲得したい」とした。

MediaFLOが狙うコンテンツ領域即時性を活かしたコンテンツだけでなく、蓄積型のコンテンツも扱える点をアピール
レーベルゲート 江原氏

 また、レーベルゲート 携帯ビジネス部 マーケティングルーム・ストラテジックビジネス部 第3セクション 江原知倫課長もコンテンツ提供者からみたマルチメディア放送への期待を語った。現在のワンセグでは、番組を見ながらコンテンツダウンロードはできないが、マルチメディア放送においては、番組中にコンテンツをダウンロード取得し、視聴後にコンテンツのライセンスキーを取得するなど、より密な番組連動ができることが魅力とする。また、ビデオや音楽の高品位化、アルバム配信などの大容量データ送信が可能な点などを挙げ、「ポテンシャルを活かした新しいサービスが期待できる」とした。

ウェザー石橋取締役

 ウェザーニューズの石橋知博取締役は、携帯端末向けマルチメディア放送への期待として、現在パソコン向けで展開している利用者参加型の天気情報サービス「ソライブ」を紹介し、携帯電話にリアルタイム情報配信と双方向性が加わることで、より精度の高い「新しい天気予報」が可能になると訴えた。



(2010年 1月 26日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]